



11月20-23日、大阪で行われた第37回医療情報学会学術大会のシンポジウムで、Net4Uの報告をしてきました。
実はこのシンポジウム、あじさいネットで有名な松本先生から、一緒にやらないかと声をかけてもらい応募した企画です。
以下、松本先生のSNSへの投稿から引用
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その中でも昨日、私が企画させていただいた公募企画シンポジウム「質の高い在宅医療、介護におけるICT活用の位置づけと課題」では、全国より、最も長いICT連携応用を誇る山形県鶴岡市Net4Uの前鶴岡市医師会長 三原一郎先生、初の島内全医療機関連携を成し遂げた新潟県佐渡市ひまわりネット佐渡総合病院院長の佐藤賢治先生、地域包括ケア幸手モデルでも有名な埼玉県とねっとの東埼玉病院地域連携室長の中野智紀先生、メディカルケアステーションの雄、栃木県とちまるネットの栃木県医師会 長島公之先生、そして我があじさいネットからは、長崎在宅Drネット理事で在宅医療の現場で最もあじさいネットの在宅医療機能を使われている奥平定之先生の早々たるメンバーに御発表いただきました!
これらの皆さん方は、お一人お一人が、皆、お一人での基調講演を依頼される方々ですので、なんとも付加価値の高いセッションですので、おかげさまで会場は立見ありの満員となりました。其々が18分という限られた持ち時間の中で充分に練られた各ネットの特徴と取組みを紹介いただきました。おそらく、全国に散財する各種ICTネットの中で、この5ネットが全てのネットを代表していると思われますので、其々のメリットと課題が明確化したものと思います。その後、30分間しっかり総合討論が確保でき、利便性、必要な機能、コスト、運用継続性の担保、普及に向けた方法等、多くの方々が知りたい情報を議論できたかと思います。
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シンポジウム 「質の高い在宅医療・介護におけるICTの活用の位置づけと課題」
1、地域医療連携システム「さどひまわりネット」を用いた医療介護統合提供体制の構築
佐藤 賢治(佐渡総合病院)
「さどひまわりネット」の概要
病院、診療所、歯科診療所、保険薬局から下記の医療情報を自動収集
・レセプト情報より病名、手術含む処置名、院内処方の処方内容、注射内容
・外注含む検査システムより検体検査結果
・画像機器、PACSから放射線・内視鏡画像
・調剤薬局システムから院外処方の処方内容
介護事業所から下記の介護関連情報を手動またはCSVファイルを介して収集
・バイタル、食事量など
・ADL、iADL
・その他フリーテキストとして記載する情報
健診データも事業者健診、住民健診、特定健診から検体検査結果のみ収集
これらは参加施設で双方向に参照可能で、さどひまわりネットには「情報提供施設」「情報参照施設」との概念はない。
また、医療機関・介護事業所の区別もなく、システムから見ると参加施設はフラットに扱われる。
参加施設は島内医療機関・介護事業所の約6割と行政(佐渡市)
内訳は
・病院 6/6
・診療所 14/21
・歯科診療所 6/23
・保険薬局 12/20
・介護施設 37/57
住民の同意数は14,716名で約25%です。
コミュニケーションツール
・コミュニケーションボード:患者単位にLINE類似のI/Fでオンライン会話
・セキュアメール:通常のメール機能と同等、ケアマネと介護事業者・担当医との連絡に用いられることが多い
・生活指導:医師から介護側へ指示、連絡
・地域連携パス:項目設定の自由度が高く、職種問わない計画を作成
費用
・初期導入費用:H21年度地域医療再生基金
・維持費用(保守、事務局運営):参加施設の利用料による自立運用が基本、佐渡市から限度額ある赤字補填
課題
・医師、とくに当院の2/3を占める大学からの派遣医の多くは積極的に利用しようとはしません。
当院でもっともアクセスする職種は看護師。佐渡全体でもっとも興味を持つ者が多い職種は介護
・全般に利用者は、連携システムを積極的に利用する一部の者と、ほとんど利用しないその他大勢に二分
稼働後4年経過してもこの姿に変わらない。
・利用料が非常に高い。この利用料を他地域で理解してくれるかは疑問。とくに都市部では困難。
佐渡でもパッケージ化とシステム更新の理由の一つが利用料軽減にあった。
参加施設の増加やデータセンターを複数地域で利用するなどで利用料軽減は可能。
・佐渡では少ない資源を効率的に利用するために、そして人材を確保するために情報共有基盤を核とした体制を整えることが急務。
2、医療と介護を繋ぐ!ヘルスケア・ソーシャル・ネットワーク「Net4U」
三原一郎 (鶴岡地区医師会)
Net4Uが17年間運用できた背景には、鶴岡地区医師会の存在とともに、多様な活動を継続してきたことがある。
医療情報ネットワーク(2001年~)
地域電子カルテ Net4U
患者家族支援ツール Note4U
2次医療圏を繋ぐ「ちょうかいネット」(ID-Link)
庄内南部地域連携パス推進協議会(2006年~)
6つの地域連携パスの運用
南庄内緩和ケア推進協議会(2007年~)
緩和ケア普及のための地域プロジェクト(庄内プロジェクト)
慶応義塾大学生命先端科学研究所(2007年~)
からだ館
地域医療連携室「ほたる」(2011年~)
地域の在宅医療介護連携の拠点
みどりまち文庫(Midorimachi Lab)(2015年~)
異業種連携のためのコワーキングスペースの提供
Net4Uは、在宅医療の分野で着実に浸透している。
今後は、Note4Uのような患者・家族参加型のシステムの普及が期待される。
3、地域包括ケア時代におけるとねっとの活用とこれからの可能性
中野 智紀 (ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院)
とねっと 行政と医師会とのコラボ
カード(地域共有ID)の発行 救急、健康情報
とねっと疾病管理MAP 糖尿病の層別化、
とねっと健康記録 (自己管理)
とねっととメディカルケアステーションとの統合
生涯にわたる生活支援体制
暮らしの保健室”菜のはな”
NPO元気スタンド ぷリズム
おかあさんの知恵 X とねっと
とねっとを活用した健康づくり
薬剤師との連携 :調剤情報にとどまらない調剤薬局との連携
地域防災での活用
とねっと 2.0
生涯を支える公共プラットホームを期待
会費、
透析を生む仕組み
診療情報算定可能
在宅介護総合基金
4、栃木県における医療連携「とちまるネット」と医介連携SNS「どこでも連絡帳」の併用
長島 公之 (栃木県医師会)
とちまるネット X どこでも連絡帳(メディカルケアステーション)
運営体制栃木県医師会
どこでも連絡帳
安全なSNS、完全非公開型
必要な患者、チームは、主治決定
患者・家族の参加
グループ、連絡網
全国
・参加施設数:約27,000施設、
・正式採用郡市医師会:約200
人と人との連携を目指す
あくまでコミュニケーションツールであり、記録ではない
顔の見える関係を基盤に
つながり、チームが深まる
一体感、即応性、
医師間との連携が深まった
まめな講習会
普及の壁:読み書きの負担、ICTへの抵抗、医療介護連携自体の問題
グループで、広く多職種を
服薬適正化アプリ、褥瘡サポートアプリなどが開発元の収入源
5、在宅医療におけるあじさいネット利用の価値と課題
奥平 定之 (奥平外科医院/長崎在宅Drネット)
あじさいネットについて
あじさいネットを在宅医療の他職種連携に活用
かかわるスタッフをグループ登録
書類などは写真の活用
入院、在宅、外来記録が一画面で表示可能
今後の課題、調剤情報システム
課題、介護職の参加が少ない
APCにもつかえる
ディスカッション
○機能としては十分か
満点を求めない、70点で十分という発想が必要では
Net4Uを電子カルテとして使うには、レセコンとの連動機能が欲しい
機能よりは、どうユーザーを拡大するかの方が重要
○コストと事業継続性
Net4Uは医師会負担も、今後はユーザ負担も考慮
ベンダーが儲かることも必要、
クラウド化でユーザーを増やすことでのスケールメリット
とねっと、カネを生むシステム、
疾病管理に利用することで、医療費の削減に寄与
市町村がやらなければならないことをとねっとで(市町村からの補助金)
佐渡、パッケージ化で商品化 1200万の収入
メディカルケアステーション、服薬支援のアプリで収入
カスタマイズは医師会負担で開発→全部で使える
患者もアクセス可能 →大きなメリットが生まれる
あじさいネット、会費負担
○普及のために何が必要か
患者登録を増やす
医師が同意をとるのが同意率が高い(佐渡)
医療圏辺縁での加入率が低い(とねっと)
ユーザーの参加を増やす
医師の参加率:病院の意識向上を
IT連携に対する診療報酬での大幅な加算
以下、松本先生
終わった後は、皆で、記念撮影後、北新地の明石屋で打上げ! 佐藤先生が都合が悪く参加できませんでしたが、代わりに新潟大学地域連携センターの鈴木一郎先生にもご参加いただき大盛会でした。今度、このメンバーで、他の学会でもシンポをやろうとのアイデアもでましたよ! 皆様、大変お疲れ様でした!」




