本年度第1回目の医師会勉強会は、札幌厚生病院の本谷 聡先生をお呼びして、炎症性腸疾患の実践的な講演を拝聴しました。
膨大な臨床経験に基づくIBDの最新の治療法は、IBD治療に携わる先生方には大いに役にたったのではないかと思います。
近年、生物学的製剤などの普及により、IBDに限らず多くの疾患でその治療ストラテジーも大きく変わってきていることを実感しました。
医師たるもの、継続的な学習は必須ですね(自戒を込めて)。
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鶴岡地区医師会勉強会
日時:4月15日
場所:医師会講堂
演題:知って得する炎症性腸疾患(IBD)最新診療 のコツとポイント
講師:札幌厚生病院 IBDセンター 本谷 聡 氏
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●潰瘍性大腸炎
診断
矛盾しない、除外診断
内視鏡:炎症症状、潰瘍は条件ではない、浮腫、潰瘍、出血
病理:陰窩膿瘍、感染性腸炎などにもみられ必ずしも診断的所見ではない
胚細胞の減少、腺の配列異常
DD:アメーベ性大腸炎(性癖など)、キャンピロバクタ腸炎(生の鶏肉)、
重症度分類
Matts内視鏡分類 1-4
MES(Mayo endoscoopic sub score) 0-3 粘膜治癒率
インフリキシマブなどの効臨床試験効果指標で用いられ普及
治療ストラテジー:順序が重要
十分量の経口・5-ASA(メサラジン)製剤(高用量を躊躇しない)
ステロイド (漫然と継続しない)
免疫調節剤(シクロスポリン、タクロリムス・・)、白血球除去
生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)
メサラジン製剤
部位による分類:全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型
直腸炎型:注腸製剤、座薬を積極的に使用、
その他、サラゾピリン、ペンタサ坐剤、
100%最初に使う薬剤だが、不耐が2%存在する
長期投与による腎機能障害にも注意
ステロイド
ステロイド抵抗性:プレドニン1-1.5mg(40mg-60mg)で効果がなければ、早期に他治療に変更
ベタメサゾン:強力な副腎萎縮作用あり、離脱困難になるので要注意
重症例:スピード感をもって
少なくとも7日以内に、外科治療の必要性を判断
免疫調節薬(AZA):低用量から開始すべき
イムラン、アザリン アザチオプリン
消化器症状、膵炎、骨髄抑制による全脱毛などの副作用がある
白血球除去
レミケード(インフリキシマブ) IFX
寛解導入率:50%程度、免疫調節剤の併用で寛解率上がる
ヒュミラ(アダリムマブ)
レミケイドより寛解導入効果は低い
長期的には、同等
カルシュニュリン阻害薬 プログラフ
以上の治療も、1-2年程度で止めるのが原則だが、いつ止めるかの判断は難しい、
これら治療は、妊娠中でも継続ける方向にある、
*胎児には24Wで中止しても移行する、ワクチンは生後6か月以降に
●クローン病
診断
主要所見
内視鏡:縦走潰瘍、敷石像、病理:非乾酪性類上皮肉芽腫
副所見
不整形、類円形潰瘍、あふた
特徴的な肛門病院
特徴的な胃十二指腸病変
治療
中等度以上では、腸合併症をきたす前に、 抗TNFα抗体を早期に導入!
レミケード:キメラ型 抗原性あり抗体ができる、二次無効率(徐々に効かなくなる)、免疫調節薬と併用
ヒュミラ:免疫調節薬の併用は必要ない
札幌厚生病院での年間患者数
潰瘍性大腸炎1400例
クローン病:800例
質問
・粘膜治癒の判断
・外科への依頼へのタイミング、
・自然治癒例がある(英国人) 人種による疾患感受性遺伝子の違い
・潰瘍性大腸炎と癌との関連 癌は治療がうまくいかない、治療していない例に多い、癌化を防ぐにはしっかりとした治療が必要
・潰瘍性大腸炎の逆紹介:30%は入れ替わる、積極的に逆紹介している、一方、クローン病は病院で診続けることが多い、
・再生医療の展望:まだその段階にはない