※一穂ミチ(2007年「雪よ林檎の香のごとく」でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題となった「イエスかノーか半分か」などボーイズラブ小説を中心に作品を発表して読者の絶大な支持を集める。初の単行本一般文芸作品「スモールワールズ」が本屋大賞第3位、吉川英治文学新人賞を受賞したほか、直木賞、山田風太郎賞の候補に。本作も本屋大賞第3位、直木賞候補作)
●ゆずちゃんにめちゃ感情移入
医師を父に持つ裕福な家庭に育った結珠(ゆず)。父も知らず古びた団地で母と二人で暮らす果遠(かのん)。着るものも食べる物も住む世界も全く違う二人が7歳の時に偶然出会い、互いに惹かれあう。唐突の別れと再会を繰り返し、愛と友情を確かめ合っていく二十数年が描かれる。
冒頭に登場するのが小学2年生の結珠ちゃん。実は孫娘も小学2年のゆずちゃん。その顔や仕草を思い浮かべ、めちゃ感情移入しながら読んだ。結珠ちゃんの方が早生まれのゆずちゃんよりしっかり者のような気がするが、成長していく過程はこんな感じなのだろうか。物語よりそっちの方が気になった。
言葉の紡ぎ方が巧い、というかすごい。分かりやすいという訳ではないが、「なるほど」と腑に落ちるといったところか。美しい水平線は本当はなくて、どこまで行っても空と海が交わることはないという。言われてみればその通り。
親はどこまでも親、家族はどこまでも家族。みんな優し過ぎるのが気にかかったが、子育ての事(もうしないけど)とかいろいろ我が身に振り返って考えさせられながら、第三章は途中でやめられず一気に読んだ。終盤は涙を誘う展開。急加速するフィナーレも読み応え十分。潮岬付近は一度ブルベで通過したことがあるが、岬までは足を伸ばさなかった。何だか行ってみたくなったなぁ。
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