※川上未映子(大阪府生まれ。2008年「乳と卵」で芥川賞、09年詩集「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」で中原中也賞、10年「ヘヴン」で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、13年「愛の夢とか」で谷崎潤一郎賞を受賞。19年「夏物語」で毎日出版文化賞。同作は40カ国以上で刊行が進み、「ベヴン」の英訳は22年ブッカー国際賞の最終候補に選出された。23年「すべて真夜中の恋人たち」の英訳が全米批評家協会の最終候補にノミネート)
●ラストシーンではモヤモヤ感
惣菜店に勤める花は、ニュース記事で黄美子が若い女性の監禁・傷害の罪に問われているのを見つけた。20年前花は、黄美子と少女たち2人と疑似家族のように暮らしていて…。『読売新聞』連載を書籍化。2024年本屋大賞6位。謳い文句は「善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作」。
600ページ近い大作。比喩がちょっと分かりづらく、くどい部分もあったが、独特の語り口調とあまりの物語の凄さに引き込まれた。ただねぇ、ラストシーンではモヤモヤ感も残ったかなぁ。黄美子さんの事件がすっきりこない。
「私がいないと生きられない」(と花が思っている)黄美子さんや、同じように親ガチャで住むところや居場所のない蘭や桃子を支え、彼女ら疑似家族と生きていくため、懸命にもがき苦しみながらカード詐欺で金を稼いでいく主人公の花には共感を覚えた。というより、あまり悪には感じなかった。善のための悪だったからかな。奪ったのは富裕層からだし、貯めたお金も結局、吐き出す羽目になるしね。
冒頭に出てきて花を救った黄美子さんが、あれこんな人だっけ? と頼りなくなっていくのは何となく違和感を感じたが、「おまえの人生どうなんだって訊かれたら」と苦悩する花に対し、「誰がそんなこと訊くの? 誰も訊かなくない? じゃあいいじゃんか」と答えるのは、目から鱗。肩の荷が下りるね。とらえどころのないような、いい味出してる。
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