多元的全体食のすすめ(三) 食べ物研究家 五十嵐玲二談
3. 人類の雑食性の獲得と地理的拡散
人類は、家族を単位として食べ物を獲得して、それらを分け合って、食べる動物である。特に家長である父親は、家族の安全を確保し、家族を飢えから守るという、使命を負わされている。
ゴリラの家族(群れ)のリーダーである、シルバーバックも、家族の安全と食べ物が確保できるテレトリーを確保する使命をになっている。
人類が二本足歩行を獲得し、火を手に入れ、言葉を手に入れ、石器を手に入れた時代に、乾季や冬など、季節的な変動飢餓と、数年に一度の飢餓が、襲ってきたであろうと考えられる。
この飢餓に対して、大きく二つの戦略が考えられる。その一つは、食べ物があるところに、移動することである。事実、人類はアフリカから、ユーラシア大陸の拡散し、さらにベーリング海を渡り、北アメリカ、中南米を経て、南米大陸の南端まで拡散している。
さらには、小船によって、南太平洋の島々にまで、拡散していった。これは、グレートジャーニーと呼ばれている。しかし、アフリカからユーラシアへ、ユーラシアから北米へと、冒険心で渡ったわけではない。
常に、最も弱い家族(集団)が、飢えから逃れるために、押し出されるように、危険に耐えながらの決して、帰ることのない旅であったと考えられる。
飢えに対するもう一つの戦略は、食べ物の種類を多様化することである。人類は飢えとの戦いで、他の動物の食べ物を観察し、それらを食べて試してみたと考えられる。ただし、草食動物が食べる草のセルロースは消化できないことを経験的に、知っていたと考えられる。
特に、イノシシや熊などの雑食性の動物の食べ物は、試してみたと考えられるほど、彼らが好んで食べるもののほとんどを、人類は、火や石器や道具を使って、食べ物としている。
ここで、人類の食べ物の全体像を見てみよう。
食べ物 ――― 植物界
┃― 動物界
┃― 菌界 麹、乳酸菌、酵母菌、納豆菌
┃― 天然塩、岩塩 に大きく分類される。
天然塩や岩塩は、鉱物のようにみえるが、生物は海で誕生したため、海水から、水分を除いたものと考えられ、水を飲むことによって、海水の成分となります。
植物界 ――― 穀物 (イネ科) 米、小麦、とうもろこし、大麦、サトウキビ、モロコシ
┃― 豆類 大豆、ヒヨコ豆、インゲン豆、エンドウ、落花生
┃― イモ類 ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、サトイモ、長芋
┃― 野菜 果菜類、茎菜類、葉菜類、根菜類、
┃― 海藻 コブ、ワカメ、ノリ
┃― キノコ エノキ、ぶなしめじ、しいたけ、マイタケ
┃― 果実 仁果類、核果類、穀果類、柑橘類、常緑性果樹、熱帯果樹、その他落葉性果樹
動物界 ――― 牛、豚、羊、鶏、牛乳、卵
┃― 魚、甲殻類、軟体動物
┃― カキ、ホタテ、シジミ、アサリ、ホッキ
┃― 蜂蜜、蜂の子、イナゴ
このように、人は、粟や黍から、マンモス、鯨まで食べ物としてきた。 (第3回)