チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

食べるということ

2016-05-17 15:17:39 | 選択

  多元的全体食のすすめ(四)        食べ物研究家 五十嵐玲二談

 4. 食べるということ

 食べるということには、大きく次の二つのためです。一つ目は、私たちが筋肉を動かしたり、心臓、腸を働かせるためのエネルギーとしての食物です。

 二つ目は、成長と代謝のための食べ物です。成長期には、勿論、成長するための体のすべての部分を構成し、それらを働かせるための栄養が必要です。

 しかし、成人になって成長が止まった状態でも、身体を正常に維持してゆくには、つねに古い細胞を新しい細胞で、入れ替えてゆく必要があります。これが代謝です。この代謝の周期は、年齢にもよるとおもいますが、二~三年で体のすべてが入れ替わると言われています。

 ここで、植物と動物について、見てみます。今から20億年前ころ、原始真核生物が光合成菌(葉緑体)を取り込んだものが、植物として進化し、酸素利用菌(ミトコンドリア)を取り込んだものが動物として進化ました。

 葉緑体は植物の体内で、独立した遺伝子を持ち、めしべから種子に伝えられ、おしべの花粉からの影響はありません。ミトコンドリアも独立した遺伝子を持ち、母親から卵子に伝えられ、父親からの精子の影響は受けません。

 葉緑体は、炭酸ガス(CO2)と水(H2O)と太陽光から、でんぷん(C6H10O5)nと酸素(O2)を生成します。このでんぷんをもとにして、植物は成長し、さらにそれらを食べた昆虫や魚や動物をも含めて、動物の食べ物になります。

 動物の体内では、これらの食べ物は、動物の腸から栄養分として吸収され、ミトコンドリアによって、ATP(アデノシン三リン酸、C10H16N5O13P3)を生成します。

 ATPは生体内に広く分布し、燐酸1分子が離れたり、結合したりすることで、エネルギーの放出・貯蔵、あるいは物質の代謝・合成の重要な役目を果たしています。

 すべての真核生物(動物、植物、菌類を含む)が、ATPを利用し、生命体のエネルギー通貨と呼ばれている。特に動物は、このATPを利用して、筋肉を動かし、運動機能を獲得しました。

 葉緑体もミトコンドリアも、高度な機能を担っているため、植物と葉緑体、動物とミトコンドリアは、共生の道を選びました。

 もう一つ人の食べ物にとって、重要な共生関係は、マメ科の植物です。マメ科の植物は、根粒菌に糖分を与え、根粒菌は、マメ科の植物に根から吸収できる亜硝酸を与えます。

 根粒菌は、空気中の窒素をマメ科植物からの糖分を燃料として、複雑な反応を経て、亜硝酸を生成します。マメ科植物は亜硝酸から、タンパク質の豊富な豆を実らせます。

 この根粒菌はなぜかマメ科植物にのみに、寄生し共生します。このため豆には、タンパク質が豊富であり、米や麦と豆をいっしょに食べると栄養のバランスが良くなります。

 このような生命体の高度な仕組みを維持するには、ミネラル、ビタミン、微量元素も重要な役割を果たします。このために、植物の種子や生長点には、これらの栄養素が豊富で、特に米や麦の胚の部分は大切です。 (第4回)