チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

概念アラカルト(その9)

2016-08-02 14:42:50 | 教育

 概念アラカルト(その9)


 25. 共生関係 (symbiosis)

 異種の生物が行動的・生理的な結びつきをもち、一所に生活している状態。ヤドカリとイソギンチャク、マメ科植物と根粒菌、地衣類を構成する菌類と藻類など。(広辞苑より)


 ここでは、私たちに最も関係の深い共生関係について考察します。

 1) 真核生物と共生したミトコンドリアと葉緑体

 ミトコンドリア「共生説」は、ラン藻類が登場してから酸素濃度が上昇を続け、酸素からエネルギーを生産できる好気性細菌が誕生した。

 一方、酸素のほとんどない大気に適応し、有機物をエサにしてきた嫌気性細菌は、この好気性細菌を取り込み、そのATPを利用して、酸素濃度の上昇に適用しようとした。(20億年前のことです)

 これがミトコンドリアであり、動物界の生命体にエネルギーを供給してます。

 マーギュリス(margulis)説によると、真核生物の中にミトコンドリアを取り込んだものが動物に、葉緑体を取り込んだものが植物になった。

 このミトコンドリアのプロトン駆動が、糖類のエネルギーを酸素によって、ATPをつくることによって、私たち動物界の生命体は、生体のエネルギー通貨として、利用可能なのです。

 植物は、葉緑体によって根から水分を大気中から炭酸ガスを取り込んで、太陽光のエネルギーを利用して、糖分を合成して、空気中に酸素を放出します。

 葉緑体によって合成された糖分をすべての動物と植物は、このエネルギーにより、生体の活動を行っている。ミトコンドリアも、葉緑体も、それぞれのDNAを持っている。


 2) マメ科植物と根粒菌

 多くの樹木は菌糸が根の中に入る内生菌根をもつが、熱帯雨林で優占するフタバガキ科、マメ科ジャケンイバラ亜科などでは、外生根菌をもつ樹木がある。

 外生根菌は、菌糸を根から、外の土壌中にマット状に拡げて、より広い範囲の栄養塩を吸収する。

 植物は、根から菌に光合成産物である糖を与え、菌は植物に窒素とリンを与えている。樹林の種と外生菌根菌の種の間には、ある程度特定の関係があって、ある植物には決まった菌が共生するらしい。


 3) 被子植物の昆虫に受粉

 被子植物の成功の秘密を一言でいえば、花粉の媒介を風などの物理的手段から、昆虫などの動物の送粉に切り換えたことである。

 自ら移動することのできない植物は、花粉の受け渡しを、昆虫や鳥、コウモリなどの飛翔能力のある動物に頼り、鮮やかな色や香りで動物を誘い寄せる。花粉を運ぶ動物、すなわち送粉者は、花粉や花蜜を報酬として得る。

 このような相利共生的な関係は長い進化の過程によって、生じたものであり、美しく精妙な花の機構と花に適合した送粉者の行動は、自然界に於ける適応のみごとな実例である。


 4) キーストーン(頂点捕食者)と生態系のバランス

 ○ ラッコとジャイアントケンプの海中林とウニ

  北太平洋のジャイアントケンプの海中林に於いて、ラッコは何の役にも立ってなさそうに見えるが、ラッコがキーストーンとして、ケンプとウニとラッコ自身のバランスを保っていた。

 ケンプの森のコンブをウニが食べ、そのウニをラッコが食べ、その排出物がケンプの養分となる。このジャイアントケンプの海中林は、多くの魚類や貝類の住処でもあり、ラッコがケンプの海中林の代謝を高め、ジャイアントケンプの海中林を豊かなものにしている。

 ○ コヨーテとチャパラル固有の鳥

  林にいるチャパラル固有の鳥の種の数は、林が狭くなるにつれて減っていった。しかし、コヨーテが生息する林の方が多くの種類のチャパラルの鳥を保っていた。

 コヨーテは渓谷に於ける小型捕食者(ネコを含む)の数調整に役立っており、おそらくチャパラル固有の鳥類相の維持にも貢献している。


 26. マインドフルネス (mindfulness)

  mindful : 心を配って、mindfulness : 名詞

 「あなたの「天才」の見つけ方」 エレン・ランガ—著(加藤諦三訳)によると、mindfulness 〔マインドフルネス〕とは、「いろいろな視点からものごとを捉えることができることであり、新しい情報に心が開かれている状態」である。

 活動の種類を問わず、マインドフルな活動には三つの特徴がある。すなわち、世界を認識し分類する新しいカテゴリーを常に作り出し、新しい情報に対して開かれた心を持ちつづけ、ものの見方はただ一つとは限らないことをそれとなく意識しているのだ。

 これに対して、mindlessness 〔マインドレスネス〕とは、「物事への注意を欠き、さらに柔軟性を欠き、応用力のない心の状態」をさします。


 概念アラカルトは、これを持って終りといたします。私もよく解かってない中お付き合いくださり、ありがとうございました。これらの言葉は、ある意味エンドレスで、分かれば解かるほど、ある意味泥沼にはまるように疑問が湧いてくるような気がします。

 では、最後に26の目次を再掲いたします。

 (1) セレンディピティ― (serendipity)

 (2) エントロピー (entropy)

 (3) サステイナビリティ (sustainability)

 (4) カテゴリー (categoly)

 (5) コンセプト (concept)

 (6) エコロジー (ecology)

 (7) ジレンマ (dilemma)

 (8) ストラクチャー (structure)

 (9) レスポンシビリティ (responsibility)

 (10) 微分 (differrential)

 (11) 積分 (integral)

 (12) 文化 (culuture)

 (13) 文明 (civilization)

 (14) 偽薬 (placebo)

 (15) ポテンシャル (potential)

 (16) 選択 (choice)

 (17) 資本主義 (capitalism)

 (18) 進化論 (the theory of evolution) 進化論を説明する前に

 (19) 進化論 (the theory of evolution) (たぬきの冬より)

 (20) 指数と対数 (exponet and logarithm)

 (21) 指数と対数 (音階と弦の長さと振動数 チェロの場合)

 (22) 遺伝子 (gene)

 (23) エネルギー (energy)

 (24) プレートテクトニクス (plate tectonics)

 (25) 共生関係 (symbiosis)

 (26) マインドフルネス (maindfulness)

 以上です。 (第9回)