116. 英語のうまくなる人、ならない人 (田村明子著 平成20年10月)
英語の劣等生の私がまた英語に関する本を紹介する、お前に紹介されたくないと思われることでしょう。本書は、「英語のうまくなる人、ならない人」とありますが、ここで言う英語とは、「英語での日常的会話」を意味してます。
本書は、著者が米国で接した日本人を30年に渡って観察して、得られた結論を、うまくならない人の条件を7つ、うまくなる人の条件を7つにまとめたものです。(もちろん他にも書かれていますが)
私が、本書をここで取り上げましたのは、「▢▢のうまくなる人、ならない人」の▢▢の部分に、「スポーツ」でも、「スピーチ」でも、「文章」でも、無論他の外国語(ロシア語)でも、すべての勉強にさらには、「人間として向上する人、しない人」でも、通じると感じたからです。
以前に紹介しました、「理三合格への道」(41.)の中にも、伸びる生徒ほど、「すぐに調べる」 「疑問を翌日に持ち越さない」 「手元を見ずにメモしていく」 などの特徴があると書かれています。
不明なこと、頭の中に浮かんだ疑問符の卵を見逃すことなく、辞書(電子)をひく、そして、進歩は辞書をひいた回数に比例すると書かれています。
本書に書かれていることは、あたりまえのことを言っていると感じると思われますが、実際にこれらのことを実践することは、かなり難しく、1~2割の人しかできていないと思われます。
もちろん私も出来ていない一人ですが、でも、心掛けと訓練と継続によって、だれにでも、うまくなる道は開けると考えます。では本書をいっしょに読んでいきましょう。
なお、著者は、本ブログでとり上げました「なんで英語やるの?」(24.)の著者(中津燎子)に子供の頃、一年ほど教えを受けたと書かれてました。
『 英語がうまくなる人、ならない人とは、ちょっと漠然とした言い方かなと思います。一口にうまい英語といても、国連の同時通訳のブースに入るトップクラスのプロフェッショナルレベルから、一人でも海外旅行中の買い物に不自由しない程度まで、「うまい」の基準はさまざまです。
一体、どこまでいけば「うまい英語」なのか。この本の中で何を指して、英語が「うまくなった」としているのか、まずそのことを少し説明したいと思います。
英語を自由に使いこなせるようになったら、いいなあと思っている人は大勢います。でもすべての人が、プロの通訳並みの英語力が必要なわけではありません。
誰もが公式の場で英語を駆使してスピーチをしなくてはならないわけではありませんし、国際会議に出席しなくてはならないわけではありません。人によって、「このくらいのレベルができたらいいな」という目標レベルはさまざまです。
この本の中で私が語る、「英語がうまくなる人」とは、本人が与えられた環境の中で、少しずつでもレベルアップし続けているかどうかを基準にしています。
自分に許された機会をうまく利用して、英語力をつねに磨いているかどうか。たとえば手持ちの少ない単語をうまく使い分けてそれなりに用足しをしている観光客は、ほんの片言の英語でも、私から見ると「うまくなる人」です。
逆に一般の日本人から見ると「ペラペラ」に見える人でも、何年も米国で暮らしているのにブロークンな英語をちょっとも直そうとしない人は、「うまくならない人」です。
今あなたがいるところよりも、少しでも先に進みたい。ほんの少しでも、今より英語がうまくなりたい。そういう意志のある人こそが、英語のうまくなる人です。
でも意志があるのに、いくら勉強してもあまり効果がない気がする。どうすれば英語がうまくなるの?——私が米国で暮らすようになってこの30年、これまでに何度そう聞かれたことか覚えていません。
本書をまとめたのは、そういう人たちに向けて自分にできるアドバイスをあげたいと願ったからでした。残念ながら、努力もせずに英語を覚える魔法はこの世にありません。
何もしていないのに気がついたら英語が話せるようになっていた、という方法を教えられたらどれほどいいだろうと思います。でも私の知る限り、寝ているあいだに英語を覚えたという人は一人もいません。
好きなものを好きなだけ食べるだけで痩せるダイエット、寝ている間に余分な脂肪がとれるという健康器具、なんて世の中には心惹かれる広告があちこちに転がっています。
白状すれば、私もそういううまい話にはかなり弱いほうで、ずいぶんとお金と時間を無駄にしました。でも、本当は目的に向かっていくプロセスにこそ面白さがあるのではないだろうか、と近頃は思うのです。
英語も実は、到達したところよりも、そこを目指して少しずつ上達していくプロセスに楽しさがあるのではないでしょうか。 』
『 英語がうまくならない人 7つの特徴
1) 日本語がきちんとしてない人
私が米国で知り合った、千人以上の日本人を観察していると、日本語が退化するのが早い人ほど、英語力の上達の頭打ちが早いという法則があるようです。。
普段の会話で、耳障りなまでにカタカナが混じる人は、言語能力があまり高くない人。あるいは言葉というものに対するこだわりの薄い人です。
「英語を子供に教えるな」の著者市川力氏によると、人は母国語の能力以上の外国語を身につけることはできないそうです。母国語での表現が貧しい人は、外国語もうまくなりません。
きれいな英語を身につけたかったら、まずきれいな日本語を話してください。そして脳の中の、言語の引き出しをきれいに整頓しておくのです。
2) 依存心が極端に強い人
次の3つの条件がいくつあなたに当てはまるか考えてください。
① 海外旅行は、いつも団体旅行。そうでなければ同行する友人に企画を任せる。
② 授業や会議でわからないことがあっても、つい質問しそびれる。
③ 新しい習い事を始めるなら、誰か友達が一緒じゃないといや。
3つとも、「はい」と答えた方。残念ですが、今のままではあなたは英語がうまくなりません。「どうやったら英語がうまくなるんですか」と聞きに来る人で、もっとも対処が難しいのが、この「依存心の強いタイプ」です。
「どこが面白いですか?」 「ニューヨークって、なにが流行っているんですか?」 このように、相手にすべてを投げてよこすような質問をする人は、残念ながらあまり有望株ではありません。
ニューヨークは、つかみどころのない大都市です。探せばたいがいのものは何でもあると言われているほど、懐が深い街。
その中で自分は何が好きなのか、どのようなものが面白いと思うのか、それがわからなくてはアドバイスのしようもないではありませんか。
美術鑑賞が好きなのか、アウトドアが好きなのか。オペラを見たいのか、ブロードウェイミュージカルがいいのか。限られた時間の中で、何を優先させたいのか。
「ブロードウェイミュージカルで今人気の作品は、何ですか」 「メトロポリタンと近代美術館では、どちらがお奨めでしょうか」 「ニューヨークで、これは食べておいたほうが良いというものはありますか?」
このような聞き方をしてくる人は、有望株です。自分でやってみたいことがはっきりしているという意志が感じられます。英語がうまくなりたければ、まず自分の頭で考える習慣をつけること。目的意識のしっかりとした大人になってください。
3) 人の話を聞かない人
人の話を聞かない人は、英語の上達が遅い人。これは自信をもって断言できます。5年も10年もアメリカに住んでいるのに、まともな英語を話せない人の大半は、相手の話を真面目に聞いていないタイプと思って間違いありません。
真摯に耳を傾けて、相手から学ぼうという姿勢がないのでしょう。相手の話を聞かない人は、自分の話が通じた、ということばかり重視します。
子供でも、大人の話をよく聞いている子供ほど、語彙が豊富な人間に育ちます。日本語でも相手の話を聞かない人が、英語になったとたんに「真摯に耳を傾ける」人にはなりません。
あなたも普段から、子供のように初心にかえって相手の言葉に耳を傾ける習慣をつけてください。
4) 好奇心の薄い人
どこかで見慣れない単語が目についたら、家に帰って辞書を引いてみる。これは英語で何と言うのかと思ったら、すぐに調べてみる。
そんな知的好奇心のアンテナを張っておかなくては、語学というものは身につきません。 「この前教えていただいた本、読んでみました」 「お奨めのレストランに行ってきました」
こういう報告をてきぱきとしてくれる人は、好奇心旺盛な人です。そしてこういう人は必ず、英語もみるみるうちに上達していきます。
5) 失敗することを怖がる人
ニューヨークに遊びに来た日本人を案内すると、店員さんなどに英語で話しかけられても無視してしまう人がとても多いことに驚きます。お店に入ると、店員さんが近寄ってきます。
Hi, how are you? How can I help you?
こう話しかけられても、まるで相手など空気のように無視。日本では店員さんに「いらしゃいませ」と言われても、特に返事を求められることはありません。でもこれは日本特有のことです。
少なくとも英語圏の国々では、相手が店員さんでもウェイターでも、あいさつされたらあいさつをかえすのが礼儀です。
わからないから面倒くさい。自信のない英語でうっかり下手なことを口にして、恥をかくのが怖い。そんな人は、残念ながら英語がうまくなりません。
私が高校から留学を決意したとき、交換留学の体験がある先輩がこういうアドバイスをくれました。「相手の英語がわからなくても、黙っていないで、I'm sorry, but I don't understand. というように、何か答えたほうがいいですよ」
30年以上も前の話ですが、彼女のアドバイスは忘れません。恥をかきたくないから、無言ですませてしまう。それではいつまでも進歩はありません。
I'm sorry, but I don't understand. でも、立派な答えです。間違うことを恐れないで、口にしてみましょう。
6) 言葉に頼ろうとしない人
誤解をまねくことを承知で、あえて言いましょう。特殊な技術を持ってそれにばっかり頼っている人は、英語の上達がおそくなりがちです。
美容師さん、板前さんなどの職人さん、スポーツ選手など、世界中で通用する技術を持っている人たち。英語圏の国で活躍している人でも、こういった特殊技術のある人は、腕前がよければよいほど実は英語がほとんどダメという人が少なくないのです。
7) 完成された文章で話さない人
英語がうまくなりたいのなら、外国人の恋人を作るのが一番早い。そういう話をあなたも一度は耳にしたことがありませんか?でも英語圏出身の恋人、あるいは配偶者を持った人のすべてが、きちんと英語を話せるわけではありません。
そう言ったら、びっくりするでしょうか。」外国人の夫がいる女性は、極端な2タイプに分かれます。配偶者のネイティブスピーカーを上手に利用して、骨太の英語力をがっちりと身につけた人。こんなカップルは、私が知っている中で全体の2割くらいです。
残りの8割は、夫婦の間で英語と日本語が入り混じったちゃんぽん語を話しながら、いつまでたってもブロークンな幼児英語のまま暮らしています。
逆に、相手の日本語がぐんぐんうまくなっていくというケースもあります。こうなると、日本人配偶者側の英語力はさらに伸びません。
でも外国人の配偶者を持つという同じ境遇にありながら、英語がうまくなる人と、ならない人ではどこに違いがあるのか、気になるではありませんか。
「うちの夫は正確な英語にこだわる人で、普段の会話から完成された文で話しをしないと、良く直されました」 ご主人がアメリカ人で、本人は腕のいい通訳である知人はそう言います。
Are you Japanese?
1〕 Yeah.
2〕 Yes, I am.
こんな単純な質問でも、1で答えるのと、2のように短くても完成された文章で答えるにでは、まったく異なります。Yes のかわりに、何でもかんでも Yeah ですませてしまう人は、ボキャブラリーが増えていかない人。それにあまり知的な印象を与えません。
意識して、完成された文章を口にすること。これは英語をうまくなっていくための必須条件の1つです。 』
『 英語がうまくなる人 7つの特徴
1) 聞き上手は、必ず話し上手
どんな人が、英語がうまくなるとおもいますか?
「よくしゃべる人」 「おしゃべりな人」 そう答える人が多いのに、少しびっくりしました。日本式に恥ずかしがっていてはダメ。ちょっと、攻撃的くらいに、がんがんと積極的に話す人こそ英語に向いているのだ。
そう考える人が多いのも、無理はないかもしれません。でも私が30年米国に暮らしながら、日本人の英語を観察してみた結論はその逆でした。よくしゃべる人よりも、よく聞く人のほうが英語はうまくなります。
英会話力をみがきたいと思うのなら、まず相手の話を落ち着いてよく聞いてみてください。集中して聞いていれば語彙も増えるし、そのうちどこでどう合いの手をいれるかという勘をつかむこともできます。
2) 観察力のある人
「四大陸選手権で史上最高点を出したとき、日本では大きく報道されたのですか?」 そう聞かれたフィギュアスケートの高橋選手は私のほうを見ると「思っていたよりは、って何て言えばいいですか?」と聞きました。
「More then he expected.」 私は質問した記者に、直接そう答えました。すると高橋選手は「More then (I) expected って言うんだ……」と、小声で繰り返していました。
通訳を人任せにして聞き流してしまわず、彼のように覚えようという意志を持って真似してみる人は、ぐんぐん英語がうまくなっていく人です。
3) 面倒がらずに辞書をひく人
「どうしてそんな短期間で、日本語が上手になったのですか?」 「毎日わからなかった単語のリストを作って、寝る前に必ず調べたの」 そう言ってトマシーナは、当時使っていた英和辞書を見せてくれたのです。
よれよれになった辞書のページは、彼女の細かい鉛筆の書き込みで、びっしり黒くなるほど埋め尽くされていました。この辞書が、彼女が日本での2年をどのように費やしてきたのかを物語っていました。
短期間に語学がうまくなる人は、必ずまめに辞書をひく習慣を持っています。辞典をひく回数があなたの未来を開きます。なぜなら、辞典をひいて意味をかみ締めるまで、その単語は自分のものにはならないからです。
4) 自分の考えを整理して言葉にできる人
「今年読んだ中でもっとも面白かった本は?」 ためしに、こんな質問をアメリカ人にぶつけてみてください。年齢、性別、社会的地位にかかわりなく、どんな人でも明確に自分の意見を堂々と言葉にまとめます。
英会話能力を磨いていく上で、「自分の考えを整理して、要領よく言葉にする」という能力はとても重要です。日本人が英語を習得するにあたり、実は一番足りないことが、この「考えをまとめてわかりやすい言葉にする」というトレーニングではないか、と私はにらんでいるのです。
普段意識せずに何気なく話している日本語が、きちんと要領よくまとまっている人は意外に少ないものです。要点のはっきりしていない人の日本語は、英訳するのが難しいのです。
最初から要点がはっきりした日本語で話す人は、英語が早くうまくなる人です。でも英語を勉強中の人ならば、わかりやすく明瞭な話し方を心がけるのが近道。そのほうが、日本語から英語への変換作業がらくだからです。
5) 友だちをすぐに作れる人
リチャード・ワイズマンが書いた「The Luck Factor」 (邦題「運のいい人、悪い人」)という本によると、運とは人の流れが運んでくる。だからすぐに友だちができる人は、いい運にめぐり合う確率も高くなるそうです。
英語がうまくなる人も、運のいい人と似たところがあるとおもいます。初対面の相手でも人の輪の中にすんなりと溶け込める人ほど、英会話能力の進歩は早いと思って間違いありません。
6) 英語を使って伝えたいことがある人
英会話を学んで、誰と、何を話したいのか? あなたがきちんとした英語でコミュニケーションすることを目指しているのなら、私のアドバイスはこうです。
英語以外の趣味を充実させてください。そのことが、必ず英語の習得の助けになります。留学したてでまださっぱり授業についていけなかったころ、幾何学のテストで一人だけ満点をとり、とたんにクラスメートたちの態度が変わったことは忘れられません。
学校のピアノを放課後に弾かせてもらっているうちに、いつの間にやら合唱の伴奏役がまわってくることになりました。
こんなきっかけから生まれた人間関係が、私の英語の上達をどれほど助けてくれたことでしょう。英語で伝えたいこと、語り合いたいことがある。その目的意識こそが、あなたの英語の実力を上げていくのです。
7) 暗記の得意な人
英文を読むと、いちいち文法的に分析できないと気がすまない、頭に入らないという人がたまにいます。でも私の事体験から言いますと、理詰めではなく、するりとそのまま暗記してしまう人のほうが早く英会話がうまくなります。
Have you been to Japan? たとえばこういう一文を丸暗記して頭のなかに組み込み、言葉を入れ換えて応用してみます。
Have you met my sister?
Have you heard this morning's news?
こうやって、言葉を入れ換えて使いこなせる文章を増やしていくのです。こんな簡単な文章なら暗記するまでもない、と思っていますか?
でも私が観察する限り、このレベルの会話でもスラスラとこなせる日本人はあまり多くありません。単語力や文法の習得が必ずしも、実践的な英会話力につながるわけではないのです。
大切なのは、文章単位で暗記すること。応用のきく基礎的な日常会話の文章を歌を覚えるような気持で、暗記していってください。必ず役立ちます。この私がその生きた見本です。 』 (第115回)