チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

ブックハンター「パラレルキャリア」

2016-08-12 14:17:21 | 独学

 115. パラレルキャリア 〔新しい働き方を考えるヒント100〕   (ナカムラクニオ著 平成28年6月発行)


 『 いまから7年ほど前、突然、会社を辞めてブックカフェをはじめました。インターネットで「荻窪のカフェ店舗を居抜きで借りたい人募集」という話題を見つけたのがきっかけでした。

 その瞬間に、これだ!とひらめき、すぐに電車に乗ってお店に行きました。閉店間際のカフェのカウンターの座ってみると……なんとも言えない独特な雰囲気のお店でした。

 その場で僕は「この店を借りたいんですけど」と、お願いしました。しかし、その時はまだ会社員。辞める予定もなく、仕事も順調。それでも、直感的に天職のような気がして借りることに決めました。

 もちろん問題も山積みでした。資金、礼金、内装などで少なくとも500万ほど必要です。貯金もありません。どうしよう……。

 そんな時に、お金を借りるために金融公庫に提出したプランが、魔法のようなビジネス計画「パラレルキャリアプロジェクト」だったのです。

 小さなスペースにカフェで集客、さらに古本を販売。ギャラリーでもスペースを貸して作品を販売すれば、相乗効果で収入が倍増するという計画書でした。

 すると一週間後、「わかりました。免許さえ取れれば、融資します。資格をとって下さい」。僕は、すぐに免許を取得し、無事にお金を借りることができました。

 パラレルキャリアカフェ 「古本×カフェ×ギャラリー=6次元」が誕生したのです。ひとつの能力や特徴を生かすより、「自分だけができる組み合わせ」を見つけるとなぜか立派なオリジナルになるのです。

 深く考えすぎず、思いつきで自分を変化させるような軽い変革を、ライトなイノベーション(light + innovation)という意味で、「ラノベーション」と僕は呼んでいます。

 パラレルキャリアには、とても重要な考え方のひとつです。 』


 『 ある日、とても重要なことに気がつきました。6次元で連日のように開催していた「働き系イベント」を続けた結果、仕事にはいくつかの種類があるという発見をしたのです。大きく分けて、3つに分類することができます。

 1. ライスワーク (食べるための仕事) 例 : 僕にとっての映像の仕事

 2. ライフワーク (人生をかけた仕事) 例 : ブックカフェの仕事

 3. ライクワーク (趣味を活かした仕事) 例 : 器を修復する仕事

 大事なのは、この3つのバランスです。例えば、明治の女性作家、樋口一葉は21歳の時「うもれ木」で文壇デビュー。

 しかし、生計を立てるために家庭用の雑貨を売る「荒物屋」をライスワークとしてオープンし、慣れない仕事をしながらライフワーク+ライクワークである小説を書き続けました。

 また村上春樹さんは25歳の時、国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を開店。その傍ら、毎晩キッチンで小説を書き続けました。その経験もあって「風の歌を聴け」で群像新人賞を受賞しデビュー。

 2作目の「1973年のピンボール」までは、二足のわらじ生活。ライスワークのジャズ喫茶、ライフワークの小説、ライクワークの音楽。この3つがバランスよく混ざりあって成功したのです。

 人生は、ライスワーク(食べるための仕事)、ライフワーク(人生をかけた仕事)、ライクワーク(趣味を活かした仕事)、この3つのワークバランスを整えることが大切なのです。 』


 『 ブックコーディネーターやブックディレクター。このような新しい仕事は、10年前にはなかった言葉。

 しかし、今は普通に使われています。 これは、まさに造語思考。言葉があるから生まれる仕事もある。

 日本語は、そもそも「造語文化」の言語。日本という国の「スクラップカルチャー」の中で発達した文化のひとつです。

 なぜ「コミュニティデザイナー」「ホワイットハッカー」などメディアの造語は、ムーブメントとして広まるのでしょうか。

 「語幹が楽しく話してみたいと思える言葉が噂になる」という話を聞いたことがあります。人は新しい言葉を使ってみたくなる生き物なのです。

 ビジネスは新しい造語を作ったもん勝ち。 ネーミングが、商品を大きなコミュニティに変えるのです。

 これからは大きな「ビジネス」よりも「小商い」の時代です。身の丈にあった小さな商いを自分ではじめる。そんな生き方が注目されています。

 会社員だけど週末には自分の興味や特技を活かして仕事をつくりたい。フリーランスだけど受け身の仕事が中心なので、新しいサービスをつくりたい。

 ボランティア的な活動や文化芸術活動を助成金などに頼らず継続させる方法を考えたい、など初期投資やリスクが少ない形での、新しい「小商い」を考える時代になりました。

 そんな時は、まず言葉をつくって自分を動かす。そして、世間を動かす。小さなヒントから大きなアイデアの種を見つけるといいと思います。 』


 『 言葉は感情の引き金になるから気をつけなければいけません。感情を設計するのも、実はすべて言葉です。そして、文字は言葉という得体の知れない生き物に憑依(ひょうい)した魔物なのです。

 あまり人に話していない、僕の人生で一番不思議な体験があります。7年前、台湾に行った時に占い師に言われたことが、実はすべてそのまま当たって実現化しているのです。

 あなたは「もうひとつの名前を持ちなさい」と。そして、「中村邦夫とは別の名前で活動しなさい」と言われました。そこで考えたのがカタカナの「ナカムラクニオ」。

 すると驚いたことに、急に仕事が増えだしたのです。もうひとつの名前を持ち、キャラクターを設定するのは、とても大事なことだと思います。

 ことばエネルギーというものが確かに存在します。ネーミングで新しい世界をつくる。もうひとつの名前を持って自分の中に冷静な他人を取り込む。これは、パラレルキャリアの大切な裏技です。 』


 『 人間の脳が持っている「一定の刺激に7年で飽きる」という現象が、様々な社会現象やトレンドを生み出しているということを、ご存知でしょうか?

 人は、新しいものを好む「ネオフィリア」(neophilia)という性質を持っています。実は、地球上で人間だけが進化し繁栄したのは、人間が「ネオフィリア」だからなのです。

 人はチャレンジを好む。進んで新しいもの、違うものを求めます。無理をしたり、背伸びをするのが好き。刺激を求め、あえてわが身を危険にさらす生き物なのです。

 「ネオフィリア—新しいもの好きの生態学」の中で著者のライアル・ワトソン博士は 「新しもの好き(ネオフィリア)」 は 「新しいもの嫌い(ネオフォビア)(neophobia)」よりも、変化する環境を生き延びるのに有利だと書いています。

 neo : 新しい、philia : …の病的愛好、phobia : 恐怖症

 たとえばアリクイは、アリを探して食べるのに抜群の才能を発揮します。どの動物よりも、体の構造な行動が「アリを食べる」という行為に向いているのです。

 しかし、もしアリがいなくなったらどうなるでしょうか?アリクイは即、絶滅。つまり、人間は雑食化することで、リスク回避をしている生き物だと言えます。

 ワトソン博士によると、「新しもの好き」という性質によって、人類は変化する環境を生き延びてきた、ということになります。

 結局、人類は「足るを知る」ことができない生き物なのです。どんな仕事にも飽きてしまいます。だからこそパラレルキャリアで新しい刺激を脳に与え、さらなる進化を遂げることが必要なのです。 』


 『 あなたの弱点は何でしょうか? パナソニックの創業者松下幸之助さんは、自分が事業成功した理由を聞かれると「学歴がなくて、体が弱くて、貧乏だったから」と、言っていたそうです。

 ○ 学歴がないから、人の意見に耳を傾けられた。

 ○ 体が弱かったから、人に任せることができた。

 ○ 貧乏だったから、一生懸命がんばれた。  と考えていたのです。実は、弱みこそが才能なのです。

 「最強の弱点」を活かすと仕事がうまくいくのです。例えば、僕の場合、

 ○ 本の片付けが苦手 → 本を売るのではなく、体験を売ることにした。

 ○ 飽きっぽすぎる → いろいろなイベントを日替りで企画した。

 ○ 一カ所に長い間いられない → 地方の町おこし活動を始めた。

 つまり、弱点が逆におもしろがられて、いろいろな活動を続けられる。そして、結果的に、弱みが強みに変化していくのです。

 いまは、「共感」より「共鳴」の時代、「競争」より「共創」の大切さを知るべきです。誰もが「何かの達人」、どんな情報も必ず誰かの役に立ちます。弱点を克服しないで最大限に活かす。これは働く上で、大きな強みになると思います。 』


 『 自分にとって良いものを「ストック(貯蓄)」することを、僕は勝手に「グッドストック(Goodstock)と呼んでいます。

 お金を稼ぐだけでなく、「良いスキル」や「良い人脈」を広げ、「良い世界」が体験できる仕事のチャンスが欲しい。そんな時は、どれだけグッドストックが貯まっているかが重要です。

 1)  働くのに「ちょうど良い心の余裕」がある。

 2)  経済的にも「ちょうど良いお金」がある。

 3)  空間的に「ちょうど良い隙間」がある。

 4)  人間関係に「ちょうど良い人材」がいる。

 5)  すぐに対応できる「ちょうど良いアイデア」がある。   

 こうやって、ちょっとずつ「良い」をストックしていきましょう。よく「チャンスは貯金できない」と言われます。でも、グッドストックはチャンスを勝手に引き寄せてくれます。

 いつチャンスが来ても慌てないように普段から自分の「良い」を貯蓄して、チャンスを活かせる空間を作っておけばいいのです。 』


 『 アイデアやひらめきというものは、いったいどのような状況で生れるものなのでしょうか?中国・北宋時代の武将は「三上」という言葉で表しました。

 1)  馬上(馬に乗っている時)

 2)  枕上(布団に横になっている時)

 3)  厠上(トイレにいる時)

 ヨーロッパでは、3Bと言います。

 1)  Bar(バー)

 2)  Bed(ベッド)

 3)  Bath(お風呂)

 古今東西、みんなほぼ同じなのが面白いところ。

 僕がよく使う裏技は「瞑想→妄想→空想→仮想→予想→構想→理想」この順番で考えて、瞑想をだんだん理想に近づけるのがオススメです。

 「妄想」こそが、ありとあらゆるクリエイティブの源。機械やコンピュターにはできない技術です。人間がよりクリエイティブで生産性も高くいられるようにするには、脳に休息を与えることが必要。

 あえてボーッと考えることで、「妄想力」を鍛えて「創造力」に変えていけばいいのです。知識は有限ですが、妄想はいつだって無限なのです。 』


 『 映像で「見どころを紹介してみせるときカットは3つ」と言われています。この「3」という数字は昔から「Rule of Three(3の法則)」と呼ばれ、魔法の伝わる数字なのです。

 「決める時」「伝える時」「話す時」僕は働くとき何かにつけてこれを意識しています。

 「3 is a magic number」(3は魔法の数字)と昔の歌にあるように、「3」は記憶するにもちょうど良く、4つ以上になると覚えられずに混乱しやすいけど、2つだとものたりない……。つまり、もっとも伝わる数字、それが「3」なのです。

 「3は魔法の数字。  どこか古代の神秘的な神の国で、3という魔法の数字はできた。  過去、現在、未来。  信仰、希望、慈しみ。  ハート、頭、体。  君に3という魔法の数を与える……」

 実に奥が深い事実です。有名なコピーも 「くう ねる あそぶ」 とか 「早い 美味い 安い」 とか、3つの反復で構成されているものが多いです。 』


 『 ある日、イギリスの友人が大事なことを教えてくれました。計画には、ある一定の法則があって、これだけでいいという「魔法のTO DOリスト分類」が存在するというのです。それがこちら。

 1) always (いつもやること)

 2) hourly (毎時やること)

 3) daily (毎日やること)

 4) weekly (毎週やること)

 5) monthly (毎月やること)

 6) yearly (毎年やること)

 7) life (一生かけてやること)

 8) never (決してやらないこと)

 この項目に合わせ、やることを整理すれば、ほとんど人生でやるべきことがはっきりわかるというのです。 』 (第114回)