横浜美術館で開催中の「石内 都〜肌理と写真」。
「横浜」と題された最初のコーナーでは、1970年代後半の弘明寺、真砂町、黄金町、福富町、野毛といった馴染みのある街の、まだ暗い闇や陰のある時代を映したもの。あるいは、長時間露光による金沢八景周辺の空や16号線の風景。。。街の"肌理”は、陰があった時代の記録だ。
モノクロの写真の数々は、どこかシュールで、物悲しい。
1980年代まで残っていた山下町の『互楽荘』というアパート(当時は外国人が住んでいたりした、噴水のある中庭のある当時はモダンな建物)のうち捨てられた階段や壁や窓を撮影した一連の写真。。。
廃墟となったアパートの壁やドアや窓から剥がれた”皮”・・捻れ、捲れ上がり、縮れた表皮、割れたままのガラス窓等々に視線が集中する。
時間が過ぎることの残酷さと、同時に、去りゆくものへのいとおしさと美しさが伝わってくる。
あるいは、舞踊家・大野一雄の身体を写した作品は、全身に表れる老いのシワ・・細かい、幾筋もヒダを重ねるような、砂浜に波が作ったような、風紋のようなシワは、年月が身体に刻み込んだ年輪だ。一瞬、イッセイミヤケのプリーズプリーツを思い浮かべてしまいました。。
あるいはまた、”無垢”と題された傷跡シリーズでは、火傷や事故などで身体に残る傷跡や、左右の長さが極端に違う脚。。。
”絹”や”遺されたもの”などカラー作品のシリーズも力があるが、”肌理”という言葉その通りの、モノクロ写真のザラザラとした画像は、観ているこちらの皮膚感覚にストレートに入ってくる。
時代の記録、風景(風や匂いや光)の記憶である写真・・・ほとんど年代が同じ彼女の軌跡を思いながら、自分自身のそれを重ね合わせて、感慨深いものがありました。
同時開催中の「全部見せます!シュールな作品」と銘打った横浜美術館コレクション展も、テーマごとに括ってあってとても見やすく面白かった!
横浜美術館 http://yokohama.art.museum