NHkにはいろんなクラシック番組があるがその中でも楽しみにしているのが年間を通じて開催されている「NHK音楽祭」。
そのうち、”魅惑のヴァイオリン、魂のコンチェルト”と銘打ち4人の将来性豊かな若手ヴァイオリニストたちだけを収録した特集番組が次のとおりあった。
期 日 2008年12月31日(水)
時 間 8時~11時
チャンネル NHKBSハイー103
出 演 者 1 庄司 沙矢香
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
2 サラ・チャン
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲一番
3 ジュリアン・ラクリン
ブラームス ヴァイオリン協奏曲
4 諏訪内 晶子
シベリウス ヴァイオリン協奏曲
1 2 3 4
大晦日の午前中の3時間、1年間の締めくくりにふさわしく4名のヴァイオリンの競演をみっちりと聴かせてもらった。
こうして一挙に聴き比べができるのもよかったが、同時に二つのヴァイオリンの比較、つまり「ストラディヴァリウス」の奏者が庄司さんと諏訪内さんといずれも日本人、そして「ガルネリ」の奏者がサラ・チャンとジュリアン・ラクリンという外国人との音色の比較にも興味が持てた。
自分ごときの素人が4人の演奏についてとやかく批評できる資格もないしその立場にもないが、そこはブログの世界、お許しを頂いてひとつ率直に感想を記してみる。
☆ 庄司 沙耶香
ずっと以前のブログでも取り上げたがベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」を聴いたときと同じ印象だった。残念なことにどうも演奏の中にのめり込めないというかじっくりと腰をすえて集中して聴く気になれないのはどうしてだろう。
自分だけかもしれないが、たとえて言えば演奏中にもかかわらずつい手近にある本を取って読みながら聴きたくなる演奏といえばいい過ぎかなあ~。まだまだ全体的に庄司さんならではの個性が鮮明に出されるに至っていないのが残念。
☆ サラ・チャン
初めて聴くヴァイオリニストだったが思わぬ収穫。本人の演奏前のコメントに「歌うように演奏したい」とあったがまさに”歌っている”というのがピッタリくる演奏。ピアニストのグレン・グールド(故人)が小さい頃に音楽家の母親から「歌うように演奏しなさい」と特訓を受けた話を思わず想い出した。やっぱり「音楽は歌心がないと」と思う。
番組解説者の諸石氏も「存在感が豊かで圧倒的。オペラ歌手、プリマドンナの芸術ともいうべきで、演奏全体が骨太で輝かしく太陽を背負って演奏している」と外交辞令もあるのだろうが感想を述べていた。
とにかく、小さなミスなんかにこだわらずにおおらかに乗り越えていく印象で演奏全体に躍動感があふれており非常に豊かな将来性を感じさせた。
☆ ジュリアン・ラクリン
この4人の中では唯一の男性で番組の解説によると国際的にも最も著名な印象を受けたが、実演の方は期待したほどではなかった。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲は大好きでジネット・ヌヴーをはじめオイストラフなど名ヴァイオリニストたちの演奏を随分と聴きこんできたが、この曲の演奏には自分なりの”こだわり”というか判定基準を持っている。
それは第一楽章の序奏で哀愁を感じさせるオーボエの旋律のもとオーケストラの全合奏が勢いを高めてゆき、満を持して独奏ヴァイオリンが情熱的に登場してから約5分間ほどの箇所。
自分は、ここでいつも魂が震え、こみ上げてくるものを感じて思わず目頭が熱くなってしまう。これまでで、もっとも涙の量が多かったのはもちろんヌヴーの演奏、そして、もし目頭が熱くならないときはその演奏は自分の感性に合わないということですぐさま廃棄処分の運命にある。これは、どんな大ヴァイオリニストにも適用していて例外はない。
そういう意味ではこのラクリンの演奏にはちっとも感銘を受けず、涙の”な”の字も出てこなかった。これからも自分にはまったく縁のないヴァイオリニストになりそう。
☆ 諏訪内 晶子
12月中旬の「NHK音楽祭」での演奏の焼き直しで、もう既に昨年末のブログで取り上げたところ。そのときの好感度とこうやって4人同時に聴き比べた場合とでは今回の方がややマイナスの印象。とにかく手放しで絶賛というには何がしかの抵抗感を覚える。
何と言ったらいいのか自分の乏しい表現力にイヤ気がさすが、あえて表現すると演奏が生真面目すぎて融通がきかない感じ・・・。何だか庄司さんの演奏と一脈相通じるものがあるように思う。
もう少し演奏全体に伸び伸びと歌っているような躍動感が欲しいなあ~。