タイトルの「黄金の組み合わせ」と聞いてピンとくる方はきっと年配のオーディオ愛好家に違いない。
50年ほど前のオーディオ専門誌「ステレオサウンド」で見かけた言葉だが、スピーカーが「タンノイⅢLZ」、アンプは「ラックスの38F」アンプの組み合わせがそうだった。たしか、五味康介さんがこの組み合わせを強力に後押しされていたと記憶している。
当時は大のタンノイ・ファンだったので、我が家でもこの組み合わせを導入して大いに楽しませてもらったが、そのうち「あさはか」にもオーディオ評論家の口車に乗せられて「ⅢLZ」(イン・オリジナル・キャビネット)を下取りに出しヤマハの「1000モニター」を購入してしまった。
今となっては、とんでもないことを仕出かしたわけだが、これはいまだに後悔していることの一つである。
たとえば、昨年(2017年)の12月にオークションに出品されていた「ⅢLZ」(箱付きのモニターレッド)は落札価格が35万円前後だったが、片や「1000モニター」の今の相場は2万円前後だから月とスッポンだ(笑)。
振り返ってみるとタンノイの中ではこの「ⅢLZ」(口径25センチ)が一番バランスが取れていた。
その後、口径38センチに換えてから、あのスピード感のない「ぼんやりした低音域」が嫌になって、いつのまにか「タンノイ嫌い」になってしまったが、もしかしてあのまま「ⅢLZ」を使っていたら、こうも迷路を彷徨しなかったかもしれない。
さて、いたずらに過去を嘆いても仕方がないので我が家の「黄金の組み合わせ」に移ろう。
JBLの「175」ドライバーが我が家に来てから早3週間あまり。
仲間から使い方をいろいろ教わりながら、どうにか満足できるレベルになって今では我が家の「旗艦モデル」にしてもいいくらいの存在感があり期待以上の効果をもたらしてくれた。
しかし、「またぞろ好奇心の虫が・・」(笑)。
これで十分だと思うものの、愛情が増せば増すほど「もっと良くなるかもしれない」という誘惑にはとても抗しがたいものがある。
現在「LCネットワーク」を使ってクロスオーバー1000ヘルツの2ウェイ方式で鳴らしているのはこれまで記述したとおり。
「LCネットワーク」というのは一言でいえばコイル(L)とコンデンサー(C)を使って周波数帯域を分けるやり方で1台のアンプで駆動するのが特徴。
ところが、我が家には「チャンネルディヴァイダー」(以下「チャンデバ」)が3台あって、クロスオーヴァーが「500ヘルツ仕様」「1000ヘルツ仕様」そして「5000ヘルツ仕様」とがあるんですよねえ~。
まさに「猫に鰹節」、使わない手はない(笑)。
「チャンデバって何?」という方はネットで調べていただくといいが、平たく言えばスピーカー毎にアンプをあてがうやり方である。たとえば2ウェイともなると低音域用と高音域用にアンプをそれぞれ1台使う。
古来「LCネットワーク派 VS チャンデバ派」の「どちらがいい、悪い」の論争は尽きないが、まあ、それぞれに一長一短で、こればかりは好き好きといえよう。
ちなみに周辺のオーディオ機器との関連も大いにありで、どちらかといえばレコード派は前者に属し、デジタル派は後者の色合いが濃いように思える。
さて、今回のチャンデバ使用にあたって一番の魅力は「175」の駆動に「371Aシングルアンプをあてがうことができる」点に尽きる。
質の良い小出力の真空管アンプで高能率(110db前後、通常は95db前後)のユニットを鳴らすのはすこぶる快感で、まさに「黄金の組み合わせ」といえるのではなかろうか!
「シンプル イズ ベスト」の持ち味が一番発揮されるように思えるのがその理由。
いったん、思い立つと矢も楯もたまらなくなり即実行へ。な~に作業時間はものの1時間もあれば十分だろう。時間だけはたっぷりあるんだし、悪ければ元に戻せばいいだけの話(笑)~。

上側が「371Aシングル」アンプで下側の機器がチャンデバだが、二つのつまみはダミーで用をなしておらずボリューム調整なしの代物である。したがってパワーアンプ側でのボリューム調整が必要となる。
システムの概要はクロスオーバー1000ヘルツの2ウェイ・マルチ方式で、1000ヘルツ(12db/oct)以下はJBLのD130(イン・ウェストミンスター)、同以上は同じくJBLの「175」。
実験1
はじめにD130には「TRアンプ」、「175」には真空管アンプ「371Aシングル」で鳴らしてみたところ、これはあきまへん(笑)。
TRアンプの冷徹な音色と真空管アンプの暖かい音色が折り合わずひどい音になった。
以前、クロス500ヘルツで聴いていた時(500ヘルツ以上は復刻版のAXIOM80)は、両者の違和感はほとんどなかったのだが、耳にとってより敏感な帯域となる1000ヘルツでクロスさせると違和感が顕在化してしまった。
実験2
そこで、D130に次の3台の真空管アンプをあてがって実験。
「371Aプッシュプル」、「2A3シングル」、「300Bシングル」(モノ×2台)
この中でベストだったのは「2A3シングル」で、低音域が一番豊かだったのが決め手だが、加えて都合よく「フル・ボリューム」で使えるのが大きな利点だった。
これで十分だと思ったが、しばらく聴いているとどうもD130の中央の出っ張ったアルミの部分の音が気になってきた。ジャズ向きならこの輝きもいいんだろうが、クラシック向きとなるともっと落ち着いた音の方がいい。
そこで、久しぶりにウェストミンスターにサランネットを被せて刺激的な音をマスキングしてみたところ、予想以上の効果が上がった。見てくれの方も「クラシックを聴ける雰囲気」になったみたいな気がする(笑)。

何はともあれ、ジャズ向きのユニットをクラシック向きに強引に調教した感は否めないが、あの伝説のオーディオ評論家「瀬川冬樹」さんも「AXIOM80」から「JBL」へ転進されたわけで、きっとこういう音でクラシックを聴かれていたのではなかろうかと勝手に想像している今日この頃(笑)。