「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~「冬篭りの中での収穫」~

2009年01月14日 | 音楽談義

ここ2~3日の猛烈な寒波で道路の積雪・凍結が南国九州でも相次いでいる。

釣りに行きたいのはヤマヤマだが、途中に峠みたいなところがあって周囲の地形から朝晩の道路凍結は必至の状勢、行きも帰りも道中に不安を抱えるとなると折角の釣りも楽しくなくなるのでやむなく「冬篭り」(ふゆごもり)。

そうこうするうちに先日HMVに注文していたCDが届いた。

       
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1 「マルティノン/ラヴェル&ドビュッシー管弦楽作品集」
  先日のブログで紹介したように、巨匠フルトヴェングラーが愛していたというラヴェ  
  ルの「優雅で感傷的なワルツ」が収録されている8枚組のCD。ドビュッシーが4枚
  ラヴェルが4枚といった構成。
  指揮者はマルティノン、この人のCDは初めてで「マルティノンWho?」といったと  
  ころだが、これは当方のとんだ認識不足でフランス音楽の指揮にかけては第一
  人者とのこと。
  二人の作曲家についてこれまで親しんできた曲目といえばラヴェルについては
  「ボレロ」、ドビュッシーについては前奏曲集(ピアノ)ぐらいなので全作品に親しむ
  のには丁度いい機会。

2 「バロック・マスター・ピーシズ」(ボックス型)
  HMVお得意の「抱き合わせ価格で安くなる」につられてを本命にして2~4はお  
  まけの附録みたいに購入したものだがそれにしてもこの
は安かった。
  61枚のCDが入っていて、価格は5,742円。何と1枚あたり94円になる計算。
  コピー用のCD1枚の値段よりも安いのだからまったくどうなっているんだろう。
  内訳はバッハ22枚、ヘンデル7枚、ヴィヴァルディ4枚ほかいろいろ。
  有名なベルゴレージの「スターバト・マーテル」が収録されているし、コレルリの
  「合奏協奏曲集作品6」も収録されているのがもうけもの。演奏のほうがどうかは
  分からないがまあ、この価格なら欲を言ってもキリがなく全体を聞き流すには十
  分。それにしても1980年当時の出始めた頃とは違ってCDが随分と安くなった
  のには本当に驚く。

3 「フルトヴェングラー指揮、ユーディ・メニューイン(ヴァイオリン)、ブラームスのヴ
  ァイオリン協奏曲」
  1949年の録音だから音質についてはおよその想像がつくところ。しかし、ヌヴー
  の例もあることだし、自分の場合はやはり音楽は音質で聴くよりもハートで聴くの
  が性にあっている。どんな演奏を聴かせてくれるんだろうかと興味津々。

4 「コリン・デイヴィス指揮、アルトゥール・グリュミオー(ヴァイオリン)、ブラームスの
  ヴァイオリン協奏曲」
  「あんたも好きだねー」と言われそうだがこの名曲については執念深くあらゆる名
  演の可能性を確保したい気持ちを常に持っている。モーツァルトのヴァイオリン協
  奏曲で至高の音楽を響かせたグリュミオーとデイヴィスのコンビがブラームスで
  はどんな演奏になるんだろうか。

≪試聴結果≫

は後日のお楽しみということで、についてじっくりと聴いてみた。以下はもちろんあくまでも個人的な感想です。

まず
だがドッシリとして緊張感に満ちた管弦楽の響きは紛れもなくフルトヴェングラーの独壇場。音質も1949年の録音にしては上出来で、もちろんモノラルだが十分聴ける。しかし、惜しいことにメニューインのヴァイオリンがいまいち線が細くて力強さに乏しい。堂々としたオーケストラの重厚な響きに圧倒されてどうも太刀打ちできていない感じ。
途中から早々と見切りをつけてしまい、自然の成り行きで「もしフルトヴェングラー指揮のもとでジネット・ヌヴーが弾けばどんなに素晴らしい演奏になるんだろうか」などと考えてしまった。

次にだがこれはとびっきりのいい演奏だと思った。
スケール感たっぷりのもとで指揮者とオーケストラとヴァイオリン奏者の三位一体となった演奏もいいが、やはり
グリュミオーのヴァイオリンの音色が出色。とにかく美しい!

優雅で抒情味があって優しい。クライマックスへの盛り上がりもたっぷりで久しぶりに感涙。1971年の録音だからアナログ録音のせいかセパレーションなんかがいまひとつだが演奏の出来が遥かに上回っている。

もしかすると自分の中で既に神格化の域に達している
「ジネット・ヌヴー」の演奏を上回っているかもと心配(?)になって、急いでヌヴー盤(イッセルシュテット指揮)を引っ張り出して聴き比べてみた。

しかし、残念と言うべきか、安心と言うべきか、さすがのグリュミオーでさえもヌヴーにはまだまだ及ばないとの感を深くした。こうやって比較してみて改めてヌヴーの偉大さに感じ入るばかりで、何よりも演奏に「音楽の魂が燃焼している」感があって人の肺腑を抉ってくるような趣がある。

レコード音楽の生き字引として「盤鬼」と称された「西条卓夫」氏(故人)の表現ではないがやはりブラームスのヴァイオリン協奏曲は「ヌヴーにトドメをさす」。

とはいってもグリュミオー盤も手持ちのオイストラフ盤やハイフェッツ盤よりも上位に置いてもいいと思うほどの好演。「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」がお気に入りの方には一度聴いてみてはとお薦めしたくなるような盤。カップリングされているブルッフのヴァイオリン協奏曲第一番もいい。

このCDは音楽評論家などのランキングでもまったくのノーマークであまり期待せずに附録同然で購入したのに・・・。しかも価格がたったの千円。これだから人が何と言おうとCDは聴いてみないと分からない。

とにかく、ひょんなことからグリュミオーの好演に接し、さらに「ジネット・ヌヴー」の魅力が再確認できたのは「冬篭り」の中での大きな収穫だった。


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