ミステリの本場「イギリス」で、こういう笑い話があるという。
ある女性が裁判所に夫との離婚を申し立てた。
「夫のどういうところが不満なんですか?」と裁判長が聞いた。
「ときどき浮気をし、おまけに、私に暴力をふるうこともあります。」
「その程度のことで離婚するというのはどんなもんでしょう。」裁判長はこう言って離婚を認めてくれません。
ところが、女性が「それに、夫はわたしが推理小説を読んでいるとすぐ真犯人の名前を暴露するんです」
それを聞いた裁判長は即座に言った。「それは重大だ。離婚を認めます」(笑)
このように、洋の東西を問わず、推理小説の結末は絶対に明かしてはいけないこととされているので感想を記すときでも「ネタバレ」がないように配慮するのは常識だ。
この2~3日、内田康夫氏の「名探偵浅見光彦シリーズ」をかかりっきりで読んでみた。今更読み始めるのはおかしいくらいの人気作品だが、あまりにポピュラーすぎて自分には盲点となっていた作品。
先般、「萩原朔太郎の亡霊」(内田康夫)を読んでみて意外と面白かったので、原作者のスタイルが自分の好みに合っているかもとつい手にとってみたのだが読み出すとつい面白さに引きずり込まれて朝から晩まで読書三昧となった。
「贄門島」(にえもんとう)(上巻、下巻)、「化生の海」の3冊でいずれも単行本で結構分厚く、読み上げるのに相当時間がかかった。
小説の設定によるとルポライターで素人の探偵にすぎない「浅見光彦」だが、名家の出身で、兄が警察庁の刑事局長の要職にあるとなっており、公権力を要所要所で事件解決の推進役にしているところが痛快であり、ストレス解消にもなる。例えていえば「水戸黄門の印籠」みたいな役割を果たしているといっていい。
「贄門島」は房総半島の近くのある離れ島を舞台にして、島に古くから伝わる因習が背景となって展開される殺人事件で闇の部分が明らかになるにつれ第三国まで絡んだ大掛かりな仕掛けとなっている。
やや展開が偶然性に左右されているとはいえ、めまぐるしく進んでいく快調なテンポと謎解きがとにかく読者を飽きさせない。このシリーズが長く人気を保っているのも分かる気がする。
「化生の海」もなかなかの佳作で、北海道で娘が大学に通うために金策に走り回っていた父親が遠く石川県の加賀市の沖合いで漂流死体となって発見される事件で、松前舟の歴史、かって捨て子だった被害者のルーツを探る重要なカギとなる福岡県津屋崎産の人形など日本各地が舞台となる中、一人の人間の哀感を感じさせるストーリーについホロリとさせられる。
結末の犯人像がややあっけないが、事件解決に至るまでの展開に読者をつかんで離さない力がある。
両作品とも、歴史的な背景を手を抜くことなくていねいに描写しているのがいい。
さて、ようやく読了し夕食が済んでくつろいでいたところにオーディオ仲間から久しぶりに電話があった。耳寄りな情報だとおっしゃる。
興味津々で「何ですか」とお伺いすると「デ・ヴィートって女流ヴァイオリニスト知ってる?」。まだ彼女の演奏は聴いたことがないが名前は聞いている。「ヴィトー」とも聞く。たしか自分の大好きな「ジネット・ヌヴー」が活躍していた頃のヴァイオリニストである。年代で言えば1940~50年代。
そのデ・ヴィートが弾いたブラームスのヴァイオリン協奏曲がつい最近発売されたという。これまで放送局がずっと秘蔵していたもので「初出」、指揮はあのフリッチャイだという。
「HMVで”クラシック~デ・ヴィート”の検索で一発で出てくるよ、ただしこの盤はモノラル録音でステレオではないので自分は買わない」と仲間。
オペラ「魔笛」のように深読みしすぎて「モーツァルトとは相性がいまいち」の感がある指揮者のフリッチャイだがベートーヴェン、ブラームスといったところならまず間違いない音楽だろうと思わせるものがたしかにある。またモノラル録音であろうと演奏さえ気に入れば自分は一向に構わない、録音の良し悪しはそれほど極端ではない限り大きな支障にはならない。
HMVのホームページを開ける前に、「デ・ヴィート」で検索してみると出てきた。
「ジョコンダ・デ・ヴィート」(1907~1994)イタリアの女流ヴァイオリニストとある。「ジョコンダ」とはどこかで聞いた名前?そうだ、ダ・ヴィンチの有名な名画「モナリザ」のモデルの名前が「ジョコンダ夫人」だ。
ともあれ、早速HMVで検索。あった、あった「デ・ヴィート演奏~フリッチャイ指揮」のコンビでブラームスのヴァイオリン協奏曲。2009年1月16日発売とある。もちろん輸入盤。カートに入れる前にまずウィッシュリストに放り込んで、ほかを物色するとその下の方に何と「デ・ヴィート演奏~フルトヴェングラー指揮」のこれまたブラームスのヴァイオリン協奏曲があるではないか!
これはさすがに黙って見過ごす手はない、これもウィッシュリストへ。そして最後にヒラリー・ハーン弾くことのやっぱりブラちゃんのヴァイオリン協奏曲も追加。結局3枚セットで「購入手続きGO]をクリック。
「あんたも(ブラームスのヴァイオリン協奏曲が)好きだねえ~」と、どこからかため息混じりの声が聞こえてきそう。
その後、HMVから「発送予定日は3月1日のメール」が入ってきたがいずれのCDとも発売日がそれほど昔ではないのに1ヶ月も待たなくてはいけないなんてどうなっているんだろうか。