「長いこと探し求められていたMHL4のメッシュプレートがオークションに出品されていますよ。一応お知らせしておきます。」
同じ「AXIOM80」愛好家として懇意にさせていただいているSさん(福岡)に上記のメールを送ったのは、つい先日のことだった。
ちなみにSさんが愛用されている真空管アンプはイギリスを代表する出力管「PP5/400」シングルアンプである。WE300Bと並んで直熱三極管の両雄とされる「PX25」の親分筋にあたる球である。
メインスピーカーは「タンノイ」さんのモニター・シルバー(口径38センチ:コーナーヨーク)なので、Sさんは生粋のブリティッシュ・サウンド愛好家である。
このアンプの前段管に使ってあるのが「MHL4メッシュプレート」で、プレート部分が板状のものは数あれど、メッシュ(網の目状)となるとたいへんな希少管となる。
(プレートが)メッシュと板状のものと、どこがどう違うんだと問われると困るが、専門家によるとメッシュの方が手間がかかるのでそれだけ丁寧に作られているし、一般的には板状に比べて「ノイズが少ない」ので出てくる音の透明度が高いと言われている。
上質のアンプやスピーカーになればなるほどその違いがはっきりと分かる仕組みになっているのはご愛嬌(笑)。
お目当ての真空管のオークションでの画像と解説は次のとおり。
MARCONI(GEC)の傍熱3極増幅管MHL4 です。 MHL4は増幅率ミューが20で、増幅管としては使いやすい真空管ですが、最近はあまり見かけなくなった球の一つです。
ヒーター電圧4V(1A)、プレート電圧200V、プレート損失は4Wとなっています。
出品していますのは、MHL4でも最初期の旧ナス管タイプのもので、プレートは細かいメッシュになっています。 1930年頃の製品。
どちらも新品元箱入りで、この時代のMHL4の未使用品は現在現地でも入手が困難になっています。 かなりの希少品。
ゲッタの色や輝き方に両者違いが見られるのは、それぞれ使用しているゲッタ材料の違いによるものです。
どちらも特性はTV7/Uで確認済みです。 測定値は、基準値50に対し94、96となっています。
入札価格は2本セットの価格です。
以上のとおりだが、出品者は非常に信頼がおける老舗のショップ(関西)さんなので、紹介する気になった。実を言うと、我が家のアンプにも使えるので大いに食指が動いたのだが今のところ「AC/HL」(=MH4)で間に合っているので、潔く譲ることにした(笑)。
スタート価格は2万円なり。まあ、高くても4万円前後で落札というところかなあと目星をつけておいたところ、落札結果(8月26日)を見てみると「51、900円」なり。高っ!
気になるSさんに「首尾はいかがでしたか?」と、問い合わせると「いくら稀少なナス管メッシュのMHL4とはいえ、前段管に5万円オーバーは高過ぎです。私は途中で諦めました。古典管の値段も一段と異常な状況ですね。」と、すこぶる健全なご回答があってひと安心。
「桐一葉落ちて天下の秋を知る」ではないが、ことほど左様にこのところ希少な古典管の値上がりが激しい。
良し悪しは別にして素っ気なく聴こえるデジタルの音が普及すればするほど、響きが豊かで生身の人間の肌触りを思わせる「古典管」が珍重されていくような気がしてならないと思うのは自分だけだろうか。