2~3日前のテレビで言ってたが、今冬は気象予報の観測を始めてからは史上最高の暖冬になりそうだという。いろんな業種の人々にとっては悲喜こもごもだろうが、こと、釣り人に限ってはうれしいお知らせ。
寒くなると魚が深場に移っていくし、活動も鈍くなってエサを追わなくなるのが常だが、それが暖冬ともなるとまさに千載一遇のチャンス。
12月に入って3回目の釣行となった22日(火)、「もうそろそろ釣れなくなってもおかしくはないが」と、半信半疑ながら自宅を出たのが朝の7時40分。けっして潮の具合も良くないが、お天気が23日から崩れるというので出掛けてみた。
前回の釣行が9日(水)だったのでおよそ2週間ぶりのこと。右腕の筋肉痛も完全に癒えてはいないが、どうにか耐えられる範囲。「せめて足の裏クラスが10匹ぐらい釣れれば理想的だが」との胸算用。
いつもの釣り場は、あたりにも人っ子ひとりおらず、自分だけで澄み切った海のオゾンを満喫。肺が浄化されるような気がして、今年の冬はおそらく風邪とは無縁だろう。
仕掛けを作りながら、数回、撒き餌を海に向かってばらまく。戦闘開始の合図だが、早くもエサ取りの小魚が湧いてきた。相変わらず魚の活性度が高いようでひと安心だが、あまり多すぎても困る。本命のメジナ(九州ではクロ)までエサが届かない。
釣り開始後30分ほどはさすがに海水温が低いせいか、食いが悪かったがそのうちボチボチとかかり出した。それにしてもエサ取りが多くて、撒き餌の2/3ほどはエサ取り用として足元にばら撒き、遠方に本命のクロ用として柄杓で撒き餌を飛ばす。この繰り返しである。
遠方の撒き餌した部分に、きちんと釣り針を届けてやる竿先のコントロールが命だ。それにしても、潮の具合がイマイチのせいかどうも釣果が思わしくない。
ウキ下を変えたり、釣り糸を細くしたり、錘の位置や重さを変えたり、撒き餌を投げる場所を四方八方にしたりと、いろいろ目先を変えてみたが、変えた直後は2~3匹喰うものの、それからパタリと騙されなくなる。魚はたしかに学習能力がある。
3時間ほど経つと、「釣れますかあ」と一人の見物人から声をかけられた。
「ええ、ボチボチですけど型が小さくて持ち帰るのが恥ずかしいくらいです。」と先手を打つと、「竿の曲がりが楽しめればそれでいいですよ。」と慰めてくれた。
なかなか話せる方のようで、じっと偏向グラス越しにご尊顔を伺うと何となく「インテリゲンチャ」(知識人)の雰囲気を漂わせている方だった。どうやら自分とは違って勉学に勤しむべき時期にキチンと義務を果された方のようだ。ちなみに「インテリゲンチャ」のことを茶化して「犬取りゲンちゃん」との呼称があるのをご存知だろうか(笑)。
ご近所にお住まいで、会社を退職後、数年前に関東から移り住んで来られたそうで「別府温泉が魅力」だったとのこと。いろいろと話が弾むうちに、その楽しい気配が竿先にまで伝わったのだろうか、この日一番の大物がいきなりかかった。「ウン、これは大きそう。」と二人同時に声が上がった。
竿を大きくしならせながら、ようやく足元近くに寄せたもののこのまま海面からぶり上げようか、それとも安全第一にタモを使おうかとつい迷った。
「私が竿を持ってあげましょうか?」と助け舟が出たので「はい、お願いします。」と、大きく曲がった竿を渡して自分はタモ入れに専念。
連携操作がうまくいって無事取り込んだ。「ありがとうございます。なにしろこの釣り場でタモを使ったのは初めてですよ。」
以後、夢よもう一度と大物を狙ったがサッパリで、そのうち「犬取りゲンちゃん」もご退散。
12時過ぎに納竿。今回も5時間ほどの釣りだった。およそ30匹ぐらいと釣果の見当をつけたが、潮の具合さえ良ければ60匹ぐらいは軽く釣れていただろう。釣り歴40年以上になるが、12月下旬の時期としては異例のことでこれは明らかに暖冬異変。
自宅に戻って、例によって御開帳。
一番左上の魚がタモですくったヤツだが、その上に目印に置いた携帯の長さが11センチだから25センチクラスで、冬に入ったせいか丸々と太っていて重量感がひとしおだった。
全部で31匹とこの時期としては“まあ良し”としなければ・・。