「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

引かれ者の小唄

2013年11月30日 | オーディオ談義

去る19日、オーディオ仲間のSさん(福岡)から次のようなメールが入った。

「不要なキャビネットに入ってますがAXIOM80がヤフオクに出てますね。
マグネットカバーのお尻の部分がR形状で丸くなっている事といいコーン紙の色とエッジの折り返しといい、フレームが塗装されていない事といい、間違いなく希少な最初期のユニットです。

写真が片方分しかUPされていないのが気になります。少し前にペアで出品されていた80は、左右でマグネットカバーの形状が異なっており世代違いでした。あれでは左右の特性が揃いません。もし今回の物が左右ユニット最初期バージョンで揃っているなら、20万円台前半までなら買いでしょう!もう当分出てこないかも知れません。

〇〇さんは先般、運良くオリジナルのキャビネットを手に入れられた訳ですから、ここはやはりユニットもオリジナルに拘ってみても面白いのではないでしょうか。単なるオリジナル崇拝という事ではなく〇〇さんには、“これぞ最高のAXIOM80の音だ!”というものを実現してみせて貰いたいと思っています。」

「メール拝読しました。オリジナルのユニットぜひ欲しいですね。問題はどこまで価格が上がるかです。注視します。大切な情報提供ありがとうございました。」と、返信してからさっそくお目当てのオークションを覗いた。

                

ウ~ン、これが最初期バージョンなのか!自分が持っている復刻版とはたしかに違う。

開始日時は11月19日で、終了は26日(火)の21時16分、個人ではなくストアからの出品で価格はおとなしく1000円スタート。

さあ、どうしようか。Sさんが仰るように20万円台前半なら買いかなあ。しかし、それにしても懐が少々淋しい(笑)。

以後、とにかく毎日追いかけることにしたがオークションの出品者への質問欄に「ボックスは除いてユニットだけの購入は可能ですか?」との、ごもっともな問い合わせに対して「可能です」との回答があったりしてますます意欲が嵩じてくる~。

しかも値段が5万円程度で4~5日間ずっと推移しながら価格がなかなか上がらないのも好材料。これはひょっとして気が付かない人が多いのかもしれないと淡い期待を抱かせたが、これはとんでもなく甘い誤算だった。

さあ、いよいよ最終日の夕方になって晩酌でほろ酔い加減になったままパソコンの前に張り付いたところ、何と価格が19万円前後に跳ね上がっている!「こりゃ、あかん」と、酔いがいっきに吹き飛んでしまった(笑)。

こうなるとオークション終了間際の土壇場になっての「叩き合い」はもう目に見えている。これまで、何度競り負けて涙を呑んだことか。「つい我を忘れそう」なのも怖いし、この時点で潔く入札参加を断念!

はたして結果は予想どおりというか、入札件数128件、落札額は281,008円だった。何と終了間際の30分ほどで10万円ほどの値上がり!

端数の8円はご愛嬌だが自分も経験があるがこの“読み”としては、「28万円とキリよく入札する人が多いだろうから、わずかでもと1000円上げて281,000円で入札する」心理は実によく分かる。そこで、最終的にこのわずか8円のアップがものをいったということだろう。

いずれにしても28万円はこのユニットの状態ではちょっと考えさせられるが、これがオークションという“のるかそるか”の博打なのだろう。

結局、またしてもオリジナルユニットとは縁がなかった。Sさんの期待に応えることが出来なかったのは残念。ま、そのうちもっと程度のいいものが見つかることでしょう。

一方では、「な~に、復刻版からでもオリジナルに負けない音を出してSさんをビックリさせてやろう」とかえって意欲が湧いたのも事実。ま、こういうのを「引かれ者の小唄」というのかな(笑)。

さて、落札者の方には余計なお世話だが、「AXIOM80」をうまく鳴らそうと思ったらこれから少なくとも3年ほどは覚悟せねばなるまい。汗を流せば流すほどそれにきちんと応えてくれるのが「AXIOM80」。

ぜひ相性のいいアンプやアクセサリーを根気よく探して欲しいし、そして一番大切なのがエンクロージャー。現在のバスレフタイプを試してみるのももちろんいいが、まだ相当工夫の余地があるように思う。

新たなエンクロージャーを作ってSPユニットの背圧を巧妙に調整する「ARU」の取付も楽しみのひとつ。ガラリと音が変わりますよ~。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

芸術を変質させる歪とは

2013年11月28日 | 音楽談義

前回からの続きです。

「音楽&オーディオ」愛好家のNさん宅のオーディオシステムを、スピーカー、レコードプレイヤー、アンプに続いて他の機器を紹介しよう。

           

 


           

マーク・レヴィンンソンのDAコンバーターとCDトランスポートが2台あって、それぞれ「バークレー」(アメリカ)と「カリスタ」(フランス)というはじめて聞く名前。

ぶしつけを覚悟でお値段をお伺いすると「バークレーは定価300万円のところを200万で手に入れました。いい製品を作るメーカーは採算を度外視するせいでしょうか、すぐに行き詰まりますがバークレーもその例に漏れず今ではもう存在しません。」

これらの超豪華なシステムに毎日かしずかれて「タンノイ・オートグラフ」さんもさぞや幸せなことでしょう(笑)。

オートグラフといえば、日本における普及の先達的な役割を果した「五味康祐」さん(作家、故人)を忘れるわけにはいかない。

「わがタンノイ・オートグラフ論」の冒頭の一節に次のような個所がある。

「レコードで音楽を聴く場合、装置の鳴り方いかんで演奏者の芸術を変えてしまうことがしばしばある。レコードを鳴らすための装置はあくまで物理的・電気的に音を出しているわけだが、その中に物理的な歪よりもっと怖い芸術を変質させる歪を出す例が多いのを私は体験で知ってきた。

とりわけそれがスピーカーに多いことも。芸術を変質させる歪は、現在のところどんな優秀な測定器をもってしても測れない。測れるのは芸術的感性と耳を持つ人間だけだ。真にすぐれたオーディオ機器が理論や測定技術を超える所以がここにある。~中略~ 

恐ろしいこの歪の存在を知ってから、私はタンノイというスピーカーを離せなくなった。タンノイは聴く人を音楽的環境へ即座に連れていってくれる。」

とまあ、そういうわけでオートグラフの愛好家に対して「芸術的感性と耳」を必ずしも持っているとは言えない自分がオーディオ的に「音が云々」と論評するのは僭越至極というものだろう。

レコードからCDまで、そしてクラシックから美空ひばりまでいろんな曲目を聴かせてもらった。以前、このブログでも紹介したことがあるアルゼンチンの名花「ヒナマリア・イダルゴ」は今回同伴してもらったKさんの大好きな歌手だが、Nさんも同様とのことでCDどころかレコードまで収集しておられ大いに話が弾んだ。

そのうち、やおらKさんが大切そうに持参のCDを取り出された。「リパッティのショパン・ワルツ集を聴いているといつも胸が切なくなります、ぜひこれをかけてくれませんか」

          

3人とも無言のまま、ただひたすら音楽に聴き耽った。

周波数レンジ、分解能、奥行き感、セパレーション、力感などオーディオ的な言葉がまったく浮かんでこない世界・・・・。


Nさん宅の音は時間の経過をいつのまにか忘れさせてしまう魔力を秘めているようで、気が付いてみるとあっという間に3時間ほどが経過していた。

夕食時にかかってご迷惑をおかけすると申し訳ないので、非常に名残惜しいが辞去することにした。Kさん宅とはクルマでおよそ20分ぐらいの距離だから、これからもちょくちょく押しかけさせてもらうことにしよう。
 

とかくオーディオ的な耳に偏りがちなところを音楽的な耳に戻してくれる「振り子」のような役割をきっと果してくれるに違いない。

あたり前のことだが「オーディオは音楽を聴く道具に過ぎないのだから手段と目的をはき違えないように」を再認識させてくれた「Nさん宅の音」だった。

Kさん宅経由で自宅に到着したのは夕方の5時半頃で、早くも秋の夕闇が色濃く漂いはじめていた。別府の温泉街をはるか見渡しながらふと一句浮かんだ。

「心なき 身にも哀れは 知られけり 湯煙昇(のぼ)る 秋の夕暮」

西行法師の歌をちょっともじってみました(笑)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢のオーディオ機器

2013年11月27日 | オーディオ談義

去る24日(日)は朝からお天気に恵まれて遠方に出かけるにはうってつけの行楽日和。

秋晴れといえば、つい「北京秋天」という言葉を思い出す。

悲劇の宰相「広田弘毅」の生涯を描いた「落日燃ゆ」(城山三郎著)の中に、どこまでも透き通った北京の秋の空の描写があるがとても印象に残っている。秋の空が透き通っている理由の一つは大陸からの移動性高気圧のお蔭だそうで科学的にも説明できる。

また「日本洋画界の重鎮」梅原龍三郎画伯にも「北京秋天」と題した作品があるが、PM2.5で毒された現在の北京ではきっと見る影もないに違いない。

さて、爽やかな秋空が天高く広がっていると何だか気持ちまで清々しくなって予定の8時半よりも早めに自宅を出発。もうヤル気十分(笑)。

目指す目的地は福岡県内在住のオーディオマニアのお宅で今回は2か所。

最初の試聴先は自分と同じSPユニット「AXIOM80」(以下「80」)を愛用されているKさんのお宅。スイスイといつものように高速を飛ばして1時間20分ほどで到着。

Kさんは何しろ「80」を完璧に鳴らすために日頃からプリアンプ7台、パワーアンプ13台を駆使して綿密に「相性」を探っておられるが、おそらく「80」に対する“愛情とこだわり”にかけては「日本でも有数の方」といっていいだろう。

これだけ人を夢中にさせる「80」の魅力を語り尽くすことは難しいが、逆に言い換えると、うまく鳴らすのにこれほど気難しくて手こずるSPユニットはほかにない。あらゆるオーディオ機器やアクセサリーのクセをたちどころに表現してしまう。

これら20台のアンプはいずれも「ノンNFB」の真空管アンプで、Kさんによると「トランジスターアンプは血の通った音が出ないのでいっさい使いません。」と、これまた徹底されている。

「やあ、どうもどうも」と、ご挨拶もそこそこにジャズを聴かせてもらったが実に野太い音が部屋中に響き渡る。「80」からこんな線の太い音が出るというのはちょっと信じられないほどで「アンプはどれを使ってるんですか?」

「今回は12AU7(電圧増幅管)を使ったプリアンプと171A(出力0.5ワット)を使ったパワーアンプの組み合わせです」

たかだか1ワット以下の出力でこんな音が出るんだからアンプの出力表示なんてまったく参考にならない!

また、プリアンプの性格も大きく作用しているようだ。この前聴かせてもらったときは松下の「7308」(「6DJ8」の高信頼管)を使ったプリアンプだったが、その時はもっと高域が華やかだったような気がする。

「プリアンプ次第でガラッと音が変わりますよ。パワーアンプよりも影響が大きいくらいです。」
と、Kさん。

はたして「12AU7」の穏やかでしっかりした骨格の音をとるか、「7308」の艶のある高域の切れ込みをとるか、これは実に選択が難しい。Kさんにとっても簡単に結論が出ないので、その日の気分によって日替わりで楽しんでおられるのだろう。こうなると、もう好き好きの世界。

まあ、あえて個人的な感想を言わせてもらうと「7308」独特の「高域の切れ込み」は、禁断の味そのもので一度味わうとほかの球ではちょっと物足りなくなる。

今のところ「真空管式のプリアンプは“7308”を使ったものに一日の長がある」と考えているが、Kさんは一段とグレードアップした12AU7のプリアンプを現在製作依頼中とのことで、その完成の暁まで結論を保留しておこう。

ほかにもKさん宅では傍熱管と直熱三極管の違いなどを確認させてもらってから、昼食をはさんで今度はNさん宅へ移動。およそクルマで15分程度の距離で非常に近い。

Nさん宅の近くの目印の中華料理店に迷わず到着してそこで連絡を取り合って無事に落ち合い、ご自宅へ案内してもらった。

すぐにオーディオルームに案内してもらったところで、まず「夢のオーディオ機器」を紹介させてもらおう。

           

           

           

タンノイ・オートグラフはちょくちょく見かけるにしても、トーレンスの高級レコード・プレイヤー「レファレンス」が2台、それにWE300Bアンプ(いずれもカンノ製、モノラル×2台、2セット)とくると、もうたまらない(笑)。

CDトランスポート(2台)、DAコンバーターの写真は次回の記事に回すが、こんなハイエンドの機器からいったいどんな音が出るんだろう?

以下、続く。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

さようなら、WE300B真空管!

2013年11月25日 | オーディオ談義

昨日の日曜日(24日)は以前から予定していた楽しいオーディオ訪問日。

まず、同じSPユニットの「AXIOM80」を愛用されているKさん宅(福岡)にお伺いし2時間ほど試聴させてもらってから、午後はKさんと一緒に小郡市(福岡)にお住いのNさん宅を訪問する予定。どうやらお天気も快晴のようだし、高速でおよそ1時間20分の一っ跳びだから気が楽。

今回の訪問のメインとなるNさんはスピーカーにタンノイ・オートグラフ、レコードプレイヤーはトーレンスの「リファレンス」、DAコンバーターにはマークレヴィンソンなど海外の超一流品を愛用されている方でハイエンドのマニアである。どういう音で鳴らされているか非常に楽しみ。

我が家の“つたない音”にも興味を示され、これまで3回ほど来ていただいているがときどきこのブログにも目を通されているようで、記事の内容などについて日常的に連絡を取り合っている。

さて、昨日は出発を午前8時半に予定し、いつも通り早朝の4時ごろに起床。このところ早寝早起きで昨晩は8時頃就寝したので睡眠時間はきっちり8時間を確保。

マニアならご承知の事かと思うが「睡眠不足はオーディオ試聴の大敵」なのでまずはひと安心。

とにかく他家の音を聴かせてもらう前にまずは「リファレンス」として我が家の音をしっかり耳に刻んでおこうと思って、オーディオ機器をスイッチオン。寝静まった早朝のことなので家人(寅年生まれの猛獣!)を起こさないようにと、ボリュームをぐっと絞り込んで出来るだけ秘めやかな音で試聴。

「よし、よし、いつ聴いてもいい音だわい」と悦に入っていたら「好事魔多し」。

15分ほど経ってから右チャンネルから何とも言えないノイズが出だした。これまで“とんと”聞いたことがないようなノイズで、前の音と現在の音が重なった「二重写し」のような再生とでもいうのだろうか。

最初はスピーカーの「AXIOM80」が原因かと思ったが、過大入力ならいざ知らずこの程度の音量ならまずあり得ないので疑いの目をアンプに注いだ。

まずパワーアンプの真空管WE300B(モノ×2台)をテスト。つい最近オークションで購入して差し換えたばかりの初段管「NHK仕様6201」(「12AT7」の高信頼管)が犯人だろうと目安をつけて、左右両チャンネルの真空管を入れ替えて試聴したところ、相変わらず右チャンネルからノイズが発生。

「困ったなあ、こういう時に限って故障するんだから~。これじゃあとても安心して出かけるわけにはいかないじゃないか。」と、独り言をこぼしながら少し焦った。

仕方なく次に目をつけたのが今度はプリアンプの真空管7308(「6DJ8」の高信頼管)で、これも左右両チャンネル入れ替えて試聴したところ、やはり右チャンネルからノイズ。

消去法でつぶしていきながら、事ここに至ってようやく犯人は絞り込まれた。一番あって欲しくない故障だが出力管のWE300B!
 遂に寿命が来てしまったのかな。

手持ちの中国製の真空管と差し換えたところピタリとノイズが収まった。やっぱり、そうか!

          

写真が寿命が来たWE300B真空管で、ソケット部分に6713と数字が刻んであるのでおそらく1967年製の真空管のはずで46年前の代物になる。

やっぱりそうかと、実は半分納得。

昨年の8月、オーディオ仲間のMさん(奈良)にお願いしてこのWE300Bアンプをオーバーホールしたときに、「WE300B真空管の1本がゲッターも極端に薄くなってますし、寿命はよくてもう2か月ほどでしょう」と「死の宣告」を受けていたところだったが、結果的にそれから1年以上も粘り腰を発揮してくれたことになる。

さすがは長寿命で知られるWE300Bでよくぞ健闘してくれたものの、懐としては大いに痛い。買い直すにしても、1本当たり6桁の金額は軽くいくのでとても高価すぎて今となっては自分のような身分には到底無理である。

これで手持ちのWE300Bは1988年製が2本、1950年代ものが3本となって計5本。これで、この命尽きるまで何とか“やりくり”できそうな気もするもののチョッピリ不安もつきまとう。

前述の仲間のKさんから「WE300Bと差し換えが利く真空管が中国製をはじめとして山ほど出回っていますが、ベスト1は〇〇ですよ~。オークションで見つけたら即、買いです。」とアドバイスを受けているが、まずは滅多に見かけない。

万一、見つけたら即落札!

それにしても、出発前に原因が分かってほっと一息。これで心置きなく試聴に専念できる(笑)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読書の秋

2013年11月23日 | 読書コーナー

10日ほど前に例によって3か所の図書館から16冊ほど借りてきて、すべて目を通したところ論評に値するのが4冊程度で確率は1/4だった。

1/4といえば昨日のテレビで放映していたニュースを思い出す。

11月22日は「いい夫婦の日」だそうでそれに因んで、ある会社による調査で「生まれ変わっても今の伴侶と一緒になりたいと思いますか?」の問いに対して男性はおよそ40%が「はい」の答えだが、女性の方はわずか1/4の25%前後に留まった。

女性は現在の伴侶にけっして満足していない人が多いようだ。「男女間のこの落差は、いったいどこから来るんだろう」と、しばし考え込んでしまった。

ま、あまり不満はないけれど、今とは違った人生を歩んでみたいという変化の方を望む気持ちが女性には強いのかもしれない。ほら「女心と秋(飽き)の空」という言葉があるでしょうが。

それにしても「灯台 下(もと)暗し」で我が家の場合はいったいどうなってるんだろう?


なにせ稼ぎは悪いしやたらに趣味が多くて女房そっちのけなので、いずれ「倍返し」の仕打ちをされるに違いないとにらんでいるが、はたして(笑)。

さて、その4冊について。

          

☆ 「推理作家の家~名作の生まれた書斎を訪ねて~」(2012.5.17、西村書店、文/写真 南川三治郎)

本書は実に興味のある本だった。

収録してある作家は世界的にも有名な一流作家ばかりで30名(うち存命中は16名)にも達し、それも辺鄙な場所にもかかわらず逐一訪問して実際に取材された結果をまとめたものなのでたいへんな労作といえる。

ちょっと挙げただけでも次のとおり。

ジェフリー・アーチャー  カトリーヌ・アルレー  ローレンス・ブッロック  トム・クランシー  パトリシア・コーンウェル  マイクル・クライトン  コリン・デクスター  フレデリック・フォーサイス  グレアム・グリーン  ジョン・ル・カレ  ギャビン・ライアル  ジョルジュ・シムノン  

写真が大きくて見やすいし、創作スタイルや日常生活について詳しく語られている。自ずと作家の人柄も炙り出されている。

次回作には、ぜひ日本の推理作家の書斎も拝見したいものだ。

☆ 「北の街物語」(2013.8.10、中央公論新社、内田康夫著)

推理小説「浅見光彦シリーズ」は大好きで、これまで100冊以上が出版されているが読み逃がした作品は1冊もないと断言できるほどの熱心な愛読者である。

この作品は最新作で、たまたま図書館の新刊コーナーで見つけて大喜びで手に取ったが、読み進んでいくうちに「内田さんも老いたなあ」の感がどうしても拭えなかった。

「北の街」というタイトルだから北海道の旅情ミステリと思ったのだが、何と東京都北区の話だったのでまずガッカリ。

それに、偶然性が多すぎる、辻褄合わせに汲々としている、ノリが悪いというのが率直な印象。これでも面白いという人がいるに違いないが、往年の作品を知っている者にはちょっと物足りない。

内田さんの近年の作品は総じてどうも読み応えがしない。次回作には起死回生となる作品を期待したいものだが。

☆ 「エンニオ・モリコーネ、自身を語る」(2013.8.30、河出書房新社、アントニオ・モンダ著)

エンニオ・モリコーネといえば「映画音楽」の世界では知らない人はおるまい。

代表作とされる「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のデボラのテーマをはじめ「ニュー・シネマ・パラダイス」、「ミッション」、「ウェスタン」などのテーマ音楽を書いた作曲家。

そういえば、以前音楽好きの小泉純一郎元首相の推薦というモリコーネを特集したCDがあり、長いことクルマの中で愛聴している最中。

            

本書によると、モリコーネ氏は実に謙虚な方で、数多くの監督や俳優などと仕事をしたにもかかわらず、人物批評においては慎重に言葉を選びながらいっさい悪口を言わないのが印象に残った。

最後に、「自分で代表作だと思うものを三作挙げてください」の問いに対して、長くためらった挙げ句次の答えがなされた。(226頁)

「ミッション」の“天になる如く地にも”、「ワンス・アポン・・・・・」の“デボラのテーマ”、それからトルナトーレの映画の一曲「記憶の扉」「海の上のピアニスト」シチリア!シチリア!」。

☆ 「七色の毒」(2013.7.25、角川書店、中山七里著)

前著「切り裂きジャックの告白」で大向うを唸らせた中山さんだが、その才能には大いに括目すべきものがあった。年末が近づくとそろそろ恒例の「年間ミステリベスト10」の発表が待ち遠しいが、個人的には「切り裂き・・・」が本年度の「国内ベスト1」だと予想している。

はたして“当たり”となるか“ハズレ”となるか、お楽しみ~。いずれじっくりと検証させてもらおう(笑)。

さて、本書にも中山さんの才能がいかんなく発揮されている。

「赤い水」「黒いハト」「白い原稿」「青い魚」「緑園の主」「黄色いリボン」「紫の献花」と、色彩ごとの
7つの物語で編集された短編集だがそれぞれに新鮮味があって非常に面白かった。改めて「ポスト東野圭吾」にふさわしい作家だと思った。今後が非常に楽しみなミステリー作家である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

主(あるじ)なき「オーディオ・ルーム」

2013年11月21日 | 独り言

一昨日(19日)の午前中に去る10月中旬に亡くなられたオーディオ仲間のEさん(大分市)のお宅にお悔やみに行ってきた。別府からクルマでおよそ50分ほどのところ。

奥様にご挨拶し、ご霊前で焼香を済ませてから詳しくお伺いしてみると、今年の2月頃から容態が悪くなって入院し、手術して一時快方に向かったものの、7月から再入院してそのまま帰らぬ人となられたそうで享年79歳。

「沢山のオーディオ仲間の方々がお見えになっていただきました。主人もさぞや喜んでいることと思います。」

「直接、ご葬儀に出席したかったのですがようやく1週間ほど前に訃報をお聞きしたものですから・・・。ご本人は最後まで意識があったのですか?」

「はい、意識はちゃんとありました。」

「そうですか。入院中はさぞや、オーディオがやりたかったでしょうね・・・。」

「もう・・・・」

ひとしきりEさんとの思い出話をしてから、「よろしかったらオーディオルームの写真を撮らせていただけませんか?」

「ええ、どうぞ。窓際のところを少し片付けていますが1年くらいはそのままにしておきたいと思ってます。」

自分が知っている限り、オーディオ仲間の中でEさんほど熱心なマニアを知らない。それこそ毎日、毎日、仕事を終えると夜中までオーディオルームに長時間こもっていろんな音響実験をされていた。創意工夫したオーディオアクセサリーは数知れず。

          

スピーカーはアルテックのA5でそれにJBLの075(ステンレスホーン付き)を追加されていた。アンプは低音域が真空管EL34のパラレル・プッシュプル(出力100ワット)で中高音域がWE300Bアンプ。チャンデバはアキュフェーズのF25。

音の印象を一言でいえば「スッキリ爽やかでまったく濁りのない音」だった。たしか20年ほど前のことだったと思うが、Aさん(湯布院)のご紹介で初めて聴かせてもらった時のことを“まざまざ”と覚えているが「世の中にこんなにいい音があるんだろうか」と驚嘆したことだった。

            

音質向上のためにさまざまな工夫が施されたWE300Bアンプが上記の写真。その道では“知る人ぞ知る”著名なウェスタン・マニアの地元新聞社のN社長さんが使用されていた逸品だとお伺いしている。

試聴席の背後に立てかけてある反響材の真竹も今となってはたいへん懐かしい。

           

Eさんのお宅を最後に訪問したのははたして何時のことだったかなと、ブログの過去記事を探してみたところおよそ2年前の2011年7月20日だった。その時の記事が「オーディオ訪問記」(2011.7.23)(クリック可)

あの頃はあんなにお元気だったのに、ほんとうに人の命は儚い。


オーディオ一筋に打ち込まれたEさんのご冥福を仲間のひとりとして心から祈らせてもらおう。

それにしても自分はいったいあと何年オーディオを楽しめるんだろう?



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「明るい音」と「暗い音」

2013年11月19日 | オーディオ談義

去る11月16日(土)は高校時代の同窓生たち3人(福岡)との定例の試聴会だった。

前回は7月上旬でこれまでおよそ4か月おきぐらいに開催しているが、いずれ劣らぬ「音楽&オーディオ」大好きの仲間たちでお互いに遠慮なく自由闊達な意見が飛び交い、辛口の意見もあったりしてシステムの持ち主にとっては少しばかり怖い試聴会でもある(笑)。

それもあって今回も一週間ほど前からシステムの調整に余念がなかった。何せAXIOM80(以下「80」)をグッドマン社のオリジナルエンクロージャーに容れてから、初めて聴いてもらうわけなのでそのストレートな感想も非常に待ち遠しい。

前日までプリアンプやパワーアンプの真空管の相性をいろいろ確かめたりして、「良し、もうこれで万全」といったところまで詰めてみた。

さあ、いよいよ当日。幸いにも秋晴れの中、高速バスでやってきた仲間をバス停まで迎えに行って自宅に着いたのが丁度13時ごろ。

夜の「飲み会」が18時からの予定なので、それまでみっちり5時間の試聴となった。

結論から言えば仲間たちの感想は「可もなし、不可もなし」といったところで、絶賛を予想していたので少しガックリ(笑)。

どちらかといえば音楽好きの連中なので、周波数レンジ(20~2万ヘルツ)などがどうのこうのというオーディオ的な話よりも、じっくりと音楽鑑賞に浸れる音なのかどうかが大きなテーマとなった。

何せ試聴盤に使ったのが持参してきてもらったベートーヴェンのピアノソナタ32番(作品111)などのややシリアスな曲目が中心となったことからもその場の雰囲気が推し量れることだろう。

試聴するうち「80の音は明るいね」と、日頃、タンノイGRFメモリーを愛用しているひとりからポツンと一言。

昔、自分もタンノイを愛用していたことがある。「ⅢLZ → インパルス15 → ウェストミンスター」の変遷をたどったのでタンノイの音を熟知しているつもりだが、けっして「抜け」とか「分解能」はよくないものの、まるで「いぶし銀」のような音でもって人間の心の奥深い襞のようなものを表現するのには非常に長けている。まあ、こういう音でないと伝わってこない音楽があるのもたしかである。

「明るい音だね」の言葉の背景にはおそらくそういう含みが込められているようで、何となく「ほめ言葉」と素直に受け取ってはいけない雰囲気が漂っていた。

成る程、そうかもしれない。「80」の音は屈託がなく、まるで秋の空天高く、どこまでも澄み切った青空のような音を出す。逆に言えば「人の心にそっと寄り添って慰めてくれる音ではないのかもしれない」と、ふと思ったことだった。

「明るい音」と「暗い音」(内省的な音という意味)という分類は今まで考え付きもしなかったが、「人生 山あり谷あり」の中で心の友として音楽を鑑賞するとなると、当然そういう区分も“あり”なのだろう。

となると「80」はクラシックよりもむしろジャズに向いているのかもしれない。そういえば、11日(月)にお見えになったKさん(福岡)が、「80はクラシックよりもジャズに向いてますよ」と何気なく仰っていたが、その時は意外な言葉だと受け取めたがこれで合点がいく。

ジャズにはつきもののベースの重量感さえ気にしなければ、あのあっけらかんとした抜けのいい音は明らかにジャズ再生に向いていて、「エラ&ルイ」のサッチモの突き刺すようなトランペットの音はまるで「80」の独壇場。

ま、そういうわけでつまるところ「オーディオは百人百様」ということを、しみじみと噛みしめた今回の試聴会でした(笑)。

ところで、仲間が持参したピアノソナタ32番の演奏者は「シフ」だったが、「内田光子さんの32番もいいよ」と皆さんに聴いてもらったところ、大好評。32番は若い頃に傾倒していた影響でバックハウスをはじめ12名の演奏者のCDを持っているので自分の十八番みたいなもの。

         

ベートーヴェンが「ピアノソナタのジャンルにおいてはこれですべて表現し尽くした」とされるこの32番の深遠なソナタは旧来の形式の枠にもとらわれることなく、わずか二楽章の編成であるが、終わりの部分などはまるでジャズのノリそのものといったところで、演奏者の個性が問われるところ。シフも内田さんも演奏時間が18分のところをバックハウスは5分も短縮して13分で目くるめくように駆け抜けていく。

なお、最後になって聴いてもらったマリア・ジョアン・ピリスの弾くモーツァルトのピアノソナタ全集(6枚組)も非常に評判が良くて皆さんウットリの境地。個人的には現代最高のピアニストはピリスに尽きると思っている。これもコピー盤のリクエストが相次いだが「法律違反になるからダメ」の冷たい一言で一同快く納得(笑)。

場所を変えての「飲み会」はいつものように談論風発で非常に楽しかった。そのうち古い真空管が話題になって仲間の一人から「昔の真空管は使用頻度にかかわらず、外気と接触しているガラスを通して内部の真空度が落ちている可能性があるので手を出すのは考え物だよ。」

そういえば「1950年代のWE300Bよりも1980年代のWE300Bの方がヘタっていないので安心」という噂を聞いたことがあるが、あながち否定できないようだ。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゲーム感覚

2013年11月17日 | 独り言

ブログをやってる人はご存知のように、記事を投稿すると翌日の早朝に「アクセス解析」(グー・ブログの場合)が行われ、どういう記事がどのくらい閲覧されたかという「ページごとの閲覧数」が掲載される。

はたして自分の投稿した記事がいったいどのくらい反響をよんだのか、これを見るのもブログを続けている理由のひとつで秘かな楽しみとなっており、いわばゲーム感覚みたいなもの。

せっかく登載した以上、出来るだけ多くの人に見てもらいたいのは誰でも同じだと思うが、かなり時間をかけ意気込んで作成した自信作がそれほど伸びなかったり、やや肩の力を抜いて短時間で書きなぐった記事が予想外にポイントが多かったりと、世間との感覚のズレもなかなか面白い。

一般的な社会常識の中で自分がはたして“まともな感覚の持ち主”かどうかのひとつの尺度にもなる(笑)。

ただ所詮オーディオ関係の記事は専門的かつマイナーな趣味なので限界があって一度読みであっさり消え去っていく運命にあるが、意外に長続きするのが社会で広く話題になったテーマを扱った記事。

たとえば「”ちあきなおみ”はなぜ歌わない」(2009.11.11)などはいまだに過去の閲覧記事の常連になっていて永遠のベストセラーになっている。間違いなく、この「音楽&オーディオの小部屋」ブログの最大のヒット作といっていい。

そして最近やたらに多いのが4か月前の7月20日に投稿した記事「スウィート・キャロライン」。

ちなみに15日の「アクセス解析」では最新作の「海外で活躍する日本人」が閲覧数「111PV」のところを、「スウィート・キャロライン」は第2位の「69PV」と大健闘。

その原因といえばいわずとしれた「キャロライン・ケネディ」女史が駐日大使としてこのほど正式に来日されたことによるもの。

ご承知のようにアメリカの国民的歌手ニール・ダイアモンドが歌った「スウィート・キャロライン」はこのケネディ女史が11歳のときに「ライフ」誌の表紙を飾ったことにちなんで作曲された経緯がある。

今シーズンのMLBワールドシリーズを制覇したレッドソックス(フェンウェイ球場)の7回裏のテーマ音楽としても有名。

ちなみに「スウィート・キャロライン」でグーグル検索してみると、自分の記事が1頁目に出てきたので、その余波でこの記事にアクセスされた方が多いに違いないとにらんでいる。

検索で1頁目に載っているとこういうメリットがあるが、1頁目か2頁目に載るかはこちらではコントロールが利かないのでまったくの他人任せなものの、この順番はいったい誰が決めているんだろうと、いつも疑問に思っている。

ところで「ヤフー」の検索ではどうだろうか?

おそらく「ヤフー・ブログ」(自分はグー・ブログ)を利用している人を優先するはずで、きっと2頁目以降に掲載されているだろうと意地悪く今度はヤフーで検索してみたところ、これもまた1頁目に自分の記事があった。

オッ、意外にも公平だ!(笑)。

ま、1頁目に載ろうと載るまいとそれほど騒ぎ立てることはないのですがね。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海外で活躍する日本人

2013年11月15日 | 読書コーナー

海外で活躍する日本人を見るのは実に楽しいし、うれしくなる。「どうだ、日本民族は優秀だろう!」という気が湧き起こる。おそらく誰にでも心の奥深く眠っている愛国心というものの成せる業だろう。

最近話題になった日本人はMLBのレッドソックス優勝に貢献した「上原浩二」投手、そして先日のNHKスペシャル「日本人船長(コマンダー)」(11月10日)で放映していたが、「国際宇宙ステーション」の日本人初の船長となった「若田光一」さんがすぐに浮かぶ。

ここでふと、以前のブログで「宇宙飛行士」の話題を取り上げたことを思い出した。調べてみると2010年9月の記事だった。もう3年以上も前のことで、多くの方々の忘却の彼方にあることは必至なので改めて「時の話題」として掲載させてもらおう。

☆「宇宙飛行士選抜試験」(2010年6月 光文社刊) 

2008年2月、10年ぶりとなる宇宙飛行士の募集が日本の宇宙研究・開発を担う「JAXA」(日本宇宙航空研究開発機構)によって発表された。

その結果、応募総数は963人に達し、その後1年間の選考を通じて一次選抜で230人、二次選抜で48人、三次選抜で10人に絞り込まれ最終的には2名が合格という”思わずため息が出る”ような厳しい選抜試験で量もさることながら受験生の「質」において際立っている。

本書はこの選抜試験の取材を初めて許され、さらに候補者10人に絞り込まれた最終試験(日本とアメリカでの面接及び実技選考)に密着取材したNHKの番組スタッフによるドキュメンタリーである。

ざっと一読のつもりが、とうとう寝不足になるほど熱中して一気に読み上げてしまった。


人生に「試験」はつきものだが「出来のいい人」は別にして実にイヤなもの。そうはいっても避けては通れないものだし、その結果ほど人生航路を大きく左右するものはない。

たとえば入学試験、就職試験さらには資格試験・・・。「お見合い」だって面接試験の一つかも。

振り返ってみて、もし、あのとき、あの試験に合格(失敗)していたら今の人生は根底から覆っているという方は実に大いのではなかろうか。

その試験にしてもいろんなレベルがあるが、まあ「宇宙飛行士」の選抜試験ほどハイレベルなものはあるまい。

さて、どういう試験が行われるのだろうか。


まず宇宙飛行士に求められる資質とは?

 「ストレスに耐える力」

 「リーダーシップとフォロワーシップ」

 「チームを盛り上げるユーモア」

 「危機を乗り越える力」

以上の4点について選び抜かれた最終選考者10名に対し、7人の「資質審査委員」たちによって徹底的な考察が展開されていく。

因みにこれら10名の職業の内訳は次のとおり。

パイロット4名、科学者3名、医師2名、管制官1名で全員が30代。因みに科学者のうちの1名はずっと以前に狙撃されて瀕死の重傷を負われた国松元警察庁長官のご子息も含まれている。

なお、これまでの日本人宇宙飛行士は8人、うち毛利さん、向井さん、土井さんの3名は50代半ばを過ぎていて事実上引退。

現在、日本のエースとして活躍しているのは「若田光一」さん(前日本航空整備士、九大航空工学科卒)で、既に3度の宇宙飛行経験を経験し、宇宙空間の長期滞在者としても世界でトップレベルの経歴を誇っている。

NASAの評価でも最高ランクとされ、すでに「国際宇宙ステーション運用部門」の重要なリーダーに就任するなど、将来の〔宇宙船の)「船長候補」として大いに期待されている。(今回のロケット打ち上げで実現!)

今回の選抜試験も、この若田さんの活躍を背景に「船長になりうる最高の人材」を選抜することに主眼が置かれた。

「どういう人材を択べば船長候補になれるのか」、JAXAには過去の若田さんの選抜試験を通して確実な手ごたえがあったという。

さて、上記の4点を把握するために実に興味深いテストが連続して実施されたがひとつ、ひとつ、ていねいに紹介したいが長くなるので残念ながら省略。

とはいえ、結論としては超人が華々しくその天才振りを発揮するイメージでも、凡人には理解できない難解な試験が繰り広げられるわけでもなかった。

要約すると、「どんなに苦しい局面でも決してあきらめず、他人を思いやり、その言葉と行動で人を動かす力があるか」

つまり「人間力」を徹底的に調べ上げる試験だったのである!

つまり何も特別なものではなく「人間味に溢れ、焦らず奢らず地道に各課題をまんべんなくこなしていく」ような人材で、これは実社会でも一番求められるタイプ。

つい最近、司馬遼太郎さんの「覇王の家」「関が原」「城塞」の戦国シリーズを読んだときの感想もそうで、覇権を争った戦国武将たちの命運を左右したのも各人の「人間力」だと痛切に感じた。

いかに時代が変わっても「人間力が基本」というのを改めて思い知らされたわけだが、現代においても、どんなに学業成績が優秀で学歴が良くても「実社会」に出ると”それほどでもない”ケースが沢山見受けられるのもこれでおおかた説明がつく。

また、学校の先生をはじめ公務員や企業などでストレス耐性の弱い人物の長期休職が増加傾向にあり「大きな損失」と喧伝されているが、採用するときに「人間力」を試す試験をみっちりやっておればある程度防げる気もする。

もっとも、自分だってあまり偉そうなことは言えない。「人間力」にやや乏しいし、学業成績もあまり冴えなかったし~(笑)。

最後に、既にご承知のとおり募集から1年間の選考を経て2009年の2月に発表された合格者は2名ともパイロットだった。

一人は自衛隊のF15戦闘機の操縦士、もう一人はANAの副操縦士。結果的に即戦力として通用し、職業柄から取り返しのつかない絶体絶命の境地に対して諦めず、瞬時に対処する能力に長けた人たちだったのは興味深い。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一期一会の音

2013年11月14日 | オーディオ談義

今さら言うまでもないことだが、この世にはオーディオ機器が山ほどあふれかえっている。しかもCDプレイヤー、アンプ、スピーカーなどシステムを構成する機器も実に多岐にわたっていて、オークションに出品されているものだけをとってみてもいったいどのくらいの機種があるんだろうかと、ちょっと想像がつかない。

こういう中からいろんな機種を選択して組み合わせながら自分の気に入った音を出すというのは、よく考えてみるとたいへん根気のいる作業である。確率からいってツキにも大きく左右されることは疑いを容れない。

“たまたま”出会ったオーディオ機器を後生大事に使いながら、「もっといい組み合わせがあるんだろうが、試聴する機会も限られているし、ま、これでいっか」というのが一般的なオーディオマニアの現状ではなかろうか。

しかし、一方では自分のように簡単に諦めない人種もいる。

オーディオ評論家はあまり当てにならないので、少しでも実証体験を増やそうと日頃から人様のお宅を積極的にお伺いして実際に試聴させていただき我がシステム編成の指針にさせていただいているわけだが、非常に参考にはなるものの同じスピーカーを使っていない憾みがあってどうしても隔靴掻痒(かっかそうよう)の感が否めない。

その点、オーディオ仲間のKさん(福岡)は同じスピーカー「AXIOM80」(以下「80」)の愛用者なので話がスムーズに通じて実に参考になる。

去る11日(月)はKさんとの待ちに待った試聴の日だった。

11時から17時頃まで昼食をはさんで、延々と、そしてみっちり我が家のシステムの「華」ともいえる「80」と「JBL375ドライバー」に組み合わせる真空管アンプの実験を行ったが実に収穫多き日となった。

Kさんに持ってきていただいたアンプは日常的にご自宅で愛用されている真空管式のプリアンプとパワーアンプ各1台。

           

            

真空管アンプに違うブランドの真空管を入れ替えて試聴する「球転がし」はよく聞く話だが、「アンプ転がし」の方は重たい機器を持ち上げたり、据えつけて結線作業をやったりで、とても面倒で簡単に出来ることではないし、一人でやってもちっとも面白くないが、仲間がいると実にやりがいがある。

実際にやってみた結果、日頃、鳴らしているアンプをプリ、パワーともにそっくり入れ替えて聴くのだから音質が変わるのは当たり前だが、これほど激変するとは予想だにしなかった。もちろん、音の良し悪しは別の問題でまるっきり違う音の世界を知るだけでも非常に貴重な経験だった。

マニアにとってシステム環境さえ許せば、そして面倒に思わなければ、たまには仲間から別のプリとパワーアンプを持ってきてもらって入れ替え試聴してみるのも大いに勉強になるように思う。

今回はまずプリアンプを固定し、これに持ってきていただいた真空管アンプ「VT25A」、それに我が家の真空管アンプ「WE300B」、「PX25・1号機&2号機」、「2A3・1号機&2号機」、「VV52B」と計7台のアンプをとっかえひっかえ組み合わせたがそれぞれの個性が咲き乱れてまさに百花繚乱だった。

いろんなテストCDを試聴したが、圧巻だったのは「VT25A」アンプと「80」のコンビで聴いたときの「我が母の教え給いし歌」(歌唱:米良美一、原曲ドボルザーク)だった。

長いことオーディオをやってると、あの日あの時、あのアンプとスピーカーで聴いた音が耳に残って忘れられないという経験をするものだが、今回のこの曲が後々語り草になるほどの「一期一会の音」
だった。

完璧な静寂の中に音がスッと立ち上がって清澄な調べが音響空間を支配する。まるで録音時の雰囲気まで再生するような、それはもう筆舌に尽くしがたいほどで、あまりの“音の佇まい”に思わず胸がジーンとなって目頭が熱くなったが、そっとKさんを伺うとこれまた目が赤くなっている!

「素晴らしい音ですね。アンプもいいのですがやはり80で聴くボーカルは最高です。お互いに空前絶後のスピーカーに巡り会えて幸運でした。これでもうオーディオ人生に悔いを残すことはないでしょう。」

歳のいった大の男が二人で涙ぐみながら慰め、励まし合って自己満足の世界に浸っているのを傍から見るとさぞかし珍妙な光景に映ることだろう(笑)。

スピーカーはアンプ次第で生き返ったり“死んだふり”したりするのを改めて確認したわけだが、我が家のWE300Bアンプだって負けず劣らずの善戦だった。前々回のブログ「真空管アンプの醍醐味」に記した初段管「松下の6201」(12AT7)の性能にはKさんも舌を巻かれていた。

またPX25アンプもお気に入りのようで、「さすがに三極管の双璧と言われる銘管です。WE300Bアンプとは“いい勝負”であとは好みの問題でしょう」。


なお、人それぞれに何らかのポリシーがあるものだが、Kさんの持論は「昔の能率の高いSPユニットを使う限り、大パワーは百害あって一利なしです。ノンNFBの小出力アンプを使うのがうまく鳴らすコツです。」で、それを実際に確認してみた。

我が家のJBL3ウェイシステムの低音域用に使っているJBLのD130(口径38センチ、エンクロージャーはウェストミンスター)は能率が103dbとコーン紙のユニットにしては非常に能率が高いがこれに真空管アンプ「2A3・2号機」(出力2~3ワット)を組み合わせたところ、非常に“まともな音”が出たのには驚いた!

正しい信号をきちんと送ってやれば、SPユニットは素直に言うことをきく。
 

来たる16日(土)には高校時代の同窓仲間(福岡)3人と7月上旬以来の定例の試聴会を開催する予定で、「今度こそ“いい音”を聴いてもらおう」と張り切っているわけだが、この11日の試聴は「ベストの組み合わせ」を再考するのに絶好の示唆を与えてくれた。

重たいアンプをわざわざ持参していただいたKさんに改めて感謝~。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真空管アンプの醍醐味

2013年11月10日 | オーディオ談義

「松下 ナショナル 6201 2本 金足 SQ 12AT7WAです。自作のアンプでノイズ等の問題なく動作していたものです。NHKのマークが片方の管にあります。問題はないと思いますが、すみませんが、ノークレーム、ノーリターンでおねがいします。 」

           

このところオークションで落とした真空管が掘り出し物ばかりなので、波に乗った勢いで電圧増幅管「12AT7」を探していたら、目についたのが上記の殺し文句。

先日のブログで取り上げたように真空管「6DJ8」の最高峰は松下のNHK仕様「7308」と勝手に決めつけたわけだが、同じ「松下、NHK仕様」とくれば特上品であることは間違いなし。しかもお値段の方は開始価格が2000円という信じられないほどの安さ。

すぐに入札して待つこと数日、とうとう落札期日(11月3日)になっても新しい入札者は現れず2000円でそのまま落札。どうもテレフンケンやムラードなど海外有名ブランドに固執される方が多いようで、松下のほんとうの実力をご存知ない方が多いように見受けられる。当方にとっては非常にありがたい話だが(笑)。

しかし何といっても中古品なので正直言って実際に挿してみなければ分からない、雑音が出てハズレになってもこの価格なら仕方がないと、半ば諦め気味だったのも事実。

落札価格にふさわしく、保証のない定型外郵便(送料200円)をお願いして、到着したのが昨日(9日)の午後のことだった。

この12AT7は「AXIOM80」を駆動しているWE300Bアンプ(モノ×2台)の初段管に使用しておりかなり重要なポジションを占めている。

さっそく、使用中のシーメンスの12AT7(ECC81)と差し換えて試聴してみたところ、アッと驚くほどの変わり様。

何と形容したらいいのだろうか。一段と音ヌケが良くなってストレスフリーとでもいうようにスピーカーからの音離れが抜群!たった2000円の投資でこれだけ良くなるのだから真空管アンプの醍醐味ここにあり。

さっそく11日(月)にご来訪予定のKさん(福岡)にも比較試聴してもらうことにしよう。

「AXIOM80」がスピーカーケーブルや真空管の交換で前回のときとは明らかに違っているはずで、はたしてKさんのご感想はいかに~。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「芸術作品」の域に達したオーディオ機器

2013年11月08日 | オーディオ談義

前々回のブログ「オリジナル版と復刻版の違い」でSPユニット「AXIOM80」(以下、「80」)に関する記事を登載したところ、さっそくオーディオ仲間のSさん(福岡)からメールが届いた。

ちなみにSさんは同じ「80」でもオリジナル版を愛用されている方で、お許しを得たのでそっくり掲載させていただこう。

「私がAXIOM80購入時に調べたユニットの見分け方の情報があったので、ご参考までに添付しておきます。確かに、カンチレバーもコーン紙もオリジナル版は復刻版よりも軽く造られています。反面、復刻盤は耐久性を重視したのかも知れません。それと、第Ⅰ期のものはマグネットの材料と磁束も異なるようです。ただしその分、時代が経っているのでかえって復刻版より磁束が落ちているかも?ですが。」
 

   

   第Ⅰ期

    第Ⅱ期

   第Ⅲ期

 

    オリジナル

 初 期

後 期

   復 刻

製造年

 

 

 

1950年代末

~1960年代前半

 

1960年代

   後半

 

1970年代

   前半

 

1984年

~1985年

製造工場

 工場名

 場所

 

WEMBLEY

ミドルセックス州

 

WEMBLEY

ミドルセックス州

 

HAVANT

ハンプシャー州

 

HAVANT

ハンプシャー州

マグネット

形状

材質

総磁束

磁束密度

 

Rエッジ

チコナル

62,000maxwell

17,000gauss

 

   45°角エッジ

   アルニコ

   58,000maxwell

16,000gauss

 

  45°角エッジ

  アルニコ

   不明

      不明

カンチレバー

材質

厚さ

 

  ベークライト

    薄

 

ベークライト

 薄

 

強化繊維PT 

  厚

 

  強化繊維PT

    厚

高域用サブコーン

 材質

 色

 

 ベークライト

茶or 黒

 

ベークライト

  黒

 

パルプ

 

   パルプ

    黒

フレーム

 材質

 製造法

 塗装

 

亜鉛合金

ダイキャスト

無塗装

 

亜鉛合金

ダイキャスト

    無塗装

 

   鉄

   鋳造

   グレー塗装

コーン紙

 形状

 厚さ

 コルゲーション

 

 折返しエッジ

    薄

   表・裏

 

折返しエッジ

  薄

 表・裏

 

切放しエッジ

  厚

  表

 

  切放しエッジ

    厚

    表

さらに追加して、ご自身が所有されている(最初期の)「80」の写真を添付していただいた。機能に徹した“姿かたち”と見た目の美しさが渾然一体となって実に素晴らしい。

     

ここまでくるともうオーディオ機器というよりも芸術作品に近い絶対に他のユニットでは出せない音がするのも十分頷ける。

Sさん、貴重な資料をどうもありがとうございました。

同じ「80」でも 作られた年代によってこれほど多様なタイプがあるとは夢想だにしなかったが、自分が持っている復刻版とオリジナル版との間にはおよそ30年もの開きがあるのだから、大きな違いがあっても当たり前だと納得。

それぞれに違った良さがあると思うのでオリジナル版にはないところを復刻版から引き出してやるのも楽しみのひとつ。けっして負け惜しみではありませんぞ(笑)。

その一環として昨日(7日)の午前中、「80」に使っているSPコードを代えてみることにした。廉価版のベルデンの普及タイプからPADの「コロッサス」へ。

            

このPADのSPケーブルは10年以上も前に購入していたもので、なにぶん線径が太いものだから我が家のようにシステムが3セットも同居するとSP周辺がコードだらけになり取り扱いが不便だし、見た目も悪いので倉庫にずっと保管していたのだが、いよいよ“なりふり構わず”の心境(笑)のもとに「出番」がやってきたというわけ。

端末が錆びついていたので、計8か所(2か所×4本)の処理に小1時間ほどかかったものの、ようやくWE300Bアンプ(モノ×2台)とオリジナルエンクロージャーに容れた「80」との接続が完了して試聴してみた。

最初のうちは、あまり変わり映えしないと思ったが時間が経つにつれ、明らかに音が豊かになっていく!長年鳴らしていなかったので、エージングが不足していたのだろう。

「叩けば叩くほどよくなる法華(ほっけ)の太鼓」ではないが「80」の今後の変身が楽しみ~。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「コネ」社会の功罪

2013年11月06日 | 独り言

テレビの司会者などをやってる「みの もんた」の次男が窃盗容疑で逮捕・自供したことで責任を取る形で「みの」が「朝ズバッ」などの報道番組を降りたのはつい最近のこと。

30歳を越えた社会人の子どもが不始末をしでかしたからといって、はたして親が責任をとらねばならないのかという、疑問が残るが、「みの」に対する世間のバッシングは相当なものだったようだ。庶民にはとても考えられないような高給取りなので一部「やっかみ」も混じっているような気もしないでもない。また“日頃往生”の面もあったのかも。

それはさておき、このニュースに関連して明らかにされたのがこの次男が親のコネで「日本テレビ」に就職していた(現在は退職)こと。これにはちょっと考えさせられた。(ちなみに「みの」の長男も某テレビ局に勤めている。周知のとおりテレビ局は就職試験の最難関とされている!)

人生ははじめから最後までそれこそ、大なり小なり「選択の連続」だと言っても過言ではないが、振り返ってみるととりわけ大きな分岐点になると思うのは「学校(専門コース)」「就職」「伴侶」だと思うがどうだろうか。

その重要な就職の選択にあたって個人の才覚と努力には何ら関係のない「コネ」がおおっぴらに通用するというのは、社会の活力を維持していくうえで非常に好ましくない!「機会均等は民主主義の基本だ」と、声高に叫びたいほど(笑)。

しかし、世の中の「コネ」に対する考え方や実際にどのくらいまかり通っているのだろうかという、実態を知っておきたい気もするところ。

そういうときに目に留まったのが新聞の下段によく掲載されている週刊誌の見出し。

10月25日号の「週刊ポスト」に「こんなにコネがまかり通っている日本というシステム」~持っている者だけが得をする~。

                 

週刊誌は滅多なことでは購入しないのだが、発売初日にわざわざ書店に出かけて行って手に入れてきた。結構、物見高いのである(笑)。さっそく特集記事の部分を(32~37頁)を読んでみたところ、「コネ」に対する認識がチョッピリ改まった。

「政界、官界、財界のトップ人事からこれから本格化する学生の就職活動戦線まで、日本社会ではあらゆる場面に“コネ”という見えざる力が働いている。それはこの国の絶対悪なのか、あるいは必要悪なのか。建前と本音が複雑に絡み合う“コネがまかり通る社会”の功罪を徹底的に解明する。」

相変わらず週刊誌独特のトーンが冒頭から開始~。

そして「不思議なことにそれほどコネに対する嫌悪感や批判が国民に共通しているのとは裏腹に、大真面目にコネをなくそうと言い出す人は少ない」

オヤオヤ、どちらかといえば「コネ肯定論かな?」と、読み進むうちにとうとう次の箇所へ。

「実は“コネ採用”は企業にとっていいことづくめ。海外の方が濃密なコネ社会という現実がある。」

テレビ局、広告代理店などはコネ採用の最たるもののようで、「スポンサー関係からの縁故採用によって、安定した広告料が見込める」というから、もう“何おか言いわんや”。

出版業界の老舗「岩波書店」の採用基準は「岩波書店発行の著者の紹介状あるいは書店社員の紹介があること」だそうで、「コネくらい自分で作ってこい」というわけ。

結局、「コネによる採用や出世は不公平だとする意見が正論であることは間違いない。だがコネがまかり通る社会が脈々と続いている理由は、コネによって築かれる“都合のいい仕組み”を、多くの日本人が認めているからで、その矛盾した2つの考え方に折り合いをつけることこそコネ社会を生きる重要な知恵なのかもしれない」

に集約されるようだ。

ところで、せっかく買った週刊誌なので目の毒になる記事もあるが「博覧強記」(?)がモットーなのでザット読み進んだところ「女子高生刺殺事件~ばらまかれた復讐ポルノの残酷~」という記事が目を引いた。

例のフェイスブックを通じて知り合った男性と交際の挙句、別れ話を切り出したところストーカー行為をされ、とうとう刺殺された女子高生(東京都三鷹市)の事件である。これもつい最近の事件。

女優志望の才媛で、近所からも礼儀正しい子として極めて評判が良かった美貌の女子高生がなぜ殺されねばならなかったのか。ご両親の嘆きはいかばかりかと心中察するに余りあるが、「なぜフェイスブックで知り合ったような氏素性の分からない人間を簡単に信用してしまったのか」という悔恨だけが残る。

ま、年ごろなので未知の世界を垣間見たいという好奇心によるものだろうか。とにかく、憎むべきは犯人で、はじめからこういう人間と関わりあいにならないように用心するに越したことはない。

我が家にも未婚の一人娘がいる!幸い、今回の3連休で帰省してきたのでこれを「生きた教材」として使わせてもらうことにした。

「ほら、ネットで簡単に人を信用するとこんなことになるからね。この部分をちゃんと読んでおきなさい。」

「キャッ、お父さん、こんなの読んでるの!!  該当の部分だけ読んでおくからね~」

どうか悪い虫が付きませんように~(笑)。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「オリジナル版」と「復刻版」の違い

2013年11月05日 | オーディオ談義

「珍しいことにAXIOM80ユニット(以下「80」)がオークションに出品されてます。写真で見る限りどうも希少品のオリジナル・ユニットのようですが、確認していただけませんか?」と、同じ「80」愛好者のKさん(福岡)に連絡をとったのが10月31日(木)のことだった。

すると「ちょっと(電話を)切らないで待ってください。パソコンを開いてみますね~。ああ、これは間違いなくオリジナルです。それにとても貴重な初期のものです。きちんと音が出ると書いてありますからコーン紙には異常がないみたいですね。」

そこで、「現在の入札価格は22万円となってますが、どのくらいまでなら引合いますかね。場合によっては手持ちの復刻版の2セットのうち、1セットを処分して入れ替えてもいいと思っているのですが。」と、追加の質問。

Kさんからは「オリジナルの程度のいいものなら軽く30万円を越えますが、このユニットは全体的にサビもありますし、手入れも行き届いていないみたいです。せいぜい25万円までといったところでしょう。ただし、オリジナル版と復刻版の音の差については私の立場からはなんとも言えませんので、わざわざ買い直されるのがいいのかどうかはどうかご自身でご判断を・・・・」

           

オークションに出品されていた「80」の写真である。赤の塗装の色などが明らかに手持ちの復刻版と違うので確認してみたわけだがやはりオリジナル版だった。

「ウ~ン、入札しようか、しまいか」迷うなあ。落札期日は11月1日(金)の22時51分なので、残された時間は丸1日。

「80」はなにせ極めて繊細なツクリなので、非常に故障が起きやすい。そこで常時安心して試聴するためにスペアを確保しておかねばと、随分苦労して数年前にようやく「80」をもう1セット手に入れたわけだが、残念なことに手持ちの2セットはいずれも復刻版。

それにひきかえ、同じ「80」愛好者のKさんやSさん(福岡)のものは「オリジナル版」(笑)。

ここで問題になるのは「いったい両者のどこが違うか」だが、Kさんによると主にコーン紙の材質が違っていてオリジナル版の方が比較的軽目に作ってあるそうで、これは(コーン紙の)振幅運動(=音声信号に対する追従性)にとって、より有利であることは間違いない。

たとえば、あの口径38センチのSPユニットが持つ音の重量感とは裏腹の「反応の鈍さ」はコーン紙の重たさによるところが大きい。

したがってコーン紙の材質は当然の如く音質の差にも関わってくるわけだが、巷の噂、ことにオリジナルの所有者の間では「復刻版に比べてオリジナルの方が断然音がいい」と、されている(笑)。

実は以前にも、管球プリアンプの名器とされる「マランツ7」の復刻版を手に入れたことがあり、(今では友人の元に嫁いでいるが)、オリジナル版とどこがどう違うんだろうと気になったことがある。そういえばマッキンの真空管アンプC22や275も復刻版が闊歩しているので、この世界ではそれほど珍しいことではない。

一般的に家庭用の電化製品などでは、テレビなどを嚆矢(こうし)として技術革新によって新しいものほど性能が良くなっていくが、オーディオの世界はまったく逆の事例が多い。

真空管の性能だって古いものほどいいし、さらに言わせてもらうならクラシック音楽だって名指揮者や名演奏家が綺羅星のごとく並んでいた1940~1950年代の演奏が黄金時代とされているのだから”むべなるかな”である。

SP → LP → CD → PC(ハイレゾ)と変遷してきている音源の再生も、ほんとうに良く出来たSPやLPを聴かせてもらうと、「周波数レンジの拡大とはいったい何ぞや?」という疑問が自ずと湧きあがってくるはず。

オーディオに限っては過去を辿ることがけっして単なる懐古趣味とは言えないのである。

さて、オークションの方だが結論から言えば散々迷った挙句、キッパリ諦めることにした。せっかく手に入れた復刻版なので「縁」というものを大切にしたい気がしてきた。もちろん、お金も惜しいし~(笑)。

第一、程度の方も極めて良好だしこれから鳴らし込めば込むほど、もっと音もよくこなれてくるに違いない。

それに大なり小なり、常に何らかの負い目と不満を抱えながら趣味を楽しむのもこれまた“よき哉”である。

ほら、人生だって100%満足とはいかないことばかりでしょうが(笑)。

最後に申し添えておくと結局、この「80」の落札価格は231,114円、入札件数は79件だった。Kさんに、その旨連絡すると一言、「手を出さなくて正解ですよ」。

ちなみに出品者は「80」の本来の値打ちを知らない雑貨屋さんのようで開始価格は何と1000円だった。したがって、今回の場合は超安値での落札もありえたわけで、こういう事例をみると今後オークションからは片時も目を離せない気になってくる!


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

素人さんの「耳」と「口」は怖い

2013年11月03日 | 独り言

我が家の台所にある包丁は「銘品」を使ってないのですぐに切れ味が鈍くなる。

これまでは2~3か月おきに飛び込み訪問してくる「砥ぎ師」さんに任せていたが、最初の頃は丁寧な仕事をしていたものの、ここ数回ほどはすぐに分かる程の“おざなり”の仕事なので別注することにした。

家内が勤めている会社の同僚(仮にNさんとしておこう)のお兄さんが大工さんで、砥ぎの方もなかなかの腕前とのことで、物は試しにと3本ほどの包丁を砥いでもらうことになった。

そのNさんが我が家に包丁を受け取りに見えたのが去る27日(日)の午後のこと。これまでに何度も顔を合わせているのでお互いに気安く冗談を言い合える仲である。

丁度、部屋に閉じこもって音楽を聴いていたところ、しばらくして家内が「Nさんが音楽を聴かせてくれと、言ってるけどいいかしら」。

日頃、亭主の趣味には無関心で、どちらかといえば冷たい視線の持ち主だが、こういうときはまあ、四の五の言わずに点数を稼いでおくに越したことはない。


「ああ、お安い御用だが、いったいどういう曲が好きなのかな?」

さっそく部屋に入ってこられたNさんにお伺いすると「ビートルズを聴かせて欲しい」とのこと。女性に年齢を訊くのは失礼だが、ビートルズ世代ということで読者の方々にはおよそ想像がつくことだろう。

幸い、ビートルズの名曲ばかり「27曲」を集めたCDを持っていたので鳴らしてあげたところ大喜び。

日頃の「モーツァルト」から「ちあき なおみ」までの幅の広さがこういう時にものをいう(笑)。ちなみに使用したシステムは「AXIOM80」。

ビートルズをほどほどに切り上げて、今度は「カーペンターズを聴かせて」とのことで、これもすんなり移行。

            

しばらく聴いた後に「システムが変わると曲目のイメージも変わりますよ。今度は別の装置で聴いてみましょうかね」と、JBLの3ウェイシステムに切り替えたところNさんからすぐに反応があった。

「何だかゴチャゴチャしてる感じ!元の装置の方がすごく音が澄んでいて断然聴きやすかったわ。悪いけどまた元に戻してくれないかしら~」

エーッ、こんな素人さんでも音の違いが分かるのかと驚いた!

大規模編成のオーケストラとなるとまったく違和感を感じないJBLシステムだが、ことボーカルとなると歌手がカバみたいに大きな口を開けて歌う(笑)のが悩みの種だったが、こんなに“あけすけ”に指摘されるとむしろ爽快感さえ覚えてしまう。

「素人さんの耳と口は怖い」(笑)。

先日(26日)の福岡での試聴で我が家の低音域の対応には一考を要すると思っていたのだが、素人さんから指摘を受けるようではいよいよ(システム改変の)踏ん切り時かなあ。

とりあえず、2つの対策を講じてみた。

まず手始めに低音域用(JBLのD130ユニット)のアンプをケンウッドのDCアンプ「01ーA」から真空管式の「PX25 2号機」へ代えてみた。

       

いたずらにパワーを欲張らず、イギリス流の「品の良さ」で勝負することに。クロスオーバー周波数は今までどおりコイルを使って200ヘルツ前後(6db/oct)でハイカット。

次に、中高域用のユニット「JBL375+075」を1台のアンプで鳴らしていたのをそれぞれ別のアンプで鳴らすことにした。これで3ウェイ・マルチに移行。

低域用(D130) → 「PX25・2号機」  中域用(375) → 「2A3・2号機」 高域用(075) → 「2A3・1号機」

110db前後の高能率ユニットにはできるだけ小出力のアンプを組み合わせるというのがささやかなポリシー。

これで3台とも真空管アンプになったので音色のマッチングも不安なし。

「エラ&ルイ」のボーカル、大好きなモーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」(K364)などを聴いてみたが、随分とフルレンジの鳴り方に近づいている。これはいけそう!

昨日(2日)になって家内が言うのには「Nさんがお気に入りのCDを見つけたみたいで、また聴かせてもらうと張り切っていたわよ」。

「ああ、望むところだ。今度こそ倍返しだ!」(笑)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする