昔から憧れのスピーカーだった「CN191コーナーホーン」(ヴァイタボックス)を使っておられるUさん。
大のレコード愛好家で使用されているプレイヤーが「927ST」(EMT)、プリアンプがマッキントッシュの「MC22」、パワーアンプが同じくマッキンの「MC275」という豪華メンバーだ。
そのUさんが先日我が家にお見えになったときに、「AXIOM80」の繊細なヴァイオリンの音がいたく気に入られたご様子なので、「よろしかったら71系のアンプが遊んでますので1台お貸ししてもいいですよ。マッキンのアンプにはない音が期待できるかもしれませんね。」と、持ちかけたところ「それはありがたいですね。ぜひお願いします。」というわけで、めでたく話が成立。
この5月に「WE300Bシングル」が1年2か月ぶりに戻ってきたので、随分と71系アンプの出番が減ってしまったのも水を向けた理由の一つ(笑)。
さあ、どのアンプをお貸ししようか。71系アンプは3台あって「171シングル」をはじめ「71Aシングル」、そして「71Aプッシュプル」(ナス管4本使用)といろいろある。
「いずれアヤメかカキツバタ」といったところだが、相手が大物の「CN191コーナーホーン」となると選抜も厳しくなる。
散々迷った挙句、結局「171シングル」を持って帰っていただくことになった。とてもいい音色だし、使ってある真空管は1940年代前後の製造の滅多に手に入らない古典管ばかり使ってあって、何だか最愛の子供を旅に出すような気分だ(笑)。
初段管がMH4(マルコーニ:メッシュプレート仕様)、出力管が171(トリタン仕様)、整流管が480(SPARTON)、インター・ステージ・トランス入り(UTC:アメリカ)というシンプルな構成。
試聴後に、もし「大いに気に入った。ぜひ譲ってください。」と言われても、絶対に譲るわけにはいかないアンプだが、万一そういうことを言われたときはどうやってお断りしたらいいんだろうかと、つまらぬ取り越し苦労をしていたのが正直なところだ(笑)。
さて、2週間ほど経過してから「お返しします。」とUさんがアンプを我が家に持参されたのは去る25日(日)のことだった。
興味津々で「どうでしたか?」
すると、「ヴァイオリンは良かったのですが、どうしても(音を)押し出す力が弱くてイマイチでした。」との率直なご返事。
「そうですか・・・」とうれしさ半分、悲しさ半分といったところかな(笑)~。
実を言うと、Uさんの使っておられる出力が70ワット近くあるアンプと比べると、力感上ではたかだか出力1ワット前後のアンプが太刀打ちできるはずはないのだが、繊細さと音色の美しさで勝負できるかもしれないと淡い期待を抱いていた。
あのタンノイあたりの焦点のぼやけた低音ならうまくいきそうな気もするが、CN191の引き締まった音とは相性が悪かったようだ。
仕方がない。
さて、お見えになられたついでに我が家のウェストミンスターを聴いていただいた。中高音域に「AXIOM80」を設置してから初めてのお客さんである。
おそらく10人中9人までもが眉を顰めるであろう「JBLとグッドマンの組合わせ」という奴だ(笑)。
1時間ほど聴いていただいたのだが、全般的に違和感がなかったご様子でどうやら合格かなという感触を得たのはうれしかった。
「JBLは昔、オリンパスや4343を使ったことがありますが低音の収束具合がスパッと切れてしまう感じがして肌に合わなかったのですが、この内蔵されてあるD130は低音がグ~ンと伸びますね。この世で一番いい音はD130をフルレンジで鳴らした音だと聞いたことがあります。これはさすがに名器ですね。」
「ハイ、D130の低音域の収束具合がとても気に入ってます。スピーカーは箱次第でいかようにも変身しますが、ウェストミンスターの長大なバックロードホーンとはとても相性がいいようですよ。」
またCDに関しても、ご一言。「とてもいい音ですがCDシステムはどこのメーカーを使っているのですか?」
「ハイ、英国のdCSというメーカーです。潜水艦のソナー探知をデジタル解析する業務から発展してオーディオ界に進出したメーカーです。ただし、どんなに高級なデジタル機器を使ったとしてもレコードには適いませんので、これからも新たにCDシステムを購入する必要はありませんよ。」と申し上げておいた。
「そうですね。レコードを大量に持ってますので最後まで運命を共にするつもりです。」
日が変わって翌日の26日(月)には、所用があって熟練のアンプビルダーKさん(大分市)がお見えになったので、これまた聴いていただいたところ、「聴く限りではJBLのユニットが入っているなんてわかりませんよ。AXIO80との繋がりがとても自然ですね。」とこれまた合格。
これで、「D130+AXIOM80」の組み合わせが「自信」から「確信」へと変わったのは言うまでもない(笑)。