CD番号 エラート0630-12705-2(2枚組)
収録年 1995年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総 合 A- 洗練の極みに達しているが、もっと温もりが欲しい魔笛
指揮者 A- ウィリアム・クリスティ(1944~ )
管弦楽団 A- レザール・フロリサン
合唱団 A- 同上合唱団
ザラストロ A- レインハード・ハーゲン
夜の女王 A+ ナタリー・デッセイ
タミーノ A- ハンス・ピーター・プロホヴィッツ
パミーナ A+ ローザ・マニオン(MANNION)
パパゲーノ A- アントン・シャリンガー
音 質 A+
"聴きどころ”
☆夜の女王役、パミーナ役の女性陣が極めて充実
指揮者クリスティはニューヨーク生まれで大学で美術史やチェンバロを専攻した後、欧州に移り’79年にフランスでレザール・フロリサン(古楽器による演奏団体)を創設しバロックブームを巻き起こした。この録音はパリで収録されたものである。
評価を見て分るように全員A-以上ということで粒ぞろいの印象を受けた。
夜の女王役デッセイはこの超難度の二つのアリアを決して大げさではなく、さりげなく歌いこなして情感も表現できるところに好感がもてるしセンスの良さを感じた。
タミーノ役とパパゲーノ役は♯14のアーノンクール盤と共通だがこれも、好演だった。ブロホヴィッツは歌唱力に不足はないが、この盤では意識して感情を抑えた印象だが淡白すぎる。シャリンガーのバリトンは声量豊かで当代一流のパパゲーノ役だろう。
パミーナ役のマニオンも透き通った可憐なソプラノで、水準を突き抜けている。
3人の侍女の重唱もよく工夫されていた。
全体的に歌手の選定が見事にツボにはまっており帰するところクリスティの手腕だろう。リズムとテンポが非常に良くて緩んだところが見られない。台詞の抑揚にまでも細かいところに神経を使っている。
したがって演奏と歌声と台詞が自然なままに渾然一体となった感じで、これでやっと古楽器を使用する意味が納得できた。これなら、確かに大げさなオーケストラは必要がないと思わせる出来栄えだった。
洗練の極みに達した魔笛といっていい。