一週間ほど前の10月17日(木)に我が家のオーディオシステムの試聴にお見えになったY先生から昨日(25日)になってメールが届いた。(抜粋)
「お伺いしたときにお聞きした Mozart Violin Concertos No. 3/5は教えて頂いた演奏者、指揮者の組合せでCD版とLP版がオークションで見付かり、両方とも入手しました。LP版も又違った味があって楽しめます。
クラシックは日頃あまり聴いていないので名盤ならではの味は分かりませんが、名演奏には違いないと思いました。ヴァイオリンには他の楽器とは違う肉声を感じます。」
経緯を説明しよう。出発点はY先生が我が家に持参された次の本である。
この本の一節に次のような記述がある。(155頁~)
「JBL者の社長、ポール・ベンテがJBLの(最高機種の)エベレストD66000を設置したリビングで最初にかけた一枚は何だったのだろうか? と気になったので聞いてみると、すぐに立ち上がって取り出してきた一枚のCDがモーツァルトのヴァイオリン・コンツェルト3番&5番だった。」
なぜ、この曲目だったのかというわけだが、実に興味深い話なので少々長くなるが引用させてもらおう。
「耳鼻咽喉科医のトマティス博士による研究によると、人は生まれたばかりのときは完全な聴力を持っているが、成長する過程でひどく叱られたときの先生の声や嫌な思いをしたときの音、何か衝撃的なことが起こったときの雰囲気や人の声などに対して、耳はひとりでにその周波数をシャットアウトしてしまう習性がある。
いつのまにか知らない間に身体に聴こえていない音(周波数)の部分が出来てしまう。イヤだという思いを耳が体に入れまいとするからである。そのことが自律神経を正しく刺激しなくなり、具合の悪い箇所を呈してしまう。
トマティス博士はこの聴力の障害を回復するために音楽を用いる。そのため、人間の身体に影響を及ぼす音について、地球上のあらゆる音源を研究したのである。
風の音から水の音、各国の民族音楽、ジャズからポップス、バッハやベートーヴェンやワグナーなどを辛抱強く丁寧に試してみたのである。50年にもわたるその臨床と実験の結果、体に効果のある音は、何とモーツァルトただ一人だけであり、”モーツァルトの音楽でなければならない”という結論であった。(正しくはグレゴリオ聖歌とモーツァルト)」
そのモーツァルトの音楽の中でも顕著に効果があったのが「ヴァイオリン協奏曲の3番と5番」というわけ。これは大のモーツァルトファンにとって、実にうれしくなる話。
そういう経緯があって、Y先生から「モーツァルトのV協奏曲の3番と5番の名盤はどれですか?」と訊かれたので「不滅の名盤として今なお君臨しているのはコリン・デービス指揮、グリョミオー演奏のものでしょう」と、お答えしておいた。
そこで冒頭のY先生のメールにあったように、このコンビによるCD盤とレコード盤の両方を手に入れられたというわけで「いやあ、先生良かったですねえ!」
ただし、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は1番から5番まであるが、いずれも似たようなものでそれぞれの特異性はなく、すべてひっくるめてヴァイオリン協奏曲だとの思いをずっと持っているが、あの霊妙な美しさを湛えた5番の第二楽章は別格。
現在、手元にあるのはグリョミオーをはじめ、パールマン、オイストラフ、オークレール、クライスラー、ハイフェッツ、レーピン、メニューイン、ムターなど新旧入り乱れてのメンバーで、いずれも愛着があるが本書を読んだ後は“なおさら”のこととして毎日聴き耽っている(笑)。
ちなみに一説によると(モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は)6番と7番があると聞いたので、カントロフの演奏するものを購入して聴いてみたが、「これはとてもモーツァルトの作曲とは思えない。まったく似て非なるものだ。」との感を深くした。