中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,250話 仕事の生産性と睡眠時間の関係

2025年01月29日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「24時間働けますか」

いわゆるバブルの頃、こうしたCMがあったことを覚えている人も多いと思います。

毎年12月に日本生産性本部から労働生産性の国際比較が公表されています。先日、最新版のデータが発表されましたが、日本の一人当たりの労働生産性は1970年以降で最も低く、OECD加盟38カ国中32位です。この水準は東欧諸国と同等レベルであり、主要先進7カ国で最も低い値となっています。

日本で働き方改革が叫ばれるようになり、労働環境の質の向上と生産性の向上を目指すようになって久しいです。しかし、前述のように諸外国と比べて長年、日本の一人当たりの労働生産性が低いのはなぜなのでしょうか。実際、私が日々担当させていただいているタイムマネジメント研修等においても、仕事が予定通りに進まない(その結果、生産性が低くなっている)ことを問題としている受講者は圧倒的に多いと感じています。

日本の労働生産性が低い原因には様々なものがあるのだと思いますが、これに関して私が最近関心を持っているのは、筑波大学の柳沢正史教授の研究です。ご存知の方も多いと思いますが、柳沢教授は睡眠や覚醒のメカニズムを研究されているのですが、その中で各国の睡眠時間と生産性の相関についても調べています。

これに関して、先週1月22日(水)にNHK Eテレで放送されていたNHKアカデミア選に柳沢教授が出演されていました。その中で日本は諸外国と比べて睡眠時間が最も短く、6時間10分であり1時間近く少ないこと、一人当たりの労働生産性と睡眠時間には因果関係があるとの最近の研究結果が出てきていること、日本の労働生産性が低い理由には睡眠時間が短いことが大きく関係しているのではないかとのことでした。

柳沢教授によると、社員がよく眠っている会社の方が利益率が高いとのことで、「24時間働けますか」のように寝る間も惜しんで働くようなことは、世界的にはナンセンスとされているのだそうです。また、私たちの周りでも昼間に眠気をおぼえるという人は少なくないと思います。昼間に眠気があるのは本来異常なことであり、日本人は眠くなるのは仕方がないと思っているが、世界標準ではそれはおかしいということを認識することが大切だとのことです。

また、睡眠と記憶には密接な関係があり、エピソード記憶(文字にできる記憶)だけでなく、洞察力(経験したことから、こういうことだったんだと得られる力)も睡眠中に獲得できるとのことです。そのようなことからも睡眠は「量」が大切で、一晩で何時間眠るかが大事とのことでした。以前は睡眠の「質」について言われることが多かったように覚えていますが、最新の研究では違った結果になっているということなのです。

さらには、睡眠不足はメンタルヘルスやメタボなどについてもリスクを上げる要因になるほか、認知症やがんのリスクまで高めてしまうのだそうです。

正直なところ、睡眠がこれほどいろいろなことに大きく関わっているということに私自身とてもびっくりしました。同時に、私たちは自分の健康の維持とともに仕事の生産性を高めるためにも、睡眠時間を積極的に確保すべきであるということです。かつてのような寝る間を削ってでも働くことを求めるような風潮や、時間が余ったから睡眠をとるというような発想からは抜け出さないといけないのだと強く考えています。

仕事の生産性を上げるための重要なカギの一つには睡眠があるように思えます。私たちは十分な睡眠時間をとることを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

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第1,249話 面識のない人への呼称はどうすると良いのか

2025年01月22日 | コミュニケーション

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「おじいさん、大丈夫ですか?」

先日(2025年1月18日)の日本経済新聞夕刊に、落語家の林家正蔵さんが百貨店のエレベーターにはさまれて転んだ際に、若い店員からかけられたという言葉が紹介されていました。

この記事を読んで、私は同年代である林家正蔵さんが「おじいさん」と声をかけられたことに対して少しショックでしたし、さらに百貨店の店員が顧客に対して「おじいさん」と声をかけたことにも正直驚きを感じました。

私がこのことに少々過敏ぎみに反応したのには実は理由があるのですが、それは私自身がこの1週間の間に2度、面識のない人から「お母さん」と呼ばれたからなのです。

以前からテレビなどでレポーターが面識のない人に対して「お父さん」「お母さん」と呼んでいる場面を見聞きするたびに、私は違和感がありました。しかし、これまで私自身が見ず知らずの人から「お母さん」と呼ばれた経験がなかったせいか、今回の経験はある意味で新鮮であり、同時に面識のない人への呼び方は難しいと改めて感じたのです。

もちろん、「お母さん」というような呼び方にさほど違和感を持たない人もいるでしょうし、違和感なく受け入れられる場面もあると思います。たとえば、子ども連れの家族が来店した際に、スタッフが「お父さん、お母さん、こちらへどうぞ」と呼んだり、子どもの学校の先生や友人などが、親を「〇〇ちゃんのお母さん」などと呼んだりするような場面です。これらは、関係性が分かっている中で親しみを込めた表現として使われていますので、言われた方も違和感なく受け入れられるのではないかと考えます。

では反対に、どういう場面で「お父さん、お母さん」が使われると、違和感を持つ人が多いのでしょうか。もちろん、これは人によって様々だとは思いますが、たとえば全く面識がない初対面の人こうから言われると、馴れ馴れしく感じられて受け入れにくいと思う人が多いのではないでしょうか。

そもそも、なぜこうした場面でも「お父さん、お母さん」が使われるのかと考えると、相手の名前がわからない場合(名前がわかるなら名前で呼べばいいわけですから)に、他にうまい呼び方がなかなか見当たらないということがあるように思います。

では、面識のない人から「お父さん」「お母さん」の代わりにどのような呼び方をされると、受け入れられやすいのでしょうか。私自身いろいろ考えてみましたが、すべての場面でぴったりあてはまるような呼び方を見つけるのはやはり難しいように思います。したがって、場面に応じて呼び方を変えること、たとえば顧客に対しては「お客様」、そうでない場合には「こちらの方」や「そちらのお連れ様」など、状況に応じた柔軟な表現が必要ではないかと考えます。

「お父さん」「お母さん」という呼称は、親しみやすさを込めた表現として使われることもありますが、それは必ずしも相手にとって適切なものとは限りません。初対面の相手に対しては、敬意を込めつつ節度を持った呼び方が良いのではないでしょうか。

呼び方は面識の有無に関わらず、職場や仕事をしていく上で、さらには新しく人間関係を形づくっていく上でも、とても大切なものです。「たかが呼び方、されど呼び方」です。相手の立場や背景に配慮し、状況に応じた呼び方を心がけることが重要だと、私自身の経験を通して考えた出来事でした。

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第1,248話 抽象的な質問をすると抽象的に、具体的な質問をすると具体的になる

2025年01月15日 | 仕事

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「面談では部下があまり話をしてくれないので、いつもあっという間に終わってしまいます。」

これは、弊社が管理職研修を担当させていただく際に聞くことが多い話です。言わば管理職の典型的な悩みの一つのように考えています。

先日話をしてくれたある中小企業の管理職A氏によると、評価面談で評価を部下に伝えた後に何か質問があるかと尋ねても特に部下からの質問はなく、10分くらいであっという間に面談が終わってしまうとのことでした。そのために「一体どうしたらよいのでしょうか。私はもっと部下に話をしてもらいたいのです」と研修終了後に相談に来られたのです。

A氏から詳しく話を聴いたところによると、まずA氏と部下とのやり取りは「双方向のコミュニケーション」ではなく、「一方的なインフォメーション」になってしまっているのではないかと考えられます。また、部下への質問が限定的な答えを求める「閉じた質問」が中心のため、部下は「はい」や「いいえ」など簡単に返答ができてしまうなど、質問に工夫がないことにも原因があるのではないかと感じました。

これは上司と部下とのやりとりに限ったことではありません。コミュニケーションをとる際に相手から深く、またたくさんの情報を得たいのであれば、断片的に浅い質問を繰り返すのではなく、一つの話題について様々な角度から質問するというように、質問を工夫することが大切です。そして、答えを限定しない、答え手が自由に答えられるような「開いた質問」を使えば相手も答えやすくなり、得られる情報量も俄然増えることは誰にでもあるかと思います。

そして、同様のことはここ数年で一気に拡がった生成AIの利用においても言えます。私自身も経験がありますが、生成AIから情報を得るために検索をかけたけれども期待した回答をなかなか得ることができず、「AIは役に立たない」と失望した経験がある人も少なからずいるでしょう。しかし、AIを利用する場合も人と人とのコミュニケーションと同様です。期待した答えが得られない原因は質問の仕方にあり、質問方法や表現を変えたら欲していた情報が俄然得られるようになったという経験をしたことがある人も多いかと思います。このようにコミュニケーションは大切であると同時に、一方では難しさも併せ持っています。

私は定期的に昇格試験の面談を担当させていただく機会があるのですが、その際に抽象的な質問をすれば受験者からは抽象的な返答しか得られず、具体的な質問をすれば具体的に答えてもらえると感じています。また、こちらが期待している詳細な返答が得られないときには、具体的な質問に変更して再度投げかけることによって相手から得られる情報の量が増えるだけでなく、質も高くなって評価の精度が上がることを肌で感じています。

面談のみならず、コミュニケーションにおいて「質問」は相手を知るうえでとても大切であり、欠かすことができないものです。なかなか必要な情報が相手から得られないと思っている人は、ぜひ一度自分の質問の中身や仕方に意識を向けて、工夫していただくとよいのではないかと考えています。

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第1,247話 自主性を促すためには

2025年01月08日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
本年も当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

「評価者に感情が入ってしまうようで、正しい評価ができません。評価が適正にできるように研修をしてもらえませんか?」

弊社では、中小企業の社長からこうしたご相談を定期的とも言えるほどにいただきます。毎年の賞与の際の社員の評価にあたって、管理職が部下の評価を適切に行うことができずに部下のモチベーションが下がってしまうとのことで、どうしたらいいものかとのご相談をいただくのです。

このような話をいただいた場合、私は現状を伺うために必ず訪問し社長からじっくりお話をお聞きすることにしています。すると評価がうまくいっていない理由は案外シンプルで、実はいずれの企業でも「目標を立てていない」という共通の問題点があることが多いのです。目標を立てていない理由には様々なことがあるようですが、多くの社長は目標を立てること自体が難しいと感じているようです。

話は変わりますが、今年も新春の風物詩となっている箱根駅伝が行われ、ご存じのとおり青山学院大学が大会新記録で8度目の総合優勝を果たしました。私は毎年1区と10区で沿道から選手を応援しているのですが、選手の後ろには各校の監督が乗る車が付いていて、原監督の表情をすぐ近くで見ることができました。今年の1区では選手の走りが予定とは異なる状況だったからか、通過した際の原監督は少々憮然としているようにも見える固い表情でした。一方、翌日の最終10区では2位を大きく離してトップを走る選手に対して、余裕の表情で明るく檄を飛ばしているのを目にしました。

青山学院大学がこれまで何度も総合優勝している理由には様々なものがあるのだと思いますが、その一つに原監督が指導の一環として目標管理制度を導入していることが有名です。
原監督は毎年、まずチーム全体の目標を決めて、その後個人の目標を1カ月ごとに具体的に記入させ、次にその目標に到達するために実行する行動目標を細かく記入させるとのことです。そして、各々が記入したものを一斉に壁に貼り全体で共有することにより、一人ひとりの意欲を徐々に高めていくのだそうです。そうすることで各選手の自主性を促し、監督が逐一細かく指導しなくても「自ら考え行動する」選手になっていくとのことです。
これらからもわかるように、物事を勝利に導くためには、あるいはきちんと進めていくためには、やはり目標をしっかり立てることが必要だということです。

そして、このことはビジネスシーンでも同様です。冒頭の評価の例で言えば、目標を設定しないまま評価だけをしようとしても、何を根拠にすればよいのかわからないということになってしまいます。同時にそもそも評価される側もどこに向かってどのように頑張れば良いのかわからない状態で仕事をすることになってしまいます。そうなると、評価する方もされる方も曖昧模糊とした状態となってしまい、評価のタイミングでたまたま実績を挙げた人を高く評価し、その反対も然りということにもなってしまいかねません。

さらに言えば、新年のはじめに「今年はこのようにしたい」と考えることは、各々が具体的に目標を立て、それに向けて具体的な行動をとることにより、自身がイメージする形に近づけることができるわけですから、目標管理制度の有無に関わらず重要なことです。

「一年の計は元旦にあり」との言葉は戦国時代の武将、毛利元就のものとの説があるそうですが、この言葉のとおり物事は初めが最も大切で、最初に計画をしっかり立てることが大切だということを、年頭にあたり改めて肝に銘じたいと考えています。

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第1,246話 書き続ける訳

2024年12月25日 | キャリア

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「やっと新しいネタを考えなくて済む、ほっとしているところがあります」

これは、漫画家の西原理恵子さんの言葉です。最強のおばさんの日常をコミカルに描く「りえさん手帖」が22年の時を経て、2024年12月23日に最終回(373回)を迎えたそうです。最終回を迎えるにあたり、先日(12月16日)「りえさん手帖」を掲載していた毎日新聞に西原さんのインタビュー記事が掲載されていました。記事の中で西原さんは、「毎週の掲載はきつかったです。ネタが思い浮かばず、行き当たりばったりのときもよくありました。昨日締め切りだった作品がよく描けていて、今日はそれを褒めて欲しいのに、『はい、次』と自分をせかす日々でした。だから22年は一瞬。これからは夢の中で漫画を描くこともなくなるかな、と安堵しています。」とおっしゃっていました。

22年もの間、毎週書き続けることがいかに大変なことであるか、想像に難くないことだと思います。と言いますのも、西原さんの22年間とは比べものにはなりませんが、本ブログも11年前の2013年4月に始めて以来11年半が経過し、本日晴れて1,246回目を迎えることができたからです。「人材育成に関わることをテーマにする」をルールとして幅広く取り上げてきましたが、西原さん同様に毎回のネタを考えるのは決して簡単なことではありませんでした。ブログをインターネットにアップした瞬間はホッとできるものの、次の1週間はあっという間にやってくるため、今でも絶えず次のネタ探しに追われている日々を送っています。

ここまで苦労しながら、弊社ではなぜブログを書くことを続けているのでしょうか。それは、読んでくださったからのフィードバックが励みになり、モチベーションにつながっているからです。ブログを読んでくださった方から、直接お会いしたときやメールやSNSで感想をいただけるからなのです。中でもこれまでで最も感動的だったのは、ブログの中で取り上げた人に「〇〇さんのことを書かせていただきましたよ」と伝えたところ、後日便せん3枚に感想を丁寧に書いて手紙にして手渡してくださった方がいらっしゃったことです。いずれのフィードバックも、本当に有難いと感じています。

もう一つ励みとしているのは、朝日新聞の毎週木曜日の夕刊に掲載されている三谷幸喜さんの「ありふれた生活」です。こちらは12月19日時点で1,212回書かれています。しかしながら、三谷さんが講演で話されていたところによると、朝日新聞で萩原延壽さんの「遠い崖アーネスト・サトウ日記抄」が1,947回、大佛次郎さんの「天皇の世紀」は1,555回、アサヒグラフで團 伊玖磨さんは「パイプのけむり」を1,842回書かれたとのことでした。こうした先人達の足跡は素晴らしいとしか言いようがありません。

このブログは回数などのゴールは特に決めておりませんが、書くことにより自分や物事を客観視できたり、新たな気づきを得たりすることができることなどがありますので、今後もネタ探しには四苦八苦しつつ、皆さまからいただけるフィードバックを励みに今後も続けていくつもりです。

さて、今年のブログはこれが最終回になります。この一年ご覧いただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

それでは皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。

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第1,245話 外発的動機付けと内発的動機付けのバランスとは

2024年12月18日 | 仕事

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「給与が今よりも高い会社に転職をすることにしました」

これは、先日知り合い40代前半の男性から聞いた言葉です。彼は長年製造業で監督職として活躍していましたが、このたび給与を上げたいと考えていたのだそうです。詳しく話を聞いたところ、現在の業務や会社自体には大きな不満はなかったそうですが、彼が言うには年齢的にもラストチャンスであり、今後必要となる子どもの教育費などのことも考え、転職を決断したのだそうです。

近年、人材の採用難に対する施策の一つとして給与を上げる会社が増えています。雇用される側としても給与は高いに越したことはありませんので、それ自体は歓迎できることで特に問題はないと思います。

この給与が上がることを動機づけ理論の視点で考えると、外発的動機づけであると言えます。外発的動機づけとは、外部からの報酬や罰などの力によってやる気にさせるもので、たとえば金銭的報酬を得たり、ペナルティを避けたりすることなどを目的として行動を起こさせるものです。一般的に外発的動機づけは人を動かす強い力になりますので、有効な手法とされています。ただし外発的動機づけには問題点もあり、報酬や罰などの刺激を与え続けていないと、いずれやる気が失われてしまうことです。

そのように考えると、給与が高い会社に転職をすることはやる気の向上に寄与することにはなりますが、やがては時間の経過とともに上がった給与にも慣れてしまい、だんだんとやる気が失われていってしまわないとも限りません。

先日、高崎市にある「かみつけの里」博物館に行く機会がありました。ここは、榛名山東南麓で出土した5世紀後半(古墳時代)の人物・動物などの埴輪を模型にして、当時の様子を再現し展示している博物館です。館内の一部では「八幡塚古墳」についても紹介しているのですが、まず古墳を作るための工事費は現在の金銭に換算すると10億円ほどであり、そのほぼ全てが人件費に該当したとのことです。しかし、当時は報酬という概念がなかったため、労力の9割を占める村人たちは食事や少しの褒美を与えられるくらいで労働力を提供したと考えられるのだそうです。

それでは、そうした村人達が古墳を作ることへのモチベーションをどのようにして維持できたのかということについて疑問を持ちますが、村人たちは古墳の造営という壮大なプロジェクトに参加できるということが彼らにとってのステータスになったとも考えられるとのことです。現在のように機械はなく人力のみで古墳を作るとなると、強制されムチで打たれて労働力を提供させられていたようなイメージの、これまでの見方は変える必要があるのかもしれないとも紹介されていました。

このことは、まさに現在でいうところの内発的動機付けに当たるものだと思います。内発的動機づけとは、報酬などのためではなく自身の内部から湧き出る意思で動くことであり、私たちは仕事にやりがいを感じられたり何らかのステータスを感じられたりすると、やる気をもって前向きに働くことができるということです。

人材をなかなか採用できない、あるいは貴重な人材に転職や退職をされてしまうことを避けるためには、報酬が上がるという外発的動機付けが手段として有効であることは確かですが、同時にそれだけでは自ずと限界もあります。

したがって、外発的動機付けと内発的動機付けのどちらか一方だけに取組むのではなく、両者をバランスよく組み合わせながら、継続的に社員のやる気を引き出していくことが大切なのです。そのためには、適切なタイミングで報酬や福利厚生などを見直していくとともに、現在の仕事の魅力ややりがいをあらためて理解してもらうことです。将来の展望やそれに向けた計画などを具体的に示すなどにより、引き続き社員にやる気・モチベーションを持ち続けてもらえるようにバランスよく取組んでいくことが大切だと考えています。

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第1,244話 リーダーシップの発揮には様々なスタイルがある

2024年12月11日 | 仕事

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「おまえは30点でいけ」

これは女優の今田美桜さんが、俳優の中井貴一さんから言われた言葉だそうです。

先日、新聞のテレビ欄を見ていたところ「徹子の部屋」の出演者に今田さんの名前があり、加えて「中井貴一さんから言われた言葉が支えになっている」との見出しがありました。

それを見た私は、「中井さんの言葉に影響を受けた人がまたいるんだ」と思い、即座に録画予約をしたのです。

「徹子の部屋」では、今田さんは20歳のときにドラマで共演した中井さんから「おまえは30点でいけと声を掛けられ、その後肩の力が抜けて楽になった。背伸びしすぎなくていいんだ。 その言葉あったから、そのあとも頑張れたのかなった思っている」と語っていました。続けて、「迷ったとき、失敗したときにはその言葉を思い出して、また新たに頑張れる言葉の一つ」だとも話していました。

私はこれまでにもテレビで、吉田羊さんさんや柳沢慎吾が中井さんの言葉によって新たな機会が訪れたという話や、落ち込んでいるところを助けてもらったなどの話をしているのを見聞きしたことがあります。中井さんのことを、様々な人に対してプラスの影響力を発揮されている方だと思っていましたので、テレビの中の人ではありますが関心を持って見てきました。

前述の3人それぞれのエピソードからわかるのは、中井さんはとてもリーダーシップがある方だということです。そして、そのスタイルはぐいぐいと周りを引っ張るリーダーシップではなく、本人が気づいていない演技力を他者に伝えることによって新たな道を開くきっかけを作ったり、中井さん自身の出番は終了しているにもかかわらず、落ち込んでいる共演者の仕事が終わる時間まで待っていてその後食事に誘ったり、さらには今回の今田さんのように今後どのように頑張ったらよいのか悩んでいる人に「30点でよい」と声をかけたりするなど、ソフトなリーダーシップを発揮していると見て取れます。

話は変わりますが、弊社が研修を担当させていただく際に「リーダーシップからイメージすること」を受講者に尋ねることがあります。すると、多くの受講者がイメージするリーダーシップは「指導力」や「統率力」など力強い言葉のイメージが多く、その結果自分はそうしたリーダーシップを持ち合わせていないと感じてしまうことが多いように思っています。

リーダーシップ理論の一つにPM理論というものがありますが、これはリーダーが持つべき機能をP機能(Performance Function:目標達成機能)とM機能(Maintenance Function:集団維持機能)の2軸で捉えるものです。

P機能は成果を出すために発揮されるリーダーシップで、目標の設定や計画の策定をしたり、メンバーへ指示したり、問題発見・課題解決を率先し行ったりするものです。

一方のM機能は、人間関係を良好な状態に保つことによって、チームワークを強化していくスタイルで、具体的にはメンバーを観察して積極的な話を聴いたり、勇気づけをしたりメンバー間が対立したときに調整をしたりすることです。

そして、それぞれの機能の発揮にあたっては様々なやり方・スタイルがあるわけですから、リーダーシップにも様々なスタイルがあって当然で、100人いれば100通りのスタイルがあるということだと思うのです。

中井さんから様々な影響を受けた3人のエピソードを聞くことによって、改めてリーダーシップの発揮には様々なスタイルがあること、ソフトなリーダーシップでも他者との関係性の中で強い影響力を発揮できるのだということが改めて整理できたように感じています。

多くの人にプラスの影響を与え続けている中井貴一さん。これからのますますの活躍を楽しみにしたいと思います。

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第1,243話 自分のスキーマを把握しているか

2024年12月04日 | コミュニケーション

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「これはどのようにやればよいのですか」

弊社が研修を担当させていただく際には、テーマにかかわらず講義を行った後に必ず演習に取り組んでいただいています。その際、私としては演習の説明を丁寧に行ったつもりであっても、実際に演習が始まると既に説明をしたことであっても受講者から再度質問されたり、受講者によっては説明の中で指示したことと違うことを始めてしまったりすることがあります。そのようなときに受講者から言われるのが冒頭の質問です。私としては懇切丁寧に説明をしたつもりなのですが、このようなことがあると「伝えることの難しさ」を改めて感じることになるのです。

そうした中、先日今井むつみ氏の「『何回説明しても伝わらない』」はなぜ起こるのか?」という本を読む機会があったのですが、その中では「スキーマ」が取り上げられていました。スキーマとは、認知行動療法における特定の状況や事柄に対する個々人の認知の枠組みのことを言います。スキーマは過去の経験や育った環境などから形成されるものであり、自身の物事への捉え方や対人関係などの行動のパーターンに大きな影響を与えています。今井氏は本の中でスキーマを「当たり前」という言葉で説明していました。自分にとっての当たり前ということです。

これに関して、私たちが他者とコミュニケーションをとる際に、ある事柄について「自分にとっては当たり前のこと」として話をしてしまうと、相手にはきちんと伝わらなかったり、場合によっては誤解をされてしまったりということがありえます。これらのことから考えると、先述のとおりの私が担当する研修においても、幾人もいる受講者の中にこちらの意図が簡単には伝わらない人がいるということは、極々当たり前のことと言えるわけです。

では、このスキーマについて私たちが対人関係においてうまく活用していくためにはどうすればいいのでしょうか。そのためには、まずは自分のスキーマが具体的にどこにあるのかをきちんと認知することから始める必要があると思います。具体的には、自分自身を振り返って再認知するとともに、他者からのフィードバックを積極的に受け入れたり、ときには診断テストなどを受けてみたりするということも、その助けとなるのではないかと考えます。

同時に、他者とコミュニケーションをとる際には「うまく伝わる」ことを前提にするのではなく、そもそも簡単に伝わるものではないということを踏まえておくことが必要です。だからこそ相手にきちんと伝わるようにするためには、繰り返し伝えたり、様々な手段を駆使するとともに、思いがけない他者からの質問に対してはいらいらしたり慌てることなく、根気強く説明をしていくことが大切になります。

このようにスキーマをうまく使いこなすことができれば、他者とのコミュニケーションにおける有効な手段とすることができると思います。私自身、冒頭のような場面でいかに使っていくかを改めて考えているところです。

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第1,242話 マイクロアグレッションをしていないか

2024年11月27日 | コミュニケーション

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「事あるごとに、『て言うか、〇〇だよね』と言われてしまうんです」

これは、先日弊社が担当させていただいたコミュニケーション研修の際に、20代の受講者Aさんから相談をされたときの言葉です。

具体的に話を聴いてみたところ、AさんがB上司に業務の報告をすると、毎回冒頭のように言われてしまうのだそうです。Aさんとしては事実関係とそれについての考えを整理してきちんと報告しているつもりなので、「て言うか・・・」と連発されてしまうと自分を否定されているような気持になってしまい、話を続ける気持ちがすっかり失せてしまうとのことです。

この「て言うか・・・」は、元々は「と、言うか・・・」や「と言うよりは・・・」と表現するところを縮めた言い方だと考えられますが、相手の発言や提案を否定する意味合いを持っています。言っている本人は「そんなつもりはない…」と考えているのかもしれませんが、これを繰り返されると言われている方としては否定され続けているように感じられてしまいます。同時に話を続ける気持ちがだんだんと失せてしまい、やがては自信すら喪失してしまうことになりかねないことが心配されます。

これに関して、最近「マイクロアグレッション」という言葉を耳にするようになりました。マイクロアグレッションとは、「小さい」を意味する「micro(マイクロ)」と「他者への攻撃」を意味する「aggression(アグレッション)」を組み合わせた言葉で、直訳すると「小さな攻撃」と言えます。個人と個人の間のミクロな関係に注目した概念なのですが、B上司はAさんに対してまさにマイクロアグレッションをしていたのかもしれません。

このマイクロアグレッションの背景にあるのが、以前本ブログでも取り上げたことがある「アンコンシャスバイアス」(無意識の思い込みや偏見)です。これは無意識の思い込みや偏見によって、本人にはそのつもりはないけれども他者を傷つけてしまうということです。そのように考えると、冒頭のB上司からAさんへの発言は「アンコンシャスバイアスに基づいたマイクロアグレッション」(無意識の思い込み・偏見による小さな攻撃)に当たると言えるのかもしれません。たとえばBさんは自分よりも上の立場の人や顧客の発言に対しては「て言うか、〇〇だよね」と言うことはないはずです。

それでは相手の発言と自身の考えが異なる場合に、上記のような状況にならないようにするためには、どのように表現したらよいのでしょうか。

それには、相手の意見をいったん最後まで聴いたのちに、「Aさんは○○のように考えたんだね。私の考えはAさんとは少し異なっていて、△△のように考えるけれど・・・」などと言えば、相手が受ける印象は冒頭の例のような頭から否定されたようなものとは全く違ってくるのではないでしょうか。

B上司のように「て言うか、〇〇だよね」を連発している人は、それが自分の口癖なのだと考えるだけでなく、その根底には「無意識による小さな攻撃」があるのかもしれないということを認識することが大切です。

このブログでもこれまで何度も書いてきているように、人と人のコミュニケーションはとても大切なものですが、それゆえに難しいものでもあります。自身の言葉が相手への小さな攻撃になっていないかどうか、一度自身を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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第1,241話 情報のファクトチェックとは

2024年11月20日 | 仕事

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記者:「それはファクトなんですか?」

返答者:「それはわかりませんが、作り手(ユーチューバー)が調べていると思いますよ!」

去る11月17日に行われた兵庫県知事選挙の結果判明後に、テレビ局が街頭インタビューをした際のインタビュアーと答え手の間で、このようなやりとりがなされていました。

職員へのパワーハラスメント疑惑等で県議会から不信任を決議され、失職した知事の出直し選挙でしたが、その結果は前知事が再選されました。前述の街頭インタビューでは、知事を支持した人が「ユーチューブではパワハラはなかったと言っている。テレビの報道がいい加減だ。テレビは信用できない」と興奮冷めやらぬ様子で語っている姿が報道されていました。私自身はこれらのユーチューブを見たわけではありませんが、話の様子からはマスコミ等で報道されていたものとはかなり違った内容であると想像できます。これを含め、今回の一連の流れを見ていて改めて思ったことは、自分が目にする情報には事実がどうかわからないこと・間違っていることが含まれている可能性も否定できず、自分で情報の取捨選択をできるようにならなければならないということです。

インターネット上で膨大な情報が発信されるようになり、SNSをはじめとして私たちの身の回りには様々な情報があふれかえっている状態だと感じています。その情報はまさに玉石混合で中には明らかな間違いや偽情報が含まれており、そうした誤情報や偽情報を信じてしまった結果、誤った判断や行動をしてしまう例も少なくないようです。

日本ファクトチェックセンター(JFC)が国際大学グローバル・コミュニケーション・センターと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%だったとのことです。人は誰でもバイアスがあって、情報が自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向があるということです。

前述のインタビューに答えた人も、ユーチューブの内容が事実なのかどうか(少なくともマスコミで報道されていることと違うのはなぜなのか)を自身で考えることなく、頭から正しいと信じているように見えました。

インターネット上の真偽の不確かな偽情報や誤情報に振り回され、間違った判断や行動をしないようにするためには、情報の真偽を検証するファクトチェックを行うことが重要であり、最近では総務省も「ファクトチェック」の推進をしているとのことです。

弊社が担当させていただいている研修でも、インターネットから入手した情報を参考として受講者に提示する機会が時々あります。これまでも情報元の組織や概要を調べることはしていましたが、私自身もその際に自身のバイアスに基づいて情報を判断していることも確かです。

情報はファクトであって初めて意味をなすものであり、誤情報は人の判断を誤らせるものであるとの認識のもと、これまで以上に情報のファクトチェックを怠らないようにしなければならないと思っています。

もちろん、個人でできるチェックには限界があるとは思いますが、それでも何かの情報に接したときに、わからないことがあったり、ちょっとでも疑問を感じたりしたら「これは本当に事実なのだろうか?」と一旦冷静になって、考えてみることが大切だと改めて考えています。

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