中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,235話 サービスを提供する側の神髄とは

2024年10月09日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「このイクラは逆さにしても粒が落ちない。日本ではここでしか食べられない。また、このネタは日本で5%しか食べられないから、食べないで死んでしまう人がほとんど。それだけ珍しくて美味しい」

これは、私が年に何回か行く寿司屋の大将が寿司を説明する際の言葉です。都心から1時間ほどかかる町にあるのにもかかわらず遠方からも足を運ぶ人が多いかなりの人気店であり、さらに10数席しかないということもあり、予約が取りにくい店です。

この店では、寿司ネタが大きいことにまず驚かされるのですが、それ以外にも仕入れから客に寿司を提供するまでの細部にわたる大将のこだわりが特色と言えます。私がいつも驚かされるのは、寿司を出す際に、このネタはどこの海で取れたものかだけでなく、最近は温暖化により魚が獲れる場所や漁獲量にも影響が出ていること、さらに調理や味付けなどについても大将の微に入り細に入った説明があることです。その説明は長い時には3~5分くらいになります。

テーブルに寿司が置かれると、女将から「これから大将が寿司の説明をしますので、しっかり聞いてください」と声がかかります。私たち客は大将の熱のこもった説明に驚いたり唸ったりしつつひたすら傾聴して、その後に寿司をいただくことになるのです。説明を聞いた分、それぞれの寿司ネタの貴重さや有難み、そして何よりその味に納得することができるわけです。

話は変わりますが、私たちはオンオフを問わず様々な企業などからの売り込みのダイレクトメールや電話を受けたりします。こうしたセールスを歓迎してはいませんが、たまたま関心があるサービスやモノのセールスの連絡が来た際には、試しにセールスポイントやその会社のことを質問してみることがあります。

しかし、ほとんどの場合相手のセールスパーソンは端的に説明することができないのです。きちんとした説明ができないだけでなく、中には「最近入社したばかりなのでよくわかりません」や「そういう質問は想定していなかったのでわかりません」、さらに「新人研修の一環として電話をしていますので、わかりません」など、正直すぎる返答をされることも少なくないのです。こうした対応ではサービス検討以前の問題と感じざるを得ないことから、購入にまで至ることはまずありません。

そうした観点で考えると、先述の寿司屋の大将はおいしい寿司を出すのはもちろん、そのためにネタにこだわり、そしてその良さを顧客に理解してもらいやすいように、できるだけ定量化して論理的に説明をしてくれるのです。これは、客に新鮮なネタを満足して美味しく食べてほしいという寿司職人としてのプライドのあらわれであり、サービスを提供する側の神髄を見ているような気にすらなります。

モノやサービスを売るということは、決して簡単なことではありません。しかし、何よりセールスパーソンが熱い気持ちを持って、顧客にわかり易く伝えることができなければなければ顧客の気持ちを動かすことはできないわけです。

そのためには、この大将のようにプライドと熱い気持ちを持って工夫し努力することが欠かせないのではないかと、大将の寿司を食べるたびに思うのです。

という本ブログを書いていたら、近々またこの寿司屋に訪れたい気持ちになりました。(残念ながら予約は簡単にはとれませんが)

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第1,234話 あなたは人の話を正確に「聴く」ことができていますか

2024年10月02日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「お尋ねしたのはそういうことではなく、〇〇について知りたいのです。そこを教えていただけますか?」

これは、最近私の知り合いが家電製品を購入する際のやり取りの中で、店員に伝えた言葉だそうです。具体的には、友人は2つの製品のどちらかを購入したいと考え性能の違いを繰り返し質問したのだそうです。しかし、店員は話を聞いているようには見えても、質問の意味を理解できていないのか、ピントのはずれな答えしか返ってこなかったとのことです。結局、知り合いはその店での購入を諦めたと話していました。

知り合いが言うには、店員であっても全ての製品の知識があるとは限らないので、わからなくて返答できないのであれば、別の人に代わってもらうなどの対応をしてもらえれば良かったとのことです。しかし、その時の状況を改めて振り返ってみると、知識の有無というよりもそもそもこちらの質問の意味を理解してもらえていなかったようで、そのために返答がずれてしまっていたのではないかとのことでした。

コミュニケーションにおいては話すことも大切ですが、話をすることの前提として聞くことの重要性について注目されるようになって久しいです。特に、コミュニケーションでは傾聴することが必要不可欠であると多くの人が理解しているのではないかと思います。

傾聴とは、「話し手の話を心を傾けて熱心に聴くこと、相手の言いたいことを言葉や態度で丁寧に示しながら聴くこと」です。これはアメリカの心理学者であるカール・ロジャースが提唱したもので、ロジャース自身がクライアントに対して行うカウンセリングにおいて、傾聴することの有効性を強く感じたことが始まりと言われています。

私自身の経験でも、研修を担当している際に受講者が頷いたり、前のめり(積極的)になったりするなどの傾聴の姿勢を示してくれると話がし易いと感じますので、傾聴は本当に大切なことだと思っています。

しかし、傾聴してくれているように見えても、実際にはこちらの話や意図があまり通じていないということが少なからずあるのも事実です。冒頭の例のようにこちらの意図とは異なる返答をされてしまったりすると、コミュニケーションを深めることができず、話が終わってしまうことになってしまいかねないのです。

それでは、相手の話をしっかり正確に聞きとれるようにするためには、どうすればよいのでしょうか?

相手の話を集中して聞くことはもちろんですが、自分の経験や考えに基づいて相手の話を解釈してしまうと正しい理解が難しくなる場合もあるため、まずは自身の先入観や偏見といったものを排除することが重要になると思います。さらには、自分の答えのピントがずれているようであれば、相手(話し手)が話が通じていないという表情になるなど何らかの変化が生じる場合もありますので、こうした「非言語的のサイン」を見落とさないことも必要です。

私は、コミュニケーションには「聞く(聴く)」「理解する」「表現する」などの総合的な力が必要だと考えていますが、それはあくまで話し手と聞き手の双方向で分かち合いながら行われるものです。

一方通行では成立し得ないものだからこそ、私たちはまずは相手の話を傾聴したうえで、先述のように相手が言わんとすることを正しく理解することができているのか、そしてそれに対して自分の考えをきちんと返せているのか、コミュニケーションの中で見返すことが必要だと考えています。

あなたは人の話を正確に「聴く」ことができていますか。

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第1,233話 1on1 ミーティングを意味のあるものにするためには

2024年09月25日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下とのコミュニケーションは1on1 ミーティングがありますから大丈夫です」

近年、「1on1 ミーティング」という言葉を聞くことが増えたと感じています。弊社では管理職昇格試験の面接における外部面接官を担わせていただくことがありますが、その際の口頭試問においても「1on1でコミュニケーションは積極的にとっていますから」と答える人が多数います。また、管理職研修を担当させていただく際にも、部下とのコミュニケーションを取る手段として同様に1on1ミーティングを挙げる管理職が増えてきたと感じています。このように、最近1on1ミーティングを行えばコミュニケーションは万全だと考えている人が多くなったように思います。

この「1on1 ミーティング」(one on one meeting)とは、文字通り一対一で行う面談であり、上司が部下の育成を目的に部下の仕事に対しての考えや問題点の有無を確認したり、今後の展望や希望などを確認したりすることを目的として行うものです。このミーティングは1~3か月に1度位の頻度で開催しているところが多いようです。

1on1 ミーティングを導入したことによって、部下とのコミュニケーションの時間をなかなか作れなかった管理職が定期的に部下との接点を持つことができるようになり、部下の現状や考えを知ることができる機会になるなど、メリットを感じている人の声をたくさん聴きます。

一方、部下の方からは1on1により上司との接点は増えたものの、上司からの一方的な話を聞くだけだったり、自身が話をする時間はあまりないと感じていたりするなど、1on1 ミーティングのメリットを感じないという声を聞くことも少なくありません。

実際、先日お会いしたある企業の中堅社員からは、「仕事における問題を解決するために他部署との交渉の援助を依頼したものの、一向に上司が動いてくれることはなかった。話をしても何も変わらず、何のためのミーティングだったのか。このような結果をもたらさないミーティングであれば、実施する意味を見出せない」という声を聞きました。

この話を聞いて思ったのは、1on1ミーティングはあくまでも「手段」であって「目的」ではないのですが、管理職によっては1on1ミーティングを行うことが目的となってしまっている人が少なからずいるのかもしれないということです。

それでは、1on1 ミーティングを意味のあるものにするためには、どうすればよいのでしょうか。

そもそも、1on1という言葉が出てくる以前から上司と部下との1対1の面談は行われていたわけで、1on1自体が取り立てて新しいことではないのですが、対面して行う面談を本当に有効なものにするためには、その際の上司の「話の進め方」が鍵になるのではないかと考えています。

対面で面談を行う目的は、部下の仕事の現状や問題点、今後の展望などを確認し、必要なアドバイスをすることです。そのためには、部下からきちんと話を聞きだすことがまず必要になることから、上司は事前に質問・確認する内容を整理しておくとともに、話を傾聴するなどのコミュニケーションの基本を改めて確認しておくことが大切です。事前に十分に準備して面談に臨めば、部下からたくさんの情報を収集することができ、的確なアドバイスを行うことができます。それによって部下の気持ちのリフレッシュも期待できるのではないでしょうか。

漫然と1on1 ミーティングを行ったり、話が一方通行で終わったりするなどの事態にならないようにするために、上司の皆さんには事前に十分な準備と段取りをしてからミーティングに臨んでいただきたいと考えています。

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第1,232話 メモは何のために取るのか

2024年09月18日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「メモを取るのか、それとも取らなくてよいのか」

これは今でも必ずと言ってもいいほど、議論になるテーマの一つです。仕事に関しては、弊社が行う新入社員研修では「上司からの指示は必ずメモを取ること」と伝えており、メモを取る練習をしてもらうこともあります。

私が担当する様々な研修でも小まめにメモを取る人がいる一方で、そうしない人がいるのも事実です。では、そのような人は仕事中でもメモをすることはあまりないのでしょうか。

これに関して、私はジャーナリストの池上彰さんがニュース等を解説しているテレビ番組をよく見るのですが、タレントのカズレーザーさんが出演していることが多くあります。その中でのカズレーザーさんは、池上彰さんをはじめ他の出演者の発言をノートにメモしていることが多いと感じます。カズレーザーさんが番組終了後にメモしたものを見返しているのかどうかなどはわかりませんが、番組中のカズレーザーさんは多方面にわたって博識で、また説明も非常に端的であり、とても論理的な人であることが伺えます。(上から目線の表現で失礼かもしれませんが)

カズレーザーさんを見ていると、メモを取ることはとても有用であるように感じますが、では実際にメモを取ることは有用なものなのでしょうか?これについては様々な考え方があるようで、たとえばメモを取らなければ忘れてしまうようであれば、それはその人にとって無用な情報だと考えられるから、忘れてしまっても問題ないという説もあります。しかし、記憶力がよほど良い人でない限りは、せっかく獲得した知識であったとしても時間の経過とともにだんだん忘れていってしまうのではないでしょうか。

人間はどれくらいの時間記憶することができるのか。記憶と時間に関して引用される一つに、エビングハウスの忘却曲線があります。エビングハウスの忘却曲線とは、ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱した中長期の時間の経過と記憶の関係を表した曲線のことです。時間と記憶の相関関係における実験を行った結果、1時間後には44%しか覚えていない、1週間後には21%しか覚えていないというデータがあります。このように、人の記憶は「時間が経つほど忘れてしまう」ものです。

ただし、一点注意しなければならないのは、この調査は「意味を持たない音節の記憶」に対する実験結果だということです。したがって、関心のないことを学習するときの記憶の定着率はこの忘却曲線と同様の結果になるのだと思いますが、学習する側が関心のある分野においては記憶の定着率はより高いと考えられるわけです。

私たちの仕事や生活においては、関心が高いものだけに触れるということはあり得ません。そのように考えると、仕事にしろ研修にしろ関心の有無にかかわらず、ここは有用だというところはしっかりメモを取ることが大切だということです。

もちろんメモをとること自体が目的でなのはありません。メモしたことを定期的に振り返ることによって知識を定着させ、それを仕事で活かしていくことが大事であることは言うまでもないことです。

あなたはメモをしていますか?

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第1,231話 言動の責任は自ら負わなければならない

2024年09月11日 | 仕事

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「口や手を出して何の責任も負わないような人には、どうかならないでほしい」

これはNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」の先日(9月5日)の放送の中で、主人公(虎子)の娘(優未)が義理の姉(のどか)を蹴り飛ばした後に、家を飛び出し駆け込んだ先の法律事務所で虎子の仕事仲間らに不満(蹴り飛ばした理由)を打ち明けた際に、諭された言葉です。

蹴り飛ばしたことを謝りたくないという優未に対して、虎子の仕事仲間らは「口や手を出したりするということは、変わってしまうってことだけは覚えておいて欲しい。その人との関係や状況や自分自身も・・・その変わったことの責任は自分が背負わなければければいけない」とも伝えたのです。

さて、このところ連日兵庫県知事のパワーハラスメントの疑いにかかる告発文書が出された問題が報道されています。知事は「重く受け止め、反省すべきところは反省する」と述べる一方、辞職の要求には応じない考えを示していることも報道されています。知事が辞職しない理由には様々あるようですが、これまでの流れを見ている中で最も私が気になっているのは、ここまで大きく信頼を失ってしまった組織のトップが、今後リーダーシップを発揮できるのかということです。

リーダーシップを発揮するためには人心の和が不可欠ですが、そもそも人心をつかむためには信頼される必要があります。この信頼とは、人の「言葉、行動、姿勢」を他者が見た結果、人間性や習慣といった目に見えないものに対して期待したり、その期待に応えてくれるだろうと当てにしたりする気持ちのあらわれではないかと私は考えています。そして、信頼は日常的な振る舞いを周囲がプラス評価をすることで、徐々に積み上がっていくものだとも思います。

しかし、こうして時間をかけて積み上げた信頼も、ちょっとしたことで簡単に崩れてしまうものであるということも、また確かだと思います。信頼を築くのには時間がかかりますが、崩れるのはあっという間だということです。

これに関連して、新入社員、若手社員を育てていく中で「上司が後姿を見せても、なかなか部下は育たない」というように感じている上司もいるかと思います。私が若手社員の研修などを担当させていただく中で感じるのは、上司としてお手本としてほしいと思うところはなかなか伝わらなくても、逆にあまり手本にしてほしくないようなところについても、案外しっかりと観察しているように感じます。

このように考えると、信頼を失った(手本にしてほしくない行為などをした)人が周囲にプラスの影響を与えるということは簡単にはできないということになります。

今回の兵庫県知事の例を見るまでもなく、法的に問題がある行為はもちろんのこと、余りに一般とかけ離れたような言動や行為というものは、周囲との関係を(大抵の場合は悪い方へ)変えてしまうということです。そして同時に様々な事柄も停滞させてしまうこと、そしてその責任は自ら負わなければならないということを、自戒の念を込めて認識を深めなければいけないと考えています。

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第1,230話 最小限のリスクで乗り越えられるように先手を打つ

2024年09月04日 | 仕事

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先週から長時間にわたり各地に大きな被害をもたらした台風10号の到来を踏まえ、JR東海は新幹線の3日間の計画運休をしました。

JR東海によると、計画運休は台風などの影響で雨や風が広範囲で長時間にわたって規制値を超えることが予想される場合に安全のため実施するとのことで、2018年9月に初めて行われて以降、度々実施されてきています。今回は9回目であり、3日間連続での実施は初めてということですが、一方で多くの利用者に大きな影響を与えたことも、連日報道されていました。

さて、その台風のさなかの8月29日と30日に、私はある企業の研修を担当させていただいていましたが、その受講者は全国各地から集まるものでした。台風の接近が予想されていた研修1週間前位の時点では飛行機での移動ができない受講者が出ることも想定されたため、オンラインで実施することも検討されました。しかし、台風の進路が予想よりも西へ変わり、また接近も遅くなったことなどにより、無事に当初の計画通りに対面での研修実施が叶ったのです。

対面での研修が実施できたことで、参加した受講者の間では懇親会も含めて活発なコミュニケーションがとられ、受講者同士の結束が高まるなど対面の研修ならではの効果がたくさん得られたのではないかと感じています。一方で、東海地区から参加した受講者は新幹線の計画運休により帰途は足止めとなってしまい、帰宅が3日間遅れるなど前述のように大きな影響を受けてしまったのです。

日ごろ、私は突発的な事柄には先手を打つことが重要だと考えていますので、自身でも出来得る限り先手を打って行動するようにしてきました。先手を打つことで、突発的な事柄もある程度回避ができると考えているためですが、今回のような台風や先日の南海トラフ想定震源域で発生した地震などの自然災害に対しては、先手を打っていたとしても自ずと限界があるのも確かです。

今回のJR東海の計画運休は、運航を続けることで大きな被害が発生することなどが予想されたからこその先手策であり、安全を第一に考えなければならない鉄道会社としてはやむを得ない判断だったと言えるのではないかと思います。しかし同時に、そのことによる様々な影響が大きなものとなったこともまた事実であり、今後も同様な事態の発生が予想される中では、とても難しい問題です。

今夏の平均気温は昨年と同様に、平年と比べ1.8度も高くなっているとのことです。今回の台風にも地球温暖化(気候変動)の影響があるという報道も目にしましたが、温暖化をなかなか止められない状況の中では残念ながらこれまでにはなかった、予測がつかないことが起こることを想定して備えをしておかなければならないわけです。

今後も突発的な事柄が頻繁に起こりうることを覚悟し、仕事でもプライベートでも最小限のリスクで乗り越えられるように先手を打って行動することを改めて肝に銘じました。

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第1,229話 営業成績を上げられる普遍的な方法とは

2024年08月28日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「たこ焼き屋さんを始めませんか?」、「ゴルフ事業を始めませんか?」

これは、弊社のホームページの問い合わせフォームに届いた売り込みメールの内容です。

人材育成を生業としている弊社がたこ焼き屋やゴルフ事業を始める可能性は0(ゼロ)と言っていいほど低いですので、売り込みとしては極めて成功率が低い営業行為であると感じています。

さて、昨年私は「ザ・ミュージック・マン」というミュージカルを観劇したのですが、そこでは20世紀のセールスの厳しさが歌われていました。内容は、1912年頃にデパートやチェーン等の大型日用品雑貨店の登場や自家用車による生活の変化により、汽車で土地から土地へ移動し商品を売るセールスマンは時代遅れなものになり、セールスが厳しくなったというものです。

営業パーソンがセールスをするということは、古今東西このように簡単なものではないということを、このところ改めて感じています。

今から20年ほど前でも、現在のようにホームページのお問い合わせフォームを使用して営業活動をしたりSNSを駆使したりする営業活動は主流ではなく、電話や郵送やFAX、飛び込みなどが主な営業方法だったわけですから、現在とは隔世の感があります。

しかしどのような手法を使用するにしても、「モノを売る」ということは昔も今も簡単なことではありません。ましてや、現在のように商品やサービスの内容、価格に歴然とした差がない場合には、他への優位性をつけるためにも営業パーソンの技術を磨くということが大切なのではないかと考えています。

弊社では、定期的に営業研修を担当させていただいたり営業パーソンに同行したりするなどして、コンサルティングを担当させていただくことがあります。それらの経験を通して改めて思うのは、「営業パーソンが一律に良い営業成績を上げられるような、簡単かつ普遍的な方法はない」ということです。

営業は実に奥が深く、様々な知識や技術が必要となる仕事です。具体的にはアプローチ方法、実際のアプローチ、顧客との信頼構築、プレゼンテーション(実際の提案)、顧客の拒否反応への対応、クロージングという一連の流れが必要であり、それらを顧客との関係性を維持しながら効果的に行う必要があるのです。

それでは、営業パーソンの技術を上げるためには、どうすればよいのでしょうか。

具体的には、まずは営業に対する動機づけ、タイムマネジメントの訓練、営業パーソンの製品知識訓練、コミュニケーション力等の訓練が必要となります。さらに、個々の顧客の業種や置かれた状況に応じたきめ細かな対応も必要となってきますので、これらを職場でのOJT や研修などで身に付けて行くことが求められます。このように、営業には知識や経験、コニュニケーション力をはじめ、様々な力が求められるものであり、冒頭の例のように人材育成を目的に研修やアセスメントを主たる業務としている弊社へ「たこ焼き屋さん」 を始めませんか?といったような画一的なメールを送り付けてくるなどということは、本来はあり得ないことなのだと考えています。

営業活動はかように難しいものではありますが、同時にその分やりがいがあるものでもあります。営業パーソンの皆さんにはぜひ、頑張っていただきたいと思います。

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第1,228話 部下に自分の言葉で話してもらうことから始める

2024年08月21日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下に何度言っても、言ったとおりにやらないんです」

「部下に伝わらないので、つい『だから・・・!』と感情的に言ってしまうのです」

これらの言葉は、弊社が管理職研修や部下育成研修を担当させていただいた際に、必ずと言ってよいくらいに受講者から相談される内容です。

部下の育成に関する悩みは、古今つきないものだと思います。毎年厚労省が行っている「能力開発基本調査」の最新の令和5年の調査においても、人材育成に問題があるとしている会社は約8割になっています。この数値からも、現場での部下育成が思うように進んでいないことが伺えます。

さて、先日パリオリンピックが終了したところですが、日本選手団の活躍は国外開催の夏季五輪で史上最多となる20個の金メダルを獲得しました。それだけの活躍ができた背景には様々な理由があるのだと思いますが、その一つには外国から招いたコーチの指導があると言われています。

報道された中で私が最も印象に残っているのは、男子バレーボールチームを指導したフランス人のフィリップ・ブラン氏です。各国での指導経験を持つブラン氏は2017年から日本チームでの指導を始め、強豪国とも対等に渡り合えるようになったものの、就任当初は日本人選手との接し方に戸惑いを覚えたといいます。

それについてブラン氏は、「選手それぞれと面談をして、『私は君にこういうプレーを求めている』とリクエストを出したんです。選手たちはみんな『ハイ』と答えていたんですが、まったくプレーが変わらない。最初は通訳が正しくないのかと思いました。私もあきれて、3度目の面談の時には『私の方から説明はたっぷりしたから、今度は私がいったい何を求めているのか、あなたの言葉で説明してください』と言ったら、みんなびっくりしていました。日本の選手たちは心の中では『ノー』と思っていても、指導者の前では『ハイ』と言える。そうした社会になっています。これは私にとって大きな学びでした」といった話をしています。こうした中で、指導してもそれがなかなか生かされず、チームの成績にも結び付かないということが続いたのではないかと思います。

これは、指導が一方的な情報の伝達になってしまっていて双方向のやり取りになっていない状況であり、「はい」と返事はするものの実際は内容がきちんと伝わっておらず理解されていない状況であり、結果として指導にはなっていないということです。

同じように、部下がなかなか育たないと悩んでいる管理職の皆さんは、部下に指示をしたり指導したりする際に、一方的に伝えるだけで終わってしまっているのかもしれません。そして、伝えたことが部下にきちんと伝わったか確かめることをしないままで、部下を指導したつもりになってしまっているように思えます。

自分が伝えたことが相手に理解をされているのかどうかは、まさにブラン氏が行っているように、部下の言葉で語ってもらうことによって、どれくらい伝わったか、理解されたのかを確認できます。ブラン氏は先述のようなコミュニケーションを選手と行うことによって少しずつ信頼関係を築いていき、チームの成績もそれに伴って上がっていったとのことです。

部下が育たない、部下に伝えたはずのことが伝わらないと悩んでいる管理職の方は、この例のように部下に自分の言葉で話してもらうということから始めてみてはいかがでしょうか。

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第1,227話 予定人数を採用することはゴールではなくスタートである

2024年08月07日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「41.5%」

これは、2024年新卒者の採用計画人数に対する実際の充足率です。(2023年「新卒者の採用・選考活動に関する調査」東京商工会議所)

近年、労働人口の減少に伴って採用活動の厳しさが増していることを、報道や企業の採用の担当者から耳にすることが増えてきています。実際に2025年4月入社の大卒求人倍率は1.75倍で、2024年卒の1.71倍から0.04ポイント上昇しているとのことです。小さな数字のようにも思えますが、この数値からは多くの企業において採用意欲が旺盛になっている結果若手の奪い合いとなり、予定通りの人数を採用できている企業がある一方で、中小を中心に希望人数を採用できていない企業があることがうかがえます。その結果、冒頭のように採用充足率が50%を切る結果になっているのだと思います。

こうした状況を受けて、それぞれの企業では採用に繋げるために初任給を引き上げたり、福利厚生制度を充実させたりするなど、様々な取り組みを行っているようです。

実際に、今春ある企業の新入社員研修を担当させていただいた際にも、受講者から「数社から内定を得たけれど、給与の高さでここに入社することに決めた」と話す人が複数いました。また、同様に中堅社員研修を担当させていただいた際にも、「こんなにもらってよいのか」と昇給額に驚いている声を聞いたこともあります。

給与を受け取る側の社員のからすれば、もちろん高い方が良いでしょうから嬉しい限りだと思います。しかし企業側の視点で考えると人材を採用するということはゴールではなく、人材を育成するスタートになるということですから、採用して諸制度を充実してそれで終わりということでないことは言うまでもありません。

では、採用した人をどのように育てていけばよいのか。せっかく予定数の人材を採用することができたとしても、その後にきちんと計画的に育成していかなければ、あっという間に当人のモチベーションが下がってしまい、退職してしまうということにもなりかねないのです。実際、厚労省の調査(令和5年10月20日)によると、新規就職者のうちの2020年3月卒業者の3年以内の離職率は新規高卒就職者37%、新規大卒就職者32.3%と、3年以内に3割強の人が退職しています。

退職理由を調べた調査は複数ありますが、近年注目されている理由の一つに、新人が「自己実現」を強く目指し、自らの成長にスピード感を求めたり、そのためのスキルの習得を急いだりするということがあります。そして、それが短期間で叶わないと他での実現を求めて退職につながってしまうのです。 

実際、私の知人の職場でも入社しても数年以内に退職して他へ移ってしまう例が珍しくなくなってきているそうです。そんなことになってしまっては採用の際やその後のせっかくの取組みも意味がないということにとどまらず、組織の将来にも少なからず影響を与えることになってしまいます。

私はこうした事態を防ぐためにも、組織として採用後の人材育成の充実を今まで以上にしっかり考えて進めていくことが重要になっていくと考えています。本人の希望を踏まえながら短期~長期など期間ごとの目標を定めるとともに、それに向けて具体的にどのように育成していくのか、その過程をはっきり示し本人と共有する。同時に育成の過程で本人が成長しているという実感を味わえるようにしていくことも大切なのではないでしょうか。

労働力が不足していることで事業が拡大できない、回らないという企業の話も最近は少なくなです。そのような事態を招かないために、せっかく採用した人を丁寧に育てていくことが大切だと改めて考えています。

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第1,226話 自身の得意分野ではなく、全体最適で考えるとは

2024年07月31日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「メゾソプラノやアルトの人が少ないのなら、私はソプラノではなくどちらかのパートを担当するね」

これは、合唱の練習の前に私の同級生が語った言葉です。

以前にこのブログでも紹介したことがありますが、私は毎年「青春かながわ校歌祭」に参加しています。「青春かながわ校歌祭」とは、神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露することを通じて親睦を深めることを目的に行われているものです。

校歌祭は毎年秋に行われるため、各同窓会では初夏頃から練習を開始するのですが、私の母校でも同様に今年もすでに練習を始めています。その際に、今年からこの練習に参加することになった2人の同級生が、自身が歌うパートを決める際に言ったのが冒頭の言葉です。

彼女たちは高校の頃から抜群の歌唱力があり、現在でも地元の合唱団に参加するなど日々活躍しているのですが、そこで担当しているパートはソプラノなのです。

因みに、私の母校は当時神奈川県に7校存在していた県立の女子高の一つで、同窓生は圧倒的に女性が多いので、パートはソプラノ、メゾソプラノ、アルトに分けられています。

それでは、彼女たちが自身の得意パートのソプラノではなく、メゾかアルトで歌うことを希望したのはなぜなのでしょうか。その理由は、すでに参加しているメンバーが歌っているパートが主旋律であるソプラノが圧倒的に多いからです。メゾやアルトはこれまで少数のメンバーが頑張って歌ってくれていたのですが、全体のハーモニーとしては今ひとつバランスを欠いていたわけです。

そこで、歌唱力がある彼女たちは日頃自分が歌っているパートではなく、全体のハーモニーを考えて敢えてメゾやアルトを選んでくれたというわけです。その結果、今年からハーモニー全体の完成度が飛躍的に高まったのは言うまでもありません。

これは、彼女たちが自身の専門分野に固執する「部分最適」ではなく、全体のバランスを考えてくれた「全体最適」の結果だと思います。

全体最適とは、組織やチームなどが全体として最適化されている状態を言います。組織全体が最適化されると、業務のムダが排除されることにより組織間の連携が強まり、生産性の向上につなげることができるのです。一方、部分最適とは全体の中の一部分や個人だけが最適な状態を優先する考え方で、組織においては自身や所属部署のことだけを考えて行動すると、部門間で衝突したり壁ができたりしてうまく回らなくなる原因になってしまいます。

そして、このことは会社や企業などに限らず、全ての組織のメンバーの構成においても言えることなのではないでしょうか。組織やチームを全体として最適化するためには、それぞれメンバーがどういう役割を担うのか明確にしておく必要があります。そして異動や退職などでメンバーが入れ替わった場合には、メンバーが担う役割も状況に応じて替えた方が良いケースが出てくるわけです。

先述の合唱のパートの例と同様に、「現在のメンバー構成において、自身はどういう役割を担うと組織全体が最適化されるのか」を考える必要があるのだと思います。自身の得意分野だけを追求するのではなく、全体のバランスとして何が必要なのかを考える視点をそれぞれのメンバーが持つと、その組織は自ずと最適化されていくのではないでしょうか。

ということで、今年の我が母校の合唱のレベルがどのくらい上がるのか、今からとても楽しみにしています。

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