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誠実な営業と不誠実な顧客

2017年03月15日 | コンサルティング

EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは「心の知能指数」と呼ばれるもので、自己認識や共感といった、対人関係を良好に保つために必要ないくつかの要素から構成されています。そのため、仕事ができる人はEQが高いと言われています。特に営業のように、顧客との良好なコミュニケーションを通じて人間関係を構築することが不可欠な職種では、EQは重要な指標と言えるでしょう。

しかし、顧客のことを第一に考え、できる限り前向きな対応をしてきたつもりでも上手く行かないことがあります。

ある電子部品メーカーの営業部に勤務するK君(28歳)は、EQ測定テストで高い点数を獲得し、上司から「高EQ営業マン」などと言われていました。

K君が担当する大手電機メーカーのN氏は、K君の最も重要な顧客の一人です。

ところがこのN氏、なかなか扱いにくい人物でした。決して怒りっぽかったり、話下手というわけではありません。穏やかな感じで会話をする、ごく普通の技術者という感じです。しかし、N氏はK君を結果的に追い詰めてしまいました。

まず、N氏はとにかくメールの返事が遅いのです。らちが明かないので何度も電話をしても、居留守を使ったりするのです。そのせいで製品の手配ができず、K君は社内の他部署に迷惑をかけてしまいました。

また、請求書を渡しても期日までに支払ってくれず、連絡するたびに「来月お支払します」と言うばかりで、何ヶ月も遅れてしまったことがありました。

面談したときにその件について聞いてみたところ、「上司がなかなか承認印を押してくれないので、経理に回せなかった」とのことでした。

どうやら、N氏は「営業」を一段低く見ていたようです。そのため、誠意がない対応を繰り返していたのでした。

それでもK君はN氏に対して誠心誠意対応しました。しかし、N氏のK君に対する態度は変わらず、K君はすっかり消耗してしまいました。
見かねたK君の上司は、K君を担当から外すことにしました。

新しくN氏の担当になったのは、K君の1年下の「低EQ」のJ君でした。

J君は、N氏の不誠実ぶりものともせず、N氏の上司に直接電話をして「早く払ってください」と言ったり、時にはN氏の会社の経理部まで出かけて行って請求書のコピーを見せて「これ、回ってきてますか?」と聞きに行ったりと縦横無尽(?)の活躍をしました。

こうした行動に対して、N氏やその上司からクレームが来ることがありました。そのたびにJ君は、営業記録と見積書や請求書のコピーを持って出かけて行きました。

やがてN氏はJ君を避けるようになりましたが、J君はお構いなく営業活動に励みました。すると、ある日からN氏に代わって新しい担当者が対応するようになりました。新しい担当者は誠実な人だったので、J君の営業成績も徐々に上がって行きました。

EQの解説書によれば「相手がどのように考えて行動したのか常にチェックをしながら、コミュニケーションをとりましょう。自分の思考をいったん置いて、相手の思考に寄り添うことが大事です。」と書いてあります。

しかし、このケースのように「相手の思考に寄り添う」のが苦手な(できない?)J君のような人が、問題を解決することがあります。

「毒を以て毒を制す」とは言い過ぎかもしれませんが、不誠実さに対しては断固たる態度が必要なときもあるようです。

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