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営業担当者にとって最も良い顧客とは

2017年03月08日 | コンサルティング

過去に営業職を経験した人ならば、1人や2人、いわゆる「合わない」顧客がいたはずです。「いや、いや、そんなもんじゃない。1ダースはいたよ。」という人もいます。前世紀(と書くと大昔のようですがバブルの頃)、私が営業を担当していた某電機メーカーの技術管理部にAさんという方がいました。Aさんは、開発部が使う計測器やCADの導入を取りまとめる立場でした。私からすればAさんは月に2回は面談をする交渉窓口であり、発注に大きな権限を持つキーパーソンでした。

しかし、私はAさんと全く馬が合いませんでした。商談のときのAさんは無口、無表情で、ときどき「揚げ足を取る」のでした。

Aさん「なぜ保守契約がこんなに高いのですか?」
私  「ソフトウェアのバージョンアップを定期的に行うからです。」
Aさん「バージョンアップの内容は?」
私  「機能の改善だとか、バグフィックスとかです。」
Aさん「バグは欠陥ですよね。欠陥商品を売っておいてさらにお金を取るのですか?」
私  「いや、機能が良くなって、どんどん使い易くなりますから・・」
Aさん「当社で必要としない機能だったら、それは押し売りですよね?」
私  「機能だけではなく品質全般の改善と考えてください。」
Aさん「意味がわかりません。」
私  「・・・」 心の中で(じゃあ買わなきゃいいじゃないか!)

やや誇張気味ですが、だいたいこんなやり取りでした。

営業担当者と顧客、お互い人間同士ですから感情に流されることもあります。今思うと、私もAさんとの商談のときは早く切り上げたい気持ちが顔や態度に出ていたのだと思います。とはいえ大口のお客様ですから、ぐっと我慢して2年ほどAさんと付き合いました。

Aさんが異動してBさんという年配の方が後任になったとき、私はとても喜びました。Bさんは温厚であまり細かいことも言わず、揚げ足を取ることもありませんでした。

ところが、Bさんになってから徐々に発注金額が下がってきたのです。

開発部の若手社員に、それとなくBさんのことを聞いてみたところ「Bさんに機器のことをいろいろと質問しても、”俺はよくわからないからメーカーに直接聞いてくれ”と言うばかりで困っているんですよ」と答えました。

その結果、開発部内で同じ機器を重複して発注しようとしたり、用途に合わないものを購入してしまったりという問題が生じていたのです。

Aさんが担当者だった頃は、製品について細かいことを徹底的に質問されました。それは社内のユーザーを第一に考えてのことだったのです。

理不尽なことを言われたり、揚げ足取りもありましたが、Aさんのおかげで自社製品の弱点や改善点を十分に知ることができました。そうして、弱点を知った上で強みを強調することができるようになり、商談に自信がついてきました。思えばAさんは最も厳しくて優れた教師でした。

その後、Aさんは開発部門を率いる執行役員になりました。納得でした。

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