営業担当者にとって、損益計算書(P/L)は馴染み深い書類です※。何しろ、この書類の一番上に書かれているのは売上高だからです。当然、粗利(売上総利益)や営業利益には敏感になります。経常利益以下は、営業部門の仕事に直接関係するわけではありませんが、会社の業績ですから気にはなるでしょう。
ところが、バランスシート(貸借対照表)についてはあまり興味が湧かない、それどころかほとんど関心がないという営業担当者はたくさんいます。しかし、バランスシートこそ営業部門にとって非常に大切な書類なのです。
バランスシートは見た目、ちょっと取っ付きにくい感じがします。まず、縦に1本線が引かれ左右に分かれています。左側は「資産の部」で、ある時点(決算日。3月31日が多い)の会社が持っている財産の一覧表になっています。右側は上下に2分されており、上の方には「負債の部」があり、そこには会社の借金(正しくは、これから支払うべき金額)が並んでいます。その下の「純資産の部」は、資本金や今までに溜め込んできた利益が記載されています。つまり、バランスシートは会社の金銭面の「実情」を表しているのです。
売上にしか関心がない営業担当者は、自社のバランスシートの資産の部にある「受取手形及び売掛金」を見てください。これは、商品を売った代金が、まだ現金として回収されていない残高です。現金になっていませんから、お客様に「お金を貸している」状態です。銀行はお金を貸して利息を取りますが、あなたの会社はそれができません。無利息でお金を貸しているわけです。
また、その下にある「商品」は在庫の金額を表しています。営業担当者の中には「お客様が商品を欲しいときにすぐに出荷できるよう、在庫はたくさん持っていて欲しい」という人がいます。商品在庫がたくさんあれば売り損じ(チャンス・ロス)がなくなるので、確かに安心です。しかし、商品は時間の経過とともに陳腐化し、売れ残りになる可能性が大きくなります。また、倉庫代、保険料、その他の間接費がかかります。
このような話をすると「なんで営業が経理や仕入の心配までしなくちゃいけないの?」と反発をする人がいます。
これに対して、私は「営業が経理や仕入などに気を配るのは当然のことです!」と言い切ります。
営業は、企業が生きていくために必要なお金を得る唯一の部署です。売掛金も商品在庫も、「ある」だけで命の元であるお金を消費するのです。営業担当者こそバランスシートをしっかり読み、極力現金回収を早くし、在庫を少なくする努力をしなければなりません。
真っ先に取り組むべきは、経理や仕入部門との情報共有を徹底することです。
「たくさん売れば後のことはどうでも良い」では営業失格です。