中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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情報のブラックボックスを作らない

2017年03月01日 | コンサルティング

「同じことを知っていれば、同じ判断ができます」、「条件を同じにしています」

これは先日お会いした、ある中小企業の経営者の言葉です

この企業は、業績などの経営状況に関する情報を包み隠さず、全て社員に公開しているとのことでした。例年、年度末からわずか4日後には全社員を招集して、確定した数字などの情報を全てオープンにして、利益はどのくらい出たのか、社員にはいくら配当できるのか。1人あたりの額はいくらになるのかという情報を明確に伝えるそうです。

「業績などの情報を社員に伝えるのは、当たり前のことなのでは?」と思われるかもしれませんが、現実には役員のみに明らかにする、あるいは上層部には伝えるけれど一般社員には一切伝えない、という企業も相当数あるように感じています。

そういった企業では、社員に対しては経営数字にかかるプロセスは一切伝えずに、結果としてボーナスが減らされる(状況によっては全く出ない)という事実だけが伝えられるようになります。

前年対比でいくら減ったのか、利益は出たのか出なかったのか、赤字なのかどうなのか、などの情報の全てがブラックボックスになってしまうのです。こうなると、株式が公開されている企業ならばともかく、そうでない企業では、社員は数字を知る術がなくなってしまいます。

社員にすれば、経営者はきちんと責任を負っているのか、自分たちにだけにしわ寄せがきていないかなどの疑問は尽きず、疑心暗鬼になってしまうこともあるようです。

このように、経営数字に限らずポジションによって情報を限定している企業もありますが、そうすると、情報を知らされない従業員は「情報難民」になっていまいます。「情報を知っている人」と「そうでない人」に2分されてしまうと、当然知っている人だけが優位に立つことになります。知らされない人は個々人が自分で判断する術がないために、やがては主体的に動かなくなり、指示を待つだけの受け身の仕事をするようになってしまいかなません。

組織が目標に向かい一丸となって進んでいくためには、社員一人一人がそれに向かって自律的に仕事をしていくことが求められるわけですが、それが上手くいかない大きな原因に、この「情報共有ができていない」ことがあるように思います。

ですから、今後こうした問題を生じさせないためには、まずは経営者自身が情報をブラックボックスにしないことの重要性を認識する必要がありますし、情報提供する際には、ポジションに関係なくきちんと行うことが必要です。

近年、この情報共有に関して、あたかも「万能薬」のように言われるグループウェアですが、グループウェア自体はあくまでも道具に過ぎません。導入したらそれで全てがうまくいくわけではなく、情報共有の重要性や共有されない場合のマイナス面などをきちんと理解していなければ、使いこなすことはできないことは言うまでもありません。

まずは、情報を共有すること本当の意味、つまり「同じことを知っていれば、同じ判断ができる」こと、「条件を同じにする」ことの重要性を認識したうえで活用することが必要なわけです。

さて、先日冒頭で紹介した経営者の会社にお邪魔したのですが、この会社の社員の年間の残業時間は1人あたり20時間ほどと効率的に生き生きと働いていることや、離職率が少ないことなどが数字としてはっきりと出ていました。

情報が全社員にオープンにされ、ブラックボックスを作らないことの影響はやはり大きいのです。

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