応募者:「人材育成には熱心に取り組まれているのでしょうか?」、「研修はどういうタイミングで受けられるのですか?」
これは先日、企業の採用を担当している会社の方から伺った、就職活動中の応募者からの質問です。
この担当者の話によると、今年の採用活動で就職希望者からたびたびこの質問を受けたそうです。「おそらく、大学のキャリアセンターから企業の面接の際には必ずこの質問をするように指導されているのだと思いますが、それにしてもほぼ全員からこの質問を受けましたので、『またか』と思った」そうです。
採用活動は年々、学生側優位、いわゆる売り手市場に拍車がかっていますが、こうした中で、冒頭の質問やワークライフバランスへの取り組みに関する質問を学生が熱心にするようです。
入社を希望する人が人材育成やワークライフバランスへ関心を示すことは、もちろん悪いことではありません。
しかし、今春入社した若手社員を振り返ってみると、入社前にはあれほど人材育成制度に関する質問を熱心にしていたのにもかかわらず、いざ入社すると研修に関する興味関心が一気に薄れてしまうように感じられるとのことでした。
たとえば、新入社員研修の後半の頃には早くも「研修って意味があるのかな?配属後に役に立つとは思えない」「研修はもう受けたくない」などの言葉を発することもあるとのことです。
おそらく、こうした現象はこの企業に限ったことではないはずです。
応募者が、その企業の人材育成制度の有無やワークライフバランスの考え方について質問をするのは、言ってみればある種の「シグナル」と言えます。
つまりは、応募している企業がそれらの制度を取り入れているかどうかを「シグナルとして」確認をしているだけであり、それが確認できさえすれば、とりあえず納得できるというわけです。
したがって確認ができた結果、その中身が意味することや自分がどのようにそれらにかかわるかについての興味・関心は、実はそれほどでもないということなのです。
そして、こうしたことは「シグナリング」と言えます。シグナリングとは情報を多く持っている側が取引を円滑にトラブルなく行えるようにするために、情報が少ない側へ情報を提供することを言います。
応募者は、「研修制度がしっかりしている」という情報を得たことによって、「この企業はきちんとしている」というシグナルを得て、応募を正式に決定するわけです。
つまり、研修の中身についての詳細はほとんどわからなくても、研修の有無だけで判断をしているわけで、実際に入社すれば研修への興味・関心はほとんどなくなってしまうのです。
入社前の学生ですから、企業の研修の中身について具体的に判断できないのは仕方がないとしても、冒頭のようなやりとりが形骸化してしまい、入社後に受講する側の研修や人材育成への関心が薄れてしまうのは、何とももったいない話です。
弊社では研修や人材育成への関心が単なるシグナルで終わらず、実際に新入社員の成長につながるように、最大限の努力をしてまいります。