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第1,177話 「対面研修」に戻すのか?「オンライン研修」を続けるのか?

2023年08月02日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「なぜオンラインではなくなったのですか?」

これは、先日弊社が担当させていただいたある企業の対面での1泊2日の中堅社員研修の際に、受講者からかけられた言葉です。この受講者は2年前にもオンラインで研修を受講していただいたことがある人ですが、直接対面したのはこの日が初めてでした。

新型コロナウイルス感染症の5類移行後に、社員研修をオンラインから対面型へ移行する組織が増えてきました。コロナ禍の約3年間、感染状況の悪化等に伴い対面で予定していた研修をオンラインに変更せざるを得ない状況が続いていましたが、本年5月以降はようやく対面での研修に戻ってきています。

この間、私がお会いした受講者の大半は対面での研修に戻ったことを喜んでいるように見受けられますが、一方で宿泊研修に遠方から出席する人は研修前日には会場近くへ移動し、研修終了後も帰途は長く、家に着くのは夜10時を過ぎてしまうという人もいるなど、移動に相当の時間を要しています。移動を含めた拘束時間という点で考えると、対面型の集合研修に出席することは受講者にとって少なからず負担になることは事実です。また、往復の交通費や宿泊費、会場の使用料などコスト面で組織にも大きな負担があることも確かです。

実際、こうした理由から全国各地に支店や工場があるような組織では、対面に戻さずオンライン研修を維持するとしているところもあります。

対面かオンラインか・・・研修に限ったことではありませんが、これまでたくさん議論され、それぞれに一長一短がありますので、どちらが良いと一概に言えるものではありません。しかし、私はこの数か月の間に担当させていただいた研修については、はっきり対面型に軍配が上がると感じています。というのは、公開型の研修はともかく、一つの組織が行う研修においては受講者同士の面識があったり、電話だけでやり取りをしていた人と実際に対面したり、以前の部署で面識があった人と久しぶりに対面ができたりなど、何らかの「縁」がある人との再会ということが少なくないのです。それにより、本来の研修のねらいだけでなく、旧交を温めたり活発に情報交換したりするなど、副次的な効果がもたらされるというメリットもたくさんあると感じているからです。

冒頭の例の研修では、終了後に2時間半ほど懇親会が行われましたが、物足りなかったのか2次会、さらには3次会まで盛り上がったという話を翌朝聞きました。それが幸いしたのか、翌日の研修の演習の話し合いでは前日以上に活発に意見交換がなされ、大きな笑い声が聞こえたりと見ているこちらも楽しい気持ちになるくらい積極的な交流がありました。これは、対面により直接コミュニケーションをとれたことが大きな理由だったのではないかと考えています。

この対面コミュニケーションと物理的な距離とコミュニケーションの頻度の関係については、「アレンの研究」と「ベン・ウェイバーの研究」があります。トーマス・アレン(マサチューセッツ工科大学教授1977年)の「アレン曲線」は、コミュニケーションの頻度と物理的な距離には強い負の相関関係があるというものです。それによれば、約1.83メートル離れた人同士と、18.3メートル離れた席人同士を比較した結果、距離が近い人同士の方がコミュニケーションをとる確率が4倍増えたということです。

このようなことからも、対面研修にはコミュニケーションがたくさんとれるという意味で、オンラインではかなわない良さがあると考えています。

さて、冒頭の対面研修に少々否定的だった受講者ですが、研修終了時には「対面研修でよかった」との感想を伝えに来てくれました。その時の表情が実に晴れ晴れとしていましたので、研修を担当した者としても安堵した瞬間でした。

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