中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,225話 何にでも「さん」を付ける人の意識

2024年07月24日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「受講者さんの・・・・」

これは、先日ある研修会社の担当者と打ち合わせをした際に、担当者から何度も発せられた言葉です。私が研修の進め方について説明をした後に、担当者から質問を受けたのですが、その際に「受講者さんが演習を行う時間はどれくらいあるのですか?」と受講者に「さん」をつけて表現されていたのです。それまで受講者に「さん」を付けて表現したことがなかった私としては、その表現に少々驚いたのですが、同時に新鮮に感じたことも確かです。

近年、これまでは「さん」を付けることがあまりなかった言葉に「さん」を付けた表現を聞くことが多々あります。たとえば、派遣社員やアルバイトのことを「派遣さん」や「アルバイトさん」と表現したり、農家のことを「農家さん」と表現したりするのもよく聞きます。また、若い人達の会話の中では彼氏や彼女のことを「彼氏さん」・「彼女さん」と表現するのはもはや普通のことのようです。

この「さん」について、私は本来は人の呼称に付けるものだと思っていたのですが、最近では前述のように会社名や大学名、店舗名に至るまで、何にでも「さん」を付ける人が増えてきたように感じています。このような、いろいろな場面で「さん」付けをする最近の言葉遣いを、皆さんはどのように感じていますか。

そもそも「さん」にはどのような意味があるのでしょうか。改めて広辞苑で調べてみると、「人名などの下に添える呼称。「さま」よりもくだけた言い方。また、丁寧にいうときにつける語」とあり、例として「ご苦労さん」「お早うさん」とありました。

このように「さん」は人名などに添える呼称ですから、先述の「受講者さん」や「派遣さん」などの表現は、本来の意味とは異なる使い方であると考えられます。

それにもかかわらず、「さん」を付けることがこれほど多いのはなぜでしょうか。

これにはいろいろな理由があると思いますが、一つには「丁寧にいうとき」という意味合いからの、相手に対する配慮の現れなのだと考えられます。相手に対する尊敬や丁寧さ、または親しさを表現するために「さん」を付けているということもあり、今の若い人たちがさん付けを多用するのも分かるような感じがします。

また同様の意味で、ビジネスパーソンが会社名などに「さん」を付けるのも、取引関係や競合関係など仕事上で関係がある会社であることを踏まえ、会社を人物のように捉えて敬意を示して丁寧に表現しているということです。

このように、「さん」は相手に敬意を表す言葉としてとても大切な表現ではありますが、とは言え何にでも付けるというのも、またちょっと違うような気がします。こちらは丁寧に言ったつもりでも、相手に違和感を持たせてしまうような言葉遣いをすることは、少なくとも交渉事などをはじめとするビジネスシーンなどでは、できるだけ避けるほうがいいと考えています。

最近では、ちょっとした言葉遣いが大きくニュースで報道されるなどの例もあり、言葉を適切に使うことは簡単なようで実は結構難しいものだなと思います。また、言葉そのものもその時々の社会情勢などを反映しつつ、時代時代で意味合いや使い方などが移り変わっていくものだと思います。だからこそ「今ここでこの言葉を使うのはおかしくないかな」という視点もあわせて持ち続けていきたいと考えています。

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