もう数十年も前の話しになるが、プラモデル作りが大好きだった私は、小学校高学年になった頃、今ならホビーショップと呼ぶような品揃えの模型屋に、用も無いのによく遊びに行った。
5年生の秋、その模型屋で不思議な品名の商品を見つけ、欲しくて欲しくてたまらなくなった。それは試験管の底の方を長さ5センチぐらいの位置で切り取ったような形状のグレーの鉄管で、試験管の口にはネジ式の金属キャップが付いており、キャップの先端に直径2ミリ程度の穴が開いているという、たったそれだけのしろものであった。にもかかわらず欲しくて欲しくてしかたなくなったのは、ネーミングにやられたのである。製品名は「ロケットエンジン」だったと思う。ロケットエンジンには、茶色い円筒をした固形燃料が3つほど添付されていて、導火線も付いていた。エンジンに、この固形燃料を入れ、キャップをして直径2ミリほどの穴に導火線を通して点火するのである。このエンジンを使えば僕にもロケットが作れるんだ、当時の私は目を輝かせていたはずである。
小学5年生の私は、このエンジンをベースにしたロケットの設計に取り掛かった。上空まで上昇した後、落下時の風圧で機体先端部が外れてパラシュートが開く構造を持った一段式のロケットをノートに書き上げた。アポロのようにロケットは発射台に乗り、交差した枠組みで作られた立方体状の柱に支えられている、という絵だった。
ロケット本体は湾曲した円柱構造を作る必要があるため模型屋で簡単に手に入る塩化ビニールで作ることに決めた。発射台の台座はバルサ材を使い、 ロケットを支える縦の柱は木工模型用の細い角材を使うことにした。
当時手に入る模型用塩化ビニールは透明なものしかなかったので、ロケット本体を作った後、プラモデル用の塗料で銀色に塗った。パラシュートはゴミ袋を切って作った。
高空で落下を開始するとロケット先端がはずれパラシュートが開くことを確認するため、小学校の最上階、3階窓から、作ったロケットを投げ上げて実験してみた。一回目で成功した。先端部がはずれ、パラシュートが開いてロケットは校庭に静かに着地した。私はこの時点で、かなり鼻息が荒くなっていたように思う。模型屋でロケットエンジンを見つけてから数ヵ月後の冬に入っていた。稲刈りも終わった田んぼに近所の少年達を集めて、ロケットの発射実験をやる、と宣言したのだ。
広い田んぼに子供達が集まる中(と言ってもせいぜい4~5人だったと思うが)、小学校5年生の私はズックで平らにならした地面にロケットの発射台をそっと置き、そこに全長25センチほどの銀のロケットをうやうやしくセットした。「では、これからロケットを発射します」私は言って、観衆の子供達に10秒前からカウントダウンしてくれるように頼んだ。私は慌ててマッチをすり、5秒前で導火線に点火した。
導火線に燃え移った火は瞬く間にロケットエンジンの中に吸い込まれ、子供達のカウントダウンはいよいよゼロを数えた。
だが何も起こらなかった。ただエンジンは不気味なシューシューいう音を発し始め、何かが起きそうな雰囲気はあったものの、ロケットは飛び上がらなかった。そのうちエンジンから噴出す熱で発射台のバルサ材が焦げ、ロケット本体の塩化ビニールがエンジンの熱で溶け始めた。ロケットはコテッと横倒しになり、まだシューシュー言っているエンジンの力でズリッと5センチほど動いたように見えた。
息を呑んで見守っていた子供達はロケットが転がって動いた時に「おおっ」と声を上げたが、それでおしまいだった。「燃えてる燃えてる」とか「だめだこりゃ」とか口々に言っていたが、それ以上面白いことが起きないことを確認すると、もっと面白い遊びをするために皆どこかに行ってしまった。
私はロケットエンジンの熱でどろどろに溶けて発射台と渾然一体となってしまったロケットの残骸を見つめ、熱に対する対策を取らなかった自分の至らなさを大きく反省した。
しかし、そもそもこの「ロケットエンジン」は模型グライダーに装着し、ある程度の高さまでグライダーを飛ばすために使われるものだったのだ。垂直に離陸できる推力などまったく持っていない。使い方を大きく誤っている。私は、この推力の無いエンジンを使ってしまったことも同時に大きく反省した。
monipet
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センサー、IoT、ビッグデータを活用して新たな価値を創造
「できたらいいな」を「できる」に
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GuruPlug
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株式会社ジェイエスピー
横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
5年生の秋、その模型屋で不思議な品名の商品を見つけ、欲しくて欲しくてたまらなくなった。それは試験管の底の方を長さ5センチぐらいの位置で切り取ったような形状のグレーの鉄管で、試験管の口にはネジ式の金属キャップが付いており、キャップの先端に直径2ミリ程度の穴が開いているという、たったそれだけのしろものであった。にもかかわらず欲しくて欲しくてしかたなくなったのは、ネーミングにやられたのである。製品名は「ロケットエンジン」だったと思う。ロケットエンジンには、茶色い円筒をした固形燃料が3つほど添付されていて、導火線も付いていた。エンジンに、この固形燃料を入れ、キャップをして直径2ミリほどの穴に導火線を通して点火するのである。このエンジンを使えば僕にもロケットが作れるんだ、当時の私は目を輝かせていたはずである。
小学5年生の私は、このエンジンをベースにしたロケットの設計に取り掛かった。上空まで上昇した後、落下時の風圧で機体先端部が外れてパラシュートが開く構造を持った一段式のロケットをノートに書き上げた。アポロのようにロケットは発射台に乗り、交差した枠組みで作られた立方体状の柱に支えられている、という絵だった。
ロケット本体は湾曲した円柱構造を作る必要があるため模型屋で簡単に手に入る塩化ビニールで作ることに決めた。発射台の台座はバルサ材を使い、 ロケットを支える縦の柱は木工模型用の細い角材を使うことにした。
当時手に入る模型用塩化ビニールは透明なものしかなかったので、ロケット本体を作った後、プラモデル用の塗料で銀色に塗った。パラシュートはゴミ袋を切って作った。
高空で落下を開始するとロケット先端がはずれパラシュートが開くことを確認するため、小学校の最上階、3階窓から、作ったロケットを投げ上げて実験してみた。一回目で成功した。先端部がはずれ、パラシュートが開いてロケットは校庭に静かに着地した。私はこの時点で、かなり鼻息が荒くなっていたように思う。模型屋でロケットエンジンを見つけてから数ヵ月後の冬に入っていた。稲刈りも終わった田んぼに近所の少年達を集めて、ロケットの発射実験をやる、と宣言したのだ。
広い田んぼに子供達が集まる中(と言ってもせいぜい4~5人だったと思うが)、小学校5年生の私はズックで平らにならした地面にロケットの発射台をそっと置き、そこに全長25センチほどの銀のロケットをうやうやしくセットした。「では、これからロケットを発射します」私は言って、観衆の子供達に10秒前からカウントダウンしてくれるように頼んだ。私は慌ててマッチをすり、5秒前で導火線に点火した。
導火線に燃え移った火は瞬く間にロケットエンジンの中に吸い込まれ、子供達のカウントダウンはいよいよゼロを数えた。
だが何も起こらなかった。ただエンジンは不気味なシューシューいう音を発し始め、何かが起きそうな雰囲気はあったものの、ロケットは飛び上がらなかった。そのうちエンジンから噴出す熱で発射台のバルサ材が焦げ、ロケット本体の塩化ビニールがエンジンの熱で溶け始めた。ロケットはコテッと横倒しになり、まだシューシュー言っているエンジンの力でズリッと5センチほど動いたように見えた。
息を呑んで見守っていた子供達はロケットが転がって動いた時に「おおっ」と声を上げたが、それでおしまいだった。「燃えてる燃えてる」とか「だめだこりゃ」とか口々に言っていたが、それ以上面白いことが起きないことを確認すると、もっと面白い遊びをするために皆どこかに行ってしまった。
私はロケットエンジンの熱でどろどろに溶けて発射台と渾然一体となってしまったロケットの残骸を見つめ、熱に対する対策を取らなかった自分の至らなさを大きく反省した。
しかし、そもそもこの「ロケットエンジン」は模型グライダーに装着し、ある程度の高さまでグライダーを飛ばすために使われるものだったのだ。垂直に離陸できる推力などまったく持っていない。使い方を大きく誤っている。私は、この推力の無いエンジンを使ってしまったことも同時に大きく反省した。
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