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IMジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

ロケット実験2

2010-09-03 08:52:19 | 日記
 「ロケットエンジン」によるロケット開発が失敗に終わった翌年、小学6年生になった私は、初夏になって駄菓子屋の店先に並んだロケット花火を見 て、今度はこれを使おう、と思い立った。竹ひごの先に爆竹をくくりつけたような、あのロケット花火をうまく使えば、前回の失敗のような推力不足を 補えるのではないか、と考えたのである。

 ロケット花火はビンや缶に立てかけて導火線に火をつけるとシュッと飛び上がりパンッと爆発する例のあれである。前回のロケットは一段式だった が、今回は多段式にしよう。一番下のロケットはロケット花火を5つ使い、2段目は2つ、3段目に1つ。それが今回の基本設計だった。
 5つのロケット花火がその上に乗せた3つのロケット花火を高空まで持ち上げる推力を持っているかどうか、5本のロケット花火に同時に点火できる かどうか、2段目、3段目のロケット花火に時間差で点火できるかどうか、難題は山積みだったが、そこは小学生の頭である。高く飛んでいくイメー ジしか思い描けない。大気圏外まで飛んで行ったらどうなるのだろう、などとそんなことを心配していた。

 竹ひごを取り除いて軽くした火薬部分だけのロケット花火4本を作り、竹ひごの付いた普通のロケット花火を中央に置き、新聞紙で巻いて糊付けした。同じように竹ひご付きの普通のロケット花火に竹ひごを取り除いたロケット花火をくくりつけ、1段目の中央に竹ひごを通して2段目とした。3段 目は普通のロケット花火そのものを使った。導火線は慎重に中央でより合わせ、1段目から3段目まで少し長めの導火線を作って全てつなげた。導火線 の接合部分はセロハンテープを細く切って巻いた。
 うまく行けば1段目が高く上がった後パンと爆発して勝手に飛び散り、同時に2段目に点火してさらに高く上がり、同じように2段目が推力を失うと爆発して切り離され、3段目がさらに高く上がって行く。そんな風に考えていた。
 
 夏休み前のある日の夕方、今度は友達に内緒にして、家の裏庭で発射実験をすることにした。幸い、当時のわが家は広大な畑の海にせり出した半島の先端のような場所にあり、家の西側すぐ近くには民家が無かった。良い天気で、夕日に彩られた空がほんのり紅に染まっていた。竹垣に使っていた細い竹を発射台にして、わずかに北西の空に向けてロケットを設置した。マッチをすり、自分でカウントダウンして3、2、1の1で導火線に点火した。

 垂直に近い形で飛び上がると思っていた予想を裏切り、北西の空にやや傾きながら、道路を渡る歩道橋のようなアーチを描いて飛んだ。と、思うまもなく歩道橋の真ん中あたりでパンと1段目が爆発し、うまい具合に2段目に点火した、のは良かったのだが、あろうことか、ゆるい傾斜を描いて下向きに飛び始めた。

 わが家の西側の畑の向こうには、同級生のTくんの家があった。セイパンというあだ名でみんなの人気者だった。彼の家は、養豚を営んでおり、広大な畑の海にせり出したわが家と向かい合う半島のように、畑の向こう側からせり出した位置に豚舎を構えていた。

 ロケットの2段目は畑を飛び越えて豚舎の屋根に墜落し、屋根の上で爆発した。と、同時に、豚たちの悲鳴のようなキーキー声が、爆発的に聞こえ始めた。私は耳を覆いたくなった。しかし、耳を覆うよりも前に3段目のロケットが屋根の上で爆発する音が聞こえ、豚の悲鳴はさらに大きくなった。空は美しい夕焼けだったが、静かなはずの夕景色は豚の悲鳴で満ち溢れた。

 翌日、私はいつものように学校に行き、Tくんが「昨日の夕方よう、俺んちの豚小屋の屋根に花火打ち込んだやつがいて、えれぇ大変だんったんだぞ」と言うのを青い顔をして聞くことになった。
 「あの時のあれは、オレ」と頭を下げて謝罪できたのは、それから10年以上経った最初の同窓会の日だった。


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株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
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