最後までしっかり真面目に走ればもっとすごい記録が出るのに、と何度かそう思ってきた彼の走りだった。しかし、彼の歴史を知ると、記録よりまず勝てたこと、自分の努力が形になったことが嬉しくて嬉しくて仕方がない、その気持がよくわかった。
ウサイン・ボルト。その走りの秘密をNHKが「ミラクルボディー」と言う番組で解き明かした。われわれ日本人には、彼らのような肌の人種を見ると生まれながらに肉体的な優位性を感じてしまうところがある。日本人にはない力を遺伝的に持っているのだろうと考えてしまいがちだ。つまり、それほど努力しなくても天賦の才で早く走ることが出来ているのだろうと、そんな風に決めつけてしまっていた。しかし、違っていた。実は、まさにその逆。彼は生まれながらに背骨がぐにゃりと右に曲がった形になっている。「脊柱側わん症」という病気らしい。その病気のために、体は右に傾き、左右の歩幅は大きく異なり、腰骨が腿の筋肉をひきつらせ、すぐに肉離れを起こさせてしまう構造になっている。
そもそも、予選から何度も真剣勝負を繰り返せる体では無かったのだ。ジャマイカという国のありようとも深く関係しているのだろう。名をなして世に出るために彼は、自分を鍛える道を選んだ。鍛えて鍛えて世界ジュニア選手権やユース選手権に優勝。アテネオリンピックの代表に選ばれたが、結局、予選敗退。結果を出すことが出来なかった。ジャマイカではスポーツで結果を出した選手は英雄だが、何も出来なかったボルトはひどい目にあった。だがそこで消えていかなかったのが、彼の強い意志の力の証明だ。
これまで以上にハードなトレーニングを積み、脊柱側わん症で歪んだ背骨を筋肉で支えてしまう強靭な肉体を作り上げた。自分が作ったこの体で、ジャマイカ国民にそして世界に自分が勝てる男であることを証明してやる。そう思って臨んだのが、北京オリンピックだったのだろう。圧勝だった。最後には嬉しくて自分を褒めて走った。
彼はこれまで、勝てなかった自分に向けられた世間の冷たさを跳ね返すために必死で頑張って来たが、すでに彼は世界の英雄である。そこで新しい挑戦の目標が生まれた。「記録」への挑戦である。だが、記録に挑戦するためには、「脊柱側わん症」の体は不利なことだらけだ。それでも彼には強い意志がある。負けない、負けない、撮影中も絶えず自分自身に言い聞かせている。
腰をかがめてスタートの練習を行うのは、普通でも腰と足の筋肉の構造上、肉離れの危険性を大きく膨らませるが、彼の場合はなおさらだ。だが、記録に挑戦する覚悟を決めた以上、その練習を止めるわけにはいかない。番組の中では練習がきつすぎてトラックに這いつくばって吐いているボルトの姿も写されていた。それだけ練習していたからこそ、昨年韓国テグで行われた世界陸上のフライング失格という紙一重のミスが起きてしまったのだろう。
ウサイン・ボルトは、強い意志があれば奇跡を起こすことが出来る、そう信じさせてくれる生きた証だ。ロンドンではミス無く肉離れ無くゴールまで駆け抜けて欲しい。なんだか全力で応援したくなって来た。(三)
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