★ 公立高校の前期入試の合格発表があった。全日制普通科定員のうち、およそ30%が決まる。今や高校進学率がほぼ100%で、公立高校の競争率もほぼ1.0倍の時代。前期で受からなくても、ほとんどの生徒が中期で合格する。
★ ではなぜ前期をするのかというと、世の中の私学志向に対抗するため。将来、国公立等の難関大学に合格しうる生徒を私学に奪われないようにするための公立の防衛策だ。理念というよりは方便。
★ 私の時代、京都府は高校三原則(小学区制、男女共学、総合制だったかな)で、それでも高レベルを維持していたが、いつの間にか私学に抜かれ、府政が革新から保守に変わる中で諸々の改革は行われてきたが、すっかり理念が失われ、後期中等教育の改革は難しそうだ。
★ 中島京子さんの「夢見る帝国図書館」(文春文庫)、川﨑秋子さんの「ともぐい」が熊文学なら、こちらは図書館文学か。帝国図書館自体が一つの主人公だ。
★ 作品はまだ200ページを過ぎたあたりを読書中。帝国図書館(名称は変遷しているが)は、多くの文豪が利用しているが後のプロレタリア文学者、宮本百合子さんの使用していたようだ。
★ プロレタリア文学は文学史では学ぶが、実際は小林多喜二の「蟹工船」嫌いしか読んだことがない。とはいえ、宮本百合子さんの作品は長いので、今日は葉山嘉樹さんの「セメント樽の中の手紙」(青空文庫)を読んだ。ごく短い作品だが、なかなか良かった。
★ 主人公の松戸与三はセメント工。セメントをミキサーにあける仕事をしている。鼻の穴に詰まったセメント塊を取り出す暇もないような過酷な肉体労働をしていた。近々7人目の子が生まれるとあって、稼がねばならない。
★ そんなある日、セメント樽の中に頑丈に釘付けされた箱を見つける。中を開けてみると手紙が入っていた。その手紙はセメント工業の女工のもので、セメント工場で機会に巻き込まれ、セメントと同化してしまった恋人のことを思い、彼が姿を変えたセメントがどのように使われたのかを知らせてほしいという内容が書かれていた。
★ 彼女の切実な訴えに心を動かされた与三の心の揺れが印象的だ。
☆ 作品は大正15年の作品なので、日本の資本主義がまだ興隆期の時代だ。それからいろいろあって、今日の日経株価はバブル後最高値に達したという。貨幣価値の変遷があるので一概に比べられないが、株価だけを見る限り景気がよさそうだ。しかしまったく実感がない。
☆ 一体、誰がこの恩恵を被っているのだろうか。一方で円安が進行中。石油や小麦などの輸入が高騰するのではと心配だ。