★ YouTubeで野本麻紀さんの「のもと物理愛」を見る。野本さんと物理学者でカリフォルニア大学バークレー校教授の野村泰紀さんが、野村さんの「マルチバース 宇宙論入門」について語る4回シリーズが面白かった。
★ 相対性理論や量子力学から導かれる宇宙の話。インフレーション、ビッグバン、マルチバース、泡宇宙など、興味深かった。数式を使わず、グラフや概念図で説明するのは、物理学者にとっては難しかったであろうが、素人にもなんとかわかるように説明されているのがありがたかった。(「ぼやっ」とわかっただけだけれど)
★ 現代物理学は仏教的宇宙観に近づいているように感じた。数式で理論的に解を求める物理学と救いを使命とする宗教では立ち位置が根本的に違っているが、でも全く対立するようには思えなかった。仏教の「空」などまさに「時空」ではなかろうか。
★ さて今日は、坂東眞砂子さんの「神祭」(角川文庫)から「紙の町」を読んだ。知的能力が遅れている女性が主人公。子ども時代、周りの子から浮いてしまう彼女はいじめの対象だった。彼女が癇癪を起して暴れると、被害を受けた人々は彼女の母親に苦情を言い、母親は詫びて涙を流した。
★ そんな彼女も成長し、和紙工場で働くようになった。仕事は順調で、工場の娘とも仲良くやっていたのだが、ここで事件が起こる。
★ 月日は流れ、彼女は中年の域に入っている。偏見と好意の眼差しを受けながら、彼女は町中を歩いている。かつて勤めた工場も今は廃墟になっている。彼女は人間の心には表と裏があることを発見する。文章が美しく、何か切ない作品だった。