快風丸

俺の船に乗らないか。

大西順子トリオ

2012-11-03 18:30:03 | Weblog

 岡崎のリブラホールで見たのは、もう3年前だ。

6時に入場して、開演は7時。

カウンター席に着き、コーヒーを飲みながら待つ。

奥の厨房とフロアは大忙し。ジャズの店は、客の年齢層が高いので、アルコールもフードも

ひっきりなしに注文が入る。活気ある店内、店員のキビキビした動作は見ていても気持ちがよい。

あることに気が付いた。

「どこから現れるのだろう。」

店の入り口を入って右手がステージ。四方を見渡しても、後ろは壁、トイレ、カウンターと厨房。

2階は無い。

 

 さて、40分押して、トリオのメンバー登場。

入り口のドアから入場。目の前をメンバーが通り、狭い客席の後ろから客間を縫ってステージへ。

即、グルーヴィンな演奏が始まった。

 

 一曲目が終わってMC。この店は、まだデビュー前に日本で初めて自分名義でプレイした縁の深い

場所であると。2デイズだったが、客はマスターの友達と思しき人が6~7人だったが、交通費と、

わずかなギャラを頂いたのを感謝していること、以前の活動中止のこと、引退のことなど長いMCだった。

 少し、顔がふっくらとしたように思えた。この人は、華奢で小柄。それがまた、この人の鋭いイメージを

増幅させていた。この日は、なにかが吹っ切れたような優しい表情だった。

 リラックスした感じは、演奏にも感じられた。陸上競技の選手が大記録を打ち立てる時は、こんな感じ

なのだろう。

 カウンター席からは、後ろ姿の順子さんの右手が見えた。距離にして5mほどしか離れていない。

 

 ドラマーは、クインシー・デイヴィス、若手の超有望株、大西さんの言葉を借りれば、

「これからどんどん売れっ子になってゆく。」

のだそう。1タム、1クラッシュのシンプルなセット。キレが良くて、とても分かりやすいカッコ良さ。

およそ、良い演奏をするドラマーは、その動きもダンサーのごとく洗練されているものだ。見ていて楽しい。

LIVE終盤のドラムソロ、鳥肌が立った。「泣きのドラム」。

以前見た映画「扉をたたく人」で、最後に主人公がたたくジャンベの悲しい音がフラッシュバックした。

あれは、幻想じゃなかった。打楽器は、やはり、これほど深い悲しみの感情を表現できるのだ。

 これは大西順子のラストツアーであることを改めて意識させられた。

順子さんが何度もメンバー紹介する中で、一度、間違えて

「クインシー・ジョーンズ」 とコールし、客に指摘される。ここで笑いが起きた。しかし、順子さんは、

「音楽一家で、お父さんがクインシー・ジョーンズが好きで、それからとった名前です。当たらずしも

遠からず。」

 大西順子は、無愛想で、MCはメンバー紹介しかしないというのが評判だったが、おもしろい人なのだ。

おかげで現代ジャズのキーパーソンの名前を忘れることはないだろう。

 

 ベースは、井上陽介。前回、岡崎の時もこの人。

ほぼ正面でした。前のLIVEでは、さして印象に残らなかったのだが、今回は違った。

ベースって、そんなに弾きまくって良いの、と思うほど。きっと特別な思いでがんばっているのだろうと

感じた。アップライトベースを揺らしながら、前のめりで弾くその姿は、女性を抱いてダンスしているよう。

激しくもエレガントな感じ。そんなに弾きまくっても、このトリオは、しっかりとひとつの音楽を奏でている。

素晴らしいアンサンブルは、とても気持ちの良いものでした。

「オン ベース 井上陽介、井上陽水ではありません。」

やっぱり、順子さんは、おもしろい人だ。おかげでジャズの重要ベーシストの名前を忘れることはないだろう。

 

 大西順子さんのタッチは、男性的と言われる。セロニアス・モンクにたとえられる、硬くて、ハッキリした音。

初めて友人が貸してくれたCD、「クルージン」を聞いて、その個性的な音のとりこになった。その後、ピアノ、

ジャズに興味を深めていくきっかけとなったのを思い出す。

 しかし、今回、近くで聞いていて、また違う面を発見した。確かに、そのインパクトの強いタッチは特徴的で

あるが、それだけではない。時に繊細に、時に柔らかく、そして、クライマックスでの強打の爆発的な響き。

表現が多彩なのだ。だからこそ、その特徴的な硬く強いタッチが、より生きるのだと。

時々、何拍子か分からなくなったり、小節の頭が分からなくなるような複雑な展開をする曲があり、そんな時、

その「わけのわからなさ」に身をまかせていると、もう、なにもかもどうでも良くなってきた。音楽に酔ったのだ。

初めての経験だった。音楽に酔うとは、比喩表現だと思っていたが、本当にそれを経験した。

 

途中、40分のインターバルをはさんで、アンコールまで、トータル2時間15分。

大西順子の引退公演が終わった。悲しくも、さびしくもなかった。

決して曇ることのない、そして一生無くすこともない、キラキラと輝き続ける大きなダイヤモンドをもらったのだ。

心からの拍手で送り出した。

 

 

 

 

 


まぜてドリップ

2012-11-03 01:36:22 | Weblog

 マドラーで混ぜながらお湯を注ぐとおいしくなるらしい。

粉が沈んだ状態では、うまくコーヒー成分をうまく抽出できないとのこと。

かき混ぜることによって、常に湯の中でコーヒー豆が踊っている状態にする。

これにより、コーヒー豆の成分をより多く抽出できるとのこと。

 確かに、何もしないより、豊かな味わいになった。