落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

本当に問題ないのかほうれん草

2011年03月20日 | 原発
政府や専門家は、放射能汚染について「直ちに影響のあるほどでない・・・」というコメントが多い。
しかし、放射能は量は少ないかも知れないが、日々出続けており、蓄積される。
ここ、数日、数週間で放射能飛散が確実に止まるなら問題ないかも知れないが、先行き不透明。
風評被害をおそれる気もわからないではないが、ウイルスなどと違い煮沸して防げるものではない。
法令で決まった基準値が、徐々に無視されているおそれがある。

武田教授のサイトより
原発 緊急情報(18) ほうれん草は食べられるか?
http://takedanet.com/2011/03/18_ba59.html

茨城県は2011年3月18日に福島県境に近い高萩市で採れたホウレンソウから、国が示した規制値の1キロあたり2000ベクレルの約7.5倍にあたる1万5020ベクレルのヨウ素131を検出したと発表した。 福島第一原発から約100キロ離れたところにある.また同時に規制値を超す放射性セシウムも検出されたと報道された。
これに対して枝野官房長官は、
「被曝量は胸部CTスキャン1回分の5分の1程度である」とし、「ただちに健康に影響を及ぼす数値ではない」と強調した。
官房長官は放射線の人体に対する影響の素人であるから、この後ろに専門家がいる.
千葉市の放射線医学総合研究所の環境放射線影響研究の専門家は
「このホウレンソウの数値を人体への影響を示す単位である「シーベルト」に換算した場合、0・24ミリシーベルトになる。
人体に影響があるのは一度に100ミリシーベルトを受けたときとされており、小鉢1人前のホウレンソウを100グラムと仮定すると、今回のホウレンソウは4200人分を口にしないと人体に影響を及ぼさない計算になる。」 と発言している。
さらに、この専門家は 「妊婦や子供など、放射性物質の影響が大きいとされる人たちについても、摂取しても問題がないレベルだ」 と言う。

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本当は「ベクレル」とか「内部被曝」についてかなり丁寧に説明してからの方が良いのだが、ことは緊急を要するので、それらは後に説明することにしてここでは「汚染されたほうれん草を食べても大丈夫か」ということだけを説明する。
この専門家の言うことはムチャクチャである。おそらく国から研究費を丸抱えでもらっているので、国民を無視した発言をしていると考えられる。

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まず、第1に放射性を持つ物質を食べた場合の健康への影響は詳しく調べられていて、この場合のヨウ素131のように放射線を出す元素(正確には同位体という)ごとに細かく決まっている。
またそれらが1種類の時とか、2種類の時についての研究されている。
その上で、規制値が決まっている。この手のものは同位体の数が多いので、同位体毎に詳しい「別表」があり、それで専門家は接種して良い限度を決める.
だから、規制値の7.5倍でも安全だなどという話は全くない。そうなると専門家はなにもできなくなる。

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次に、ほうれん草で内部被曝することと、1年に100ミリシーベルととは、人の健康に影響するのがまったく違う。
でも、ここではこの専門家の通りに、もしも一般の被曝と比較するならば、一般人の1年間の限度は1ミリシーベルトである。
この専門家が言っている100が1になるのだから、まったく違う.
具体的にはほうれん草を小鉢一杯、42回食べたら、1年間の規制値になる。
つまり、このホウレンソウは1年に42回しか食べられない。
また、妊婦や子供だのについての内部被ばく量(限度)はハッキリ決まっていて、これも1年当たり1ミリで、こちらの方は単なる基準値ではなく、法律で定められている内部被ばく量の限度である。
従って、汚染されたホウレンソウの汚染度が少し高くなることがあり得る事を考えると、安全をみて1年に10回ぐらいに限定されるだろう.


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放射線で汚れた農作物を捨てるというのは、それをつくった農家の人は断腸の思いだろう。また、経済的な損失も大きい。
でも、農作物に対する放射線で汚染されたものの規制値を決めた限りは、それを守るのが順当である。
また、医療行為の一つであるCTスキャン等と被曝量を比較するのは無意味で、いくら官房長官が素人と言っても政治家である. 国民の健康を守る見識がない。
すでにこの国の政府も専門家も、国民の健康を考えずに電力会社を助け、ひたすら「国民がじっと我慢して放射線物質で汚れたホウレンソウを食べ健康害すること」を望んでいるようだ。
当面、放射線で汚染された野菜は食べない方が良い。産地から出荷するのは「規制値以下のもので、良く水で洗浄して、汚染が採れることが分かっているもの」に限るべきだ。
消費者の防御としては、汚染野菜を買わないことしかない。仕方が無い。汚染しているのだから。

(平成23年3月20日 午後1時 執筆)武田邦彦


原発危機 次の段階へ

2011年03月20日 | 原発
福島第1原発事故は、懸命の冷却作業が行われ、連鎖的な核分裂反応の心配はなくなった。
ところが使用済み燃料というものは、冷やすのに数年かかるという。
「電源が復旧するまで毎日水を運んで冷やさなければいけない」とのこと。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_jishin-higashinihon20110317j-11-w550

いよいよ、食品、飲料水などの放射能汚染を云々する記事が見られるようになった。
厚労省は「直ちに健康に影響をあたえるものではない」としている。
【放射能漏れ】群馬の水道水から微量の放射性物質 県「飲用に支障なし」 2011.3.19 16:12
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110319/trd11031916130010-n1.htm

 群馬県は19日、前橋市内の水道水などから放射性物質を検出したと発表した。福島第1原発の事故の影響とみられるという。ただ検出量は、飲食物摂取制限基準値を大幅に下回る、ごく微量で、県は「飲用に支障はない」と冷静な対応を呼びかけている。
 県によると、調査は、文部科学省からの指示で18日に、県衛生環境研究所(前橋市上沖町)の蛇口から取った水道水で実施した。
 その結果、「ヨウ素131」(1キログラム当たり2・5ベクレル)と「セシウム137」(同0・22ベクレル)、「セシウム134」(同0・16ベクレル)の放射性物質を検出したという。

 また、県の独自調査で同日に採取した、県央第1水道事務所(榛東村)の水道水からも「ヨウ素131」(同14ベクレル)が検出された。みどり市塩原浄水場(みどり市大間々町)の渡良瀬川の原水からは放射物質は検出されなかった。
 国が定める飲用水基準値はヨウ素が1キログラム当たり300ベクレルで、セシウム(セシウム137や同134などを合わせた基準)は同200ベクレル。
 県は「飲用しても被曝(ひばく)する可能性はないレベル」としている。ただ、今後も1日1回の測定を続け、推移は見守るという。
【放射能漏れ】厚労省「健康に影響なし」 ホウレンソウなどの放射線量 2011.3.19 18:19
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110319/trd11031918200013-n1.htm

 厚生労働省は19日、福島県産の原乳と茨城県産のホウレンソウの2品目から食品衛生法に基づく暫定規制値を超える放射線量が検出されたと発表した。各自治体が出荷元の特定を進め、販売禁止の措置となる見通し。
 福島第1原発の事故を受けて厚労省は17日、放射線汚染の基準値を超える飲料水や生鮮食品を出荷させないよう都道府県に通知。食品・飲料水などを6項目に分け、ヨウ素やセシウムなどの出荷制限する暫定規制値を定めている。
 牛乳は1キロ当たりヨウ素300ベクレル、セシウム200ベクレル、ウラン20ベクレル。野菜はヨウ素2000ベクレルなど。
 福島県が実施したサンプル調査では16日~18日に福島県川俣町で採取された原乳から1キロあたり932~1510ベクレルの規制値を超えたヨウ素が検出された。川俣町は福島第1原発から約40キロ離れている。
 茨城県で実施されたサンプル調査では、同県高萩市や日立市など6市町村から1キロあたり1万5020~6100ベクレルのヨウ素、同524ベクレルのセシウムなどいずれも規制値を超える数値が検出された。検出された6市町村は原発から84キロ~122キロの距離。
 厚労省の大塚耕平副大臣は消費者に対し、「ただちに健康に影響を与えるというものではない。全例のない事態の深刻さを考え、すみやかに報告した」と冷静な対応を求めた。

連日原発危機情報を更新されている武田教授サイトには、質問メールが殺到しているとのこと。
武田教授のサイトより
http://takedanet.com/2011/03/15_0205.html
原発 緊急情報(15) ご質問の多いことについて

福島原発の状態は第3段階に入りましたので、緊急情報を少し止めようかと思ったのですが、ご質問が多いので、緊急情報として書きました。

福島原発の事故の第1段階は最初の頃水蒸気爆発が起こったりした時期で、変化は激しく、危険でした。
特に、その頃は放射線があまり原発から外へ出ていなかったので、東京電力は相当無理なことをして放射線が外に出ないように頑張るだろうと考えていました。
例えば、原子炉の中の圧力が上がった場合、圧力を低くすると、外部に放射線物質が漏れるので、東電の責任者はびびって、それができないと思う可能性があったのです。
そうすると、圧力が上がり原子炉が爆発する危険があると考えたからです。
ところが2号炉の格納容器が割れたために、発電所の中の放射線が一時400ミリシーベルトというものすごく大きな値なりました。これは良くないのですが、わたくしはこれを聞いて逆に安全になった、第2段階に入ったなと思いました。
というのは、東電の責任者が放射線を漏らしては行けないというプレッシャーから解放されるので、圧力容器が破裂する可能性が少なくなったからです。
そして、自衛隊が水を注入し始めた頃から第3段階に入ったと思います。すでに1号機から3号機は原子炉の中の燃料の問題、4号機は使用中の核燃料の貯蔵の問題になりました。
これらは水の補給がうまくいかなければ燃料が破損しますが、それには3、4日かかるでしょう。従って、行動する時間的余裕が出てきたということが言えます。

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このような状態の中で多くの人が心配されていることが3つ程あります。

一つは明日あたりから天候が悪くなって関東地方に雨が降る可能性があるということです。
放射性物質が空気中にある場合に雨が降るとそれが地表に落ちてきて人体に付着します。
チェルノブイリ原発の時に、汚染地域がポツポツと飛び地になっていたのはこの雨の影響も大きかったわけです。
そこでわたくしは気象庁が出している雲の動きを調べてみましたら、もし明日関東地方に雨が降った場合、その雲は放射線の少ないところ(ほぼ安定して日本海)から来ますので、少なくとも東京、横浜、大宮、千葉については問題はありません。
福島県及び茨城県と栃木県の北部、宮城県の南部については、すでに空気中にある放射性物質が落下するので、できるだけ雨の降っている時には外に出ない方がいいと思います。
どうしても雨にぬれた場合、家に帰ってできるだけ早く洗濯して汚れをとってしまうことが大切です。洗濯をした水は若干の放射線物質がついていると思いますが、それが下水に流れるのは仕方がないと思います。 現在の段階では環境を汚すのはやむを得ないので、それよりも人体に直接、触れることを防ぐことが大事だと思います。


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第2に、政府やテレビは相変わらず時間当たりの放射線のことを言っていて、それとレントゲンとか飛行機の関係で「直ちには障害がでない」と言っています。しかし、もともと放射線は遺伝子に損傷を与えるもので、すぐには障害は出ません。
また、一般人の基準である1ミリシーベルト(これから先はシーベルトは省略します)を浴びても大丈夫だということを随分多くの人(政府、テレビ、専門家、一般の人がネットで)が書いています。
わたくしもどちらかと言えば個人的には放射線はもう少し高くても大丈夫ではないかと考えていますが、このような非常時では個人的な考えはあまり表に出すべきではなく、やはりいろいろな会議を経て決まった国の基準を守ることが大切だと思います。
でも、これほど「大丈夫」と強調されているので、少しデータを説明します.

女性で医療関係のお仕事をされているかたで放射線をうける人の場合、被曝限界をどのように考えるか長く議論されています。
いろいろな考えがありますが、最も標準的には女性で医療関係の放射線を浴びるような仕事をしている場合、1ミリを超えたら仕事をさせない方が良いというのがこの仕事の関係の専門家がおおむね合意してるところです。
従って、1年に1ミリから数ミリぐらいが良いのでしょう.
次に、東京からニューヨークまで飛行機で行くと、かなりの被曝をすると言われますが、これについては航空関係者の間で議論があります。
おおよそ一般人の基準の1ミリに比べて、その5倍の5ミリ程度がが妥当であると考えられています。5ミリというと、例えば1ヶ月あまり同じところで生活する人は、1時間当たりの放射線は5マイクロになります。
福島県の多くのところは、時間当たり5マイクロを越えてますから。航空機で仕事をする人の基準値を超えるということになります。

三番目はチェルノブイリの事件のときに、スウェーデンで妊婦の影響を調べた研究があります。
チェルノブイリの時に、スウェーデンで観測された一番高い放射線は1マイクロとでした。ですから日本で言えば、福島県はもとより、茨城県と栃木県の北、宮城県の南方がそれにあたります。今のところ東京、横浜、大宮、千葉は、1マイクロを下回っています。
テレビや政府は1マイクロでは全く健康に問題がない(すぐには障害がでない)と言っています。しかし注意しなければならないのは、テレビや政府は「短期間に障害が出ない」と言っていることです。
スウェーデンの論文を読むと、妊娠しているときに1マイクロの放射線を浴びた子供は、頭の発達が少し遅れ、特に数学の力が落ちたというふうに報告されています。
ただ、子供の体の方は健康だと報告されています。
わたくしはこの論文を紹介するかどうか少し迷いました。妊娠しているお母さんにしてみれば、生まれてくる子供の頭の発達が遅れるということはとても衝撃的なことだからです。
もちろん論文ですから先端的なことであり、あるいは間違いもあるかもしれません。論文を紹介しておいてやや無責任ですが、ヨーロッパの論文には少ない例で断定的な結論を導くものがあり、私はこの論文に否定的です.
読者の先生からもご連絡がありましたが、日本の医学の知識でも論文の記述は疑わしいと言っておられました。 従って、この論文に記載されていることが事実であるか、少し保留させてください。実は妊婦についての影響はそれほどはっきりとしたレポートがないのです。その理由は妊婦が高い放射線のところでさらされることがないことと、放射線が低いところではかなり多数の例をとらないと学問的にはっきりしないからです。

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総合的に見て、女性のレントゲンを取り扱う人、飛行機に乗る人、そして妊婦等の例を見ますと、日本の基準、つまり一般人が1年間に1ミリという被ばく量は、それ程極端に低いわけではないとも考えられます。
今後研究が続けば、もう少し高いレベルでも OK かもしれませんが、個人で勝手に判断して、1ミリは低すぎるとこの段階で言うのは危険です。
とりあえず1ミリを一つの目安とし、航空機の仕事をする人の5ミリぐらいをご参考になってそれぞれご判断いただきたいと思います。

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第3は水道等の汚染です。
水道やその他の野菜が汚染されたという報告がありますが、これは当然のことです。すでに福島原発から遠く離れた福島市で20マイクロという放射線が報告されているわけですから放射能を持つ物質が広く拡散していることは間違いありません。
問題は程度の問題ですが、わたくしがもし家族に言うならば、飲み水はできるだけペットボトルで飲むこと、洗濯や掃除お風呂等は、水道を使っても問題がないと答えると思います。
また、野菜等は1日中、外にいるのですから、すでに7日間というと1時間あたり20ミクロンでも、3ミリを越えています.
すでに放射性物質が付着することが多いので、ある程度は洗わなければいけないと思います。野菜に付着している放射性物質のほうが水道に含まれているより少ないからです.
水道や野菜については現在のところデータが少なく、この程度しか言えません。放射線というのはできるだけ少なくしておくというのが大切ですから。もしペットボトルを買おうお金があれば飲み水だけでもペットボトルにしておいたほうがいいのではないかと思います。
また放射性物質の中には煮沸すればのぞけるものもありますが、細菌と違うので原則としてはとれません。

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皆さんから多くのメールをいただき、本来は一人一人の事情が違いますから個別にお答えしたいのですが、現在のところブログを書くのが精一杯というのが正直なところです。
申しわけありませんが、しばらくできるだけブログを多く書くようにしますのでご参考になってください。また誤字脱字もご容赦ください。
(平成23年3月19日 午後7時 執筆)武田邦彦