外は雨が降り続いている。アマゾンプライムビデオでも観ようかと思って映画を探していたら、『いしゃ先生』という面白そうな映画を見つけた。
戦前戦後の混乱期に、まだ無医村だった山形県大井沢村という生まれ故郷の寒村で僻地医療に生涯を捧げた志田周子(ちかこ)さんの人生を映画化した2016年公開された作品だ。その当時、病気になっても、貧しい農村では祈祷師のお祓いで治す風習が根強くあった。また治療代を払えない経済事情もあり、診療所も診療行為そのものも村民になかなか受け入れてもらえなかったが、駆け出しの女医が情熱を持って村民と向き合い、献身的な努力を重ねることで医療が村に根付いていく話だ。
3年だけという約束で村長の父親の求めを受け入れて東京から戻ったはずだったが、結局生涯その村で僻地医療に身を尽くすことになる。この世に生をうけて、人それぞれどういう生き方が幸せなのか考える。人に求められ、頼られ、感謝されて、働き抜くことができたことは最高に幸せな人生だったのではないだろうか。主人公の周子さんはガンに倒れ、51歳で生涯を閉じる。主演の平山あやさんの一人の女医の葛藤や人間的な成長、芯の強さを表現する演技が冴えていた。
ノートルダム清心女子大の元学長、故渡辺和子さんの著書で紹介されていたベルギー人の神父の詩を思い出す。寒村で美しく咲いた周子さんの生き様に重ね合わせて、少し心が温もった。
神がお植えになったところで
咲きなさい
咲くということは
仕方がないと諦めることではなく
置かれたところで幸せに生き
周囲の人々も幸せにすることなのです