稲が黄金色に熟れると、晴天の日に刈り取る。稲作の締めくくりの仕事だが、農家の半年間の苦労が報われるときであり、収穫の喜びのときでもある。昔は田植えと同じく近隣で協力して一㈱ずつ鎌で刈り取った。今は稲刈り機ですませる。稲刈の前には稲を乾かすために田の水を落とす。刈取った稲は稲架掛けて天日干しにするか、乾燥機で乾かす。歳時記の秋の季語が並ぶが、どれも香りのするものばかり。「よの中は稲刈る頃か草の庵 芭蕉」「稲かれば小草に秋の日が当たる 蕪 村」「老一人門田刈るなる月夜かな 百 童」「刈る程に山風のたつ晩稲かな 飯田蛇忽」「立山に初雪降れり稲を刈る 前田普羅」と最近は都会の人が田舎や、過疎地域に転居して、農業を始める人もおられるようだ。大都市中心の生活も定年後は、帰農する生活も地方の再生に多少でも貢献できるかもしれない。(吾老いて 帰農も出来ず 屑となす ケイスケ)
秋は渡り鳥の季節です。雁、鶴、鴨、それにさまざまの小鳥たちが北の国から日本列島へ、さらにもっと南の国へと渡って行きます。地上で生活をしている私たちには見えませんが、このころの日本列島の上空では鳥たちが大移動をくりひろげているのです。渡り鳥のなかで昔から人々がもつとも親しみを抱いてきたのは雁です。「白雲に羽うちかはし飛ぶ雁の かずさえ見ゆる秋の夜の月」(読み人知らず)「待つ人にあらぬものから初雁の けさ鳴く声のめずらしきかな 佐藤元方」『古今和歌集』恋人でもないのに初雁の声にはっとしたというのです。雁は「クワッカカッ、クワッカ、クワッカ」と大きな声で鳴きます。雁という漢字の音は「中国での読み方」は「ガン」ですが、これはこの鳴き声を写すしたもので、日本風に訛って「雁」になったもの。「病雁の夜さむに落ちて旅ね哉 芭蕉」「雁の腹見すかすや空や船の上 其 角」「雁がねの竿に成る時猶さびし 去 来」「小波の如くに雁の遠くなる 阿部みどり」。このようにして温かい地方にたどりつつく。これを渡り鳥という。種類は鶫、、あとは雛などでる。大群が雲の様に動くので鳥雲、その羽音を鳥風という。燕が南に帰るのは別に「帰燕」という。