(1978年角川)
昨夜、仲間からBSで『野性の
証明』を放送していると連絡
があり、観た。
日本の暗黒時代到来の近未来
を描いた森村誠一原作の小説
を角川春樹が映画化した。
まだ15才の薬師丸ひろ子の演
技が光る。
映画では1980年の未来を描い
ている。
その頃の日本は、非公然に自
衛隊内には政府に反対する国
民を暗殺する「特殊工作隊」
が秘密裏に創設されていた。
その部隊の秘密訓練中に、主
人公味沢(高倉健)は、山中の農
村で風土病により村民が村民を
殺戮しているところに出くわし
てしまう。
民間人との接触を禁じられてい
るサバイバル訓練の最中、味沢
は、その殺戮者を葬って唯一生
き残った村民の少女を助けてし
まう。
少女は過度のショックから記憶
喪失になったが、味沢は、自衛
隊を辞し、民間人となってその
少女頼子の養父となり育ててい
た。
だが、非公然秘密部隊の存在が
世間に漏れる事を恐れた防衛庁
陸上自衛隊は、味沢を殺害する
ために部隊を派遣するのだった。
薬師丸ひろ子が可愛いの!
この映画は、1978年当時存在
しなかった迷彩服と、まだ採用
されていない5.56ミリ口径の自動
小銃を部隊に装備させている。
近未来を予測して角川が考案して
設定したものだ。
銃は現在の自衛隊制式小銃と
なった89式のベースであるア
ーマライトAR-18である。
この優れた小銃を元に日本の
89式と英軍のL85軍用小銃は
作られた。
北米ロケでは実銃が使われて
いる。
高倉健は、実にリアルに特殊
部隊の鉄則通りにダブルタップ
で全て射撃していたが、音声
ではフルオート音となっており、
せっかくの迫真の演技が考えの
足りない演出により台無しにな
ってしまっている。
健さんは、ショートにタタン、
タタン!と正確に2発ずつ射撃
している。
この迷彩服は、角川が近未来
を想像して創作した当時には
どこにも存在しない柄である。
この映画のメッセージ性は大
きい。
5.56ミリ口径小銃も、この迷
彩柄のカラーも現行では自衛
隊に配備されるようになった。
特に恐ろしいのは、この迷彩
カラーは、都市ゲリラ戦につ
いて最大の効果を発揮する柄
物であるところだ。自ずと配
備の意図は見えてくる。
銃口はどこに向くのか、とい
うことが。
今、すべて現実となっている
のだ。
映画の中では、正義感溢れる
刑事(夏八木勲)が味沢と特殊
部隊について怒鳴る。
「ここは日本だぞ。お前も外
の奴らもみんなキチガイだ」と。
カタカナ部分は放送ではサイ
レントでカット。
味沢は言う。
「正義だとか法律だとか言っ
ていたら、ここにいる我々は
みんな殺されてしまうんだ」
この味沢の言葉は、実はこの
1978年当時も、そして今も
「リアル」なのである。
国家権力は平気で国民を殺す。
そんなことはあり得ない、と
思っているとしたら、それは
あまりにも平和ボケのお花畑だ。
戦後の巨大3大事件で人が消
されて行ったのにも日本政府と
CIAが深く関与している。
権力というものはそういうもの
だ。
米国などはツインタワーを自分
らで爆破させてまで権力の発動
を為す。国民を殺して。
そもそも、大統領が何度も暗殺
されても、真の黒幕は捕まらな
い。捕まる訳がない。国家が
やっていることだからだ。権力
を握る者たちが。
映画『野性の証明』で描かれた
特殊部隊も銃も迷彩も、それを
支える体制も現代ではすべて
整った。
だが、当時とは状況が異なる。
情勢ではなく、情況が異なるの
だ。
それは、多くの国民はポチの
さらにポチとなり、異議を唱え
なくなったことだ。
これは、当時の国家権力とし
ても、ここまで国民洗脳がう
まく行くとは想像していなか
ったのではなかろうか。
自衛隊だけでなく、国家の暴
力装置たる警察においても、
非公然部隊が創設されて活動
している。それは警察OBから
も「民主主義を逸脱しすぎだ」
と批判されている部門だ。
国民の情報操作をしたり、有
力人や芸能人のスキャンダル
をねつ造したりして人心操作
を行なっている。
そうしたことは、日本征服が
貫徹されたから可能になった。
その部隊のメンバーは、「内
閣事務官」という肩書きで内
閣情報調査室に出向したりし
た経験や外事課所属の経験を
持つ警察庁のキャリアによっ
て構成されている。表向きは
別な公的な肩書きを持っている。
そして、彼らの本当の職務は、
日々、非公然の非合法活動を
している。
法律などは関係ない。
権力の行使とは、法律などは
関係ないのだ。
ただ、そうした組織は、「内
部調整」で描いた絵を実行す
るためには内に向けてでも何
でもする。
「事故死」「自殺」。これは
彼らの人命抹消の常套手段だ
からだ。
身内もなにもない。全ては「描
いた絵」を軌道に乗せるために
動いて行く。そのためには、
どんなことでもする。
非公然、非合法活動とはそう
いうものだ。
これは国家権力であろうと、
反国家的秘密結社であろうと
も差異はない。
今更ながら、森村誠一と角川
映画『野性の証明』の警鐘は
大きかったのだが、ほとんど
の国民はただの「映画作品」
の絵空事としてしかこの映画
を観ていない。
実は、恐ろしいまでの超くっ
そリアルな事を描き切ってい
るのに。