299)ハーブ系サプリメントのBreastDefendはトリプルネガティブの乳がんの転移を抑制する

図:カワラタケ・霊芝・メシマコブのようなキノコ系生薬、抗がん作用のある生薬の半枝蓮・黄耆・ウコン、抗がん作用のある天然成分のジインドリルメタンやケルセチンという組合せは、漢方薬やサプリメントを使ったがん治療で良く使用されている。これらの生薬や成分を組み合わせたサプリメントが、動物実験で、トリプルネガティブの乳がんの転移を抑制する効果が報告されている。

299)ハーブ系サプリメントのBreastDefendはトリプルネガティブの乳がんの転移を抑制する

以下のようなタイトルの論文が最近報告されています。

BreastDefend™ prevents breast-to-lung cancer metastases in an orthotopic animal model of triple-negative human breast cancer.( BreastDefendはトリプルネガティブのヒト乳がんの正所性移植腫瘍動物モデルにおいて肺への転移を予防する)  Oncol Rep 2012 July 26. doi: 10.3892/or.2012.1936. [Epub ahead of print]
【要旨】
BreastDefendはキノコのカワラタケ (Coriolus versicolor)、 霊芝(Ganoderma lucidum)、 メシマコブ(Phellinus linteus)、 生薬の半枝蓮(Scutellaria barbata)、黄耆( Astragalus membranaceus)、ウコン(Curcuma longa)の抽出エキスと食品由来生理活性成分のジインドリルメタンとケルセチン を加えたサプリメントである。我々は以前の研究で、このBreastDefendがヒト浸潤性乳がん細胞由来のMDA-MB-231の増殖と転移を阻害することをin vitro(試験管内)の実験で示している。
今回の研究は、マウスに移植した乳がん細胞の増殖と肺への転移に対してBreastDefendが抑制効果を示すかどうかを検討するために行った。
マウスに体重1kg当たり100mgのBreastDefendを4週間経口投与したが、体重や肝機能は変化がなく、組織学的にも肝臓や脾臓や肺や心臓の組織に毒性は認められなかった。
さらに、コントロール群に比べて、BreastDefend投与群では移植腫瘍の著明な縮小を認めた。肺への転移は、コントロール群(BreastDefend非投与)では67%に見られたのに対して、BreastDefend投与群では20%に顕著に低下した。転移数の中央値はコントロール群が2.8(最小0.0、最大48.0)に対してBreastDefend投与群では0.0(最小0.0、最大14.2)であった。BreastDefendの転移抑制効果は、転移関連遺伝子のPLAU(ウロキナーゼ・プラスミノーゲン・アクチベーター)とCXCR4(C-X-Cケモカイン受容体-4)の乳がん組織における発現低下によって確認された。
結論として、BreastDefendは浸潤性乳がんの治療手段と有望であることが示唆された。

乳がんに対して抗がん作用を示すハーブや薬草や食品成分に関しては多くの報告があります。BreastDefendは米国のサプリメントの商品名ですが、Breastは「乳房」Defendは「守る」という意味で乳腺の健康を守るような効果を期待させる商品名です。
この中には、キノコのカワラタケレイシメシマコブ、抗がん生薬として多くの報告があり乳がんに対する有効性が報告されている半枝蓮(ハンシレン)、免疫力を高める黄耆(オウギ)、抗炎症作用やがん予防効果が報告されているウコン、アブラナ科野菜に含まれる成分で乳がんの予防効果があるジインドルルメタン、がん予防効果があるフラボノイドの一種のケルセチンと、乳がんの予防や治療に効果が期待できそうな成分を組み合わせた組成になっています。
このような組合せは、漢方薬やサプリメントを使った乳がんの治療でもポピュラーな組合せです。
カワラタケや霊芝やメシマコブのようなキノコ系の生薬に含まれるβグルカンなどの多糖が免疫力を高めて抗腫瘍効果を示すことが知られています。
半枝蓮は米国のベンチャー企業が乳がん患者を対象に臨床試験をおこなっており、有効性が報告されています。(66話参照)
黄耆はマメ科のキバナオウギおよびナイモウオウギの根です。黄耆の多糖類成分には免疫機能増強作用が報告されていて、病気全般に対する抵抗力を高める効果があります。黄耆はアストラガルス(Astragalus)の名前で、米国では高麗人参(Ginseng)と並んで人気の高いサプリメントです。
ウコンに含まれるクルクミンはがん予防効果や抗がん作用が報告されています。BreastDefendに含まれるウコンはクルクミンが90%の成分が使用されています。
ジインドリルメタンの乳がんに対する効果については多くの研究が行われています(第80話参照)。
転写因子のNF-κBの活性を阻害して抗がん剤感受性を高める効果が報告されています(第102話参照)
最近の報告では、ジインドリルメタンがSTAT3(Signal Tranducer and Activator of Transcription-3:シグナル伝達兼転写活性化因子3)の活性を阻害して抗がん剤感受性を高める効果が報告されています。
ケルセチンは柑橘類やタマネギなど多くの植物に含まれるフラボノイドの一種で、抗酸化作用や抗炎症作用やがん予防効果などが報告されています。
このような成分を組み合わせたこのハーブ系サプリメントが、動物実験のレベルですが、乳がんの増殖や転移を抑制する効果が示されていますので、ある程度の効果が期待できるかもしれません。また、このような生薬や成分を組み合わせた漢方治療やサプリメントの有効性を示唆する根拠になると思います。この製品は米国で販売されていますが、サプリメントで摂取するよりも、漢方薬の煎じ薬にジインドリルメタンのサプリメントを併用する方がより効果が高いと思います。
この論文では、トリプルネガティブの乳がんでの効果を報告しています。トリプルネガティブというのは、ホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)とHer2蛋白が陰性の乳がんで、ホルモン治療やハーゼプチン治療が効かないので予後が悪い乳がんです。この治療法が少ないトリプルネガティブの乳がんに有効性があるという報告です。この組合せはトリプルネガティブの乳がんだけでなく、乳がん全体に効果が期待できると思います。

★ トリプル・ネガティブ乳がんで死なないためには、治療の早い段階から、エビデンスに基づいた補完・代替医療を利用することが重要です。トリプル・ネガティブ乳がんの補完代替医療については以下のサイトでまとめています。

http://www.f-gtc.or.jp/TNBC/Triple_Negative_Breast_Cancer.html


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