がんの予防や治療における漢方治療の存在意義を考察しています。がん治療に役立つ情報も紹介しています。
「漢方がん治療」を考える
282)「がんとの共存・自然退縮を目指す体にやさしいがん治療」という考え方
図:がん組織が大きくなると、ある時点で生命力の限界が来て死に至る(腫瘍死)。がんが小さいときは手術で切除することによって「根治」できる。抗がん剤治療では、「完全奏功」すれば治癒も期待できるが、多くの場合、抗がん剤に耐性を獲得し、がんの再燃や進行によって死亡する。腫瘍が一時的に縮小(部分奏功)しても延命につながるとは限らない。抗がん剤治療の副作用で死ぬことも多い。進行がんの抗がん剤治療の場合、腫瘍の縮小(奏功率)と延命効果(生存期間の延長)が必ずしもつながらないという事実と、抗がん剤の強い副作用という欠点が現在のがん治療の最大の問題点となっている。一方、体力や免疫力を高めたり、がん細胞のエネルギー産生や物質合成や血管新生や増殖シグナル伝達を阻害するような治療を組み合わせた補完・代替医療によって、延命やがんとの共存やがんの自然退縮が達成できることも多い。このような副作用の少ない「体にやさしいがん治療」という発想の転換も進行がんの治療には必要である。
282)「がんとの共存・自然退縮を目指す体にやさしいがん治療」という考え方
【「がんの半分は治っていない」という事実】
がん治療の基本は、がんを小さいときに見つけて外科手術で完全に切除することです。できた部位や大きさによっては手術に代わって放射線治療が有効な場合もあります。がんが早期で、まだ転移が起こっていない段階で手術や放射線治療を行えば、がんを根治できます。しかし、治療後に再発したり手遅れで見つかった場合は、現代の最新医学でもがんの根絶は極めて困難です。
最近の統計によると、日本で新たにがんと診断される人数は1年間に約70万人、がんで死亡する人数は1年間で約35万人という数値が報告されています。これは、がんと診断された人の約半数は数年以内にがんで亡くなっている、つまり治らなかったということを意味しています。近年の著しい医学の進歩にもかかわらず、がんの根治率は依然として5割を切っているのが現実であり、がんの治療成績は簡単には改善しそうもないというのが多くの専門家の意見です。
検査法の進歩によってがんの早期発見も増えています。早期発見の増加によって、がんの治癒率はみかけ上は良くなっています。しかし、がん死亡者数は減ってはおらず、進行がんの治療に関してはあまり進歩が無いと言わざるを得ません。
【「がんを徹底的に攻撃するがん治療」の限界】
がんが大きくなりすぎたり、多数の転移があって手術や放射線治療が行えない状況になると、抗がん剤治療が中心になります。白血病や悪性リンパ腫や精巣腫瘍のような一部のがんでは、抗がん剤が良く効き、抗がん剤だけで根治させることも可能です。しかし一方、胃がんや肺がんや大腸がんのように、がん細胞の塊をつくる「固形がん」の多くは抗がん剤では根絶できないというのが、現在の医学の常識です。
抗がん剤による殺細胞作用は増殖している細胞に作用します。正常の細胞でも骨髄細胞(赤血球や白血球や血小板を作る細胞)や腸の粘膜細胞のように活発に増殖しているものは、抗がん剤によってダメージを受けます。抗がん剤治療で白血球減少や下痢などの副作用が起きやすいのは、抗がん剤が増殖している正常細胞にもダメージを与えるからです。このような副作用があるため、がん細胞に作用させる抗がん剤の投与量には限界があります。そのためがん細胞だけを根絶することは限界があるのです。また、がん組織の中には細胞分裂をやめて休眠中のがん細胞もいます。このような休眠中のがん細胞は、抗がん剤が効かないので生き残り、治療が終了してしばらくして増殖し再発となって現われます。さらに、がん細胞は様々なメカニズムで抗がん剤に耐性(抵抗性)を獲得し、一時的に効いていても多くは次第に効き目が無くなってきます。
「攻撃は最大の防御である」という言葉があります。「攻めているうちは、相手から攻められないので、攻めることが防御になる」という意味で、紀元前500年頃の中国でまとめられた「孫子」という兵法書の中の言葉です。「孫子の兵法書」は古今東西の兵法書の中で最も著明な兵法書と言われています。
西洋医学のがん治療もこの「攻撃は最大の防御」という方針に従っているようです。「がんの増殖や進行から体を守るにはがんを攻撃するしか無い」と考えています。しかし、この戦略は敵(=がん)に対して攻撃(=治療)が十分に効いている場合しか有効ではありません。早期のがんであれば、「攻撃は最大の防御」というのは正解です。手術や放射線治療などによってがん組織を完全に取り除けるからです。しかし、がん細胞を完全に取り除くことができなければ、腫瘍の縮小は生存の確率を高めるものでは無いという悲しい事実があります。抗がん剤の効果を評価するのに奏功率(がんの消失・縮小の度合い)が使われていますが、多くの臨床経験から、「抗がん剤の奏功率と延命効果(生存期間の延長)とは無関係」であることが明らかになっており、「奏功率の高い抗がん剤が良い」という考えには多くの疑問が出されています。
十分に効いていない状況で攻撃を継続すれば、戦いが長引いてそのうち体力が消耗し、攻撃力も防御力も低下して負け戦になります。がんの縮小だけを目標にした「がんを徹底的に攻撃するがん治療」の限界は明らかなのです。
【なぜ無駄な抗がん剤治療が行われるのか】
進行がんに対する標準治療は抗がん剤が主体になるのですが、「抗がん剤で固形がんは全滅できない」と「抗がん剤には副作用がある」という抗がん剤治療の限界と欠点が、現在のがん治療の最も大きな問題点になっています。 抗がん剤治療の説明を受けたがん患者さんの多くが「副作用は約束されるが効果は約束されない」という感想を持っています。抗がん剤治療の説明を受けるとき、副作用については「必ず発生する」という観点から説明を受けるのに、効果については「効かない場合も多い」というニュアンスで説明を受けます。つまり、抗がん剤治療というのは、有効性は保証されないで副作用だけは保証されるのに、標準治療として世界中で認められているという、矛盾と問題点の多い治療法なのです。
「無駄な抗がん剤治療が行われている」という指摘も多くあります。進行がんに対する抗がん剤治療のやりすぎは、副作用によって生活の質(QOL)を低下させ、短い余命を苦しみながらすごさせるという悲惨な結果を招いている場合も少なくないようです。
進行がんに対する標準治療は抗がん剤以外に治療法が無いことが、抗がん剤治療が過剰に行われる根本的な原因だと言えます。
抗がん剤の効果が出にくくなったとき、あるいは、患者さんの体力が低下して抗がん剤治療の継続が困難になったとき、抗がん剤治療以外の治療法があれば、それに移行することができます。西洋医学では、このような場合、「抗がん剤治療を続ける」か「何もしないか(緩和ケアに移行する)」の二者択一の選択になるため、患者さんが治療を希望すれば、抗がん剤を継続するしか選択肢がないことになります。
医者の方も「治療を止めることは患者さんを見捨てることになる」ので治療を継続しようとすると、他に使える治療法が無いので「抗がん剤を継続するしかない」という結論になり、衰弱の著しい患者さんに対しても、抗がん剤治療を死亡直前まで続けるという状況になっています。
食事量が減り衰弱の明らかな患者さんに抗がん剤治療を行っても効くことはなく、むしろ副作用でQOL(生活の質)が低下した状態で余命を縮める可能性が高いのが事実です。つまり、高度進行がんに対しては「抗がん剤か緩和ケアしか無い」、「抗がん剤が効かなくなったら緩和医療に移行するしか無い」というのが問題で、高度進行がんに対する標準治療には「抗がん剤治療と緩和ケアの間に何も治療法が無い」という点が問題なのです。(詳しくは252話参照)
【がんとの共存・自然退縮を目指す体にやさしいがん治療】
がん細胞を強力に取り除く治療が必ずしも延命につながらないというジレンマがある中で、がん治療の1つの考え方として、「がんとの共存」という治療戦略が検討されるようになってきました。がんを「小さく」できなくても「大きくしない」あるいは「進行を遅らせる」方法も、がん治療として価値があることが認識されてきました。「がんは攻撃しないと治らない」という西洋医学の基本戦略に対して「がんをおとなしくさせて共存していく」という発想の転換です。
「攻撃は最大の防御」という言葉に対して「戦わずして勝つ」という言葉があります。戦力や防御力が勝っていれば、相手は攻めて来ないということです。体に備わった抗がん力(体力や免疫力など)を十分に高めることができれば、がんを攻撃しなくても、がんの進展を抑えることができる場合もあります。
がんの治療戦略においては、防御力を高めることも大切であり、場合によっては、がんを攻撃する方針から防御力を高めて「がんとの共存」を目指す方が良い場合もあります。がんとの共存を実践するためのポイントは、体の抗がん力を犠牲にしないでがん細胞の増殖を抑えることです。このような目的で様々な治療法が試みられ、実際に臨床試験で有効性が証明されているものが幾つかあります。しかし、西洋医学のがん治療の考え方は、「がんはいかなるコストを払っても抹殺すべき」という考えが主流ですので、「がんとの共存を目指す」ようながん治療は生ぬるいという意見が多く、ほとんど無視されているのが実情です。
がんの診断や治療において現代西洋医学が優れていることは確かです。がんを徹底的に攻撃する治療方針で治っているがん患者さんが多くいるのも確かです。しかし場合によっては、がん細胞を徹底的に攻撃するのではなく、がんと共存しながら延命するという考え方が有用な場合もあります。また、体力や免疫力や回復力を高める治療を併用することによって、標準治療の副作用を軽減し効果を高めることも可能です。
がんとの共存や自然退縮を目指す治療法としては、がん細胞に特徴的な代謝異常(ワールブルグ効果)の是正、血管新生阻害、免疫力増強、酸化ストレスの軽減、内因性オピオイドの産生増強、がん細胞のシグナル伝達系阻害などが候補になります。
【補完・代替医療の有効性と費用対効果とは】
病院で行なわれているがん治療は、手術や化学療法や放射線治療など西洋医学を中心としたもので、これががんの「通常療法(標準治療)」となっています。一方、健康食品や民間療法や伝統医療というのは、通常療法を補う医療という意味で「補完療法」といわれたり、通常療法の替わりの治療法という意味で「代替療法」という名称で呼ばれています。
世の中には、様々な健康食品や民間療法などが「がんに効く」という宣伝のもとに販売されています。「がんに効く」という宣伝は薬事法違反になるのですが、インターネット上ではほとんど野放しの状態です。多くのがん患者さんが、このような誇大広告を信じて高価な代替医療を受けている実態が明らかになっています。しかし、このような代替医療の中で本当に効果が期待できるのは、ごく一部です。培養細胞や動物実験で効果が認められても人間での有効性が臨床試験で証明されていないものがほとんどです。培養細胞や動物実験で効果が認められても、人間で効果が出るのはむしろ少数です。つまり、がんの補完・代替医療は玉石混淆であり、臨床試験で人間での有効性が証明されたものを選ぶことが重要です。
また、価格と有効性は全く関係ありません。複数の臨床試験で有効性が証明されている極めて安価(1ヶ月数千円程度)のサプリメントがある一方、有効性を示すデータが全くないのに1ヶ月分が何十万円もする健康食品や民間療法もあります。1ヶ月何十万円をする高価な治療法では、がんとの共存を目指して長期に延命するという目的は達成できません。がんと共存して長期に延命するためには、費用が少なくて済む(費用対効果が高い)ことも治療法を選ぶ上で重要な条件です。
がんは非常に手強い病気です。一つの方法ではなかなかがん細胞の増殖を押さえ込むことは困難な場合も多く経験します。したがって、状況によっては、複数の治療法を組み合わせて、その相乗効果で効果を高めることも必要です。副作用が少なく、有効性が臨床試験で確認されており、安価な治療法を複数組み合わせるのが、がんとの共存や延命を目指す「体にやさしいがん治療」のポイントになります。
【がん細胞の代謝異常をターゲットにしたがん治療が注目されている】
がんは遺伝子の異常(突然変異や発現異常)によって発生します。遺伝子の情報は細胞の核の中にある染色体のDNA(デオキシリボ核酸)に書き込まれています。DNAの遺伝情報には、細胞を形作り機能させるための蛋白質の作り方と、その発現の量や時期を調節するために必要なマニュアルが組み込まれています。したがって、この遺伝子情報に誤りが生じるとその細胞の働きに異常が生じます。例えば、正常な細胞であれば、止めどなく分裂増殖を繰り返すということはありません。それはDNAの情報によって、分裂増殖のペースや限度がコントロールされているからです。しかし、この細胞増殖をコントロールしている遺伝子に異常が生じると細胞は際限なく分裂を繰り返すがん細胞となるのです。
誤りを起こす原因は、DNAに傷がついて間違った塩基に変換したり、遺伝子が途中で切れたりするためです。これをDNAの「変異」と呼び、DNA変異を引き起こす物質を変異原物質と呼びます。環境中には、たばこ・紫外線・ウイルス・添加物など変異原物質が充満しています。
遺伝子の異常によって増殖シグナルが停止せずに増殖を続けるのががんだとしても、がん細胞が数を増やしていくには、莫大なエネルギー(ATP)と、細胞を構成する成分(蛋白質や脂質や核酸)が必要です。がん細胞では正常細胞に比較して、数倍から数十倍のエネルギー産生と物質合成が行われているのです。したがって、がんを理解するためには、遺伝子だけでなく、代謝の観点からもがん細胞の特徴を捉える必要があります。
代謝(metabolism)とは、生命の維持のために細胞が行う一連の化学反応で、異化(catabolisim)と同化(anabolism)の2つに大別されます。異化は食物から取り入れた有機物質を分解することによってエネルギーを得る過程であり、同化はこの逆で、エネルギーを使って、蛋白質や核酸や脂肪酸など細胞の構成成分を合成する過程です。
がんの検査法でPET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)というのがあります。これはフッ素の同位体で標識したグルコース(18F-fluorodeoxy glucose:フルオロデオキシグルコース)を注射して、この薬剤ががん組織に集まるところを画像化することで、がんの有無や位置を調べる検査法です。正常細胞に比べてグルコース(ブドウ糖)の取り込みが非常に高いがん細胞の特性を利用した検査法です。
がん細胞がグルコースを多く取り込むことは古くから知られています。がん細胞は盛んに分裂するので、正常な細胞に比べてエネルギーが多く必要であるため、グルコースをより多く消費する必要があることは容易に推測されます。しかし、不思議なことに、がん細胞は酸素が十分に利用できる状況でも、酸素を使わない非効率的な方法(嫌気性解糖系)でグルコースからエネルギー(ATP)を産生しているのです。正常な細胞はミトコンドリアで酸素を使った酸化的リン酸化という方法でエネルギーを産生しています。1分子のグルコースから、酸化的リン酸化では36分子のATPを産生できるのに、嫌気性解糖系では2分子のATPしか産生できません。したがって、嫌気性解糖系でのエネルギー産生に依存しているがん細胞ではより多くのグルコースが必要となっているのです。
嫌気性解糖系に依存したエネルギー産生は非効率的で、増殖には不利のはずですが、敢えてその方法をがん細胞が選択しているのには訳があります。それは、核酸や脂肪酸やアミノ酸などの細胞の分裂・増殖に必要な物質を合成する材料として多量のグルコースが必要になっているからです。つまり、エネルギー産生と物質合成を増やすという2つの目的を両立させるためにグルコースの取り込みが増えているのです。
がん細胞ではミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によるエネルギー産生が低下し、細胞質における嫌気性解糖系を介したエネルギー産生が増加していることは約80年前にオットー・ワールブルグ(Otto Warburg)博士によって発見されたため、ワールブルグ効果と言います。このワールブルグ効果は、がん組織の低酸素や増殖に対応するための結果や順応ではなく、いわゆるがん遺伝子やp53のようながん抑制遺伝子、増殖因子で刺激されるシグナル伝達系などによって、ワールブルグ効果が積極的に誘導され、調節されていることが、最近の研究で明らかになっています。つまり、最近のがん研究において、がん細胞におけるワールブルグ効果の重要性が再認識されているのです。(ワールブルグ効果については69話、168話参照)
さて、がんの治療において、その根本原因である遺伝子異常を正常に治すことはほとんど不可能ですが、がん細胞に特徴的な代謝異常を是正すること可能です。つまり、がん細胞における代謝異常(エネルギー産生や物質合成の亢進)ががん治療のターゲットとしても注目されるようになってきました。このワールブルグ効果に代表される「がん細胞の代謝異常」をターゲットにした治療を中心にしながら、免疫力増強や腫瘍血管新生阻害作用などの体にやさしいがん治療を併用することによって、がんとの共存や自然退縮や延命を目指すことも可能です。
【「体にやさしいがん治療」の具体的方法】
体力や免疫力を犠牲にしないでがん細胞の増殖を抑える方法が多数報告されていますが、一つの方法ではがん細胞を抑えることは困難です。それはがん細胞が手強いからです。例えば、免疫療法でがん細胞を排除しようとしても、がんが大きいとほとんど効果は期待できません。抗がん生薬を多く使った漢方薬も、漢方薬だけでは効果が弱いと言わざるを得ません。
抗がん剤や分子標的剤などで細胞増殖のシグナルの一点で阻害しても、がん細胞はその阻害された部分をバイパスして、いずれ効かなくなります。したがって、複数の機序で細胞増殖を抑えるために、複数の薬が使われます。がんの代替医療でも同様です。作用機序の異なる方法を複数組み合わせると、相乗効果によってがん細胞の増殖を抑え、がんとの共存や自然退縮を達成する可能性を高めることができます。
体力や生体防御力を犠牲にせず、がん細胞の増殖を抑え縮小させる治療法のうち、比較的安価な方法として、以下のような方法があります。本ブログでも今までに何回も紹介した方法ですが、がんの状況や目的に応じて、これらを組み合わせると、がんとの共存や自然退縮が期待できます。
1)がん細胞のエネルギー産生の阻害:
前述のようにがん細胞ではミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によるエネルギー産生が低下し、細胞質における嫌気性解糖系を介したエネルギー産生が増加しているのが特徴で、これをワールブルグ(Warburg)効果と言います。がん細胞のミトコンドリアを活性化するジクロロ酢酸ナトリウム、R体αリポ酸、シリマリン、嫌気性解糖系を阻害する半枝蓮や紫根(シコニンを含む)の組み合わせは、がん細胞のエネルギー産生を阻害して、死滅しやすくします。(詳しくはこちらへ)
2)がん細胞増殖促進のシグナル伝達(NF-κB、AKT、COX-2など)の阻害:
COX-2阻害剤(celecoxib)、ω3不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ノスカピン、ジインドリルメタンなどは、がん細胞の増殖を促進するシグナル伝達を阻害して、がん細胞の増殖を抑えます。(詳しくはこちらへ)
3)腫瘍血管の新生阻害:
がんが大きくなるためには、栄養や酸素を運ぶ血管を増やしていく必要があります。新しい血管が増生することを「血管新生」と呼び、がん細胞は自ら血管を増やす増殖因子を分泌して血管を新生しています。腫瘍血管の新生を阻害するとがんの増殖を抑えることができます。COX-2阻害剤のcelecoxib、アルテミシニン誘導体などがあります。(詳しくはこちらへ)
漢方薬の血管新生阻害作用については第133話、第136話参照。
4)がん細胞の細胞膜の組成を変えてがん細胞をおとなしくさせる:
食事から摂取した脂肪が分解されて生成した脂肪酸は細胞膜などに取り込まれます。この際、その脂肪酸自体は変化せず、それぞれの構造や性質を保ったまま使われます。細胞膜をつくるとき脂肪酸の違いを区別せず、手当たり次第にあるものを使用するからです。その結果、食事中の脂肪酸の種類によって細胞の性質も変わってきます。肉に含まれるω6不飽和脂肪酸はがん細胞の増殖や転移を促進し、魚の油や亜麻仁油や紫蘇油に多く含まれるα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸 (EPA)、ドコサヘキサエン酸 (DHA)のようなω3不飽和脂肪酸は、がん細胞をおとなしくする作用があります。ω6不飽和脂肪酸の摂取を減らし、ω3不飽和脂肪酸の摂取を増やすと、がん細胞の増殖を抑えることができます。この方法で、進行がんが自然退縮した例が報告されています。(詳しくはこちらへ)
ω3不飽和脂肪酸とCOX-2阻害剤のcelecoxib(セレコックス)を併用すると抗腫瘍効果が高まります。(詳しくはこちらへ)
5)内因性オピオイドの産生増強:
低用量ナルトレキソン療法は、ベータエンドルフィンやエンケファリンのような内因性オピオイドの産生を高め、体の治癒力を高め、がん細胞の増殖を抑える効果があります。(詳しくはこちらへ)
6)免疫細胞の活性化:
漢方薬は抗腫瘍免疫を効率的に高めることができます。(12話、54話、150話、151話を参照)
漢方薬+COX-2阻害剤(celecoxib)+メラトニン+IP-6 & Inositol(IP-6イノセル)を併用すると抗腫瘍免疫力を相乗的に増強できます。(詳しくはこちらへ)
7)酸化ストレスの軽減:
酸化ストレスはがん細胞の悪性化を促進します。R体αリポ酸、コエンザイムQ10、漢方薬、水素などで酸化ストレスを軽減することはがん細胞の増殖を抑制する上で有効です。
その他にもいろいろな代替医療がありますが、がん細胞の特徴と体の治癒力を利用した複数の治療法を組み合わせると、がんとの共存や自然退縮を達成できます。
図:がん細胞のエネルギー産生の特徴(ワールブルグ効果)や腫瘍血管、細胞膜・シグナル伝達系、免疫細胞、内因性オピオイド等を利用すると、副作用が少なく、体力や生体防御力を犠牲にせずにがん細胞の増殖を抑えることができる。
(詳しくはこちらへ)
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