125) ベツリン酸とオレアノール酸の抗がん作用

図:ベツリン酸とオレアノール酸は、多くの植物に含まれる五環系トリテルペノイドに分類されるサポニン成分で、がん細胞にアポトーシスを誘導する作用や、血管新生阻害作用などが報告されている。漢方薬による抗がん作用の活性成分としてアルカロイド成分とともに重視されている。

125) ベツリン酸とオレアノール酸の抗がん作用

ベツリン酸は、五環系トリテルペノイド(pentacyclic triterpenoid)に分類される成分で、多くの植物に含まれています。
白樺(シラカバ)の木の皮(樹皮)に多く含まれていて、betulic acidの名前は白樺の学名のBetula platyphyllaに由来します。
薬草や生薬の成分の中から、がん細胞にアポトーシスを誘導するものが多数見つかっていますが、
ベツリン酸はがん細胞のミトコンドリアに作用して、アポトーシスを引き起こす作用が注目されています
ベツリン酸はがん細胞のミトコンドリアの外膜の透過性を亢進させて
アポトーシスを誘導する作用が報告されています。
正常細胞はがん細胞と比べて、ベツリン酸に対してアポトーシスが起こりにくいので、がんの治療薬として期待されています。
抗がん剤に抵抗性になったがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果も報告されています。
例えば、抗がん剤のドキソルビシンに抵抗性になった神経膠芽腫細胞が、ベツリン酸を同時に投与すると、ドキソルビシンが効くようになることが報告されています。
ベツリン酸を構造改変した化合物が、抗がん剤やエイズウイルス(HIV)に対する抗ウイルス薬として開発されており、一部はすでに臨床試験が行われています。
培養細胞を使った実験では、ベツリン酸は抗腫瘍・抗HIV剤として販売されています。
シラカバに寄生する
チャーガ(和名 カバノアナタケ、学名 Fuscoporia obliqua)というキノコは、ソルジェニーツィンの『がん病棟』でがんの民間薬として書かれていることから、がんの代替医療で有名になりました。シラカバに寄生するので、シラカバの樹皮に含まれるベツリン酸などの抗がん成分を多く含むことが、抗がん作用と関連しているのかもしれません。(129話参照)
ベツリン酸と類似の成分の
オレアノール酸も血管新生阻害作用など様々な抗がん作用が報告されています。毒物による肝障害から肝臓を保護する効果も報告されています。
ベツリン酸やオレアノール酸が含まれる生薬として、白花蛇舌草(ビャッカジャゼツソウ)
女貞子(ジョテイシ)連翹(レンギョウ)大棗(タイソウ)酸棗仁(サンソウニン)柿蒂(シテイ)夏枯草(カゴソウ)などがあります。
白花蛇舌草、女貞子、連翹、夏枯草は抗がん作用が知られています。大棗や酸棗仁や柿蔕もベツリン酸やオレアノール酸などのトリテルペンを多く含むので、漢方のがん治療に多く使ってみる価値はありそうです。
(文責:福田一典)

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