532)有酸素運動でがんが縮小する?:有酸素運動+ケトン食+ジクロロ酢酸

図: がん細胞は解糖系が亢進して乳酸の産生が増えている(1)。ジクロロ酢酸ナトリウム(DCA)はピルビン酸脱水素酵素を活性化してピルビン酸からアセチルCoAへの変換を促進する(2)。ケトン食とケトンサプリメントはミトコンドリアでの代謝を亢進する(3)。有酸素運動はがん組織の血流を増加し(4)、がん組織への酸素供給を増やして低酸素状態を改善する(5)。これらの組み合せは、ミトコンドリアでの酸素呼吸(酸化的リン酸化)を亢進し(6)、酸化ストレスを高め、がん細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導する(7)。

532)有酸素運動でがんが縮小する?:有酸素運動+ケトン食+ジクロロ酢酸

【「運動」と「がん細胞のミトコンドリア活性化療法」の相乗効果】
適度な運動ががんの発生や再発を予防することは530話で解説しています。
がんと診断された後でも、活発な運動は手術の治療成績を向上し、抗がん剤や放射線治療の副作用を軽減し、精神面や身体機能を良好に維持する効果があります。
乳がんや大腸がんでは、診断後の規則的な身体運動が生存率を50〜60%も高めることが、大規模な前向き臨床試験で示されています
運動のがん再発予防効果は、抗がん剤による補助化学療法よりも効果が高い印象です。
また、がん細胞のミトコンドリアを活性化するとがん細胞の増殖を抑えたり死滅させることができます。(506話参照)
90年以上前に、ドイツのオットー・ワールブルグ博士が、「がん組織では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が低下し、酸素がある状態でも解糖系でのエネルギー産生が主体である」というがん細胞における代謝の特徴を発見しています。このワールブルグ効果は、様々なメカニズムで、がん細胞の増殖や生存に有利に働いています。したがって、がん細胞のワールブルグ効果を是正するとがん細胞を死滅することができます
がん細胞でもミトコンドリアでの酸化的リン酸化は正常細胞と同じレベルくらいには起こっています。しかし、がん細胞に取り込まれたグルコースの多くは解糖系で代謝され、物質合成に必要な中間代謝産物を多く作り出しています。
ミトコンドリアの呼吸鎖での酸素を使ったATP産生は必然的に活性酸素の産生を増やします。
酸化ストレスは増殖や転移を抑制するので、がん細胞は増殖や転移を促進するために、ミトコンドリアでの呼吸を抑えていると考えられています。
そこで、がん細胞のミトコンドリアを活性化して、ミトコンドリアでの酸素呼吸(酸化的リン酸化)を増やすと、がん細胞は酸化ストレスによって、増殖が抑えられ、自滅していきます。(517話参照)
がん細胞のミトコンドリアを活性化する方法としてケトン食ケトンサプリメントジクロロ酢酸ナトリウムが有効です。
脂肪酸やケトン体はミトコンドリアでしか代謝できないため、グルコース摂取を減らして脂肪摂取を増やすとミトコンドリアでの酸素呼吸が増えます。
ケトン体のβヒドロキシ酪酸はミトコンドリア新生を亢進します。
ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素を活性化してミトコンドリアでの酸素呼吸を亢進します。(526話参照) 

図: がん細胞は解糖系が亢進して乳酸の産生が増えている(1)。ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素を活性化してピルビン酸からアセチルCoAへの変換を促進する(2)。ケトン食とケトンサプリメントはミトコンドリアでの代謝を亢進する(3)。これらの組み合せは、ミトコンドリアでの酸素呼吸(酸化的リン酸化)を亢進し(4)、酸化ストレスを高め、がん細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導する(5)。

【有酸素運動はがん組織の低酸素を改善して抗腫瘍効果を発揮する】
以下のような論文があります。

Therapeutic Properties of Aerobic Training After a Cancer Diagnosis: More Than a One-Trick Pony?(がん診断後の有酸素運動の治療的特質:一つ以上の能力がある?)J Natl Cancer Inst. 2014 Apr; 106(4): dju042.

 One-Tric Pony」というのは、「一つの芸当しかできない子馬」や「一つしか才能のない人」という意味で、「More Than a One-Trick Pony?」というのは「一つ以上の能力がある?」という意味です。
「Journal of the National Cancer Institute」はインパクトファクターが12前後でかなりレベルの高い雑誌です。
この論文の著者はメモリアル・スローンケタリングがんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)の研究者とデューク大学のデュークがん研究所(Duke Cancer Institute)の放射線腫瘍学の教授です。
発がん過程やがん治療と運動の関係に関する研究が専門で、この分野での考え方を理解するのに丁度よい総説なので、概略を訳しておきます。以下、この論文の抜粋です。

つい最近まで、がん患者は安全に運動することができないし、十分な運動に耐えられないし、運動による恩恵は得られないという考えが主流であった。しかしながら、がん患者が運動することによる有益な効果として2点が指摘されている。

1)生理学的および心理社会学的な複数の機序によって、運動が好ましい効果を発揮する。
2)がん患者の生存において運動は重要である。

したがって、がん患者における運動の安全性や有効性に関して研究する必要がある。
運動とがんの関連に関する今までの研究の多くは、がん患者の症状の改善における運動の有効性の研究が焦点になっていた。
しかし最近の研究では、運動ががんの転帰(がんの進行や治療効果)に及ぼす影響が検討されている。
これは、乳がんや結腸直腸がんや前立腺がんの再発率や死亡率と運動(身体活動)の間に逆相関があることが多くの疫学的研究で明らかになったからである。
これらの知見から、がんの進行や増殖に対する運動の直接効果に関する研究が行われている。
固形がんにおけるがんの進行や治療効果において、がん組織の微小環境は重要な関わりを持っている。
固形がんは血管系に異常があり、これが酸素や薬品の輸送を妨げている。
その結果として生じる低酸素と乳酸産生はがん治療の効果を妨げ、さらに転移を促進する。
さらに、マクロファージや線維芽細胞などの間質細胞もがんの進展に寄与している。
興味深いことに、虚血性疾患の患者において、有酸素運動は全身および心臓や筋肉の血管を増生させる生理的効果を示す。
このように、もし運動が心血管系全体において血管系の機能に影響を及ぼすのであれば、固形がんの生理機能を制御する治療法となる可能性がある。
このジャーナルの今月号でマカルー(McCullough)とその共同研究者は、前立腺がんを移植したラットの実験系で、がん組織の微小環境や血管系に及ぼす有酸素運動の効果を検討した。
前立腺がんの血流、血管抵抗、血流が流れている血管の数、低酸素の状況などが、ラットの実験モデルで安静時とトレッドミルを用いた強制的有酸素運動の時とで比較検討された。
興味深いことに、運動中はがん組織の血流や血管密度は増加した。この作用はがん組織の酸素供給を増やし低酸素状態を改善した。
マウスの乳がんや前立腺がんの実験モデルでも、運動ががん組織の血流を増やし、低酸素状態を改善することが報告されており、McCulloughらの研究結果は、このような以前の研究報告をさらに支持するものである。
これらの研究は、運動が組織の生理的な血管新生を促進することによってがん組織の微小環境を正常化することを示唆している。
このような知見は、がん治療において重要な臨床的意義を有しているかもしれない。
まず第一に、腫瘍組織における血管系の異常は、がん組織の低酸素を引き起こし、これががん細胞の転移を促進している。
したがって、運動によって引き起こされるがん組織の微小環境が改善は、身体活動(運動)ががん患者の予後を改善することの重要なメカニズムになっているかもしれない。
我々の研究グループの最近の実験では、慢性的な運動によって引き起こされるがん組織の微小環境の改善によって、前立腺がんの移植腫瘍の実験系で遠隔転移を抑制し、乳がんの移植腫瘍の実験系で、原発巣の腫瘍の縮小が認められた。
当然の結果として、転移したがん細胞が存在する臓器の状態が運動によって変わる可能性も検討する必要がある。
運動ががん患者の予後を良くするという関係は、多くの場合はがん治療後の運動の影響であるため、転移の最終段階(血管からのがん細胞の漏出、転移巣での増殖)に運動が影響する可能性を示唆している。
第2として、腫瘍の微小環境は全身的および局所的な抗がん剤治療に対して強固な障壁となっており、運動がこの微小環境を正常化して、がん治療の感受性を高める可能性が指摘されている。
初期の実験において、マウスの乳がんの実験系で、抗がん剤治療(シクロフォスファミド)単独に比べて、運動と抗がん剤治療(シクロフォスファミド)の組合せが、腫瘍組織の増大を統計的有意に遅らせることを明らかにした。
手術前の抗がん剤治療を受ける乳がん患者を対象にした探索的な臨床試験で、ドキソルビシン+シクロフォスファミド単独とドキソルビシン+シクロフォスファミドに運動療法を併用した場合で比較検討が行われた。
運動は血液中の血管新生因子を増やして心血管系機能の状態を改善し、さらにがん組織の遺伝子発現にも影響した。
このような運動の効果の生物学的および臨床的な重要性はまだ断定できないが、これらの研究結果は、運動が生体機能や腫瘍組織の微小環境に作用して、がんの進行や治療効果に影響することの基礎的なエビデンスを提供している。
質の高い研究の結果によって、運動腫瘍学(exercise oncology)はがんの基礎研究と臨床研究において重要な分野として足場を得始めている。
今後の研究によって、がん患者の呈する様々な症状の緩和において運動療法が有効であることがさらに示されるであろうことは疑いの余地がない。
しかしながら、マカルー(McCullough)らのタイムリーな研究や、その他の多くの研究によって、運動療法が「体を傷つけない」「効果の弱い穏やかな」治療法であるという従来の認識に疑問が呈され始めている。
運動ががん細胞の増殖やがん組織の微小環境に影響するという潜在的な可能性は刺激的であるが、もっと多くの研究が必要である。
運動は多くの臓器や組織の多彩な遺伝子の発現に影響し、全身の生理機能や状態に基本的な変化を及ぼす作用がある。
しかし一方、固形がんは顕著な不均一性を示している。
宿主-腫瘍組織の相互作用や治療に対する反応性と運動の間の複雑で動的な関連性を明らかにするためには、基礎研究によるメカニズムの解明と臨床的研究を進めなければならない。
将来の研究結果が必要ではあるが、適切に処方されれば、運動療法は生体と腫瘍の正常を劇的に変えることができる多機能の医薬品と同様の効果を発揮できることは明らかである。
正しくテストされて利用されれば、運動療法はがん治療において「一つの芸当しかできない子馬(one-trick pony)」以上に有能であることが証明されるだろう。 

【運動するとがん組織の血流が増える】
この論文で引用しているマカルー(McCullough)らの研究というのは以下の論文です。

Modulation of Blood Flow, Hypoxia, and Vascular Function in Orthotopic Prostate Tumors During Exercise(同所性移植前立腺がん組織における血流と低酸素と血管機能の運動による変化)J Natl Cancer Inst. 2014 Apr; 106(4): dju036.

運動によってがん組織の血流が変化して、がん組織の微小環境に影響する可能性が指摘されています。
しかし、運動中のがん組織の血流を測定する技術的な制限があって、この問題は答えが出ていません。
この論文では、ラットに前立腺がんを同所移植した実験モデルを用いて、安静時とトレッドミルを用いた運動時で、血流を測定しています。
その結果、運動時には、がん組織において、血流の流れている(開通している)血管の数が増え、血流が増加し、がん組織の低酸素状態が改善することを報告しています。
運動時には、腫瘍組織の血流量は約200%に増加し、開通した血管は安静時が12.7±1.3/fieldで運動時が12.7±1.3/fieldでした。酸素供給は50%程度増えています。
この論文の結論は「運動はがん組織の血流を増やすことによって、抗がん剤の腫瘍組織への移行を促進し、低酸素の微小環境を改善することによって、がん細胞の悪性度を低減できる」と記述されています。
運動すると血管抵抗性が低下してがん組織の血流が亢進します。
正常組織では代謝やエネルギー需要に応じて、血流が調整されています。
固形がんでは、血管系の異常とがん細胞の代謝異常によって、腫瘍組織の中での血流は不均一で、部分的に低酸素が強くなっています。このような低酸素のがん細胞はより悪性度が高くなり、転移を誘導し、放射線治療や抗がん剤治療に抵抗性になります。
がん組織の酸素供給を増やすと、がん治療にプラスになるという結論です
正常な血管のアドレナリンα受容体が存在に血管収縮を担っています。しかし、がん組織の腫瘍血管は構造異常を呈しており、アドレナリンα受容体は減少しています。したがって、運動で血流を増やすと、血管収縮が起こりにくいので、がん組織では血流が増えた状態が長続きします。
がん組織の血流が増えると、がん細胞の増殖が促進するという考えもあります。これが普通の考えかもしれません。
しかし、血流が増えて、がん組織の低酸素(hypoxia)が改善すると、抗がん剤も移行しやすくなります。また低酸素は低酸素誘導因子-1(HIF-1)の発現を亢進し、がん細胞の悪性度を高めることになります。
したがって、がん組織の低酸素状態を改善することはがん治療にプラスになると考えられています。
また、「ミトコンドリアを活性化するとがん細胞は自滅する」という観点からは、がん細胞の酸素利用が増えてミトコンドリアでの酸素呼吸(酸化的リン酸化)が亢進するとがん細胞の増殖抑制と細胞死誘導にプラスになります。
したがって、ミトコンドリアを活性化するジクロロ酢酸やケトン食やケトンサプリメントと併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます。
ジクロロ酢酸の抗がん作用については526話で解説しています。
ケトン食ががん細胞に酸化ストレスを高めるメカニズムに関しては510話で解説しています。
運動におけるケトンサプリメントの利用について少し解説しておきます。

【ケトン体は飢餓を生き延びるために進化の過程で獲得した代謝系】
ケトン体は私たちの体を動かす重要なエネルギー源である」ということは長い間見逃されてきました。
その理由は多々ありますが、ケトン体の最初の発見が、糖尿病性ケトアシドーシスの患者の尿であったことが最も関与しているようです。
ケトン体は19世紀中頃に糖尿病性ケトアシドーシスの患者の尿に大量に含まれることから最初に見つかったので、「ケトン体は脂質の不完全な酸化によって生成される毒性のある不必要な代謝産物である」とこの時代の医師の多くが認識していました。
しかし、20世紀のはじめになると、「ケトン体は、飢餓時や食事からの糖質が不足したときに、肝臓で脂肪酸から産生される正常な代謝産物で、肝臓以外の組織で容易にエネルギー源として利用される」ことが明らかになりました。
さらに、1920年代にはケトン体の産生を増やす高ケトン食が、小児の薬剤抵抗性てんかんの治療に極めて有効であることが明らかになりました。
1967年には、長期間の絶食や飢餓時に脳のエネルギー源としてグルコースに代わってケトン体が使用されることが明らかになりました。それまでは、脳のエネルギー源はグルコースのみと考えられていたのです。
1990年代に入ると、食事によってケトン体の産生を高めるケトン食が、グルコースの利用障害のある神経疾患の治療に有効であることが明らかになります。
さらに、パーキンソン病やアルツハイマー病などの脳では、ミトコンドリアの機能異常によって、エネルギー産生が低下していることが多くの研究で明らかになっています。(531話参照)
ケトン体はミトコンドリアでATP産生に効率よく利用され、さらに、神経細胞をフリーラジカルの害から守る作用があるので、ケトン食がパーキンソン病やアルツハイマー病やその他の神経変性疾患(筋萎縮性側索硬化症など)の治療に有効であることが報告されるようになりました(468話)。
近年では、ケトン体のβヒドロキシ酪酸がヒストン脱アセチル化酵素の阻害作用によって遺伝子発現に作用してストレス抵抗性の増強や抗老化や寿命延長の効果を発揮することや(322話)、炎症を引き起こすNLRP3インフラマソームの活性を阻害することによって抗炎症作用を示す作用(471話)、細胞膜の受容体を介して細胞機能に影響する作用(472話)などが明らかになっています。
ケトン食が寿命を延ばす可能性も報告されています(467話)。
そして、サプリメントとしてケトン体を補充する治療法も検討されるようになってきました。
発見された当時は「代謝異常に伴う毒性物質」と思われていたケトン体が、実際は、極めて多彩で有用な働きを発揮する代謝産物であることが判明したのです。
最近ではβヒドロキシ酪酸は「an anti-aging ketone body(抗老化ケトン体)」と表現され、様々な老化性疾患を予防し、寿命を延ばす効果も指摘されるようになってきました。 

【ケトンサプリメントは運動パフォーマンスを高める】
運動ががん予防に有効であることは530話で解説しています。
毎日速歩1時間程度の運動に加えて、週に1〜2回程度の活発な運動を1時間程度行うような運動習慣は、補助化学療法よりも再発予防効果は高そうです。
私自身も、がん予防の目的で推奨されている運動量(1週間に23〜36メッツ・時くらい)を目標に運動を行っています。
しかし、最近は年齢(63歳)の関係で持久力が低下して、週2回程度の活発な運動(ジョギングやジム)のパフォーマンスは低下しています。
そこで、最近はケトンサプリメントのKetoCaNaを運動の30分くらい前に摂取しています。
ケトンサプリメントはエネルギー源になるので、持久力が向上し、運動パフォーマンスが良くなります。
この効果は実感すると病み付きになります。持久力がかなり向上するからです。
たとえば、通常はジョギングを30分間すると休んでしまうのが、1時間走っても全くスピードが落ちないという感じです。
最近、運動前にケトンサプリメントを摂取しているスポーツ選手が増えているようです。
ケトン食で血中のケトン体を高めるためには低糖質食+高脂肪食を実践する必要があります。
このような食事は脂肪を燃焼させる効率を高める効果があるため有酸素運動のみの場合は問題ありませんが、糖質が少ないので筋肉のグルコーゲン量が低下すると嫌気性の筋肉運動(解糖だけでATPを産生する短距離走など)は低下する可能性があります。
ケトンサプリメントで外来性にケトン体を摂取する場合は、ケトン食を実施する必要はなく、エネルギー源としてグルコースとケトン体を併用できるので、運動パフォーマンスを高めることができます。
米国では、ケトン体のβヒドロキシ酪酸を含有するサプリメントが何種類か販売されています。種類は最近増えており、今後さらに増えると思います。
現在販売されているのはβヒドロキシ酪酸のナトリウム塩やカルシウム塩やカリウム塩などのβヒドロキシ酪酸塩です。
「塩」というのは、酸に含まれている1つ以上の解離しうる水素イオンを,金属イオンやアンモニウムイオンなどの陽イオンで置換した化合物の総称です。
βヒドロキシ酪酸の酸由来の陰イオンを塩基由来の陽イオンで結合させて中和させたものです。塩にするために使用した物質(ナトリウムやカルシウムやカリウムなど)の摂取量が増えるので、摂取量がこれらの物質の量に制限される短所があります。
βヒドロキシ酪酸のエステルが開発されており、実験レベルでは使われています。
カルボン酸とアルコールを反応させると脱水反応が起こり、構造式 -COO- で表されるエステル結合(ester bond)を持つ化合物が生成します。このようなエステル結合をもつ化合物をエステル(ester)と言い、エステルを生成する脱水反応をエステル化(esterification)と言います。

エステルは水と反応してカルボン酸とアルコールに分解されます。このようにエステルに水を加えて分解する反応を加水分解と言います。
βヒドロキシ酪酸塩よりもβヒドロキシ酪酸エステルの方が使いやすいのですが、まだ市販はされていないようです。特許が取られているので、ケトンエステルもそのうち販売されると思います。
がんや神経変性疾患やてんかんなどの治療に血中のケトン体を高めるケトン食は様々な治療効果が期待できます。ケトン食にケトンサプリメントを併用するとさらにケトン体の血中濃度を高めることができます。(493話参照)
以上のような情報から、運動ができるがん患者さんは、血流が増えるくらいのやや強めの有酸素運動を積極的に実施し、ケトン食やケトンサプリメントやジクロロ酢酸ナトリウムでがん細胞のミトコンドリアを積極的に活性化すると、がん細胞の増殖抑制と細胞死誘導に効果が期待できると思います。


 

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