私が高校の非常勤講師を辞めて、もう5年の月日が経った。人の記憶というものはなんてちっぽけなものだろう。
好きなNの事なんて完全に忘れていた。私の歳も30歳になった。今は、サラリーマンをしている。
相変わらず彼女という人はいないけど、毎日生きる幸せを噛み締めて生きている。仕事があるだけでいい。
なぜ最近になって非常勤講師をしていた頃を思い出したかというと、営業で学校に訪問をした時、教室の黒板や机などを見て、懐かしいなと感じたのだ。
そして、目の前に座っていたNの事を思い出した。確かに今でも鮮明に思い出すことが出来る。
彼女の笑顔は、この世の中のありとあらゆるものをはねのける力があった。いつも彼女は悩んでいた。彼氏の事を考えて、家の事を考えていつも悩んでいた。
彼女が泣くと洪水で世の中が沈んで見えた。
あの時彼氏がとても憎く感じていたが、時間が経つにつれて、高校生と付き合う事が出来る心が広い人間だと感じたりもしていた。
Nはどうしているかなと思っていると、家のポストに手紙が来ていた。同窓会の連絡の手紙だった。
あの時の担任を呼ぼうかということで私が呼ばれたのだった。
どうしたものか。行ったら絶対Nに逢うだろう。昔忘れていた感情が少しずつ蘇って来た。胸の奥の方でNの事が気になっていた。
考えた結果、同窓会に行くような形になって、私は今居酒屋に来ていた。
名前は「ハルマゲドン」じゃなくて本当によかった。昔を思い出して笑ってしまった。
私が店に入ると、生徒が2、3人来ていた。あの頃子供だった生徒が今ではおじさんやおばさんのように見えた。
ヤンチャだった生徒が今ではIT関係で働いていると言った。
私が一人の生徒と話しをしていると、遅れてNが入って来た。見た感じ質素な服を着ていて、物静かに入ってきた。相変わらず痩せていた。だけど、昔と同じで美人のオーラみたいなものがあった。店の従業員が振り返るような美人だ。
Nの後ろからオヤジみたいな人が子供を抱えて挨拶をした。
「どうも。」私はぎこちない挨拶をすると、あの時携帯で見せてもらった彼氏だとすぐに気付いた。
「先生。久しぶり。私の子供だよ。」Nが子供を抱えて私に見せた。隣にいた女の生徒が「かわいい」と叫んでいた。
「そうか。幸せなんだね。」私は、子供の顔を見ると一筋の涙を流していた。彼女の過去や家の事や彼氏の事すべて知っていたからだ。胸の奥の方が熱くなっていた。
Nが赤ん坊を優しく抱き起こして、彼氏にそっと渡していた。その姿を見て、本当に幸せなんだなと感じた。
私の涙を見たNが言った。
「先生が授業で教えてたでしょ?生きるって何か?それが今分かったような気がするんだ。」
「そうか。教えた事が無駄ではなかったようだね。」涙を拭って、ぎこちない笑顔を向けると、赤ちゃんがキャッキャッと笑っていた。Nにそっくりの笑顔は美しく育っていくだろう。彼氏も思ったよりいい人そうでよかった。
みんな元気でよかった。私も若いパワーをもらったような気がした。
帰り際、Nが小さな声で私に聞いた。
「先生彼女出来た?」遠い昔に聞いたセリフで懐かしかった。あの頃に戻れないかと思うとせつない気持ちになったりもした。
「まだだよ。」
「早く見つけないとね。」
「分かった。分かった。」Nが私の顔を覗き込んで大きな目でウィンクをした。Nの顔を見ると、恋心が浮かんで、酒の酔いと共にふっと消えた。
「それじゃ。元気で先生。」Nが携帯とバックを持って、コートを羽織っていた。私は何か言わないといけないなと思い、口から出た言葉は「彼氏によろしく。」だった。
「色々ありがとう。先生。バイバイキーン。」Nが大きく手を振って彼氏と仲良さそうに寄り添って帰っていた。二人の背中がハートの形に見えた。
居酒屋の人の「ありがとうございました。」という威勢のいい声が私の胸に鋭く突き刺さった。二人の姿を見て、私も幸せな気持ちになった。
店を出ると、冷たい風が身に沁みた。スーツを着た太った男が大声で叫んでいた。それをなだめる様に男二人がいた。
また生きてさえすればいつか逢えるだろう。別れもあれば出会いもあるはずさ。人との出会いなんてそんなものだ。
にぎやかな繁華街を振り向かず私は黙って歩いて帰っていた。
好きなNの事なんて完全に忘れていた。私の歳も30歳になった。今は、サラリーマンをしている。
相変わらず彼女という人はいないけど、毎日生きる幸せを噛み締めて生きている。仕事があるだけでいい。
なぜ最近になって非常勤講師をしていた頃を思い出したかというと、営業で学校に訪問をした時、教室の黒板や机などを見て、懐かしいなと感じたのだ。
そして、目の前に座っていたNの事を思い出した。確かに今でも鮮明に思い出すことが出来る。
彼女の笑顔は、この世の中のありとあらゆるものをはねのける力があった。いつも彼女は悩んでいた。彼氏の事を考えて、家の事を考えていつも悩んでいた。
彼女が泣くと洪水で世の中が沈んで見えた。
あの時彼氏がとても憎く感じていたが、時間が経つにつれて、高校生と付き合う事が出来る心が広い人間だと感じたりもしていた。
Nはどうしているかなと思っていると、家のポストに手紙が来ていた。同窓会の連絡の手紙だった。
あの時の担任を呼ぼうかということで私が呼ばれたのだった。
どうしたものか。行ったら絶対Nに逢うだろう。昔忘れていた感情が少しずつ蘇って来た。胸の奥の方でNの事が気になっていた。
考えた結果、同窓会に行くような形になって、私は今居酒屋に来ていた。
名前は「ハルマゲドン」じゃなくて本当によかった。昔を思い出して笑ってしまった。
私が店に入ると、生徒が2、3人来ていた。あの頃子供だった生徒が今ではおじさんやおばさんのように見えた。
ヤンチャだった生徒が今ではIT関係で働いていると言った。
私が一人の生徒と話しをしていると、遅れてNが入って来た。見た感じ質素な服を着ていて、物静かに入ってきた。相変わらず痩せていた。だけど、昔と同じで美人のオーラみたいなものがあった。店の従業員が振り返るような美人だ。
Nの後ろからオヤジみたいな人が子供を抱えて挨拶をした。
「どうも。」私はぎこちない挨拶をすると、あの時携帯で見せてもらった彼氏だとすぐに気付いた。
「先生。久しぶり。私の子供だよ。」Nが子供を抱えて私に見せた。隣にいた女の生徒が「かわいい」と叫んでいた。
「そうか。幸せなんだね。」私は、子供の顔を見ると一筋の涙を流していた。彼女の過去や家の事や彼氏の事すべて知っていたからだ。胸の奥の方が熱くなっていた。
Nが赤ん坊を優しく抱き起こして、彼氏にそっと渡していた。その姿を見て、本当に幸せなんだなと感じた。
私の涙を見たNが言った。
「先生が授業で教えてたでしょ?生きるって何か?それが今分かったような気がするんだ。」
「そうか。教えた事が無駄ではなかったようだね。」涙を拭って、ぎこちない笑顔を向けると、赤ちゃんがキャッキャッと笑っていた。Nにそっくりの笑顔は美しく育っていくだろう。彼氏も思ったよりいい人そうでよかった。
みんな元気でよかった。私も若いパワーをもらったような気がした。
帰り際、Nが小さな声で私に聞いた。
「先生彼女出来た?」遠い昔に聞いたセリフで懐かしかった。あの頃に戻れないかと思うとせつない気持ちになったりもした。
「まだだよ。」
「早く見つけないとね。」
「分かった。分かった。」Nが私の顔を覗き込んで大きな目でウィンクをした。Nの顔を見ると、恋心が浮かんで、酒の酔いと共にふっと消えた。
「それじゃ。元気で先生。」Nが携帯とバックを持って、コートを羽織っていた。私は何か言わないといけないなと思い、口から出た言葉は「彼氏によろしく。」だった。
「色々ありがとう。先生。バイバイキーン。」Nが大きく手を振って彼氏と仲良さそうに寄り添って帰っていた。二人の背中がハートの形に見えた。
居酒屋の人の「ありがとうございました。」という威勢のいい声が私の胸に鋭く突き刺さった。二人の姿を見て、私も幸せな気持ちになった。
店を出ると、冷たい風が身に沁みた。スーツを着た太った男が大声で叫んでいた。それをなだめる様に男二人がいた。
また生きてさえすればいつか逢えるだろう。別れもあれば出会いもあるはずさ。人との出会いなんてそんなものだ。
にぎやかな繁華街を振り向かず私は黙って歩いて帰っていた。
やっぱりあなたとはちょっと違いますね^^;
私は寂しがり屋なのでいつでも待ってます(笑)
仕事を優先する時って男なら必ずある事だと思います。
元彼って本当に素敵な彼氏さんだったのでしょうね。
文章を読んで伝わってきました。仕事が出来る男の人は私も大好きです。
飲み屋じゃなくて本当によかった(笑)
空港で逢ったという事ですが、偶然に逢ったのなら、すごく運命を感じますね。
それから彼とは逢ってないんでしょうか?チョット気になりました。
みきさんは、今でも元彼が好きなんではないでしょうか?
だけど、遠距離なら仕方ないですよね。どうしたものでしょう。元彼の幸せを願うという言葉しか出てきそうにありません。
すいません。浅はかなキーボーですから。
久しぶりに逢ったりすると、恋という炎がメラメラと燃え上がる時があるかもしれませんね。
私なんて好きな人からいつも悲しい顔で見られてますよ。
、自分から好きにならないとどうもすぐにさめてしまうのです。今は優しくて、いろんな強さを持った彼がいつも隣にいてくれるような気がして、幸せです。キーボーさんは今は片思い中なんでしょうか?その恋が実ること、祈っていますね♪またお邪魔させていただきますね!!
私も紹介してもらった人に申し訳なくていつも謝っています。
2年前くらいに高校生に振られて以来、恋に臆病になってます。あの時が初恋みたいなものでしたから、今も初恋みたいなものですが、女の人は実は苦手だったりするんですよね。恋愛ブログが聞いて飽きれるかな(笑)
特に好きな人と話すとなると緊張して、何を話していいか頭がパニックになってしまいます。
あまり付き合ったことがないので、女の人の気持ちはよく分かりません。
分かりたくて色々考えてブログをしてますけど、意見などがあったらまたコメントしてくれたらうれしいです。
みきさんが幸せだと聞いて、私も幸せな気持ちになりました。
幸せって人に感染するんですよね。私にもいつか、彼女が出来る日が来る事を願って。
いつでも遊びに来てください。
この作品、書かれた時、すぐに読ませてもらってましたよ。なかなかコメントできなくて、ごめんなさい。
いろんな怒涛の非常勤講師時代から「卒業」した主人公さんが「成長」されて、この同窓会が本当の意味での彼の、Nさんからの「卒業式」と見受けられました。
しっとりとして、まだ、ほんの少し、せつない想いを抱えながら・・・それでも本物の「愛」というものを知り始めた主人公クン・・・。
熱心な読者として、いとおしい限りです。
幸せな気持ちに主人公さんがなれた、そんなひとつの「ハッピーエンド」にしてもらえて、わたしはこの上ない喜びを感じています。
そして全ての想いを込めて、あなたに「ありがとう」と言いたい・・・。
みきさんのコメントも拝読させてもらいましたが、みなさん本当に真剣に生きて、真剣に「愛」と向かっている・・・そんな人たちの姿が本当に眩しくて、美しくて、心洗われました・・・。
本当に素晴らしいブログなので、リンク貼らせていただいてよろしいでしょうか?
お答えお待ちしてます。
もちろん、今後の傑作にも、期待してますよ!
色んな意味での愛の形を書いていけたらいいなと思います。
リンクどんどん貼ってください。お待ちしています。
何度書いても愛って難しい。
言葉に出来ないくらい複雑で重くて、愛しいものですよね。
このブログで愛を感じてもらえたらうれしいです。