美浜原発の危険性や原発立地地域の苦悩、さらに私たち関西圏に生きる者たちのこれからについて考えさせられた取材は1時間あまりに及んだ。では実際にこの目で美浜原発を見てみようということで、一路敦賀方面に引き返すことにした。
いくつかのトンネルを通過、国道27号線を敦賀市内に戻り、気比の松原の前から右手に敦賀湾を見ながら半島の東側を北上する。美浜町側からは西側の若狭湾側の道を通れば近いのだが、土砂崩れで通行止めになっているのだ。ノーマビーチを左折して山の中に入り、馬背峠のトンネルを抜けしばらく下ると若狭湾側に出た。
海岸はいくつもの海水浴場が南北に続き、北は美浜原発手前まで続いている。丹生の浦という砂浜のきれいな場所に来ると美浜原発が海を隔てて見えてきた。さらに車を進め松林地帯に入りしばらく進むと左手に丸っこい形の白い建物が現れた。ここが関西電力美浜PRセンターだ。ちょうど美浜原発の入り口に当たり、ここから橋を渡った真正面に3つの原発が見える。残念ながら原発自体の見学はできないので、ここから先は進入禁止だ。警備員さんに注意されながら橋の正面から写真を撮ってPRセンターの中に入る。
受付を入ったすぐ正面、3基の原発の稼働状況と放射線量を示す計器がまず目に入った。展示は円形の通路を進みながら一周すると原発のことがわかる作りになっている。原子炉の縮尺模型展示に始まり、最終コーナーには福島事故を受けての対策をPRする展示まで、おおよそのことが理解できる仕組みになっている。
周回通路の中央部には炉心の一部を実物大模型で再現してあり、どことなく不気味だ。2階にあがる階段の壁には、地元の小学生たちが描いた原子力エネルギーをテーマにした文部科学大臣賞受賞などと記されたポスターが何枚か展示してある。2階は主には子ども向けのPR展示で、ゲームをしながら原発について学べるといった構成になっている。
他にも何枚のもの電光式写真パネルが展示してある。大勢の人で賑わう海水浴場の目の前に原発が写ってる写真や、原発の取水で湾内に海水の流れができてふぐやタイ、ハマチの養殖、畜養が可能になり、敦賀のふぐが1つの名産になっているといった広告写真などが印象に残った。
美浜原発のあるこの一体は若狭湾国定公園の一部で、リアス式海岸が美しい、まさに美浜というにふさわしい場所。かつては海岸にいくつかの集落があるだけで何もなかった所だ。病人が出れば船に乗せて運ばなければいけなかったというようにまともな道路もなかった。だから原発ができれば道路が良くなる、それが何よりの願いだったといわれている。