介護保険が始まって10年。40歳から保険料が徴収され、65歳以上になると年金から天引きされますが、誰もが安心して必要な介護を受けられるわけではありません。その中で今、全国の訪問介護現場が直面している問題として、必要なサービスが受けられない不当なサービス制限、自治体が厚労省通知を無視したローカルルールを押しつけ、利用者が望むサービスを受けられない、必要なヘルパーサービスが提供できないという状況があります。
この本は、このような問題解決のために昨年、大阪社保協が「大阪府訪問介護サービスに関するQ&A」を全面改訂させた経験をもとに、間違ったローカルルールやヘルパーサービス制限を改め、「介護保険制度で本当はここまでホームヘルプはできるんだよ」ということを豊富な事例解説で示しました。
利用者・家族の方には訪問介護に対する疑問の解決に、ヘルパーさんやケアマネジャーさんにとっては、真に利用者・家族の暮らしを支えるためのサービス実現の力に、また自治体窓口との交渉の手引きとして、また、訪問介護という仕事の意味を見つめ直すものとして、多くの関係者のみなさんにお薦めの1冊になります!
【介護保険活用ブックレット】
ここまでできる!ホームヘルプサービス
“利用者の望む暮らし”を実現するために
大阪社保協・よりよい介護をめざすケアマネジャーの会編
A5判 136ページ 定価1000円(税込)
ISBN:9784889008647
4月7日前後より発売予定
●もくじ
はじめに
第1章 これもしてくれないの? 制限だらけのヘルパー
1 これでは介護保険の意味がない【困った事例集】
①家族が同じ区内に住んでいればヘルパーはダメ?
②少し遠くに行けば安いスーパーがあるのに
③病院の中は付き添えません。別に付添料をいただきます
④要支援だと何でも「一緒にやれ」と言われる
⑤ヘルパーは窓ガラスを拭けない?
2 生活に必要なヘルパーのサービスを取り戻すために
第2章 適切なマネジメントで必要サービス提供は可能
本当はこんなこともヘルパーはできる〈ケアマネジャーの視点から〉
1.同居家族がいる場合の生活(家事)援助
・同居家族がいることだけを理由にサービスを制限はできない
・介護保険法の理念や目的にてらして必要なサービスをケアプラン化する
・適切なケアマネジメントとケアマネジャーの専門性
2.散歩介助
・散歩介助を制限する規定はどこにもない
・散歩介助は自立支援サービスの一環
3.通院介助
・受療権を守る重要な役割を担う
・通院介助拒否や自費サービスが横行
・院内介助の見守り的援助も身体介護の一環
*ケアマネジャー・ヘルパーが力を合わせれば変えられる
第3章 介護保険のホームヘルプサービス(訪問介護)とは
1 利用者の立場で読み解く介護保険の法令・通知
「法律で決まっているからできません」?
・Aさんのささやかな願い
・「そんな法律どこにある?」Aさんの疑問
・介護保険法を読んでみる
・「訪問介護」って何?
・介護保険サービスの基準は
・ホームヘルプでできるサービスは
・「散歩介助」がない!?
・「日常生活」って何!? 自分らしい生活をとりもどすこと
・必要なサービスを「できない」と決めつけていないか
・散歩介助についての厚生労働省の事務連絡
・可否は個々の利用者の状況等に応じて判断を
・「1000回登山」にこだわるAさんの変化
*犬の散歩もあり得る!?
2 ホームヘルパーのサービスの範囲を考える
【自治体によるヘルパーのサービス内容の線引き】
問い①「ややこしい場合はすべて役所に確認せよ」と言われる
問い②「介護保険財政が大変だから制限するのは当然」と言われる
問い④「ケアプランにないサービスは一切してはダメ」と言われる
問い⑤「『要支援』の人と『要介護』の人ではヘルパー利用でサービスの範囲が違う」と言われた
問い⑥散歩は「身体機能向上の効果のある人に限られる」と指導される
問い⑦「気分転換のための散歩はダメ」と言われる
問い⑧「靴を買いに行きたいと言ったらサイズがわかるから、
ヘルパーに行ってもらえばいい」と 言われた
問い⑨「テレビが壊れたので電気屋に行きたいと言ったら、日常生活の援助と言えない」と言われた
問い⑩24時間やっているコンビニへの買い物は、夜帰ってくる家族が行けばいい」と言われた
問い⑪「買い物の付き添いは要支援の人だけ。
要介護の人ヘルパーに行ってもらいなさい」と言われた
問い⑫「病院内は医療保険対象だからヘルパーの付き添いはできない」と言われた
問い⑬「つかまり歩きができれば病院内の付き添いはダメ」と言われた
問い⑭「外出介助の目的は1カ所しか認められないので寄り道はできない」と言われた
問い⑮「判断に迷ったらすぐに自費サービスで」と言われる
問い⑯「すぐに、うちではできません」とサービス提供してくれない
問い⑰「同居家族が家事ができない証明を主治医に書いてもらいなさい」と言われた
問い⑱「仕事をしている家族でも夜や休日なら家事はできる。忙しいは理由にならない」と言われた
*散歩同行で不当なローカルルールが横行
3 自治体のローカルルールを改めるために【役人との対応ポイント】
・介護保険担当課の職員の特徴
・役人との対応の基本姿勢
・役所に質問するときのポイント
*自治体の介護保険担当職員の方へのメッセージ
第4章 ヘルパーの役割を考える
1 ケアマネジャーからみたヘルパーの役割
①ヘルパーの関わりで自分らしさの回復と家族再生できたNさん
・大切なヘルパーの気づきと洞察力
・ヘルパーの豊かな感性と想像力
・新鮮な気づきと柔軟で発想豊かな工夫を生かした支援
・問題行動の背景を理解し、生活史にあったアプローチ
②ヘルパーが一緒に通院するということの意味
・遠くの身内より、身近なヘルパー
・「病院の前で置いていかないで。家に帰るまで一人にしないでね」
・夫婦の中を取り持つ
・見守り的援助の大切さ
・利用者に代わって思いを伝える
・「薬の副作用では?」とケアマネジャーに連絡
・単なる足代わりではない通院介助
③ガラスをきれいにして取り戻した当たり前の暮らし
・「いつもすりガラス越しに見ている。わが家は白黒テレビのような世界」
・利用者の支援を自分の暮らしに置き換えて考える
・世間の常識が、介護保険の非常識!?
・「日常生活」と「自立」の意味を問い直す
・ぜいたくやわがままでない当たり前の暮らし
2 ヘルパーが考える訪問介護の専門性
・高齢者が在宅で「その人らしく暮らす」を支える尊い仕事
・散歩介助できたからこそ認知症利用者の気持ちの安定を保つことができた
・散歩を共にすることで見えてきたシズさんの人生
・ヘルパーの仕事は単に家事経験だけでは務まらない
・近隣との関係を仲介することも大切な役割
・生活状況を観察して支援の組み立てを他の専門職と共に考える
・調理は健康管理の一環
・他職種との連携で築いた信頼関係は支援の要
・お互いの持ち味を生かした信頼関係は支援の大きな力
・専門性の高いヘルパーは現場の宝
・これからの高齢社会を支える介護の要
・専門職としての学び合う集団つくりが重要
・専門職集団の育成と学習の保障を要求する
・制度と労働条件の改善なしには介護の質は向上しない
3 訪問介護計画書を考える
・散歩介助を通じて自立を支援する
・アセスメントのポイント
・訪問介護計画書作成時のポイント
おわりに 利用者からみた「訪問介護」
【資料集】
*「訪問介護」とは *「訪問介護のサービス行為」について *生活援助の範囲に含まれないと考えられる事例の取扱い *訪問介護の報酬算定 *指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について *大阪府訪問介護サービスに関するQ&A(改正前後比較・一部抜粋) *同居家族等がいる場合における訪問介護サービス及び介護予防訪問介護サービスの生活援助等の取扱について(平成19年12月20日厚生労働省老健局振興課) *適切な訪問介護サービス等の提供について(平成21年7月24日厚生労働省老健局振興課) *同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱について(平成21年12月25日厚生労働省老健局振興課) *訪問介護についてちょっとしたご案内(厚生労働省)
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