世界中を驚かせたパナマ文書の告発ですが、その後、日本の中ではごく一部を除いては関連する報道をほとんど見ないというか、追って深く追及する気配がほとんどありません。しかし、今この問題は、国際的に各国が連携して解決へ向けて取り組むべき焦眉の課題となっています。
著者の合田先生はこのテーマの専門家として、すでにかなり以前からタックスヘイブンについて研究されて来た方です。
「世界のわずか62人の超富裕層の富が、下位半数の36億人の富と同じ」というような、まさに狂ってるとしか言いようのない不平等と格差の広がる世界。そんな世界に手を貸しているのがタックスヘイブンそのものです。その異常さを変えて欲しいとパナマ文書の告発者は訴えています。
その告発者に応えて世界のジャーナリストたちが協力して明らかにした資料を生かすことが求められています。そういう意味で、このブックレットは告発者と国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)への連帯の気持ちも込めて発行しました。巻末にはもちろん、告発された日本関係リストを入れました。
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『パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン 改革は可能か』(合田寛・著)
パナマ文書は量的、質的に今世紀最大の暴露文書だ。今まで私たちが見ることのできなかった秘密世界の一端を事実をもって描きだした。国際的な調査報道に携わる記者たちの努力で、真実の扉が開かれつつある。
しかしその解読は始まったばかりで、これを完全に解き明かすには、さらに多くの時間と労力が必要とされる。国際社会が共同してタックスヘイブンに対して取り組もうとしている今、この文書の公開は強力な追い風となるだろう。
巻末にはパナマ文書が告発した日本関係リスト(法人名28、役員名899、仲介者47)とその見方を示した。
パナマ文書の内部告発者とICIJの報道に連帯の気持ちを込めて本書を刊行する。
目次から
1.パナマ文書とは何か
2.タックスヘイブンとは何か
3.オフショア・タックスヘイブンの何が問題か
4.税逃れを許さない―改革の可能性
【資料編】
・パナマ文書に掲載されている関係図の見方
・パナマ文書に記載された日本関係法人28
・パナマ文書に記載された日本関係ペーパーカンパニーの代行・仲介者47
・パナマ文書に記載された日本関係役員名899
・G7伊勢志摩サミットに向けて〈日本の有識者による政府への呼びかけとトマ・ピケティ氏ら世界の経済学者の公開書簡への賛同〉
・タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)と運動の非公式な歴史(抄訳)
合田寛(ごうだ ひろし)
1943年韓国・釜山生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国会議員政策秘書を経て、公益財団法人・政治経済研究所理事・現代経済研究室長(主任研究員)。公正な税制を求める市民連絡会幹事。
著書に『タックスヘイブンに迫る』(2014年、新日本出版社)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)、『大増税時代』(2004年、大月書店)、『現代日本の金融』(1997年、共著、新日本出版社)、『検証・日本の金融政策』(1995年、大月書店)など。