学びたい青年教師たち
■OLから輝く教師へ
OLをしていた若い女性が、ひょんなことから図書館で一冊の本を手にしたのです。拙著『子どもたちに表現の喜びと生きる希望を』でした。彼女は、その本を読んで心を動かされたようで、教師になろうと心を決めたと言います。そして、教育の現場へ!
しばらくして、彼女は、京都から大阪まで私たちのやっている作文教育の研究会に学びに来るようになりました。優しい目線で子どもを捉え、実に豊かな教育実践を展開していくのです。今では、私の方が彼女の実践に学ばせていただいているほどです。
さて、この夏、彼女から「京都の教育もなかなか厳しく、作文教育一つとっても技術的で管理的な教育がはびこってきていて、胸が痛いです。私のまわりの若い先生に、教育って、もっとおもしろく、自己を表現する作文教育がこんなにすばらしいものだと何としても伝えたいので、先生、話に来てくださいませんか」という電話です。
口調こそ柔らかいのですが、熱がこもっていて、こちらにビーンと響くものがあるのです。まあ、それでも個人の先生が、まわりの方を集めるのだから、7~8人くらいの小さな学習会だろうと出かけていきました。
少し早めに着いたのですが、なんともう若い先生たちがたくさん集まっていて、思っていた以上に広い部屋に熱気がただよっているのです。うわあ、すごいと驚いていたら、いやいやまだまだ来るわ来るわ、次々と若者が駆けつけてくるのです。あっという間に会場いっぱいになり、こりゃあどうしたことだと本当にびっくり。
■熱気あふれる学習会
2時間近く教育講座をしたのですが、身体を前のめりするようにくらいついてきて、目を輝かせて学ぶ若者たちに熱いものがこみあげてきます。
一人の人間の熱い想いと粘り強い行動は、人をこんなにも動かすのかと改めて感動しました。そして、何よりも彼女の子どもへの向かい方を見た同僚たちが、なぜあんな仕事ができるのか知りたい、学びたい、私も輝いていい仕事がしたいと憧れのような気持ちを抱いて集まって来たのです。
こんな感想がありました。
「今、正直、子どもや親とどう向き合っていけばいいのかわからなくなり、暗闇のトンネルの中といった心境でした。こんなの初めての経験です。どうしていいか焦ってばかりでわかりません。そんな時、この学習会にさそっていただき、子どもたちの温かい話を聞いて、泣けてしかたがありませんでした。クラスの子らの顔が一人一人浮かんできて、なんだか自分の気持ちまで温かくなりました。作文教育っていいですね。できることから始めてみたいです。またこんな学習会をしてほしいです」
「今日朝から夕方まで、教育委員会主催の研修会でした。疲れて参加しましたが、なんと、来た時より元気になることができました。いろいろなものを背負って生きている子どもたちを受け止めて思ったことを何でも言い合えるようなクラスを作っていけたらと思います。ぼくも書きたいことを自由に書く作文教育を実践してみようと思います。しんどいことも多いけで、やっぱり素敵な仕事だと今日改めて思いました。早く子どもの顔が見たいです」
この学習会を呼びかけた若い先生のメールです。
「たくさんの若い先生に素敵な種がまかれたことに感動しています。先生が、集まってきた若者たちの姿を見て、今現場は厳しいけど、こうやって学びの場に集まって来る。これこそが希望だと言ってくださったこと、胸が熱くなりました。声をかけたら来てくださって、よかった、よかったと帰っていかれる先生たちのことますます好きになりました。厳しい京都の先生たちもこんなに学ぶ意欲がある!私にできることは小さいけど、自分のできることを大事にしていこうと今日また改めて思いました。先生、また来てくださいね」
日本の教育は、こんな先生方によって支えられているんですよね。
(とさ・いくこ 和歌山大学講師・大阪大学講師)
*連載タイトルを変更しました。子どもたちは、毎日サヨナラするとき 、先生またあしたねと言って家路につきます。明日がある、明日の新しい自分に会える、明日に生きる子どもたちに私たち大人も元気をもらっています。 教育の明日を拓く教育つれづれという思いです。