瀬戸際の暇人

今年も休みがちな予定(汗)

連載裏話その2

2006年03月08日 23時41分27秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
【第4~6話】


高速船以外に、バスで長崎空港から行くルートが有ります。
今回久々に往路バスで行ってみたんですが…晴れてりゃこっちで行くのも悪くないっつか…けどやっぱ復路は止めておいた方が良いなと思った。
普通の市営バスなんで、ハウステンボスまでの間に停まるバス停が在るんですよ。
試験場前→彼杵本町→川棚バスセンター→ハウステンボスの順に停まってく。

余談ですが、川棚バスセンターって所に『四次元パーラー あんでるせん』なるお店が在りまして…どんな店か気になってるみたいな話をヤフー掲示板のハウステンボストピでしたら、店長がマジックしてくれる喫茶店だと教えて下さった方がいらっしゃいました。(その節は有難う御座います)
結構評判高いらしいです、マジックに興味有る方は寄ってって遊びに行くと良いかも。
…その隣に見える『あんまり食堂』っつう、あんまりな名前の食堂も気になってるんですが。(笑)

高速船だと海から一気にハウステンボス行っちゃうんで、あんま現実が見えないんですが、バスで行くと現実が見えちゃう…だからバスよか高速船のが良いよ~と言ってる部分も有ります。(苦笑)
本当~~にハウステンボスまでの道のりは長閑なんでね~~。

だけどバスから海岸線観ながら行くってのも中々ですよ。
晴れてりゃ本当に綺麗、道路と並行する様に大村線も走ってます。
この大村線が空港と直で結べればまた良いよな気がしますね。
電車でトコトコとハウステンボスまで行くのも楽しそうじゃん。

ハウステンボスが近付いて来て、最初に見えて来るのはドムトールンです。
隣にハウステンボス駅を観ながら、大きな橋を渡って行くんですね。
この橋越えたら全くの別世界ですよ。
両の岸比較すると、全然景色違ってて、済まないけど笑っちゃうかも。(笑)
橋の向うは正に異界…非現実世界が広がってます故。
こいった気分味わう為にバスを選ぶのも1つの手。

ただ復路はね…疲れてるだろうから、なるべく船で一直線で行った方が良いんじゃないかと。
時間的には道路の渋滞さえなければ、船でもバスでも所要時間にそんな差は無い。
船が約50分、バスが55分…どちらもおっとり運行で、時間過ぎてもお客待ってくれたりするんですけどね。
ちなみに現在、ハウステンボスまでのバス運賃は大人1,100円で御座います。(子供は知らない…済みません)

高速船は大人(中学生以上)1,420円 、小学生710円。
幼児は大人1名につき1名無料、2人目からは小学生料金。

但し4/1日以降、原油高騰により運賃改定するらしいです。
大人(中学生以上)1,600円 、小学生800円。
……そうか…高くなるのか…。(汗)


『グーテンアペティート』について。

此処で売ってるパンは、ハウステンボス内のパン工場で作ってるパンでして、ホテルメイドのパンでも有り、かなし美味いです。
お土産として人気有るらしくて、最近では総合売店のスキポールとかシーブリーズとかでまで売って…たんだけど、2006年5月現在、スキポールではもう売ってないらしい。(涙)『シーブリーズ』では種類は少ないが売っていたと、後日ぐらさんが教えて下さった…有難う御座いました!)
朝市開いてる土日なら、焼き立てのパンも並んでましたねー、で、大抵直ぐ売れてっちゃった。
この店で売ってる分も、夕方には売り切れてる場合多いみたいです。
…だからこそ、もっと早くから開店して欲しいな~~って気が…早朝にパン屋として開いて、一旦閉めてカフェテリアとしてまた昼頃からオープンするとかさ~。
ハウステンボス全体に言える事ですが、お店の開店時間が遅いのね。
朝9時頃~開園に合せて、飲食店何処かしらは開いてて欲しいの事よ。

3/3~3/5までホテル・アムステルダム宿泊して来ましたが、あそこの朝食でもバナナマフィンは出ました。
けどランチでは出なかったな。
朝食のがパンの種類は多く出てましたよ。


2006年5月追記)場内のパン屋さん、『グーテン・アペティート』のパンですが、提携する企業が変更した事により、売ってるパンが大幅に変更となりました。
連載中で紹介しましたバナナマフィンは現在売ってません。(涙)

…残念ですが…でも今売ってるパンは、以前と比較しても尚美味しいですよとの評判が有るんで…そう悲観する事は無いかと。
いや、残念では有るけどね。(苦笑)

同じ物ではないですが、JRハウステンボス駅の中に在る、『JR全日空ホテル直営店』にバナナマフィンが置いてあるらしいです。(まったりさんのブログを御参考にされて下さい…まったりさん、重ねてお世話になります。)


ルフィが飲食店中心に廻ろうとしたんで、飲食店以外の店あんま紹介出来なかったですが。(笑)
沢山面白い店在りますよ、ええ。
オランダ民芸雑貨の店、『ホーランドハウス』…可愛い木靴が所狭しと置いてあります。
話の中ででっかい木靴(←つっても木では出来て無いんだけど、これは)が玄関前に置いてある~言うた所です。
春に行ったらそのでっかい木靴を取巻く様に、チューリップの花壇が造られておりましたv

チューリップの縫ぐるみは『ちゅーりー』と言う名前の、此処のオリジナルキャラです。
そのキャラグッズを専門で売る店が『ちゅーりーちゅーりー』。
香水を量り売りしてる『アンジェリケ』はその店に続いて在ります。
硝子の雑貨を売る店『びーどろ』は、今なら硝子で出来た兜なんかが置いてある。
季節に合わせた硝子雑貨を売っているのが観てて楽しい。
後はミッフィー専門店『ナインチェ』…此処のオリジナルミッフィーは木靴履いてます。
小さい子供用に滑り台とかの遊び場も設けてあるんで、子供連れて来た方には有難いかと。
チューリップ染めした手作り布雑貨を売る店『エステラ』も此処ならではじゃないかなー。
エッシャーグッズを売る店、『メタモルフォーゼ』…ルフィが買った、入れたお金が小さくなる貯金箱は、自分も買いました。(年甲斐も無く…)(恥笑)
執筆中モデルにする為、何度もチャリチャリとお金入れて遊んでましたですよ。(笑)

同じくハウステンボスオリジナルキャラ、『トラベルマン』のグッズ専門店、『トラベルマンコレクション』。
上の写真は、この話中で出した視力検査マグカップです。
木靴のシルエットが検査表みたくなって並んでるんですよ。
スプーンも検査の時に使うあの…何て言うんだろ?まぁ、それに似せた形になってるのが芸細かく。
実際視力検査にも使えます。(笑)
何時も買おうと思ってて忘れてしまうが…何時か買おうと思ってます。
え?だって、結構面白くない??(笑)

突然ですが、絵になる(写真の背景に良い)店、ベスト3――

今なら1位ホーランドハウス、2位キューケンホフ、3位タンテ・アニー

――かもしれない…勿論、独断と偏見で。(汗)

ハウステンボスのお店についてはちばさんのセカンドブログに詳しく紹介されてます。
丁度春のお店情報についてレポ始まってるんで要注目で御座いますよv


『ランガダイク』について。

…実はルフィが座ってる席の番号、最初書いた時と変えてます。
変えた理由、有得ない事が解ったから。(汗)
いらっしゃらないとは思いますが…もしも最初に書いた番号覚えてらっしゃる方、実際此処行く機会が有りましたら、その番号席に座ってみて下さい……理由が良く解るかと。
ルフィを表す番号で行きたかったんだけどね~~、馬鹿やっちゃったな~~と後悔しきりでした。(汗)
それともう1つの間違い…『テディメープルケーキ』は熊の形なぞしとりません。
嘘言ってしまって御免なさ~~い。(土下座)
クッキーは熊の形してるんですけどねぇ…多分それと記憶が混同しちゃってたみたいです。(汗々)
テディメープルケーキ、私は食べた事無いけど、買って食べた友人が言うには、メープルクリームが入った丸っこいスポンジケーキで、結構美味しかったらしいですよ。

あ、ついでに嘘吐きも1ヶ告白。(汗)
おみくじ観覧車在るのは豊島園でなくて、『富士急』でした、重ねて御免なさいです。(土下座)
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連載裏話その1

2006年03月07日 23時36分22秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
え~~本日より3/24まで、連載について裏話しつつ、訂正をばしてこうかと。(汗)

……や、改めて行ってみて…間違いたっくさん有りましてね~~。(焦笑)
そゆのやっぱ直してこうかなと、それと補足説明ね。

大体2~3話づつ…やってけば3/25まで間に合う…かな??(汗)

そんな訳で、また暫く宜しくです~~。




【第1~3話の裏話】

改めて読み直すと…ルフィ、最初は漢字ちゃんと使ってたんですね。(笑)
直すに当ってどうしようかと思ったんですが…あんま使わな過ぎるのも読み難いしルフィが馬鹿みたいで可哀想だし(小学生レベルかい)、さりとてあんま難しいの使ってるとルフィらしくないよな気もするし、それでゾロの台詞との違い出してるのも有るんで…字数多い漢字だけひらがなにする事にします。
だから、最初書いたよりかは漢字化して行きますんで~。

この話の中では3人共、高校3年生やってます。
んで隣近所で幼馴染でクラスメート…殆ど考え無しな設定っすねー。(笑)
ナミはハウステンボス2回目、両親健在だった時に、1回行ってますよと。
…実はこれ、書きながら考えた設定だったりして。(苦笑)
大概の設定をそんな感じで決めました、あんま企むの得意な方じゃ無いんで。(笑)

当初はレギュラー全員で行くっつう話にしようかとも考えたんすがねー。
原作と同じ舞台で…でもこのブログ、ワンピはあんまり知らんのですよっつう方も多く観られてるので…なら作品に対する予備知識無くとも読める現代パラレルにするかと。
そうすると先ず、チョッパーが出せない…私の中で奴はあくまで毛皮モコモコイメージなんで…可哀想だが出せないな~と考えた訳ですよ。

何かの同好会の合宿で…とかも考えた。(贅沢な合宿だな~)
ロビンちゃんが引率の先生役で。
高校時代、旅行研究会なるスチャラカな同好会が在りましてな。
実際には旅行の計画立てるだけの謎な同好会でしたが。(笑)
そゆ同好会で、皆してワイワイ行くってのも良いんじゃないかとね~~、結構未だにこのネタには未練有ります。
何故しなかったか?=人数多いと泊る所1つじゃ無く、2つ位は用意せんといかん=書くのめんどくなる…そんな理由から。(←おい)
人数多く泊った経験、自分持ってないんで、どうしてもリアリティ無くなるだろうしね~。(汗)
フォレストヴィラは最大5名まで宿泊可能なんですが、ベッドは4人分しかない、誰か1人がエキストラベッドって事になりますが…このエキストラベッドがどんなもんか、私は知らんので。

じゃあ4人にするかと。
誰と誰と誰と誰にするか??
ロビンちゃん、何となく年齢離れてるからちょい無理かな~。(やっぱり彼女は高校生と考えるには無理が有るんで…私の中で)
ルフィは主人公だしねー、出さないとワンピらしくなくなるからと先ず決定。
ナミ出さないと自分が書く気出ないんで、彼女も出すの決定。
ゾロも…№2だし、出すかなーと。(笑)

後1人が中々決められなかった。
ウソップ選ぶとサンジが可哀想。
サンジ選ぶとウソップが可哀想。
1人だけのけものするみたいでどうにも気分が悪い。
いや既にロビンやチョッパーのけものにしてて可哀想なのは変んない訳ですが。(焦笑)
その前にナミは女の子だから、野郎と一緒の部屋には出来ないよなぁと。

…いっそビビにするかとも考えた。
でもそれじゃ、ウソップサンジがやっぱり可哀想だよなぁとね。
後ロビンちゃんの事考えても何となくね。
考えてみればビビだけ(後カルーもね)向うのパラレル世界でも最後まで出せなくて何だかなぁと思わなくもなかったんすが…ロビンちゃんと彼女が仲良く一緒に出てる所って関係図的に成立しない気がしてねー、結局彼女は影だけしか出せなんだ…これはこれで心残りなんすよね。

そんなこんなでルフィゾロナミの3人にするかと…消去法みたいっすが。(汗)
書いてみて…1話スラスラ書けちゃったんですよねー何故か。
ちょっとびっくりですが、この3人書き易いです、バランスが良いんじゃないかな。
この3人なら幼馴染っつう設定も何か説得力感じられるし(自分がね)…ガイドとしてはナミウソップサンジのが合ってる気がしたんですが、この3人でだと妙に褒め殺し的な文章になったんではないかな~。
ナミもウソップもサンジも、どっちかっつうと「遠慮」って言葉知ってるキャラだしね。(あの世界では)

ゾロがね…1番ガイド不適格なんですが、でもそれ故客観的に物事見られて、居てくれて良かったなと最終的には思ったっす。
ルフィはルフィで…居なかったら、ゾロとナミだけだったら、相当暗い話になってた気がするよ。(笑)
書いてていっちゃん面白いキャラだった、勝手に動いてっちゃうんで、後半抑えるのが大変だったけど…こんな元気いっぱいなキャラ沢山生出せる尾田先生は、本当に偉大だと改めて尊敬しましたです。(笑)
ナミは自分、1番好きだから、却って1番書くの大変だった…正直、彼女は余程の理由が無い限り、「皆一緒で」ってのに拘ると思うんで。
絆を最も大事に考えてる娘じゃないかと。
仲間の誰かだけ連れて旅行ってのは…どうにも納得行かなくてねー。
それ故、ルフィとゾロとの別れが有ってね~みたいな理由を付けて…だから無駄に切ない展開なってっちゃったんだなー……御免なさい。(苦笑)

…所でこの話、一応自分がクリスマスシーズンに行った時の体験を元に書いてますが、ほぼフィクションだと思ってくれて良いですよ。(笑)
いや、背景なんかはかなしリアリティ意識して書いてますが。
出発時間とか天気とかも、自分が行った通りで御座います。
中には本当に遭った事件も有るしねー。
それもこれから少しづつ紹介してく積りですんで。(笑)

こゆ漫画のキャラが旅に行って…ってなネタは、『やじきた学園道中記』なる漫画のおまけ頁からのパクリっす。(苦笑)
後は『究極超人あ~る』なる漫画からも影響受けてるかもですね。

ハウステンボスってよくTVドラマや映画の撮影場所に使われてるんですが、あんまそれを宣伝に使わんと言うか…使った方が良いと思うんですがね~。

ハリポタでも冬ソナでも北の国からでも、自分が好きな作品のキャラ関わりの場所って、何となく憧れたりするもんじゃないかなぁと。

だからって私が書いてもしょうがないかもだけど(しかも人様のキャラ無断使用して)(汗)…世の中には同時に同じ事考えてやってる人が必ず居るそうだし…そんな中の誰かさんが、実は文章上手かったりして、それ読んだまた誰かさんが小説家志望だったりして影響受けて、そしてまたそれ読んだ誰かさんが売れなくとも小説家で……まぁ、何時か、少しでも良い動きに繋がる事を祈って書いてみた訳ですよ。(笑)

銀座の煉瓦街も造った当時、人気が無くて入居者殆ど居らんかったそうです。
で、政府はどうしたか?――芸能人とか、知名度の高い人達入居させて宣伝したんですよ。
宣伝は大事だと思うんだ、やっぱ。
ハウステンボスって造った当時からあんま宣伝して来なかったよね…あんまド派手にかっちょ良く宣伝するトコって信用出来ない気もするけどさ。(笑)

毎度恒例、写真の説明~。

今回春行った時は、帰りだけ高速船だったんですが…チューリップ祭中で人多かったからか、綺麗なデザインの高速船でした!(笑)
その名も『エラスムス』!!(ウロウロさんがコメントで仰ってた船ですな!)
内部も格好良いの何の!!
何だ~、有ったんじゃん、こんな船も…初めて乗ったよ、自分。(笑)
コメント (3)
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『何度も廻り合う』その40

2006年02月25日 11時09分04秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





船内に入った途端、非難と好奇の視線で、体中チクチクと刺された。

迷惑懸けたのは確かなので、一応済まなそうに頭を垂れながら、奥へと進む。

最後部右端窓際席をしっかり確保したルフィが、ガキみたく船窓貼り付き景色を眺めてる。

その隣でゾロは、もう早眠りの体勢、瞼を固く閉じている。

座り直す間も無くエンジン音が轟き、高速船はゆっくりと岸から離れた。


少しづつ、少しづつ、街から離れて行く…


18世紀王宮の様な、『ホテル・デンハーグ』。

その後の森から頭だけ覗かした、『パレス・ハウステンボス』。

雄々しくマストをぴんと伸ばした、木造帆船『観光丸』。

場内何処よりも高く聳える塔、『ドム・トールン』。



…離れて行く…皆…皆…離れて行く…



「ナミ!!ナミ!!窓から観てみろよ!!夕陽がすっげーきれーだぞ!!!」


手を引っ張り、興奮した面持ちでルフィが叫ぶ。

覗いた窓からは……山を焦す様な、赤々とした夕陽。


「な!?まるで山火事みてェできれーだろ!!?」


「……確かにイメージとしてはそんな感じだけど……もちょっと別の例え出来ないのルフィ…?」



往路同様、暫くは緩い速度で進んでいた船が、急に駆け足になる。

ガタゴトと揺れが増し、波飛沫が窓に掛かる。

見えていた街並が、一気に離れて行った。




「楽しいトコだったな!!」


朗らかにルフィが笑う。

その頭上には、古ぼけた麦藁帽子が載っかっていた。

着ている服は赤のノースリーブ、履いてる靴はビーチサンダル。


全身に風を感じて辺りを見回す。

気付けば乗っている船は、見覚えの有る小型木造帆船。

海風にはためく、麦藁帽子を被った髑髏の海賊旗。

こちらからは見えないけど、船首はきっと愛嬌溢れる羊の顔。

継ぎ接ぎだらけの愛する船……ゴーイング・メリー号。


後部デッキから、皆と共に私は、沈む夕陽を、離れ行く島を、見送っていた。


「楽しかった…怖いもんちっとも居なかったし…平和で、美味い食いもんや飲みもんいっぱい有って…なのに3日しか居られないなんて…オレ、すっげ寂しいぞォォーーー!!!!」


右隣で船縁ぶら下がってたチョッパーが、ウルウル目で海に向かい叫ぶ。

トナカイの様な狸の様な、毛皮モコモコの愛くるしい姿。

頭に被った『×』帽子は名医の証、頼り甲斐有る我等が船医。


「また来たいよなァ~~~。来れるかなァ~~~?チーズやハムやソーセージやワイン……どれもこれも美味かったよなァ~~~。」

「バナナマフィンも美味かったよなァ~~~。後50個くれェ買って行きたかったよなァ~~~。」


そのチョッパーの横で、ルフィが同調する。


「オレ、お菓子の家見たぞ!!魔女が住んでて、サンタが訪ねて来るんだ!!」
「俺も見たぞチョッパー!!良いよなァ~~~。あんな家に1度住んでみてェ~~~。そんでエントツから丸かじりすんだァ~~~v」
「食っちまったら駄目だよルフィ!!住めなくなっちまうじゃんか!!!」

「寂しがってんじゃねェよてめェら!!!」


バタンと扉開いて、ウソップが飛び出して来た。

一体誰の真似なのか?……手にはギター、頭にはテンガロンハット、黒いグラサン掛けて、長鼻の下にはマジックで描いたチョビ髭、ベルボトムジーンズといったスタイルだ。


「幾つもの出会いと別れを繰り返し、人は大人になって行く。愛する者を残しても、ぐっと涙堪えて独り旅立つ……それが漢の生き様ってもんだぜェェ!!!」(キラーン)

「うおおおっっ!!!ウソップカッコエェェーーーー!!!!」
「良いぞォォ~~~!!!漢・キャプテンウソップゥゥ~~~~!!!!」

「…っつう訳で聴いて貰うぜ…!!キャプテェ~ンウソップ様が歌う別れのバラード!!!てめェらしっかり声援頼むぜェェ!!!!」

「さよならは別ァ~れェ~のォ~言葉じゃなくゥてェ~♪」
「「ヒュー!!ヒュー!!」」
「再び逢うまァ~でェ~のォ~遠い~約束ゥ~♪」
「「ヒュー!!ヒュー!!」」
今を~嘆ェいてもォ~胸を~痛ァ~めてもォ~ほんのォ~夢ェの途中ゥ~~♪…ジャンジャンジャンジャンジャカジャカジャジャン♪――どうしたどうしたァ!!?声が小さいぜてめェらァァ!!!!」

「ウソップ、ルフィ、チョッパー、あんた達、煩い。」

「ナミさん…!!」


背後からそっ…と肩を抱かれる。

振り返ると、右の瞳をキラキラと輝かせたサンジ君が立っていた。

気障ったらしい黒スーツと黒ネクタイ、咥えた煙草からはハート型した煙。

その煙が私に掛からぬ様、決して風上には立たない、見上げたフェミニスト根性。


「今度来た時は君と、あの海辺佇む、ホテルデンハーグに泊りたい…!!

 宿泊する部屋は勿論、窓から海を見渡す、デラックスハーバービューツインだ。

 寄り添い紺碧の海を見詰ながら、2人の夢について語合おう。

 いっその事、結婚式も挙げてしまおうか?

 幸い、あそこには教会も用意されてると言うし。

 そうだ!ハネムーンはその後でも良いさ!!

 昼に太陽の祝福を受けた2人は、夜には月と星の祝福を受けるんだ。

 満天の星を映した夜の海を背景に、2人きりで乾杯をしよう。

 夜も更けて…『そろそろシャワーを浴びて寝ないかい?』と俺が誘う。

 君は『いやんv初めてなのに、一緒にだなんて恥かしいvサンジ君からどうぞv』と、初々しく拒むだろう。

 その仕草に惜しく思いつつも、心トキメカセながら先にシャワーを浴びる俺。

 逸る胸を抑え、腰にバスタオルを巻いて出て来ると、ベッドの上には――」

「――誰も居らずもぬけの殻。

 間抜けな花婿さんがシャワーを浴びてる間に、花嫁さんは貰った御祝儀ごっそり持って、彼方へと逃げてしまいましたとさ!」


サンジ君の足元で、縁に寄っ掛かってたゾロが、茶々を入れる。

親父シャツに緑の腹巻に、左腕には黒バンダナ、左耳には3連ピアスといった、ダサさを超越したファッション。

右の腰には勿論、3本の真剣を差していた。


「話横取りして勝手に哀しい展開に変えてんじゃねェよ毬藻ォォォ!!!!」
「台詞長ェんだよてめェはァァ!!!!出番無かった腹いせかァ!!!?クルクルラブリン!!!!」
「煩ェェ!!!!毬藻は毬藻らしく独り寂しく湖底沈んで眠ってろっっ!!!!早よ帰れ故郷の湖に!!!!」

「国の起源を知る上でも、興味深いサンプルだったわね。」


左隣に立ってたロビンが微笑む。

風に吹かれ、はらりと広がる漆黒の髪。

同姓の私でも憧れる、彫像の様に整った容貌。

髪と同じ色した瞳は、理知を宿してきらりと輝く。


「かつて栄えた大国も、一日にして成された訳では無い。あの国の歴史は未だ浅いけど…ひょっとして私達は、綿々と続いてく国史の内の序章を、垣間見たのかも知れないわ。」

「始まりは全て0から、か…。」


希望と理想に溢れた、良い国だった。

エコロジー&エコノミー、自然と文化の共存……成功すれば良いなと思う。

その試みは必ずや、未来に生きる人達の指針となる。



刻々と、夜に染められて行く空。

濃紺の世界で、稜線のみが、薄桃色に輝いてる。

船は波を蹴散らし、真直ぐに航行してく。




「ぜってェ、また来ような!!」


何時の間にか近くに、ルフィが来て笑ってた。

さっきまで被ってた、麦藁帽子は消えている。


見回せば、居るのは帆船の上でなく、振動鳴り響く、高速船の中。

最奥窓際から並んだ席には、ルフィ、ゾロ、私の3人。


……ウソップ、サンジ君、チョッパー、ロビンの姿は、何処にも無かった。



「今度来たら忘れず馬車乗るぞ!!チョコレートフォンデュも食う!!タクシーにも乗りてェなァ~!!カナリカフェだったか!?あれも乗りてェよなァ~!!後キッズ何とか!!ガキ用遊園地でも1ぺん観てェ!!あ!!キャプテンショップ!!今度はゆっくり観るぞ!!そんで明かり点いたきれーなシャンデリアも観なくちゃな!!……こうして考えると、まだまだし残した事、沢山有るよなァァ~~~!!」

「…それだけじゃなく、知ってるか?地下にゃ迷路まで在るんだぜ!」

「地下に迷路ォォ!??」
「ゾロ、起きてたの?」


間で熟睡してると思ってたゾロが、むくりと身を起こす。


「…ルフィの声が煩くて寝付けやしねェ。安眠妨害極まりねェよ。」


その右腰に、3本の真剣は差してない。


「上ばっか歩いてて気付かなかったんだろ?今度来たら、俺が道案内してやるよ!」


妙に優越感たっぷりに、ニヤケる。


「へー!!そんなトコまで在ったのかァァーーー!!面白そうだな♪」

「あんたに道案内お願いしたら、それこそラビリンスみたいに、一生抜け出せなくなりそう…。」

「どういう意味だよそりゃ!!?」

「それを言うなら私だって…あんた達、飛ぶ魚を目の前で見た事有る?」

「「飛ぶ魚??」」

「飛魚よ!この海には沢山居て、ピョンピョン飛んでるトコ見たわ、私!」

「飛魚ってアレか!?羽の生えた魚か!?うわっっ、すっげー観てェェ~~~!!何で俺達にも観せてくんなかったんだよ!?」
「呼んでもあんた達、部屋に鍵掛けて、狸寝入りカマしてたんじゃないの!!!」

「まァ良いじゃねェか。次に来る時の為に、楽しみ色々残しといたっつう事でよ。」


ゾロが珍しくも、朗らかに笑う。


「そうだな!!全部、次来た時の宿題だな!!」


ルフィも力いっぱい、声立てて笑った。


「………そうだね。」



夕陽は沈み、街ももう見えない。

すっかり薄暗くなった空の下、波飛沫立てて、船は高速で進む。



被ってた帽子の鍔に触れた。


ルフィに渡された、『誓いの帽子』。




「……また来よう!!

 今度は…皆で…!!





ハウステンボスまでは何マイル?

お船に乗って行けるかな?

行って帰って来られるさ

波が高く荒れなけりゃ

お船に乗って行けるとも






【終】





写真の説明~、以前話に出した、ハウステンボスのオリジナルチューリップ、その名も『ハウステンボス』。

ピンク色してフリンジ付いてて可愛いっしょv



…改めてブログ上で、お礼を言う積りですが……

まったりさん、

ちばさん、

ふくちゃん、

ぐらさん、

ウロウロさん、

勝手にでは有りますが(汗)、資料として貴ブログを大いに参考にさせて頂きました。

有難う御座いました。(礼)

そして、此処までお読み頂いた皆さんにも、有難う御座います。(礼)

お陰で何とか、最後まで書き切る事が出来ました。

本当に有難う御座いました。


あ、追伸…最後のフレーズはマザーグースのパロディ、深い意味は無いです…まぁ、洒落で。(苦笑)

後、ウソップが歌ってるのは来生氏の『夢の途中』です、言わんでも解るでしょうが。(汗)
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『何度も廻り合う』その39

2006年02月23日 22時45分27秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】






我に返った時は、既に山端近くまで、陽が傾いていた。

あっという間に黄昏に染まった場内、釣瓶落しとはよく言ったもんだわ。


予約しといた長崎空港行高速船の出発時刻まで、もう後15分足らず。

慌てて3人して出航場所、『マリンターミナル』へと向う。




出入口の所では、タンテ・アニーの店員さんが、出張販売をしていた。

…こんな所まで…商魂逞しいと言うか…。(でも商売人として、見上げた心意気よね)



待合席の前には、場内の季節イベントを流してるTV。

ゴスペルライブ・ショーや、ラィティング・セレモニーといった、懐かしい映像の数々。

2泊3日なんて、短いもんだったわよねー…。


2人に待合席で座ってるよう言い、側の高速船発券所で、人数分の券を貰った。

後5分もしたら乗船出来るんで、準備しといて下さいと説明される。



発券所を横に、ルフィとゾロはシートに並んで座っていた。


ルフィを間に挟んで座り、貰った乗船券を渡す。


後10分…10分で…この、時が極めて遅く流れてるよな街と、サヨナラしちゃうのね…。

今度来れるのは何時になるんだろう?

不吉な想像だけど、その頃まで、この街は在るだろうか?

決して多くはない待合客の数を見てると不安になった。



「しかし最後まで忙しねェ旅だったよなァァ。…場内幾度となく駆け摺り廻らされてよォォ。」


如何にもくたびれた風で、首をコキコキ鳴らしながらゾロが言う。


「一体場内何周したんだろうなァー?帰って体重計乗ったら、やせてたりしてな♪」

「『ダイエットに効果有。万歩計持参してお出でませ。』なんて、キャッチコピー出して宣伝すりゃあ、挙って女共が来るんじゃねェの?」

「うはははは♪♪ゾロ!!お前、上手い事言うなァァ~~~!!売り込んでみろよ!!ナイスアイディアだっつって、さい用されっかもしんねーぞ!!」

「広々としてますよったって、限度が有らァな。全部廻る気なら、3泊は必要なんじゃねェか?」

「そうだなァ~~~。広いのは気持ち良いし、好きなんだけどな。結局、乗りたかった物とか、行きたかったトコとか残っちまって、ちょっと欲求不満だよなァ~~~。」

「消化不良っぽいよな。…まァ、でも…漸く帰れるっつか。本音言うと、握り飯とか、簡単に食えるもんに飢えて来ててな…此処の食いもんはまずまず美味ェが、やっぱ家の飯が1番だよな。」

「それ言ったら俺はカップメンが食いてェ!」

「ルフィ、お前、外国行くなら、味噌汁とか茶漬けとか、山程インスタント食品背負ってけよ。向うではそうゆうの、あんま売ってねェらしいぞ。」

「え!?そうなのか!?よし!!カップメンにカップスープにインスタントみそ汁永○園のお茶づけ…あああ!!思い出したら食いたくなって来た……早く帰りてェェ~~~~~!!!」

「……………悪かったわねェェ2人共……こんな…来たくもない場所に連れて来ちゃって………」

「「あ??」」


ガタリと勢い良くシートから立上がる。

あっけにとられてる2人の顔を、思い切り睨め付けた。

最後くらい、喧嘩せずに気持ち良く、別れてやろうと思ってたけど…

もう駄目…我慢限界…堪忍袋がぷっつんだわ…!


「ゴメンねェ2人共!!最後まで私の我儘に付き合せちゃってェ!!でも恐らくこれで最後だろうから許してくれるゥ!?」

「…どしたんだナミ??顔が赤鬼みたくメチャ怖ェぞ???」

「……んだよ?その、『お終い』めいた言い様は?」

「でもさァァ!!そォんな行きたくなかったんなら、無理して来なきゃ良かったのに!!私だって…来たくもなかった奴と旅行したって、却って気分が悪くなるだけだわ…!!」

「は??…別に俺、行きたくなかったなんて、1度も言ってねェぞー??」

「……おい…ナミ…いきなり何ぶち切れてんだよ…?」
「ぶち切れちゃ悪い!!?足りなきゃついでに縁切ったげるわ!!!」


――ガタン!!と音立てて、ゾロも立上がる。

怖い顔して傍寄って、腕を力いっぱい摑まれた。


「離してよ!!!痛いでしょォ!!!」
「我儘もいいかげんにしろっつったろ馬鹿女!!!最後最後最後最後って…てめェはそんなに俺達と別れたいのかよっっ!!?」
「別れたがってんのはあんた達の方じゃない!!!っつかもっと性質悪く眼中に無!!?自分達の夢追っ駆けるのに夢中で、残される人間の寂しさなんて考えた事無いんでしょ薄情者共!!!」
薄情者だァ!!?こっちの気も知らず悲劇のヒロイン気取りかよ!!?そんな寂しけりゃ一緒に来りゃ良いだろがいっその事!!!」
「一緒に行ける訳無いでしょ!!!私にだって追い駆けたい夢が有るんだからっっ!!!」
「人薄情者扱いして何だよその自己中態度は!!?だったらお互い様だろがっっ!!!」


「……あの……お話中失礼ですが……そろそろ出航時刻となりますので…乗船して頂けませんでしょうか…」

「誰だ?おっさん??」

「乗船案内の者です。…他の皆さん、既に乗船して待ってますんで…済みませんが、話を切り上げて…あの……」

「あーー…この2人の口ゲンカなら、放っときゃその内カタ付くから、ちょっと待っててくれよ♪」

「いえ、待っててったって……もう間も無く出航――」
「何他人事みてェに呑気に座って観客面してんだルフィ!!!?」
「そうよ!!!ゾロだけじゃなく、あんたにも言ってんだからね!!!」
「何だよーー!?俺まで巻き込むつもりかァーーー!?関係無ェんだから止めてくれよなァーーー!!」
「おめェが何時までも仲裁しようとしねェから平行線なるんだろがっっ!!!何で止めねェんだ!!?薄情者!!!」
俺のどこがはくじょうだってんだ!!!?いつでも2人して勝手にケンカしていつの間にか仲直りして、止めに入る必要無ェだろバカヤロウ!!!!」
「そんな事問題にして無いでしょ!!?話逸らすなゾロ!!!」
「馬鹿野郎だァァ!!!?――人がわざわざ、何で2人だけで廻らせたと思ってんだ!!!?鈍感馬鹿!!!!
「知るか!!!!そんなの!!!!何でだよっっ!!!?」
「服が濡れてしんどくて廻りたくなかったからでしょ!!!!来たくなかったんなら最初から付いて来んな馬鹿迷子!!!!
迷子言うんじゃねェ!!!!来たくねェなんて1度も言ってねェだろがっっ!!!!――この女に付き合って話聞いてやって甘えさせてやりたくとも俺じゃあ直ぐ喧嘩になっちまって出来ねェからお前に期待して頼んだんだろうがっっ!!!!」
「甘えさせるって何よ!!!?私が何時甘えさせてなんて頼んだっつうの!!!?人の知らぬ間にこっそり失礼な事頼んでんじゃないわよ!!!!」
「そうだ!!!!何でナミ甘えさせてやんなきゃなんねーんだよ!!!?俺だって甘えてェ!!!!」
「おめェが甘えてどうするよ!!!?っつか四六時中思うが侭甘えてんだろが!!!!――ナミが…俺達と離れるのが嫌で…寂しくて…せめて最後くらい甘えさせて欲しい思ってんのが、解んねェのかてめェにはァァ…!!!!?


「………何だ、ナミ。おめェ、俺たちと離れるのがイヤで、さびしがってたのか?」


「う………う……うっさァァァい!!!!!あんた達みたいな薄情者、遥か彼方のM78星雲まで行っちまえば良いんだっっ…!!!!!」

「………そんな遠くまでは行けねェよ。ったく、でっけェ乳して、中味はてんでガキっつうか…!!」
「ゾロもそう思うか!?マジでっけェェよなァ~~~!!!コートの上からでもくっきり判るデカパイ!!俺、感動しちま―――」


――ドゴッッ!!!!メキャッッ!!!!


「…も、物も言わずにアッパーで殴んな!!!防御する間位与えろよ!!!!」
「るさいっっ!!!!セクハラで訴えられたいかあんたら!!!!?」

「い…良い、右ストレートだったぜ……さすがだな、ナミ…!!」


「…っとに……何であんた達…こ…な…デリカシー無い……だか…!!!」

「あ、ナミ泣かしちまった!!!…悪い奴だなー、ゾロ!」
「おめェが泣かせたんだろうがっっ!!!責任転嫁してんじゃねェよ!!!」
「2人揃って泣かせたんでしょ馬鹿ァァ…!!!!」



…連れて来るんじゃなかった…連れて来るんじゃなかった…!!

せめて…最後くらい…楽しい思い出作っておこうとしたのに…!!

こいつらちっとも…こっちの気持ちなんか解ってくれようとしない…!!


春になったら、会えなくなっちゃうんだよ…?

それぞれ分かれた道進んで……それが、2度と交差しないかもしれないのに…!!


あんた達は平気なの…?

寂しくないの…?

何でそんな、ヘラヘラヘラヘラ笑ってられんのよっっ…!?



「なァ~~~ナミィ~~~。泣き止んでくれよォ~~~。おめェ泣かすと、おめェんトコのおっさんに死ぬほど怒られて怖ェんだからよォ~~~。」
「…知るか馬鹿ァァ!!!むしろ私からゲンさんに頼んで半殺しにして貰うわよっっ!!!」
「いィィ!!?半殺しィィ!!?――ヤベェよゾロ!!早く行っちまわないと、おめェ身が危険だぞ!!」
「だからおめェの身が危険なんだろっつうの!!!」
「どっちもに決まってるでしょうがっっ!!!!」



馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿…!!

もう知るもんか、行っちまえ、薄情者共!!

今此処で縁切りだわ!!むしろこっちから2度と会ってやるもんか!!

卒業したら赤の他人、写真も何もかも全部破り捨てて、記憶から排除してやるっっ!!!



「あのよ…ナミ……俺、20歳になったら、戻って来っから。そしたら……また、皆でここ来ようぜ!」


泣いて床に蹲る私の耳に、ルフィの声が届いた。

顔を上げる、コートの袖で涙を拭う。

ルフィが、目の前に座ってた。


「………信じられないわよ…あんたの口約束なんて…!!」


――ポン…と、頭の上に、何かが被された。


「……本当は、麦わらだったら良かったんだけどな。」


そう言って、にししっと、歯を剥き出しにして笑う。


手で触れたそれは、正面に鍔の有る帽子……さっきまでルフィが被ってた、船長帽だった。


「――必ず、約束する!!…それは『ちかいのボウシ』だ…!!」



………誓いの、帽子…?



「…ったく、黙って聞いてりゃ、今生の別れでもあるかの様に……大袈裟なんだよ、てめェは!離れるったって、同じ日本国内だろがっっ!!」


ルフィの隣に来て、ゾロも床に胡坐を掻く。


「そうだ!!俺だって同じ地球の上じゃんか!!大げさだな、ナミは!!」

「いや、おめェは少し大袈裟に捉えとけよ。…大体、俺達てめェに借金してるしな……それとも踏み倒し許してくれんのかよ?」
「許す訳無いでしょ!!!?地獄の果てまでだって取り立てに行ってやるわ!!!!」
「それ見ろ!縁切る気全く無ェんじゃんか!」
「つかあんたら!!!卒業前迄には耳揃えて払ってくれるんでしょうね!!!?延滞する分だけ利子増してくんだから、早く払いなさいよ!!!!」
「安心しろ!!ナミ!!出世したらまとめて払う!!!」
「信用出来ないっつったでしょ馬鹿者ォーーーー!!!!!」

「まーとにかく、20歳まで後…たったの2年だろ?今度は皆してここ来て、どんちゃん騒ぎしようぜェ♪♪」

「ハウステンボスで同窓会か……悪くねェんじゃねェか?」


「その頃まで……此処……もたないかもしれないじゃない……」

「「もたねェ??」」

「此処ね……すっごい赤字なんだって……1度、倒産もしてるし……ひょっとしたら、2年後は、もう…無いかも…!!」



会える港を失くしたら、私は皆を、何処で待てば良いの…?



「千年続く街だっつうたじゃんか。」

「……それは、あくまで理想よ、ルフィ。」

「でもこんだけしっかり、がんじょーに造ってあるんだ!建物は必ず残るだろ!?」



建物だけ残ってたって……!!



「なァ、ナミ!………会いてェヤツが居て、そいつと行きてェ場所が在んなら、何度だって廻り合えるさ!!」



そう言ってルフィが微笑む。

人を安心させる、太陽の様な笑みで。



「……本当に、あんたって、理想主義者なんだから…!!」




「…あの……お話の決着はなされましたでしょうか…?」


案内係と思しき小父さんが、おずおずと側近寄り、喋り掛けて来た。


「とうに出航時刻を10分も過ぎております…他の乗客の方の御迷惑になってしまいますので、お早目に…あの……」


はっとして身を起す。

気付いた時には、私達の周囲は、黒山の人集りで、垣根が作られていた…。




「おい…向う戻ったら俺、携帯買いに行くから、付き合えよ。」


入国した時の様に、海に長く伸びた桟橋を、駆け足で渡ってる途中で、ゾロに肩を摑まれ耳打ちされた。


「携帯??……あんたが!?…何の為に!??」

「俺1人じゃ、機種とか何選んだら良いか、判んねェからな。だから、付き合え。」

「……肌身離さず電話持つのは、考えるだけで煩わしいんじゃなかったの?」

「それで……どうしても寂しくて仕方ねェ時は、俺に電話しろ。何時でも、会いに行ってやっから…!」


話した後でポンと私の背中を叩くと、急いでルフィの後を追い、船内へと入ってった。


「………ゾロ……。」


私も、案内係に急かされ、船へと走る。

桟橋に繋留された、来た時と同じ、小さな高速船。


振り返れば、すっかり薄暮に包まれた、童話めいた煉瓦の街並。

橙色に灯った街灯が、暗い海面にまで光を投げる。




2年後……この街は、変らず在ってくれるだろうか?


会いたい人に廻り合える場所で、在ってくれるだろうか…?





その40に続】





写真の説明~、ニュースタッド、アムステル運河の夕景。

夕方5時を過ぎると、場内にポツリ…ポツリ…と灯りが点き出します。


漸く、ラスト…ワン…!!(お疲れ様~)(汗)
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『何度も廻り合う』その38

2006年02月22日 23時18分54秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





安政2年(西暦1855年)、オランダ国王ウィレム3世が、徳川幕府に献上した蒸気帆船『観光丸』。

長崎海軍伝習所の練習艦だったこの船を、ハウステンボスはオランダで忠実に復元、自力回航して此処まで持って来たらしい。


そんなノスタルジックな木造帆船に乗って、大村湾周遊クルーズ。


私達が乗船した午後4時の回は、本日最終便という事で、結構賑わいが有った。


ホテル・デンハーグ前の乗船所には、主に修学旅行生や遠足に来た小学生が、列をなして待っていた。



乗船の合図と共に、それらが一斉に甲板に雪崩込む。

船内には売店付の座れる休憩所が在ったりしたが、あまりそちらには人は流れて行かなかった。


「そりゃそうだろ。遊覧船乗って景色観ないんじゃあ、乗った意味が無ェ。」

「確かにそうだわねー。」


船縁に寄り掛り話す私とゾロの前には、念願叶ってハイになり、メインマストをペタペタ触って回ってるルフィの姿。


「すっげーぶっといなーー!!それに高ェ~~!!上に見張台在るけど、あそこまで上るの大変だろぉなァ~~!!」


その側で青いジャンパー着た船員達が、困った様な顔して立っていた。

作業したくても、ルフィが邪魔で出来ないらしい。


「ルフィ!!こっちいらっしゃい!!後ろのお兄さん達、仕事出来なくて困ってるみたいだから!!」


私の声に反応し、ルフィが走り寄って来る。




丁度出航時間が来たらしく、帆船がゆっくりと動き出した。

甲板に居た子供達から歓声が上がる。


3人して船縁から身を乗り出し、船が岸から離れてく様を観守った。

強い海風が顔に当り、前髪が乱される。


「ルフィ、その船長帽、手に持ってた方が良いわ。風強いから、海に飛ばされちゃうかも。」

「ん?…そか!」


被ってた帽子を脱いで右手に持つ。

タイミング良く、脱いだ途端に突風が吹き付ける。

ルフィの広いおでこが全開にされた。


「晴れてくれてラッキーだったな♪おかげで青空クルーズが出来る♪」


雲は南端まで飛ばされ、上空はほぼ澄み切った青空。

陽が傾き、甲板上に幾つもの、長い影が伸びていた。


「まァねェ。でも日焼しちゃいそうで、本音少し曇ってくれてた方が良かったかな。」

「帰りの高速船5時だろ?これ乗ってて間に合うのか?」

「所要時間約35分。大丈夫、10分前にはマリンターミナルに入れるわよ。」

「どうせならこれ乗って空港行けりゃ良いのになー。」

「それは幾ら何でも無茶と言うものよ、ルフィ。」


強風でかなり波が高くなってるのに、船体は殆ど揺れなかった。

穏やかに、ゆっくりと航行してく。


「あの『大航海体験館』みたく、もっとバカゆれすりゃあ、面白ェーのになー。」

「そんなまで荒れてたら、中止になってるわよ!」

「やっぱり大型の船は、安定度が高いんだなァ。」



観えていた街並がどんどん小さくなって行き、ハウステンボスの全景までもが見渡せる位まで離れた。

と、急に甲板が賑やかになりだす。

メインマストの周囲に船員が並んで挨拶、これから催すショーの説明を始める。

帆を揚げる展帆作業を行うって事だった。

目の前のマストに、白い巨大な帆がスルスルと揚げられてく。

その巨大さたるや、何と畳44枚分有るらしい。

幾ら数人で力合せてるったって、澱み無く馴れた手捌きで、全く重みを感じさせない。


「うっはーー!!あーんなでっけーの簡単に揚げちまうなんて、すっげー怪力だなーー!!」

「力だけでなく、コツも有んのかもしれねェぜ。」

「迫力有るわねェ!やっぱプロの仕事は違うわ!」


メインマストに帆が無事揚がると、次は船首の三角帆を揚げる作業。

この作業は乗船客も参加出来るらしい。

そう聞いた途端にルフィの瞳が、ルックスを増して輝いた。

声掛ける間も無く、脱兎の勢いで船首の方走ってく。


「ちょ…!!ルフィ!!待っっ…!!」


追い駆けようと縁から離れて1歩踏み込んだ瞬間―――ガクン!!!と、船体がいきなり斜めに傾いた。




思わず、甲板に尻餅をつく。

頭上から止め処無く水が浴びせ掛けられた。

服がじっとり濡れてるのが感じられる。


驚いて上空を見上げる………真っ暗だ……雨雲がとぐろ巻いて空を覆ってる。

ドォォ…ン!!!と雷鳴が轟く音がした。

まるで嵐…そう嵐だ!!

荒狂う風、激しいスコール、降掛かる波飛沫で、甲板はすっかり水浸しになってる。


何、これ…?

何時の間にこんな天気になっちゃったのよ…?

ルフィ…?ゾロ…?皆、何処行っちゃったの…?



また大きく船体が傾く。

衝撃で後ろへ転がった。

木の樽が強風に煽られ、海上に飛ばされてく。

轟々と風が唸りを上げてる…凄い暴風雨だわ…。

休む間も無く振動が続いてる。

高波に船体が恐ろしい程持上げられ、そして一気に海面に叩き付けられた。

樽同様、海に放り投げられる恐怖を覚え、傍の縁にしがみ付く。



状況が、全く見えない。

さっきまであんな好天だったのに、何故?

沢山居た船員や乗客は、ルフィやゾロは、何処?


それにこの船…観光丸じゃないわ…!!

何なの?あの海賊旗の様な帆は?

麦藁被った髑髏!?…何よそのふざけたデザイン!!

船も小さいわ…まるでデ・リーフデ号位に…そうだ、大航海時代の船にそっくり…!!


それに……私の着てる服…違ってる!!

何時こんな薄地の、肩剥き出しミニスカワンピに着替えたっつうのよ…!?

呆然と甲板に座ってた前に、バシャバシャと水掻き分け、向って来る人影が見えた。

金髪…片目…グルグル眉毛……ああ…サンジ君だ…。


「…て…えええ!?サンジ君!!?何で此処に居るのォォ!!?
「ナミさん!!!大丈夫か!?ナミさん!!?」


横殴りの雨風に晒され、髪も顔も黒いスーツも、私同様すっかりびしょ濡れだ。

肩に手を回し、抱き起こされる。


「此処に居たら危ねェ!!早く船内に…!!」


「ね、ねェ!!何なのこの嵐!?何で私この船乗ってるの!?…そもそも何でサンジ君が此処に――」



――またガクン!!!と、縦に大きく傾く。


溢れた水に足を取られて流され、サンジ君と一緒に甲板を滑り落ちてった。


壁に衝突寸前、甲板から何本も伸びた手に縫い止められ、私は難を逃れた。


……ん?…何本も伸びた…手……!!?


「キ…キャ~~~~~!!!いィィやァァ~~~~~!!!船幽霊~~~~!!!!」


「早く指示を出して航海士さん!!でないと向ってる方角がどんどんずれてしまうわ!!!」

ロ…ロビン先生!!?何で先生まで此処に!!?」


甲板に縫い止められた体勢で、声のした方振り向くと、飛ばされない様マストにしがみ付きながら、ロビン先生が叫んでいた。


バタン!!と扉が開き、中から角を生やした狸が出て来る。


――狸ィィ!!?角ォォ!!?二足歩行~~~!!!?


「大変だァァ!!!船底に穴が開いたァァ~~~!!!」


――ああっっ!!しかも人語話してるゥゥ~~~~!!!


「よォ~~し!!!待ってろ!!!今修理に行ってやる!!!」


バタバタとウソップが板切れ抱えて甲板走ってった。


……ウ、ウソップまで……サンジ君も……あんたら、受験は諦めたっつうのォォ~~~~!!??



……あ…駄目…頭、混乱…脳味噌爆発しそう…。

きっとこれ夢だわ…そうよ、夢…常識的に言って、有得ないもの…。

寝ちゃおう、このまま…!!目が覚めればそこは暖かいベッドの上――


「寝たら駄目よ航海士さん!!!早く!!!早く船の方角確認して!!!」

「いやん、起さないで、先生v大丈夫、これ、夢だから。…てゆーか夢でなくっちゃ嫌。」

「現実逃避は止して航海士さん!!!」


肩を摑まれガクガクガクーと強く揺さぶられる……何てしつこい夢…でも負けないわ…眠るの…眠るのよ、自分。

…あ、何時の間にか手の拘束が解けてるし…良かった…やっぱり夢だったのねv


「眠ったら駄目だってば航海士さん!!!早くこのログポースを見て!!!」

「……ログ……ポース…??」


左腕を摑まれ、目の前にかざされる。

ブレスレットと一緒に、手首に嵌めてある、丸っこい変な物。

方位磁石に似てるけど……何の字盤も無いし……


「…こんなん見て、一体どうしろってんですか!!?大体、私、航海士じゃな――」



――また…今度は、大きな横揺れが来た。

今迄で1番のその揺れで、私の体が宙に浮き、真っ黒くうねってる波の中に投げ出される――すんでで、ギュルン!!と何か餅の様に伸びた物が体に巻き付き、強い力で船に引き戻された。


「あ…ぶなかったなァァ~~~ナミ!!!」

「あ、有難う…ルフィ…!!――ちょっと待って!!!あんた!!その腕伸びてる…!!!


私の体にグルグル巻き付いてるそれは……ルフィの腕だった!!


「そりゃ伸びるさ!!ゴムだもんよ!!」


さも当然そうにルフィが言った……ええ!?えええええ!!!?

ずぶ濡れの頭の上には麦藁帽子、赤いノースリーブの服、ビーサン――こ、こいつも夏服ゥゥ!!?


「おい!!!ナミ!!!どうしたら良い!!?どうすりゃ良いんだよ俺達!!?」
「ど、どうすればって…私に聞かれても…!!」
「航海士のおめェに聞かないで誰に聞くんだよ!!?」
「だから私、航海士じゃないってば!!!!」


ぐいっっと背後から強い力で肩を摑まれる。

振り返ればゾロが――こいつまで妙ちくりんな格好してるゥゥ~~!!!

腹巻親父シャツに真剣が3本って、何なのよその常軌を逸したスタイルは!!?バ…バカボンパパのコスプレェェ!??


「ナミ!!!早く指示を出せ!!!これ以上波に翻弄されちまったら方角見失っちまう!!!」
「だ、だから…私にそんな事出来る訳無いでしょォ!!?私、船だって殆ど乗った事無いんだからっっ!!!」



――ザザザァ…!!!と高波が押寄せて来る。

甲板に波飛沫が大量に降掛かった。



「何とかしろ!!航海士っっ!!!」



――何とかしろ!!航海士っっ!!!



………ルフィ……



「しっかりしやがれ!!てめェが指示出さなきゃ、皆沈んじまうんだぞ!!」



――しっかりしやがれ!!てめェが指示出さなきゃ、皆沈んじまうんだぞ!!



………ゾロ……




腕に嵌めたログポースを見詰る。

透明な球に浮ぶ針が、真直ぐ、目指す方角を指していた。



…そうだ…私…この、ゴーイング・メリー号の航海士だったっけ…。

この偉大なる航路『グランドライン』を、皆で一緒に航海して。

何で…今迄、忘れてたんだろ。



「――ルフィ!!ゾロ!!急いで帆を畳んで!!サンジ君とロビンは舵を取って!!右へ75°ズレてるわ!!修正一刻も早くお願い!!!」

「畳むんだな!?解った!!!」
「おう!!!任しとけ!!!」
「凛々しいナミさんv素敵だァァ~~~vvv」
「緊急時にメロってないでコックさん!!急ぐわよ!!!」



大丈夫!!波に翻弄されたりしないわ。

どんな嵐でも、目指す方角見失ったりしない。

私は…航海士なんだから!

皆を導いてく役目なんだから…!!






……どれ位…経ったんだろう…?

…揺れが…治まってる…風の音も…静かだわ……。

空高くで…鴎が鳴いてる……良かった…漸く嵐を抜けたみたいね…。



首だけ動かし辺りを見回した。

私同様、甲板に皆して寝そべり、へばっていた。

直ぐ右隣にはチョッパーが…ああ、そうか…あんた、チョッパーだったわね…。

ゴメン、チョッパー…忘れて、狸なんて思っちゃって…。

そのチョッパーが、板切れ抱えたまま、うつ伏せで倒れてる。


「ね……チョッパー…船底の穴は塞がった…?」

「な、何とか塞がったよ…でも、未だ、底に溜った水…掻き出してないや…。」
「後で全員して掻き出しゃ良いさ……今は皆…少し休んどけ…。」


頭の方で船縁寄り掛ったゾロが擦れ声で言う。


「早く…1級ドッグに入れて、メリー修理して貰おうぜェェ~~!!…でねェと傷だらけで可哀想だ…。」


足下で転がってたウソップは、しくしくと涙声だ。


「そうね…此処はグランドライン、予測不能の海流渦巻く海。今回みたいな嵐は、これから幾度も襲って来るだろうし。出来るだけ船を頑丈にしとかないと、何時か防ぎ切れなくなるわ。」


左隣でロビンが、半身を起こして空を見詰てる。


「大丈夫さロビンちゃん!!この船には、海に最も愛された女神、ナミさんが居る!!その船が沈められる訳無ェ!!」


バタンと船室の扉を開け、珈琲人数分載せたトレー片手に、サンジ君が現れた。

ピシッと糊の効いた紺のスーツに着替え、口にはトレードマークの煙草を咥えている。

そして私やロビンに、「はいv」と熱い珈琲を手渡し、倒れてる男共の頭上にも、それを置いてった。


「おめェ…心底メルヘン野郎だな…脳味噌そのまま薔薇に浸らして窒息しちまえ。」
「んだコラ!?毬藻羊羹野郎!!頭に爪楊枝刺してパンッッと割っちまうぞゴルァァ!!?」


…自分だって疲れてるだろうに…ほんっっとマメなんだから。


「そうさ!!!この船には一流の航海士が居るんだ!!!ぜってェ沈むもんか!!!――なァ!!ナミ!!!」


傍に近寄り、私の顔を覗き込む様にして、ルフィが笑う。

見上げれば、麦藁帽子の向うに、太陽が重なって見えた。


「…当り前でしょ!!こんなに可愛くて海が大好きな私を、海の神様が沈めたりするもんですか!!!」


立ち上がり、宣誓するが如く、右手を天に突上げ叫んだ。


「さァ!!次の島に向って、また波を越えてくわよ…!!!」




「…つって、未だどっか廻る気かよ?右手突き上げエイエイオーなんて、いいかげんタフなヤツだなァ。」

「――え…??」


目の前には、ゾロが呆れた顔して、立っていた。


「もう直ぐ5時だぜ?諦めて、そろそろ高速船の乗り場に向わねェか?」


…高…速…船…?



耳元に喧騒が届く…船から桟橋に乗客が降りてく。

親子連れ、修学旅行生の群れ、挨拶して送出す観光丸の船員。

…何時の間にか、船はまた、観光丸に戻ってた。

羊のフィギュアヘッドの付いた、ゴーイング・メリー号の姿は無く。

ウソップも、サンジ君も、チョッパーも、ロビンの姿も無い。

桟橋の続く岸には、見慣れた赤煉瓦の街並。


ルフィが甲板を駆けて、こちらにやって来る。

服は元通りの赤いジャケット、頭の上にはガキっぽい船長帽…ゾロも緑のダウンジャケットにジーンズ、刀なんて勿論1本も差してない。


そう言えば、私の格好…!!

はっと思い出して見下ろす……オレンジのダッフルコートだ…何処も濡れてない…元のままだ…。

嵐に遭った痕跡なんて、何処を探しても見付からなかった…。


何よ…これ…?どういう現象なのよ…??


「楽しかったよなーアトラクション♪お前らも参加すりゃ良かったのに!!ロープ1本でハシゴ作っちまったり、三角ほ揚げたり…覚えときゃ将来役立つかもだぞ!!」

「ロープ持って無ェのに教わったってしょうがねェだろよ。」

「だったら買や良いじゃんか!!」

「そんだけの為にかよ!?…まァでも中々楽しめた。ネット登って帆の上まで行く業だとか、プロはやっぱ凄ェよな。」

「ほを揚げた所、写真とってもらったからな!!後でウソップ達に見せてうらやましがらせるんだ♪……そいやお前らは、どこで何してたんだ?」

「俺はだから、遠巻きにして観てただろ!ナミは……そう言えばナミ…お前は、何処で…何してたんだ…??」


「……私……?」



私は……



「……何、してたんだろう…?」


「「はァァ??」」


「お、おい!ナミ!!大丈夫か!?…お前、焦点合ってねェぞ!?」
「おい!!ナミ!!この手見えるか!?――ヒラヒラヒラ~~♪」

「……駄目だルフィ…完璧に放心しちまってる…。」




……私は……


……一体……


……何処で、何を、してたんだろう……?





その39に続】



写真の説明~、観光丸乗船場の桟橋。

シルエットですが、観光丸写ってます。(笑)

連載、後2回…!(汗)
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『何度も廻り合う』その37

2006年02月21日 23時37分46秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





お昼を食べ終った後、予定してた展望室に向う為に、一旦1階に下りて、塔の入場口からエレベーターに乗った。


場内で1番高い塔『ドム・トールン』、展望室はそののっぽな塔の5階に当るらしい。


予想してたより狭く、場内のパノラマを360°見渡せる構造になっていなかったのは残念だったけど(←精々270°位かしら?)、地上80mから見下ろす景色は、絶景としか言い様が無かった。

区切られた窓から覗ける、小さな赤い屋根の街並み。

こんな高さから見ても判る程、澄んだ水した運河。

赤煉瓦の敷詰められたアレキサンダー広場には、塔の黒い大きな影が落ちていた。


天気が好くなってくれて本当に幸い。

お陰で大村湾を取巻く周囲の島々まで、くっきりと観える。


「なァなァ!!ナミィ!!俺達が乗る船が出てくぞ!!!」


身を乗り出し、窓に貼り付いたルフィが、興奮して叫ぶ。

指した先には、紺碧の海を波立てて走ってく、観光丸の雄姿。

そうか、今丁度2時だから、本日3度目の出航って訳ね。


その隣1番奥の窓からは、私達の宿泊してたフォレストヴィラが観えた。

鬱蒼とした森に包まれた湖畔のコテージ、そして更に奥には、場内でも一際瀟洒な建物、パレス・ハウステンボス。


「すっげェなー!!どれもこれもミニチュア、まるでレゴブロックで作ったみてェだな!!」

「確かにこっから観ると、まるきし玩具だよな。」

「……身も蓋も無い感想ね、あんた達。」


「お!?あそこ観てみろよ!!俺達の乗ってたバスが走ってっぞ!!…あ!今バス停に停まった!!客がゾロゾロ降りてく!!」


眼下の、広場へと続く橋を指しながら言う。


「目ェ良いわよねルフィは。私も良い方だと思うけど、あんたには負けるわ。視力5.0位有んじゃないの?」

「本当にそうなら、モンゴルの遊牧民並視力だな。」

「…色んな色した車が走ってるよなー。茶色に緑に青赤黄色…信号みてーだな。」

「青赤黄色いのは多分ホテルの車だと思うわ。場内ホテル宿泊者用の送迎バスなんてのも有るみたいよ。」

「バスより小っせェ、茶色い四角ばった車も、チョコチョコ走ってるよなー。」

「あれはクラシックタクシーね。手を挙げれば、場内の何処からでも乗車出来て、行きたい場所に連れてってくれるんだって。」
「そんな便利な乗りもん有ったのか!?早く乗っちまや良かったのに!!」
「タクシーだからお金が掛かるの!!!だから乗らなかったし、あんたにも言わないでおいたのよ!!!」


ふと、ヒソヒソ声が隣から聞えて来たんで振り向くと、セーラー着た中学生女子と思しき1固まりが、失礼にもこちら指差し笑い合っていた。


どうやら修学旅行御一行様とかち合ってしまったらしく、展望室内はそいつらにほぼ占拠されてしまっていた。

ギャアギャアワイワイ、はっきり言って煩い。

学ラン&黒セーラーで、さながら烏の群れみたい。


そんで笑われてる原因は、彼女達の視線を辿ってって直ぐ解った。

ルフィが頭上に戴いてる、大人気無い船長帽。

…そりゃ確かに、良い年した高校生が、こんなん被って窓にベタッと貼り付いてたら……笑われるのも当然かもだけどさ。


「ルフィ…その船長帽、いいかげん脱いだら?」


近くに寄って耳打ちする。


「ん?何でだァァ??」

「だってあんた、さっきからそれで周りの子達に笑われてんの、気付かないの…?」

「笑いてェ奴は笑わせときゃ良いだろ!?」


少しムッとした顔で返された。


「ルフィの言う通りだ。無視しとけ。…人目気にするなんて、らしくねェぞ。」


ゾロが背後からポンと肩を叩いて来る。


「別に自分が笑われてんなら、気にならないけど…。」


人を小馬鹿にした様な黄色声が益々大きくなる。

ガキって集団になると本当、性質が悪くなるんだから。


いいかげん収まらなくなりそうだったんで、2人を引き摺りさっさとエレベーター乗って下まで降りた。




害した気分を治すには、美しい物を観るのが良いだろと、橋を渡ってアレキサンダー広場に建つ『ギヤマン・ミュージアム』に入館する。


エントランスは吹き抜けになっていて、大理石の床の真上には、世界最大級だっつう豪奢なシャンデリアが飾ってあった。


案内スタッフが説明するには、フランス・バカラ社製で、幅は2.2m、高さは3.5m、重さは750㎏、4,628個もの硝子のパーツが組合されていて、飾り付けた当時、組立てるだけで丸5日も掛かったらしい。

無色透明な骨組みに、赤と緑が鏤められてて、そのあまりの眩さに圧倒された。


「すっげーなァァァ~~~~~!!!」

「豪華絢爛。唯の硝子でも此処まで凝ってると宝飾品並だな。」

「綺麗ねェェ……ガイドブックによると、毎日夕方5時に点灯して、益々麗しく輝かせるらしいわ。」

「へーーー、観たかったなァーーー。何で観に行かなかったんだよ??」

「……あんたがフィギュアヘッドっつう雑貨屋に篭り切りになっちゃって、行く時間が無くなっちゃったからでしょうが……!」
「うわっっ、ヤブヘビ!!」
「口は禍の門だな。」



螺旋階段で2階へ上る。


バロック調に設えられた館内では、技法毎に分類・展示された硝子製品が、穏やかな照明の中で燦然と輝いていた。


中央にはドイツの或る宮殿の喫茶室を模して造られたっつう『黄金の間』。

此処だけロココ様式の優雅な一角には、金と赤とに煌くヴェネチアングラスが38個。

凄いわ……こんな喫茶室に通されたら、ビクビクしてお茶も啜れない。


「ふへーーー!!すっげきれーだなーーー!!どーやったらあんな血みてェに赤く作れんだろーなァーーー!?」
ルフィ近寄るな!!!じっとしてて!!!ステイ!!!ステイ!!!


はしゃいで中入ってこうとしそうなルフィの腕を引張り止める。

怪力出して割られたり、うっかり落とされたりしたら思うと……考えただけでぞっとする。


「んだよォォ!?人ガキみたいにィィ~~~!!するワケ無ェじゃん、そんな事よォォ~~~!!」
「力弱い分だけガキのがマシよ!!!」
「極めて真理だな。」



フロア奥にはドイツの或る宮殿の応接室をモデルにして造られた、『鏡の間』と呼ばれる展示室が在った。

展示されているのは、青いヴェネチアングラス76個。

鏡面になってる壁に嵌め込まれたグラスが反射し、何重にも観えて幻想的だった。

昨日行った磁器の博物館、『ポルセレイン・ミュージアム』に設けて在った、『磁器の間』に似た感じだわね。



一巡した後、また階段上って今度は3階へ行く。

入館した時観たあの大シャンデリアが、この階からだと目と鼻の先に見える。


「なんかこっから手を伸ばせば届きそうだよな~~!!…届くかも??―――よっと!!!」
「手を伸ばすなァァーーーーーーーー!!!!!」


手摺から身を乗り出して触ろうとするルフィを、焦って羽交い絞めにして止めた。

…まったく…腕白なお子ちゃま連れてるお母様方の苦労が、身に沁みて解るわよ。



3階は極めて落とされた照明の中、硝子1点づつを灯りで照らしてあるっつう、今迄観て来た中では異質に感じる展示方法だった。


展示品は全て壁面に嵌め込まれてる。

正面はステンドグラスで彩られ、祭壇が置かれてる。

ぽっかり空いた室内には、席がズラリと並べられてる。

席は左右に分断され、中心が道の様に空けてあった。


「……何だか、教会みてェな造りだな。」


ぼそりと、ゾロが呟く。


「みたいじゃなく、そうみたい。此処は『誓いの間』として、挙式会場としても使用されてるみたいよ。」
「こんな所で結婚式挙げんのかよ!?」
「結構人気有るんだって。パレスなんかでも挙げられるみたい。馬車パレードとか、観光客にまでお披露目イベントなんかも出来たりして、結婚式場としてハウステンボスは、良く利用されてるらしいわ。」


フロアを一巡し、せっかく席が有るんだったら…と、何とはなしに3人並び、座って話した。


「つまり左右を分断してるこの空白スペースは、『バージンロード』を敷く為か。」

「そうゆう事ね。…前の祭壇で牧師さんが聖書を朗読してくれて、新郎新婦が指輪交換して、病める時も健やかなる時も手を取り共に生きて行きますっつって永遠の愛を宣誓する…と。」

「美術館で結婚式挙げるなんて、おんもしれーなァ♪」

「此処で結婚式挙げると、名誉市民として台帳に名前記入して貰えるらしいわよ。」

「それって何かのメリットになんのかよ??」

「……あんた達、ガタイは良いし、気立ても悪くはないんだからさ。将来良いお嫁さん貰える様、ルフィはもっと落ち着きを持って、ゾロは仏頂面治してついでにファッションセンスも正す様……ちょっとは先の事考えて生きてきなさいよ。」

「んあ??良いヨメさん???」

「……んだよ?いきなり…。」

「姉として、妹としての、心からの忠告。」


――最後のね。


「……だったら俺も忠告してやるよ。おめェは見てくれ結構良いんだから、ちったァその果てしなく救い様の無ェ我儘を治せ!!振りだけでも治せ!!そうすりゃ騙される馬鹿も居るさ!!ついでに、もっと素直に甘えられる様なりやがれっっ!!!」

「な………どさくさ紛れに言うだけ言ってくれるじゃないのさっっ!!」
「見てくれ良くてもこんな性格可愛くねェと行き遅れちまうんじゃねェかって、兄貴分としちゃ心配なんだよ!!」

「安心しろってナミ!!いざとなったら俺かゾロがもらってやっから♪」


―――は??


急にしじまが舞い降りる…。


のほほんと笑ってるルフィの隣では、目を点にしたゾロが居た。


「何故そこで俺まで含めんだよおめェは!!?」
「ゾロはもらいたくねーのかーー??」
「ってか何!?その私が行き遅れる事を前提にした言い様は!!?」
「ナミは素直じゃねェからな♪行き遅れるに決まってら♪♪」
「ヘラヘラ笑って失礼言うな!!!私がちょぉっとその気でフェロモン垂れ流したら、たちまち引手数多なんだからね!!!」
「安心しろよ、ナミ。ラブコックが最終キープに居るんだ。嫁に行けねェって事は無いだろうさ。」
「あ、そっか!!居たなー、サンジも!良かったなー、ナミ♪将来思ったよか暗くなさそうだぞ♪」
誰の将来が『思ったよか暗くない』っつうのよ!?私の将来はプラズマTV画面並にくっきり明るいわよ!!!真空管TV並に薄ぼんやりはっきりしてないのはあんたとゾロの将来の方でしょう!!?――ってか何で私の将来気に懸けられなきゃいけないのよもォォ~~~~!!!」



大声で喚いてる所に、また修学旅行の1グループがやって来た。

静寂に包まれてた(←そうでもないか…)館内が、一気に賑やかになる。



時間的にも3時を切ったし…と、次に予定してる『大航海体験館』に移動する事にした。




広場を出て、ビネンスタッドバス停から、バスに乗ってスパーケンブルグまで行く。

この時間になると場内もそれなりに賑やか、何校かの修学旅行が重なってるのか、様々な制服が街を闊歩していた。

1人用の自転車に3人も乗って、港街前方デッキをウロチョロウロチョロ…何時か車に轢かれそうで、見ていて怖い。


「不思議だよなーー。」


前の席でまた、車窓にベタッと貼り付いた姿勢のルフィが呟く。


「何が不思議なの?ルフィ??」

「今日ここまで歩いて来て、俺、1回も水たまり見てねェ。昨夜あんなに雨降ったのに、不思議じゃねェ?」

「…言われてみればそうだな。」

「道の多くが煉瓦で舗装してあるからよ。コンクリートと違って、雨水を地中に浸透させ易いからだと思う。」

「へ~~~??解んねェけど、レンガってすげェんだなァ~~~。」

「成る程、景観上の理由からだけじゃなかったんだな。」




スパーケンブルグバス停に着く。

『大航海体験館』は、丁度その正面に在った。

海上に浮ぶシミュレーションシアター。

スクリーンに映像を映して、それに合せて席を振動させ、船の揺れを体感させる。


「要するにディ○ニーの『スター○アーズ』みてェなヤツだな?」

「そうだけど……本当に身も蓋も無い例えするわね、ルフィ。」


映像フィルムは2本。

16世紀末にオランダから東洋を目指して航海をして来た、デ・リーフデ号の記録を再現した『デ・リーフデ号の大航海』。

それと17世紀中頃、オランダから徳川将軍に献上された、オランダ灯篭を巡る話を再現した『将軍への贈り物~海を渡ったシャンデリア』。

この2本を交互に上映してるって事だった。



私達は『デ・リーフデ号の大航海』を上映する時間に入館したらしかった。


薄暗い館内に、映画館みたく前から後ろへ、段々と高く並べられた観客席。

振動がより大きい方が楽しいだろうと、1番後ろの左端から、ルフィ・私・ゾロの順で座った。


「『デ・リーフデ号』って、オレンジ広場前に繋留されてる船だろ?」

「そうよ、ゾロ。日本に初めて着いたオランダ船の話って事ね。」

「あの海賊船が出て来る映画か!?」

「……だから海賊船じゃないってばルフィ……もう、いいわ。呼びたいように呼べば?」



或る程度観客が集まり着席した所で、館内の照明がいっぺんに消された。

闇の中、正面の大型スクリーン左端に、白い男の顔がヌッと浮き上る。

案内役キャラ、『ウィリアム・アダムス(三浦按針)』らしかった。


彼の語りで紹介される話――




1598年、5隻の東洋遠征船団が、日本を目指してオランダを出航した。

いざ目指そう、黄金の国『ジパング』。


此処から客席が振動し出した。


…ふーん…海上にわざわざ浮かべただけあって、波の動きがリアルに再現されてるわ。

何だか本当に、船に乗って揺られてる気分。


暫くは平穏な波だった。


しかし船はあらゆる苦難に襲われて行く。

突然の暴風雨、荒狂う波――って、ちょ、ちょっと待ってっっ!!!


これ…結構揺れない…!!?


「うわっっ!!!すっげェェ~~~~!!!席が真横に傾いてっぞこれ!!!」
「こ、これは…ひょっとして、今迄で1番激しいアミューズメントじゃねェか…!?」


上下左右前後と、映像に合せて振動する座席。

ローリング(横揺れ)とピッチング(縦揺れ)が連続して続く。

最大揺れ時、ルフィの言う通り、席はほぼ真横になるまで傾いた。


これは…乗り物酔いし易い人、きついかも…!


照明と音響も凄い迫力。

雷鳴が本当に頭上で轟いてる感じ。

映像の中の帆船が1隻、また1隻…と、どんどん壊れて沈んで行った。




――何とかしろ!!航海士っっ!!!




…………え……?




「今、何か言ったルフィ!?」

「えーーー!?何か言ったかナミィーーー!!?」


激しい振動ですっかりハイになってるルフィが、浮れ声して叫ぶ。


「私じゃなくって!!今、あんた、私に何か言って来たでしょォォ!!?」

「はァァ!!?俺…ナミに何も言ってねェぞォォォ!!?」




――しっかりしやがれ!!てめェが指示出さなきゃ、皆沈んじまうんだぞ!!!




「……ゾロ!?何か言ったァァ…!!?」

「は!?…んだよ、いきなり!?何も言ってねェだろがっっ!!!」




……だ、だって今、確かに…!!




荒れる波の中、デ・リーフデ号を残して他4隻は、全て大破してしまった。


唯一残ったデ・リーフデ号は、豊後の国(大分)、臼杵湾に漂着した――って所で終幕。


上映は終了し、振動も止まって、館内の照明は明るくなった。




「面白かったな♪♪」

「ああ、中々面白かった。…他施設が地味でのほほんとしてる分、新鮮に感じられたっつか。」

「…………。」


館の外へ出て、広場に並んでた白いテラス席に座って休憩した。


目の前にはデ・リーフデ号……話の中とは違い、港に繋がれのんびり穏やかに、海上で浮んでた。

強い潮風に煽られ、マストが揺らいでる。


…こんな小さい帆船で…よくも転覆しないで、荒波越えて行けたもんだと、しみじみ感心してしまう。



風が強いお陰で、雲はすっかり取払われていた。

気持ち良い位の青空……帰る時にお天気になられても、何か悔しいけど。


「そうだなーー…90点くれェは付けてやっても良いな!!」

「お前そりゃ点やり過ぎだって。他の場所行きゃ、この程度の施設幾らでも在るしな。」

「そんでもメチャクチャ楽しかった!!本当に船乗って航海してる気がしたもんな!!……なつかしかったよなァーー…。」

「………ああ、懐かしかったな。」

「な!!ナミも、なつかしかったよな!?」

「んなわきゃ有るか!!海を知らない都会っ子が!!!」




遮る物無く、何処までも続く海原。

水平線、沈む夕陽、昇る朝陽。

嵐、うねる波、翻弄される小さな帆船。

一心不乱に越えて、漕いで、また漕いで。

漸く、薄っすらと見えて来る、島の影……



………懐かしくなんて、ない。



有得っこ無いんだからっっ。





その38に続】




写真の説明~、春なんですが、しかも懐かしき気球、ルフティー・バルーンからなんですが…

まぁ、こんな感じで、展望台からは観えますよ、と。
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『何度も廻り合う』その36

2006年02月18日 10時22分21秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
…昨日の夜、何か妙な投稿文御覧になられた方は居られますかね…?
もしもいらっしゃいましたら――幻覚ですんで、どうか忘れて下さいませ。(汗)
いや…お見苦しいの見せてしまって済みません。(苦笑)

↓そんな訳で何時もの如く、前回の続きです。




ホテルの車で、ホテル・ヨーロッパまで送って貰う。


既に精算は済ませてあるので、フロントでその証明書と、コテージの鍵を渡した。


金色した重たいキータッグの付いた鍵ともお別れ。

もう、あの湖畔のコテージには戻れないのね。


赤煉瓦の壁、ドアを開けて中へ入れば、広々としたリビングルーム。

床はフローリング、暖かい色した絨毯が敷かれてる。


ルフィお気に入りのロッキングチェア。

居る間、あんだけ力いっぱい揺らしてて、よくも壊れなかったもんだわね。


ゾロお気に入りの長ソファ。

ソファとしてより、殆どベッドとして使用されてたっけ。


窓に背を向けた肘掛ソファは、私の指定席。

肘掛部分がなだらかにカーブしてて、肘が楽に掛けられた。


大きく開く窓を出れば、湖を眺めるバルコニー。

身を乗り出してると、すかさず白鳥が側に寄って来て、餌を強請られ困ったのよね。

今度泊る事が有ったら、お麩でも持って来ようかな。


窓から日が射すと、湖の波紋が白い壁に反射して、幻想的に揺らいで見えた。


階段上って2階には、ベッドルームが2部屋も在って。

TVの有る方が良いんだと、ルフィが散々駄々を捏ねた。

…その態度があんま子供染みてて、昔と変らないままだったもんだから、つい譲ってしまったのよね。


3人してお茶飲んで寛いで……楽しかったなー……。


「気持ち良いコテージだったよな♪」


フロント後ろの椅子で、荷物整理しながら思い出に耽ってた私の肩を、ルフィがぽんと叩いて言う。


「素敵だったわよねェ。あんな家に住めたらなァ…。」

「こっそり住んじまうとか!」

「それじゃ犯罪じゃない。」

「表札出して『ここは俺の家ー!』なんてな♪…1けんくれェ見逃してくんねーかな??」

「おめェが言うと冗談に聞こえなくて恐ェよ。」



荷物が半端で無く多かった私とルフィは、ホテルから宅急便で送る事にした。

お土産いっぱい買っても大丈夫なよう、家で1番大きなショルダーバッグ持って来たのに…全部詰めたらギリギリのパンパン、チャックが壊れそうで冷やりとした。

四角形だったバッグがボールみたいに丸くなっちゃって…こんな事なら3日分も着替え持って来んじゃなかったわ。



小っさいディバッグ1ヶしか持って来なかったルフィはもっと深刻だった。(←本人ちっとも深刻そうじゃなかったけど)

詰める前から許容量の2倍は有るって、見ただけで明らかだったし。

なら食っちまえば問題無ェって、その場で店広げようとしたんで慌てて止めた。(←つまり土産の殆どが自分用の食い物って事なのね)

結局、箱買って詰めるよう、ゾロと2人で説得した。


「ちゃんと必要な物は手元に持つのよ!」

「おう!!ちゃんとキャプテンハットと短剣は手に持ったぞ!!」

「いや、むしろそれは送った方が良いだろよ…。」

「ゾロは送んなくて良いのかァ?」

「ああ、送る程荷物無ェし。」


確かに、ゾロの黒いディバッグは、膨らみ具合が来た時と殆ど変ってない。

荷物整理に奮闘する私とルフィを尻目に、涼しい顔して突っ立っている。


「お土産、全然買わなかったの?」

「あれ?でもしょーちゅー1ビン買ってただろ??」

「買って即送っちまったよ。割っちゃ拙いからな。」

「へー、ナミと同じだな。」


――スカーン!!!


「言うなって約束したじゃないさ!!!」

「…わ…悪ィ…つい…口がすべった…!」

「なんだ、結局てめェも酒買ったのかよ?自称健全女子高生!」
「家への土産よ!!!何か文句有る!!?」
「べぇぇつぅにぃぃ~。」


にやにやァァと意地悪く笑われた……だから言わないで欲しかったっつうのにっっ。


「後買ったのはクリームチーズ1ヶ。それ以外は下着と財布と航空券。身軽なもんだぜ。」

「カッコ良いぞゾロ!!シンプル・イズ・ベストだな!!」
「でも一緒に旅してて、面白味の無いタイプよね。」
「煩ェ、ほっとけ。」


宅急便の受付はフロントの後ろ…館内右奥のカウンターで行っていた。

ルフィと一緒に荷物を預け、言葉通りに肩の荷を降ろす。

はー…これで帰り道、楽にしてられるわァァ。


「そう言えば…ルフィはカメラと財布と帰りの航空券、ちゃんと手元に持ってるんでしょうね?」

「あ!!……いけね!そっちは忘れて預けちまった!!」
「早く取り戻しに行って来いっっ!!!」
「はいィィっっ!!!」

「……何処までもお約束通りな奴だな。」




重厚なホテル・ヨーロッパの玄関を、後ろ髪引かれる思いで潜る。


玄関を出る時、シルクハットを被ったベルマンが、笑顔で送り出してくれた。


嗚呼、この優雅な赤煉瓦造りの、超高級リゾートホテルともお別れなのね。

玄関上に飾られた特大のクリスマスリースが滲んで見えた…なんちて。




外へ出てそのまま真直ぐ、ホテル前に建つ売店に寄る。

真新しい風の小じんまりした店、『ラフレシール』。


「何だ?ケーキ屋か?」

「チーズケーキ専門店よ。此処のキャラメルチーズケーキが美味しいって評判なんだって。ナンジャタウンで開かれた『全国チーズケーキ博覧会』で1位に選ばれたらしいわ。試食が出てれば食べてみて…美味しかったら買ってこうかなと思ってv」
「全国で1位に選ばれたチーズケーキィィ!!?買う!!!俺も買って食う!!!」

「…って荷物送ったのに、未だ買う気かよ!?」

「だって全国で1位のチーズケーキがどんなもんか…ちょっと気になるじゃない?」


タンテ・アニーのイメージカラーが緑色なら、此処ラフレシールのそれは明るい卵色だった。

庇も看板も、内装にまで卵色が溢れてて。

ショーケースの中には3種類のチーズケーキが陳列されていた。(←季節によって変るらしい)


他にもキャラメル風味のパイクッキーやら紅茶やら…でも正直バリエーション少ないかな。


ショーケース前に、細かく賽の目に切られたキャラメルチーズケーキが試食として出されてたんで、1口貰って食べてみた。


――あ……美味しい!すっごく美味しいかも…!!


チーズケーキなんだけど、キャラメルの風味が香ばしく効いてて、これならチーズ苦手な人でも食べられそう。

まったりとクリーミィーだから、きっと紅茶に良く合うわ。

一緒に口に含んだら、クリームみたいに蕩けてくでしょうね。


うんめェェ~~~!!!これメチャ美味ェじゃんかっっ!!!こんな美味ェチーズケーキ、俺初めて食べたぞっっ!!!」

「…あんた、ずっとそれしか言ってないし。」



背後からゾロに皮肉言われたりもしたんだけど、ルフィと2人で結局買ってく事にした。


ただ1つ問題が有って…此処のチーズケーキは冷凍タイプらしく、長時間常温で置いとくとドロドロに溶けちゃうって事だった。


だから送る時はクール宅急便で、召し上がる時は解凍して下さいよと。


少しでも代金浮かせる為に、私とルフィの分を一緒にして、私の家に送る事にした。

勿論掛かる代金は折半で!

土産代だけじゃなく、運送代も馬鹿にならないわねェ~。



タンテ・アニー同様、ケーキはカット売りでも販売してて、店の外のテラス席で食べたり、買ってってホテルの部屋で食べたりも出来るらしかった。




1時回ってお腹も空いて来たんで、昼食にする事にした。

「肉!!」と言うルフィの希望と、「米!」と言うゾロの希望を同時に叶える為、ユトレヒト地区ドムトールン下2階に在る韓国料理屋『ソウル』を選択する。


比較的手狭な店内だったけど、平日で時間がズレてたのが良かったのか、ガラガラに空いていて驚いた。


ウェイトレスさんに案内されて、奥の窓際席に着く。

ゾロと隣り合って、ルフィは1人前に。(←隣り座ると、食い散らかされて大変だから)

窓からはのどかに運河を進むカナルクルーザーを見下ろせた。

楼蘭なんかと同様、水以外にもお茶が無料でサービスされて、嬉しかった。


「かん国料理っつったら焼肉だろ!?俺、焼肉!!焼肉決定な!!」
「韓国料理じゃなくても、てめェは肉しか選ぼうとしねェだろうが。」
「ルフィ、あんた手持ちの金少ないんでしょ?だったらお安い昼定食にしときなさい!」
「えーーー!?……昼定食ってどんなんだよォ~~~?」


メニュー写真を抱えて眺めて熟考に入る。



店入ったら自分が1番にメニューを開く。

どうやらそれがルフィの中では当然になってるらしい。

旅行中、私やゾロがメニューを開いて…なんて殆ど無かった。

ルフィが開いてるメニューを、横から逆から覗く感じ。

今更だけど自己中極まりない奴……けど不思議と憎めない、得な性分よねェ。



「…う~~ん…ビビンバ定食ってのが有るけど…これって美味ェのか?」


メニューに載ってる写真を指して聞いて来る。


「美味しいって評判らしいわよ。何でも韓国人からも本場の味に近いって人気が有るらしいし。…ってな訳で、私はこの1,000円の『石鍋ビビンバ定食』にしよっかな!」

「じゃあ俺は1,500円の『ユッケビビンバ定食』だ!!」

「んじゃ俺は間を取って、1,200円の『特製石鍋定食』な。」

「…何で借金持ちのあんたらのが、高いメニュー選んでんのよ?」


愛想良く注文を聞き、ウェイトレスさんが厨房に戻ってく。



「さてと…料理が来るまでの間、これからの予定について話したいんだけど、聞いてくれる?」

「おー、頼むぜェ、有能秘書。」


メモを広げる私に、ゾロが茶々を入れる。

気にせず、コースを読み上げた。


「食べ終わったら先ず、此処の展望台に昇ろうと思うの。そんで次はアレキサンダー広場に在るスタッドハウスまで徒歩で移動、館内の硝子の美術館『ギヤマン・ミュージアム』を見学。その次はバスに乗ってスパーケンブルグまで移動、『大航海体験館』へ。で、最後は帆船『観光丸』に乗船。」

「船!!やっとあの海賊船乗してくれんのか!?」

「だから海賊船じゃなくて『観光丸』だってば。」

「何だか昨日と較べてゆとり有る予定に感じるが…どうかしちまったのか?」

「……別に。昨日大方廻ったし。もう時間も無い事だしなァと思って。」

「まァ、確かにな。此処出たら後、3時間と少しってトコか。」

「今言った中で行きたくない場所とか有るなら抜かすわ。逆に、行きたい場所が有れば追加する。…何か希望有る?」

「じゃ、『カナリカフェ』とか言うのに乗りてェ!!」
「それは却下!」
「ええ!?言ってる事と違うじゃねェか!?」
「手持ち金が残り少ないってのに、金のかかる遊びしようとすな!!!」

「行きたくねェ場所とか、行きてェ場所とか聞かれてもな…詳しく知らねェし…良いさ、それで。」

「だいこーかい何とかって、何だ??」

「名前通り、映像や振動なんかで、航海を体感させるシアターみたいだけど。」

「航海を体感かーー…面白そうだな♪俺もそれで良いぞ!」

「じゃあ、このコースで決定ね!」



話してる間にビビンバ定食がやって来た。

器になってる石鍋は、高温で熱してあるので、手を触れない様にと注意される。


…確かに物凄く熱そう…じゅうじゅう音出てるし。


私のは御飯の上に、4種類のナムルと生卵が乗せられていた。

ゾロのはナムル6種類、生卵、加えてミンチ。

ルフィなんか、加えて牛刺……贅沢者め。

3人共に、辛くて真っ赤な大根のキムチ、わかめスープがセットで付いていた。

後は味付け用の辛味噌…全部入れると流石に辛いから、お好みに調節してどうぞと説明を受ける。

辛党のゾロはまんま全部入れてしまった……辛そうっっ。


「あのさ、石鍋ビビンバの美味しい食べ方教えたげよっか?」

「「美味しい食べ方??」」

「御飯を掻き混ぜる時に、底の部分を少し残しておくの。そうすればお焦げが出来るでしょ?」

「ああ、成る程な。」
「よし!底を残すんだな!?」


中央乗ってる生卵を、箸で潰して、底を残し、良く掻き混ぜる。

卵と具と御飯が絡んで、熱々の卵混ぜ御飯が出来上がった。

食べてみると、辛味噌の辛味とナムルの酸味が程好く馴染んでて、美味しいのなんの!


「…ハフハフ…!!……ふへェ!!!ふへェはァ~~~!!!ははごはへほはんはは…!!!」

「…そりゃ卵掛け御飯だろうが。」

「でも本当に美味しいvこの辛味噌、辛いんだけど、それだけじゃなく甘味も感じられるって言うか…入れた事によって、美味しさが増してるわァァvv」

「キムチも美味ェな。うん、イケる!」

「お!おほげ食っははふえェェ!!…はひはひひへへ、へんべーみへーはほ♪♪」


石鍋の熱で、御飯が焦げて張り付き、煎餅の様に香ばしく、パリパリになっていた。


「お焦げは残しといて、最後にわかめスープを注いで食べると良いわよ。そうするとお焦げがふやけて、雑炊みたくなってまた美味しいのv」

「雑炊か…そりゃ良いな!」

「ハフフ…!!…ふひ!はいほはほーふひはは!ふへェほはー、ほーふひほ♪♪」



熱した石鍋は中々冷めない。

20分経っても…30分経っても…スープを注いでも温かく、最後まで熱々のまま、美味しく戴けた。





その37に続】





写真の説明~、ホテルヨーロッパの玄関。

回転扉は大概の場合、安全の為閉じられてる。

所謂、雰囲気出す為の演出??


クリスマスには観ての通り、巨大で煌びやかなクリスマスリースが飾られます。

あ…ビビンバの美味しい食べ方は、何処ぞのガイドブックからの受け売りです。(笑)

でもこうして食べると本当に美味しいですよv
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『何度も廻り合う』その35

2006年02月16日 22時50分51秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





ギリギリ時間内で自転車を返却した後、ゾロとコテージで合流する為に、土産抱えてブルーケレンからクラシックバスに乗って行く事にした。

丁度入国して来た団体客と行き会い、車内は朝とは打って変った混雑振り。

それでもルフィは素早く1番前の席を確保して座る。

その後ろに座ったと同時にバスが発車、ガタゴト揺れながら、石畳の道を進み出した。

揺れるったってルフィの運転から比較すれば雲泥の差だわ。

滑らかに流れてく車窓からの景色を眺めつつ、その快適な乗り心地にほっとする。


「バスは良いわね……安全で、ちっとも揺れなくて。」

「そうかー?結構ゆれてると思うけどなァ??」

「……あんたの運転に較べりゃ天と地よ……この場合、勿論『天』はバスで、『地』はあんた………っつかねェ!!死ぬかと思ったわよ!!!はっきし言って!!!!
「ナミが5分以内でとう着しろっつうから、すっ飛ばして走ってやったんじゃねェか。」
だからってブレーキ1回も踏まずに爆走する!!?自転車じゃなくて、ジェットコースターにでも乗ったのかと思ったわよ!!!……本当に…よく、生きて辿り着けたものかと…ああ、生きてるって素晴しい…命が有るって、何て素敵な事なんだろう…!!」
「おんもしろかったよなァァ~~~♪俺、久々に思っ切し自転車漕いだぜ!!どうせなら初日っから乗り回したかったよなァ~~~。そうすりゃもっと色々廻れたかもしんねーし。…何でもっと早くに教えてくれなかったんだ??」

「え?そ、それは……最終日の予定に組み込んでたから…。」

「予定なんて変えりゃ良いじゃん。2日目に持って来てりゃ、1日中乗って廻れたぜ?」
「それじゃお金掛かっちゃうでしょ!?3時間超えたら延滞金付くんだから!!」
「良いじゃねェか、少しくれェ付いても。その分移動が楽になるんなら悪くねェ。」
「い、1日目はお茶飲んでイベント観て廻って、2日目はアミューズメント観て廻って、3日目は自転車借りて場内観て廻ろうって、決めておいたのよ!!」
「だから何で決めた通りに動かなきゃなんねェんだ?その場で行きてェ思ったトコ行って、やりてェ思った事やった方が楽しいんじゃねェか?」
「それじゃ効率良く全部廻れないじゃない!!」
「何で全部廻る必要有んだよ?廻れる訳無ェじゃん、2日ちょいで、こんな広いトコ。」
「あんたが全部廻りたいって言ったから、無理してでも行こうとしたんでしょォ!?」
「…まァ、そうだけどよォ~……廻り切れねェんだったら、好きなトコだけ行ったり、してたりした方が良かったんじゃねェかな~なんてな。」


無邪気に、ただ自分の考えをぶつけてるだけなのは解ってる。

ルフィの瞳に責めてる色は見えないし。

だけど……


「ルフィは……楽しくなかったんだ…今回の旅。」

「んん?…そんな事無ェぞ?すっげー楽しかったに決まってんじゃねェか♪」

「…でも、強引に引き摺られて、好きな様に廻れなくて、がっかりしてんでしょ?」



きっとゾロも、そう思ってんだ。

引き回されて、疲れるだけだって。

こんな所ちっとも面白くねェ、早く帰って寝ちまいてェなァって。

だから付いて来なかったんだ、いいかげん付き合い切れねェつって。


最初から、楽しみにしてたのは、自分だけだったんだわ。

1ヶ月前からガイドブック観たり、HP観たりして予定練ってたのに。

これでも一生懸命、2人が楽しめそうなコース考えたのに。

多分……3人で行く、最後の旅になるだろうからって。


だけど無駄だったんだ、全部!

誘うんじゃなかった…楽しんで貰えないなら、旅行なんかすんじゃなかった!!



「おい、ナミ。さっきからおどろ線背負ってて暗ェぞ。車酔いかァ?」

「……悪かったわね……無理に引き回しちゃって……せめてもっと余裕有るコース考えてたら、ゾロも付き合う位はしてくれてたかしらね…。」

「ゾロ??……充分付き合ってる様に見えるけどなァ~。」
「付き合ってくれてないでしょ!?事実、今!!」

「この3日間、修行してるあいつ見たか?」

「え?……そう言われると……見てないよな……」

「あいつ、ひまんなると修行する奴なのに。修学旅行中なんか、皆して部屋でTV観てる横で腹筋やってて、サンジがうっとうしいっつってけってたもんな。」


…確かに、普段はTPO全く気にせず、ちょっとでも間が空きゃ、竹刀振り回したり、指1本で腕立て伏せするよな奴だけどさ。


「竹刀持って来て無いし、単に疲れてやる気起きなかったんじゃ?」

「夜ねる前には、部屋でちゃんと腕立てとかやってたんだ、実は。けど今回の旅行で、ナミの前じゃ1度もしてねェだろ?」

「ゾロなりに、私を気遣ってくれてるって事…?」


……でも結局、嫌々じゃあ……


「ゾロは素直じゃねェけど、俺と一緒で、嫌な事はぜってェしねェさ。だから、好きで付き合ってるとしか、思えねェんだけどなァ。」


ルフィの言う通りだとは、思う。

こいつら、基本的に自分の気持ちに忠実と言うか。

嫌な事頼まれれば、たとえ大統領からだとしても、きっぱり拒否する様な奴等だし。



つらつら考えてて、妙に視線がチクチクと刺さって来た。

正面見るとルフィが、シートからじぃぃっと真顔で、こっちを覗き込んでいる。



「な…何?何なの??」

「なァ………おめェ、また胸でかくなっただろ?」


無遠慮にしげしげと人の胸を見詰る。


「いや、さっき思っ切し背中に抱き付いてただろ?コート着てる上からでも判るなんて、すっげーデカパイだよなァ~って…うはははははははははははははははは…♪♪」


――ゴインッッ!!!!


「……真剣気に懸けた、私が馬鹿だったわ…!!!」




バスは目指してるスパーケンブルグに到着する手前で、何故か途中停車してしまった。

不思議に思い車窓から外を見ると、前でハーフェン橋が大きく跳ね上がっていた。


「ナ!!ナミ!!何やってんだあれ!?道が、橋が…上に持ち上がっちまってっぞ!!?」

「カナルクルーザーが橋の下通り抜けてくでしょ?あのクルーザーが通行出来る様、橋が高く持ち上がる仕組になってる訳!」
「ええ!?あの船、海出ちまえるのか!?俺達が乗ったのは出なかったじゃねェか!?」

「あれは通常のカナルクルーザーじゃなくて、『カナルカフェ』っつう水門巡りのコースを行くクルーザーよ。カナルカフェって言うのは、クルーザーの中でお茶やお酒を飲んだりしながら遊覧するってもので、中でも水門巡りコースを選ぶと、ああやって水門から海まで出て行けるみたいよ。」
「んな楽しそうなもん有ったんなら何で教えてくんなかったんだよ!!?乗りたかったぞ!!!俺は!!!」

「お金が2,000円掛かるし、予約も必要だし…こうゆう優雅な乗物、あんた達には不似合いだと思ったからよ!」


乗客の多くはカップルだって聞いてた。

所要時間40分掛けて、少グループでゆったりとお茶飲みつつ遊覧。

そんな中にルフィが入ってったら、ロマンチックな雰囲気ぶち壊して、他のお客から白い目で見られるの確実だもの。


「乗りたかった……すっげー乗りたかったのに…!!」


窓に張付きクルーザー眺め、ルフィはさめざめと悔し涙を流した。


「…もう少しあんたが落ち着きの有る大人になって、また此処に来る事が有ったら乗せてあげるわよ。」



船が通った後、ハーフェン橋はまたゆっくりと元に戻り、今度は左横のスワン橋が左右に開いて跳ね上った。

橋の横に在った信号が青に変り、通行を停めてた遮断機が上がると、一斉に人や車が道に流れる。

私達が乗ってたバスも橋を渡り、ホテルヨーロッパ前のレンブラント通りを走ってった。


「運河から海にって事は…ここの運河って海とつながってんのか?」


見えるトコまで橋を観送りながら、ルフィが聞いて来る。


「そうよ。そうやって常に水を入替えて、運河の水の澱みを防いでんだって。だから此処の運河に流れてんのは海水なの。」

「へーーー…って事は、なめたらしょっぱいんだな。」




パレスに続く坂道手前、終点スパーケンブルグでバスは停まった。


着いた時には約束の時刻を数分過ぎていた。


とはいえゾロの事、どうせ未だ寝てんじゃないかと思い、特に慌てずルフィと2人、フォレストパークまでの石段をゆっくりと上った。




泊ってるコテージの前まで行くと……予想を裏切りゾロは、起きて扉寄っ掛かり、地べたに足投げ出して待っていた。


近付いた瞬間、如何にも不機嫌そうに顔を上げ、じろりと睨まれる。


――あっっ、眉間に皺寄ってる……待たされて怒ってるわね、こりゃ。


「遅ェ。10分遅刻だぞ。」

「悪ィ悪ィ♪途中でバスが信号待ちしちまったんだよ♪」

「…随分また買い込んだな、ルフィ。バッグの中全部詰めらんねェんじゃねェのか?」

「任せろ!!気合で入るさ!!!」


両手に提げた土産袋を、ゾロに向って得意気に、高々と持上げて見せる。


「バッグに気合求めたってしょうがねェだろ。」

「ジーパンはもう乾いたの?」


座ってる傍まで近付き言う。

見下ろされるのを嫌ってか、腰に付いた土埃をパンと手で叩き、ゾロが立ち上がった。


「いや、未だ完全に乾いちゃいねェ。…ドライヤー当てたりしたんだけどな。」


それで地べた座って待ってたんじゃ、さぞ冷たかったろうに。


「内側にタオル入れて水吸わせた?」

「いや…してねェ。そのまんま干してた。」
「それじゃ乾く訳無いじゃない、馬鹿。」

「まァいいさ。それこそ後は気合で乾かす。その内体温で乾くだろ。」

「…私のセーター貸したげるから、腰ん所に巻いといたら?」

「濡らしちまっちゃ悪ィからいいって……っつか、さっきから何妙に優しいんだよ!?気持ち悪ィな!!
「着てて冷たくて寒いんじゃないかって心配してあげてんの!!悪い!?」



ふと黙り、顔を近付け、じぃーーっと見詰られる。


「ひょっとして……済まないとでも感じてんのか?」

「…す、済まないって何が…??」

「楽しかったか?ルフィと2人で観て廻って。」

「た、楽しかったけど?」

「おう!!楽しかったよなナミ!!2人乗りの自転車乗って、グルグル場内廻ってよ!!!」

「へェェ…そりゃあ、楽しく廻れて良かったな。」

「そ…そうだわね…。」


――だから何でそんな仏頂面して、人の顔凝視してくんのよっっ!?


「…ゾロが居なくてさびしがってはいたけどな、ナミは!」
「寂しがってなんかなかったわよっっ!!!」

「へェェェ…?」


意外そうな、でも少し嬉しそうに、一瞬にやけた。


……こいつでも置いてかれて、少しは寂しく感じてたのかしら?



「……良く眠れた?ゾロ。」

「…何でんな事聞いて来んだよ?」

「……別に……聞いちゃいけない事だった?」

「………そんな訳無ェだろ。」


気拙い……ひたすら気拙い沈黙が流れる。


「………あのさ……後4時間もしたら、帰っちゃうんだし…こっから先は、3人で廻ろう?」


――最後くらい、喧嘩しないで。


「……そういう約束だしな。その積りだ。」


顔を見合わせ、微笑んだ。


たったの3時間しか離れてなかったのに、凄く懐かしく感じた。




名残惜しくもチェックアウト。

荷物が多過ぎて纏め切れなかったので、フロントに電話して車で迎えに来て貰う事にした。



程無くして、チェックイン時と同じ、青いホテル車が到着。


迎えに来てくれたホテルスタッフの方に頼んで、コテージの前で3人、記念に写真を撮って貰う事にした。


3人横並びは不吉だっつうなら、縦並びはどうかとのルフィ案を採用し、入口前に立ってる緑の葉に赤い実付けた木の下で、3人縦に重なりポーズを取る。


1番下にゾロが屈んで、その肩の上に私が乗り、その私の肩の上乗って、船長帽被ったルフィが右手に短剣掲げ、ハイ、チーズ!


…まるでピサの斜塔よろしく傾き、グラグラ揺れてバランス取るのに大変だった。

カメラ構えたホテルスタッフの方が笑ってしまい、シャッター切るのに時間掛かるし。

ルフィは雄叫び上げて暴れるし、私は重いと文句を言うし、ゾロは照れて顔隠そうとするし。



崩れる寸前シャッターが切られ、何とか無事に記念撮影を終える事が出来た。






その36に続】





写真の説明~、泊ったコテージの前で。

緑の葉っぱに赤い実の生った木…南天に似た様なこの木の名前は何でしょか??(汗)

クリスマスシーズンに合ってて良いよなと思った訳でv
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『何度も廻り合う』その34

2006年02月15日 23時44分48秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





人気のお菓子屋さん、『タンテ・アニー』のイメージカラーは、濃い緑らしい。

看板から庇から包装用の袋までもが、その色で統一されている。

道で擦違った修学旅行生は、大抵この店の緑色した袋を提げていた。


ハウステンボスの土産店の中では知名度が随一、その理由は美味しいからっつうのも勿論だろうけど、営業の熱心さにも有るんじゃないかなァと思えた。

店の前で配ってるだけでなく、店内に陳列されてる殆どの菓子が、試食出来る様になっている。

ルフィは大喜びだ、端から端まで食って食って食い捲り…それでも店員さんはスマイル振り撒き、食べてる菓子の説明を熱心にしている。

カウンターを奥まで長く設けて、その下に商品を並べる、というのは上手いやり方だなと感心してしまった。

これならお客は手に取り悩む間も無く、目の前に居る店員さんに渡してしまい易い。

事実、ルフィもセールス・トークに乗せられ、既に4つも買わされていた。


「あんたね…人に借金してるってのに、よくそんなに買う余裕有るわね。」

「だってよォ~!どれもメチャ美味ェんだぜェ~!!このチョコバナナケーキなんか、バナナとチョコがぜつみょーにまっちんぐしてて最高に美味ェって!!」
「『ショコラーデ・バナーネン』です、お客様v」

「この…フェー…フェー…フェー??っつう、レアチーズケーキも、あんまチーズくさくなくてクリーミィでうっめェんだァ!!」
「『フェーセ・カースタート』です、お客様v」

「チョコ味のマドレーヌも美味かった!!1ヶづつ包んであっから、切り分ける手間が無ェのも良いよな!!」
「『ショコラーデ・ケイク』です、お客様v」

「そういやな!外でもらったあのチーズケーキは、カスケーキっつう名前らしいぞ!!あれも実に美味かったよな!!」
「『カース・ケイク』です、お客様v」

「……つまり、その4つを買わされた訳ね、あんた。」


私も姉のノジコと、ロビン先生に頼まれてた分、『カース・ケイク』を2ヶ買った。

それとウソップやサンジ君にあげる用に、個別包装されてる『ショコラーデ・ケイク(5ヶ入り)』も買う。

営業の為でも何でも、こうして試食が多く出来る様になってるのは有難いなァと思った。


店内の奥には狭いながら喫茶コーナーも設けられてて、種類は豊富でないけど生ケーキも食べられる様になっていた。




タンテ・アニーの隣も同じく土産食品を売る店で、と言うより、タンテ・アニーから左へ続く4店舗共全てそうみたいで。

どうやらこの通りの横並びは、『食』をテーマに配置されたらしい。

タンテ・アニー左隣の建物の壁に、大っきくチーズやワインの絵看板が掛かってるのには度肝を抜かれた。

それを見た途端、ルフィは嬉々としてまた中へ入ってく。

…目立つけど、正直、景観は悪くしてる気がするなァ。




チーズ専門店『フロマージュ・ダンジュ』で、ルフィはまた試食を重ねて行っていた。


その左隣には輸入食品や、オリジナルのハムやソーセージ等を売るグルメショップ、『タブリエ・ド・ロア』。

そこでもルフィは試食を重ねて行く。


その左隣にはワイン専門店『ディオニソス』。

そこでもルフィは試飲を……


少し間を挟んで左隣には、総合お菓子屋『ハンスブリンカー』。

そこでもルフィは…以下略。



兎に角横並んだ5店舗全てが飲食品を売っていて、しかも何処も試食もしくは試飲を充実させてるんじゃあ、ルフィにとってはパラダイス・ロード、抑えるのにえらく苦心した。




時間が無いからと何とか宥め、停めた自転車の前まで引き摺り戻す。


ハンドル前の篭は、ルフィの買い込んだ土産で、ぎっしりと埋まった。


「あんたこんな買って…漕いでくのに重くて大変になるでしょ!?私が漕ぐ訳じゃないけどさ!」

「俺だけじゃなく、ナミも買ってたじゃねェか。」

「私はお菓子3つしか買ってないもん!あんた、菓子だけじゃなく、ハムやウィンナーやチーズやキャンディーまで買ってたでしょ!」

「ナミだって、ワインまで買ってただろ?」


――ギクリとした……しっかり見られてたのね。


ワイン専門店『ディオニソス』で試飲してたオリジナル甘口ワイン。

爽やかなマスカットジュースみたいで、やや甘党の自分の好みに非常に合っていた。

量り売りもしてるって事だったけど……結局1瓶丸ごと買ってしまったのだ。


「………いいじゃない。もう送っちゃって、此処には無いんだから。」


既に送ってしまったのは、ルフィの荒っぽい運転で割られちゃ困ると考えたのと、ゾロに「高校生らしい健全な旅を目指す」と禁酒を強いた手前、知られて皮肉言われんのも嫌だなと思ったからっつか…。


「……ワイン買った事、ゾロには言わないでよね。」
「言わねェ言わねェ♪ぜっっってェ、言わねェ♪」
「その軽い言い方、すっごく当てにならないんだけど!!!」

「…所でこの建物は何なんだろうな?結構でっけェけど、ここも店か??」


停めてた壁の向うから、賑やかな音が漏れて来たのが気になったのか、尋ねて来る。


「『キッズファクトリー』よ。お子様用の小さな屋内遊園地みたいなものね。」
「よし!!!寄ってこう!!!」
「寄るなァァァーーーー!!!!!」


勇んで入口駆け込もうとするルフィの腕に縋り付いて止める。


「お子様用つったでしょ!?後15分位しか無いんだから!!そろそろ戻んなきゃ延滞金加算されちゃう!!!」
「え!?後15分なのか!?…大変だ!!早くお菓子の家行かねェと!!」
「って未だ行く気か!??」


……っつか初日に見たあの店の事、しっかり覚えてやがったのね、こいつ。


「心配すんな!!まだ15分も有んなら大丈夫だって!!」

「…もし延滞金付いたら、あんたに払って貰うからね!!」

「おう!!そんときゃ代りに払っといてくれ!!後でまとめて払う!!」
「3倍返しだかんね!?そんな借金重ねて、何時払ってくれる気よ!?」
「出世払いだ!!いつか必ず払う!!!」
「信用出来るかァァーーーー!!!!」



お土産いっぱい前に乗せ、自転車は走り出す。

落ちない様に車体に土産袋縛り付けてるとは言え、進む度にガタゴト揺れて、外へ飛び出して行きそうで怖かった。

ワインを送っておいて正解だったなと思った。




アチコチにクリスマスツリーが飾られた華やかな区画『ビネンスタッド』から、海に面して開けた区画『スパーケンブルグ』へと入ってく。

波は相変らず荒そうだけど、天気は大分回復してて、晴れ間も覗く様になっていた。


此処からブルーケレンに在るレンタサイクル屋に戻す事を考えると……3時間で場内をほぼ2周したって事になるのね。

やっぱり自転車は機動力が有って良いなァ。


オレンジ広場を突っ切り、デ・リーフデ号も横切り、自転車は一直線にお菓子の家『ヘクセンハウス』へと向った。




『ヘクセンハウス』は、グリム童話のお菓子の家をイメージした内装になってる、お菓子屋さんだった。

柱が林檎の生った木の様になってたり、ヘンゼルとグレーテルの像が在ったりで、メルヘンチックで結構可愛い。

…もっともルフィは、自分がイメージしてた程にはお菓子っぽくなくて、ちょっと落胆してた風ではあったけど。


ただ此処も、試食がかなり充実していた。

バウムクーヘンとクッキーの専門店で、殆どの商品が試食出来る様になっている。

風車や木靴の形したのや花の絵の描かれたクッキーは味も色々。

バターにチーズにアールグレイにチョコにローズマリーにレモンにミント、どれもサクサク、香りも良くて、とても美味しかった。


「うん!ふめェ!!…ひひょふなのに大きく割ってあって、ケチケチしてねェのも良いよな♪」


また出されてる全ての物をパクつき頬張りながら、ルフィは御機嫌で喋る。


「…ルフィ、せめてもうちょっと控え目に頂いたら?試食なんだから。」


もう1つの売物、バウムクーヘンも、種類色々置いてあった。

特に丸ごと蜜煮した林檎をバウムクーヘンに包んである『魔法のりんごバウムクーヘン』は、包装に赤いセロハンと白い発泡スチロールネットを使ってい、本当の林檎みたいに包んであってとっても可愛い。

この包装だけでも買いたくなるかも…ビビにあげたら喜ぶかな。


「ナミ!ナミ!こっちも見てみろ!お菓子の家も有るぞ!」


ルフィが手で招く、近寄って見ると、クッキーで可愛く細工された、とんがり屋根の小さなお菓子の家が並べられていた。


「あ!可ー愛ーいーvv買って行きたァーーい!!」
「な!?買って行きたくなんだろ!?…俺も買ってこうかなァ~~。」

「…でも止めた方が良いかもね。耐震性に問題有で送れないみたいだし、長時間持ったまま帰るにも難しそうだわ。」

「んあ?そ、そうかァ~~。んじゃ、このリンゴのバウムクーヘン買ってくかな。」


言うなりさっさとキャッシャーの方に持って行く。


「…ってちょっと待て!!あんただから買い過ぎだってば!!大体、そんな買ってく程、渡したい人間多いっつうの!?」

「何言ってんだ!?ほとんど自分のために買ってるに決まってるじゃねェか!!」
「それじゃお土産の意味無いでしょう!??」
「ナミは違うのか?」
「お土産ってのは主に、人様にあげる為に買うの!」


……そうね……やっぱ私も買ってっちゃおうかな。

ビビに林檎のバウムクーヘン、ノジコに木靴のクッキー、ロビン先生には風車のクッキーを買ってったげよか。

ウソップとサンジ君の分は、もう買ってあるから良いわよね。



暫くアレコレ手に取り考え込み、油断して目を離してしまったのがいけなかった。


気が付けば、ルフィの姿が店に無い。


焦って外に飛び出し前後左右見回す――自転車は未だ店の横に停めてあった。

……って事は、直ぐ側に居る筈!!


「ルゥゥゥフィ~~~~~!!!!!」

「おーー!!呼んだかァ~~~!!?」
「って直ぐそこかい!!!!?」


直ぐ隣の店ん中から声がして、かくんと拍子抜けしてしまった。




パイプを咥えた船長さんの人形が、入口前にシンボルとして立ってる店、『キャプテンショップ』。

ミュージアムスタッドに在った輸入雑貨屋『フィギュアヘッド』同様、店の周りには真鍮の鐘や舵輪と言った船装器具が雑然と置かれている。

ルフィが店奥から笑いながら、入口前の人形が被ってるのと似た様な、白地に黒い鍔帽被って出て来た。


「ルフィ!!!急に居なくなったら心配するじゃない!!!…って何よ、その偉そうな帽子は??」

「キャプテンハットだ!!カッコ良いだろ♪♪」
「またそんな無駄遣いしてっっ!!!」

「世界廻って芸観せた時に、お代入れてもらう用のぼうし買っとこうと思ってな♪本当は麦わらぼうしが有りゃ良かったんだけど……似合うかー?」
「似合うかじゃないっっ!!!いい年してそんな帽子買ってどうすん――」


――ぽすっと頭に、それを被せられた。


「うん!おめェも良く似合ってるぞ♪」


「…………は…?」


ぽんぽんと帽子ごと頭はたかれ、愉快そうに微笑まれて……あの……こゆ場合、どう反応したら良いの…?


ってゆうか、こいつは一体全体、何を考えてる訳??


……解んない、ゾロ以上に解んない。


「店ん中沢山面白ェもん有ったぞ!!俺が剣買ったトコと似たようなふんいきだ!!ちょっと入って観てこうぜ!!」
駄目!!!あんたがそんな店入ったら、また1時間近く篭りっきりになっちゃうじゃない!!!」


ぐいっと引張られる腕を、逆に引張り返す。

冗談じゃない、フィギュアヘッドの時の二の舞は御免だわ。


「時間が無いって言ったでしょ!?見てよ!!もう5分しか無いって――えええええっっ!!!!??


ルフィに指し示した腕時計の時刻を確認して、一気に心臓が凍り付く。


どどどうしよどうしよルフィ!!!延滞金が!!延滞金が付いちゃうっっ!!!もう駄目…!!5分って…ま、間に合わない~~~~!!!!

「……5分も有りゃ、余裕で着けると思うけどな。」


飄々とルフィは答える、落ち着き払った態度だ。


「…ほ…本当…!?本当に間に合う!?5分しか無いのに!?」

「おう!!大丈夫だ!!」


自信たっぷりに断言されて、根拠は無くても心強く感じてしまった。

笑顔の後ろに後光まで射して見えるのは気のせいか??


調子良いとは思うけど……こいつが居てくれて、本当に助かったと思った。




「フルスロットルで行くから、しっかり摑まってろよ!!」

「わ…解った!!」


サドルに跨り、言う通りに手を回して背中にしがみ付く。

飛ばされないよう、ルフィが買った帽子は、私が握り締めてく事にした。

篭に入ってる土産袋も全て、車体にしっかり結び付けてある。

漕ぐのに邪魔にならない様、自分の両足は後ろ側に曲げた。


――良し!!発進準備完了!!


「最短コース教えるから、宜しく頼むわよ!!キャプテン!!」

「任せろ!!!そいじゃあ……飛ばすぞォォ!!!!



ペダルが大きく踏み込まれる、車輪が回転し、一気に加速してった。


オレンジ広場をばびゅん!!!と爆走し、ハーフェン橋を越え、あっという間にビネンスタッドに到達する――その瞬間、車体がフワリと浮き上がった。


「次!!右か!?左か!?」
「…ひ、左!!運河に沿って良いって言うまで真直ぐ!!!」


――ガクン!!!と左に曲がった、シンゲル運河に沿って、並木道をどんどん直進してく。

道行く人達が驚いて振り返ってく、前から来る人は皆避けてく。

石畳の道をルフィはひたすらジャコジャコ音出し、物凄いスピードで立ち漕ぎしてく。

ガクンガクンガクンガクンと行きの高速船並に揺れた。

…か…風が顔に当って寒い…ってより痛いっっ。

ゴォォォ…!!!とか耳に聞えて怖いっっ。

もう、前だけしか、向いてる余裕無いし。



運河の十字路まで差し掛かった。

またルフィが方向尋ねて来る。

左のジョーカー橋を渡る様指示した。

越える瞬間、またフワリと車体が浮く。

篭の中のお土産も浮く…ってか既に外に飛び出しぶら下がってるんですけどっっ。


前からバスが来た――身が縮んだ!!

ルフィは全くスピード緩めず、左に横っ飛びして避ける。

避けたと同時に、自分の体が左へ投げ出されそうになって、必死でしがみ付いた。


あ…だ…駄目……車酔いしそう……

こいつひょっとして80キロ超位軽く出してない!?

ビッグ○ンダー○ウンテンもびっくり!?



アムステル運河に沿ってまた直進、そして爆走!


バスチオン橋を越えて――自転車は無事5分前に、レンタサイクル屋『フィッツ』に到着する事が出来た。




迎えてくれた店の小母さんが、すっかりオールバックに決まってしまった私とルフィの髪型を見て、声にならない程に爆笑してくれた…。






その35に続】




写真の説明~、ホテル・アムステルダム横の海沿いの道。


海の側まで下りられ、見渡せるv
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『何度も廻り合う』その33

2006年02月14日 23時00分33秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





チョコレートハウスを出て、裏通りの風車前に停めておいた自転車を取りに戻った。



「さて…後1時間ちょいしかないけど、どっか行きたいトコとか有る?」
「食いもん!!食いもん売ってる店に行きてェ!!!」


ハンドル握って振り返り、ルフィは即答だ。

その如何にも「らしい」要望に、思わず微笑してしまう。


「OK!じゃ、ナビすっから、なるたけ数多く廻れる様、頑張って漕いでよ!運転手!!」

「ラジャー!!!」


ペダルを漕ぎ漕ぎ走らせる、走行距離が伸びてく毎に加速して行く。

緑の葉に赤い実を付けた、天然のクリスマス・ツリーの様な並木を過ぎ、美しい花々と女神の像で飾られた噴水の在る広場を縦断してく。




クリスタル橋を渡り、日中でも閑静な区画、ミュージアムスタッドへ。

昨日行ったオルゴール博物館、『オルゴールファンタジア』は、今日は休館だった。

昨日行っといて良かった…まァ知ってたからこそ、昨日の内に行っといたんだけどね。


「なァーー、昨日行ったオルゴールの博物館前に在るこの銅像って…誰の像だ??」


銅像を前にして一旦停止、振り返ってルフィが尋ねて来る。

オルゴールファンタジア前の一角は、猫の額程の狭さではあるけど広場になってい、中世の格好した1体の銅像が、小さな花壇に取巻かれる様立たされていた。


「さーー…私も詳しくは知らないけど、この建物ってオランダのユトレヒト大学講堂をモデルにしてんだって。だからそこの創立者とか、或いは初代学校長の像とかじゃないかしらね?」

「へー!これってオランダの建物をモデルにして造ったのかー!」

「ハウステンボス場内に在る建物は全て、オランダに実在する歴史的建造物をモデルに、なるたけ忠実に再現してあるって…来る前に説明しといたじゃないのさ。」

「へー!全部にモデル有んのかー!そうする意味は解んねーけど、すげーなー!」


バレエシアター『クリスタル・ドリーム』、『柿右衛門ギャラリー』、ストリートオルガンの工房『ピーレメント・ボウ』、鐘の博物館『カロヨン・シンフォニカ』、シーボルトが長崎に居た当時の資料を展示する『シーボルト出島蘭館』…その名の通りミュージアムの建ち並んだ区画を抜け、バス停の在る橋を渡って、再び場内1番のショッピング街、ビネンスタッドに入ってった。




街に入って先ず目に付くのは、見目麗しいオフホワイトのゴシック建築『スタッドハウス』と、その横で高く聳え立つクリスマス・ツリー。

場内のほぼ中心、昼のイベント会場にもされるこのスタッドハウス周辺は、さっきのミュージアムスタッドに在る広場とは段違いに広々としてて、正しく『広場』と呼ぶに相応しく思えた。


「…って事は、あの教会のモデルになった建物も、ちゃんとオランダに在るんだな?」

「そうよ。今では専ら結婚式を挙げる為の教会として使用されてるけど、元はゴーダの市役所『スタッドハウス』をモデルにして建てたんだって。」


館内は硝子の美術館『ギヤマン・ミュージアム』にもなってるスタッドハウス。

正面の鮮やかな花時計前では、今日も観光客が入替り立替り、記念撮影して行く。


…私達も来た最初の日から、写真を撮ったもんなァ。

3人の真ん中に写った人間は早死にするジンクスが有るって言ったら、ゾロが真ん中に立たされて。

ゾロ、凄く嫌そうな顔してたっけ……もう随分前に有った事の様な気がする。


「ナミ!ナミ!あそこ見ろ!!でっけーくつが置いてあっぞ!!」


花時計を見詰て懐かしく思い出してた所で、自転車が急発進する。

びっくりして正面を向き、ルフィの指す方向を見れば、確かにそこには、巨人用かと思える程にビッグサイズな黄色い靴が、ドカンと店先に置かれていた。

だけじゃなく、店の周り中カラフルに塗られた木靴がアチコチ並べられてるし、壁面にまでゴチャゴチャ吊るされてる。


「すっげーよなー!!こんなでっけーくつ、誰がはけんだろうなー!?」

「誰も履けやしないわよ、馬ァ鹿!唯のディスプレーだってば!此処『ホーランドハウス』は、木靴なんかのオランダ民芸品を売ってる店だから、そのシンボルとして置かれてるんでしょ。」

「へー、そんな店が在ったのかァ。」

「何言ってんの!最初の日に軽ぅく観て行ったじゃない!」

「へ?観たっけか??…う~~ん…いまいち覚えてねェなァ~~。」

「……まァ…あの時のあんたは、この直ぐ横の回転木馬に心奪われてたからね。」


場内の中心ビネンスタッドは、数多くの土産店が建ち並び構成されている。

中でも最も多彩な店が並ぶ専門店街は、小さな子供用プレイランド『キッズ・ファクトリー』、テント市場『ワールド・バザール』、そしてこの回転木馬『カルーセル』を、三角形に取り囲む風になっていた。


「そーそー!この回転木馬!良いよな~~~、楽しそうだ♪」

「楽しそうったって…小っさい子供用じゃないのさ。」


在り来りの、白馬や馬車に乗ってクルクルと回る回転木馬は、未だ昼前という事からか、小さい子供を連れた家族が数組のみ乗っていて、はっきし言ってガラガラだった。


「ガキ用でも楽しけりゃ良いじゃねェか!これ、パスポートで乗れんだろ?乗ろうぜェ♪」
「い・や!!乗りたきゃ1人で乗んなさいよ!!何なら写真撮ってビビに即写メしたげるわ!!」
「いーからいーから♪♪恥の旅はかき捨てっつうじゃんか♪♪」
「それ言うなら『旅の恥はかき捨て』よ!!兎に角!!い~~や~~~!!!!


嫌だっつってるのに、ニコニコ笑顔で無理矢理抱えられて乗せられた。

年甲斐も無く、派手な鞍付けた白馬の上に、2人並んで跨って……前に乗ってた5歳位の女の子の、好奇な視線が痛かった。


ノスタルジックなオルガンのメロディーに合せて、馬車は上下に揺れながらクルクル回る。

心棒に摑まって周囲を見渡す…景色が流れて、回って行く。

ゆっくり、ゆっくり、風が心地良い。

結構楽しい…と言うより、懐かしかった。


ルフィと…ゾロと…3人でよく乗って…遊んだっけ。

前の女の子に、幼い頃の自分が重なって見えた。

その右には幼い頃のルフィ、そして左にはゾロ。



ああそうだ、近所の遊園地に、家族に連れられて、3人で遊びに行って……そしたら、必ず乗ってたんだ。


白馬の数が少なくて、けど3人共それに乗りたがって…1頭しか残ってなかった白馬に乗るのを…どうやって決めたんだっけ?

最初はジャンケンだったか……その前に、ゾロが降りたんだ。

そんで私とルフィでジャンケンして…私が勝って。

けどルフィは諦め付かなくて…2人摑み合いの喧嘩になっちゃって。

そしたらゾロが……ルフィ殴って止めたんだ。


「負けたんだろ?じゃあ、お前が降りろ」って――



……随分、私は、2人に頼って来たんだと思う。

ルフィに引張られて、後ろからゾロが付いて来てくれて。


春が来て、2人が居なくなったら……私は、どうするんだろう?




約3分程回転し、木馬はゆっくりと動きを停止した。


ルフィと2人降りて、ホーランドハウス前に停めておいた自転車にまた跨る。


「なつかしかったなーー♪俺とゾロとナミとで、よく乗って遊んだよな♪」

「……そうだね。」

「もっと長く乗ってたかったよなァ~~~、1時間くれェよォ~~~。」

「そんなに長く乗ってたら、目が回って倒れちゃうわよ。…それに、1回の時間が長いと、後の子供がその分待たされて、可哀想じゃない。」

「覚えてるか?回転木馬の1頭しか残ってなかった白馬取り合って、お前とゾロ、よくケンカしてたよなァ~!」
違うわよ!!!あんたと私が取り合って喧嘩してたんでしょが!!!記憶を改竄すな!!!」

「んあ?………そうだったっけか??」

「あんた達、どぉぉも私とゾロは喧嘩ばっかしてるってイメージで見てるみたいだけど…実際には喧嘩まで発展するのは稀なんだからね!!」


私とゾロは、考え方が丁度正反対なせいか、よく言合いはする。

だけどお互い、執念深い性分じゃないから、あっさりと終らせて、後に遺恨も残さない。

第一、大抵の場合、喧嘩になる前に、ゾロが引いてくれた。


「事実、この旅行中、ずっとしてるじゃねェか。」
「だからむしろ今の状態のが珍しいんだってば!!!……大体ねー!あんたとゾロだってよく喧嘩してたでしょォ!?それこそ殴り合いの大喧嘩まで発展してさ!!」

「俺とゾロのケンカと、ゾロとナミとのケンカは違う!俺とゾロがケンカすんのは、どっちが上か決める為にしてんだ!けどゾロとナミは……何でケンカしてんだ?」


いきなり真剣な眼差しを向けられ、少し怯んだ。


「それは……だから……考え方の違いからというか……」


何故喧嘩すんのか?――改めて聞かれると、自分でも理由が解らず、戸惑ってしまう。


「ガキの頃から不思議だった。でも今は俺、何となく解る。」

「……解るって…?私達が喧嘩する理由が…?」


「気付くと変っちまうかもしんねェから、言ってやんねェけどな。」


にぃっっと音が聞えて来る様な、普段通りの能天気な笑み。

けれども黒目勝ちの瞳は、怖い位に真剣で。

前に向き直って、ゆっくりペダルを漕ぎ出す。


「……気付く?変る?誰が??何が??………全然解んない。あんた、今日おかしいわよ、ルフィ!」

「そうか~~~?俺はいつもと変んねェつもりだけどなァ~~~。」
「おかしい!!!すっごくおかしいわよ!!ずぅっと!!絶対!!」


背後から怒鳴っても馬耳東風、笑いながら通りを直進してく。

…駄目だこりゃ…こいつがこうゆう態度になったら、蹴っても殴っても相手してくんない。

解せなくはあったけど、追求を諦め、黙って放っとく事にした。




中世のオランダの街並みが続いてる様な『ルーベンス通り』。

並んでるお店の殆どは専門店、キャラグッズに香水にチューリップ染の布製品にマグカップに硝子製品と…バラエティ溢れるお土産が並んでて、本当だったらアチコチゆっくり観て行きたかった。

けどルフィは止らない、回転木馬を横切り、ワールド・バザールも横切り、ひたすら直進してく。



前を見て、何処を目指してるのか解った。

2階の窓から人形が顔を出して、鐘を鳴らしてるお店。

店の前では店員さんが1人、道行く人に、提げた篭から何かを出して配ってる。


「美味そうなにおいが向うからしてる!!なァナミ!!あれお菓子だろ!?寄ってみようぜ!!」

………まったく、鼻が利くんだから。

「『タンテ・アニー』、アニーおばさんの美味しいチーズケーキを売ってる店だって!外の県にまで名が知られてる店よ!…良いわ!私も丁度此処でお土産買って来る様、頼まれてたから!!」



店の前の建物、キッズ・ファクトリーの壁に寄せる様、自転車を停める。

降りて早速、ルフィは店員さんから、配ってた物を貰いに行った。

若い女性の店員さんが配っていたのは、チーズケーキを賽の目状に細かく切った物だった。


一口で食べると、ゴーダチーズをしっかりと焼き込んだ生地の中に、オレンジの風味が効いてて、とっても美味しく感じられた。

修学旅行生の口コミで、全国に人気が広がって行ったってのも、理解出来るわね。


「うんめェェェ~~~~!!!すんげェェうんめェェェ~~~~!!!――もっともらえねェかな?」
「止めて、見っとも無いから。」


真顔で相談して来るルフィにきっぱりと告げる。


「早く店入ろうぜ!!他にもししょくさせてもらえっかもしんねェ!!」


……まったくこいつは……悩みが無くてつくづく羨ましいというか……。


「……あのさァ……ルフィは…ゾロが一緒でなくて、寂しくない訳…?」


店に入り掛けてたルフィの足が止る。

振り向いた顔には、「?」が幾つも浮んでた。

いきなり何言い出すんだとばかりに首を傾げてる。


「や、ちっとも!…どうせすぐ、昼になったら会うんだし。」


「卒業したら?…春が来て、別れ別れになっちゃっても?」

「そんでも、2度と会えなくなるワケじゃねェだろ?」


――2度と会えなくなるかもしんないじゃないっっ。


「あんたそれでも親友かっっ!!?」

「ナミは、さびしいのか?」

「…………寂しくなんか、ないわよっっ。」

「………ふーーん……。」


暫し2人、無言で顔を見合わせてた。

けど直ぐにルフィは、くるりと180°向きを変えて、店ん中に駆け込んでった…。




……ウソップとサンジ君まで離れて行かなくて、心から良かったと思う。


2人まで離れて行っちゃってたら……私はきっと、泣き出してただろうから。





その34に続】





写真の説明~、ストリートオルガン工房『ピーレメント・ボウ』の前に置かれた、アンティークなストリートオルガン。

日に何度か演奏して観せてくれたりする。

観られたらラッキーv
コメント (5)
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