小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

本郷弥生あたりの散策

2023年09月13日 | まち歩き

週に1回訪問してくれる看護師さんは、歩くだけでも筋力がつきますから、といって爽やかに笑う。分かってますよとは言わない。ご心配無用、歩きは好きですからなんて、以前だったら自信たっぷりに返事していたかな。今はもう目で笑いながら、そうですね明日にでも行こうかな、と自然に言える爺さんになった。

今回は行き先を本郷方面に向けて、なるべく杖を使わずに歩こうと思い立った。そのかわり本郷へは登り坂なのでタクシーに乗り、東大農学部の中にあるレストランを起点にしたコースに決定。一般開放されたレストラン・アブルボアは、何回か来たことがあり、ランチの小鉢風九種類の惣菜は美味であった。アフリカンテイストの民芸調インテリアも、独特の雰囲気をかもしだして好印象。3年ぶりの再訪であるが・・。

それから農学部の裏から異人坂をぬけて、工学部(?)下の暗闇坂へ。妻が訪れたことのない弥生美術館、竹下夢二記念館に行く。帰りは馴染みだった古書店「ほうろう」に寄るコースである。

さて、実際に農学部構内に入る・・。樹々の緑に勢いがあり、都内とは思えない植物のフィトンチッド的なる匂いが漂う。植生も一般の公園にはない特色があると思う。若い桐の50センチもあるかと思われる葉っぱを初めてみた。グーグルレンズですぐに桐だと確認できたが、100%正解ではないにしろ便利なツールだ。牧野富太郎ならたぶん不貞腐れるだろう。

農学部の建物は変わりないが、安田講堂と同時代の雰囲気があっていい味を出している。ただ、メンテナンスはしっかり行っているとは言いがたい。古色蒼然たる佇まいは良いが、老朽による所々の劣化は痛々しい。永い目で見守るべく予算を組んで、伝統建築を継承してもらいたい。

営業していることは知っていたが、店は客が一人で閑散としていた。お目当ての9品ある小鉢弁当は既に止めたらしい。コロナ禍の影響でだいぶ様変わりした様子。男二人だけで切り盛りしていた。ただ、大きな一枚板を2枚使った大テーブルを中央にでーんと据えて、ゴージャスな空間になったかな。

▲暗闇坂、右側に美術館。

帰りは裏口から異人坂に抜けて、弥生坂(言問通り)に出ると古本屋「緑の本棚」の脇に出る。2年前ほどに来たときは植物関係はじめ自然科学の本が充実していた。ここではコーヒーが飲め、軽食も食べられる。今回は二つの美術館にいくので先を急いだ。

二つの美術館といっても小さな私設美術館で、1984年に弥生美術館が、また1990年に竹久夢二美術館ができた比較的に新しい美術館だ。今回で3回目だが、妻は初めての来訪。まず大正・昭和の女の子向けのおままごと玩具を集めた弥生美術館の展示を拝観する。

『いとしのレトロ玩具』はほぼ女の子向けのものがほとんど。おままごとのキット、人形(リカちゃん、ちびまるこ含む)などなど、昭和の懐かしいオモチャがずらりと。なかには箱入りの展示も目立った。開けないでそのまま保存してあったわけで、どんな理由、どうした経緯で保管してきたのだろうか? なんか想像力を働かせてしまう。そういうモノを大切にする精神というか、逸品を愛でる気持ちが小生には欠けている。

翌日、これらの写真をみた訪問看護師さん(男)は、「もしかしたらずっと見続けてしまいそう、飽きないですね」と意外な反応で、女医さんはじめ私たちを驚かせた。やはり「可愛い魂」は日本人のこころに永遠に宿っていくものと思われる。

 

弥生美術館から竹下夢二美術館はひとつの建物でつながっている。今回の企画は「夢二が見つめた20年代 震災からモダンガールの表現まで」とあり、関東大震災において竹下夢二が被災した現場を訪れてスケッチを描き、取材した記事を特集した特別展。今年は関東大震災100年ということで9月1日の防災の日は、テレビはじめ様々な特別番組や催し物があった。その一環としての企画だろうが、夢二の違う面をみる思いだ。

(追記:翌々日の日曜美術館でレンブラントの8K復元の『夜警』を観終わって、次のアートシーンでなんと、竹下夢二美術館の震災スケッチ特集が取りあげられていた。これについては次回にふれることにしたい)

 

美術館をあとに暗闇坂をくだり、池之端門まで歩いてきた。自分としてはかなりの長歩きで疲れもあった。予定通り、古書ほうろうさんによって、例の小部屋でコーヒーブレイクのひととき。宮地さんご夫婦は相変わらずで、店の雰囲気もほとんど変わりない。エチオピアとブラジルの香しい豆の香りをシェアしながら、周囲の古本をひっぱりだして愉しむ。ベルベット・アンダーグランドのポスターは売れたのか、見かけなかった。

この日に購入した本は、天野忠の生前最後の詩集『万年』と長田弘のエッセイ『小道の収集』。店を出てからは、妻は根津方面に買い物に行き、小生は都バスで千駄木まで。帰宅途中に、なんとムラサキシキブ(紫式部)とデュランタ(宝塚)を発見! 弥生美術館で女の子の妖精が小生に纏まりついていたのか・・、「可愛い」がずっとついてきてくれたようだ。

▲みか子さん手づくりの寒天ゼリーをサービスしていただく。レモン風味で美味しかった。

▲デュランタ(宝塚)

▲ムラサキシキブ(紫式部)

 

 

 

 

 


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2 コメント

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是非行きたいです (sekko)
2023-09-14 23:34:07
この散策コース、すてきですね。美術館も、特別展は変わっているようですが、11月にぜひ訪ねたいと思っています。東大農学部のレストランとか、古書ほうろうにも行きたいです。以前にも、小寄道さんのブログからのヒントで朝倉彫塑館に行きました。
情報をありがとうございます。

無理をなさらない範囲でどうぞお元気で、また散策コースをご紹介ください。
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Sekkoさま (小寄道)
2023-09-15 07:33:52
コメントありがとうございます。
散歩コース気に入ってくれて嬉しいです。
レストランには裏口があって、そこから異人坂へ出ます。逆に、異人坂から行くと、ドアフォンがあって、呼び出すとお店の人が開けてくれます。ミニ情報ですけど・・。
11月の来日、楽しみにしています。四ツ谷か恵比寿で、いま迷っています。
ありがとうございました。
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