小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

希望なきこの国のありよう

2013年11月26日 | エッセイ・コラム

 私たちの「知る権利」を封じ込めて、三十年いや六十年も秘匿する情報とは何だろう。
国家の安全保障に関する高度な情報だそうである。
防衛、外交、スパイ活動、テロリズムの4項目が第一の指定対象である。
この「第一」がみそである。「第二」「第三」もあるからだ。さらにそれぞれに「等」がつく。

 霞が関文学の真骨頂である。

 今日の新聞でわかった新たな事実。秘密指定できる権限をもつ国の機関とはどこか、その政府見解がわかった。例の山本太郎参院議員に渡された政府答弁書に記載されていたのである。この段階で政府は「予定」というだろうが・・。

 さて、秘密指定できる行政機関は、首相や外務省、防衛相の長官だけではない。
文化庁・消費者庁・観光庁・林野庁・金融庁・中心市街地活性本部・道州制特別区域推進本部など「53もの行政機関の長が秘密指定できる」ことが明らかにされていた。
 国家の「安全保障」に限っての「秘密」どころではない、ほぼすべての国の機関が「何かを秘密にする」ことができる。
 行政機関にとって都合の悪いこと、虚偽、秘匿、改ざん、失敗などなどを「秘密指定」にできる。
 もう官僚のやりたい放題である。天下の法のもとに、良心の呵責を感ずることなくどんな嘘もつくことができる。
ついに日本はホンモノの野蛮国家となるに違いない。
そして再び、××丸出しの「戦争」をおっぱじめ、他国に支配されることになるだろう。

 わたしはルース・ベネディクトの「菊と刀」を思い出す。
日本軍人が捕虜になると、一般の軍人よりも将校クラスの軍人が積極的に「軍事秘密」を話したことを。
「死んでも虜囚の辱めを受けるな」と訓練を受けている日本軍人の、それも指導者がこの体たらくは何だろうか、とベネディクトは彼女自身の日本人観を修正せざるを得なかったと書いていた。軍事秘密は死んでも守れといった将校が捕虜になったら、保身のためにすすんで「秘密」を暴露する。
日本人の凄いところである。私も日本人だが・・。恥ずかしい厭な汗がでている。自称右翼の方はどうですか?

 人を支配する立場の人間が「秘密」をつくる。それを利用して保身する、自分の立場を盤石のものとする。
「行政」の横暴を制御する「司法」が機能不全に陥っているこの国。

福島原発事故当時の東京電力社長、さらに役員クラス全員が、家族を伴って海外に移住しているという事実。この国を見限ったからか。厳しい責任追及を予想したからか。福島原発に関する情報の一切が「秘密指定」されたら帰国するかもしれない。※1

 今回の特定秘密保護法案が成立した場合の経済的損失を専門家は積算するべきである。
とんでもない数字がはじき出されるだろう。

 言論の自由、調査の自由、民主主義の観点だけなく経済的なファクターからも「特定秘密保護法」は審議されなければならない。私たちの信託を受けた政治家たちは何をしているのか。たぶん官僚からこの法案のいいことづくめのレクチャーを受けたに違いない。
そのうち「秘密」を共有する一部の国民も出てくるかもしれない。そのときでは完全に遅い。

 自分たちの知りたいことが隠されている。「知る権利」を行使すると罰せられる。それどころか何もしないのに罰せられる。
 裁判も行われない。いや裁判はされるのだが、そのプロセス・証拠などは開示されない。

すべてが「闇の中」だ。
「ミッドナイト・エクスプレス」よりも恐怖の状況が、この国に生まれつつある。※2

日本から「希望」が失われていく。

「秘密」の本質について考えなければならない。

※1:単なるキャピタルフライトという説が有力になった。2014・4・1 唾棄すべき流言か?

※2行政側の皆さん、外郭団体等の皆さんは、この法案の当事者であられます。国側にとっては、機密漏えいという事実そのものの痕跡をなくすほうが最良結果です。つまり皆さんのようなシークレットホールダーは抹殺されるかもしれない。それは想定の範囲です。映画の「コンドル」を見ていただくと良いでしょう。蛇足ながら・・


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